日々雑感

読んだ本やネット記事の感想、頭に浮かんでは消える物事をつらつら綴りました(本棚7)。

「人生に必要な30の腕時計」

2008-09-23 07:05:29 | 時計・鞄・靴
ガンダーラ井上著、2003年、岩波書店発行(岩波アクティブ新書).

時計は当然、時間を知るための道具です.
でも近年その本来の目的を失い、自分をアピールする一つのアイテムとしての役割を担うようになりました.
そんな視点から書かれた本です.

TPOにより、「こんな時はこんな時計はいかがですか?」という提案が30項.
時計の本というと、概してヴィンテージ・ウォッチの蘊蓄が語られることが多いのですが、100万円以上もする時計が一般人にそうそう買えるわけではなく、現実とのギャップを感じがちでした.
この本に取り上げられている時計達は高価ではありません.せいぜいロレックスくらいで、ヴァシュロンやパテックは本論には出て来ず、高級時計の象徴として触れられている程度.

そして、いろんな時計が紹介されています.
特に、機械式時計からクォーツに発展する1960~1980年代の過渡期には様々な駆動形式の時計が百花繚乱状態でしたが、他ではあまり紹介されない歴史の襞に埋もれてしまった時計達にもスポットライトを当てたことが斬新です.
エレクトロニック時計、音叉時計、LED時計、などなど.
読み終えると、近年の時計小史が自然に頭に入っている二度おいしい本だと思います.

私が「これ、欲しい!」と思った時計は・・・「Think the earth wn-1」
地球の北半球そのものがドーム状の針になっており(地球針?)、この全体が1日で1回転するというもの.
北極を中心に回るその方向は反時計回りで、地球の自転に合わせています.
この時計を装着していると、落ち込んだ時に「小さなことにくよくよするなよ」と地球が語りかけてくれるような気がします.


「そうか、もう君はいないのか」

2008-09-08 01:36:17 | エッセイ
城山三郎、2008年、新潮社発行.

甦る面影、声にならぬ悲しみ。最期まで天真爛漫だった君よ……。亡き妻との人生の日々を綴った、凛として純真な愛あふれる「妻との半生記」。感涙の絶筆(Amazonの解説より).

城山三郎さんの本を読むのは初めてです.
出会いから死別まで、夫婦で過ごした半生がわかりやすい文体で綴られています.
読んでいて「喪失」という言葉が思い浮かびました.
悲しみの原点.
その人の人生に占める存在が大きければ大きい程、失った時の「喪失感」=「悲しみ」も大きい.
城山さんにとって、奥様が如何に大きな存在だったのかが全ての文章からにじみ出ています.
お二人とも幸せだったのですね.

体力の衰えは感じるものの、私はまだ自分と妻の「死」を身近に感じられない年齢です.
あと30年先、どんな人生を送っているだろう.