日々雑感

読んだ本やネット記事の感想、頭に浮かんでは消える物事をつらつら綴りました(本棚7)。

「動的平衡」(福岡伸一 著)

2014-08-30 12:51:06 | エッセイ
動的平衡~生命はなぜそこに宿るのか~」(福岡伸一 著)
木楽舎、2009年発行



 福岡氏のことはNHK番組「いのちドラマチック」の解説者として知りました。
 人間に便利なように動物・植物を改良してきた歴史を生物学的視点から眺めるという斬新な企画で、毎回ワクワクしながら拝見しました。

 さて、この本は今を時めく“哲学する分子生物学者”である福岡氏によるエッセイ集です。
 内容もさることながら、一番感心したのはその文章の上手さ。
 主張したいことを無駄なく簡潔明瞭に表すセンスは理系ならではのものでしょうか。

 研究費を稼ぐことにエネルギーを浪費する大学教授の悩みにはじまり、生命活動に関するいろいろな考察が連なります;

・記憶に関する考察
・年を取ると1年が早く感じる脳の錯覚
・学ぶことに関する考察
・骨と食生活の関係
・分子レベルで見た「消化」現象
・科学的なダイエット方法
・食品安全の問題点の探し方
・ES細胞の存在意義
・「種」の違いとは「分子の相補性」
・カニバリズムの問題点
・病原体分析~細菌・ウイルス・プリオン~
・ミトコンドリア・イブ

 等々、さまざまな角度から言及し、最終的な結論として以下の文言を導き出します;
 「生命とは動的な平衡状態にあるシステムである

 そしてその時間軸をねじ曲げる行為(遺伝子組み換えなど)は、システムに馴染まないことを予言しています。
 視点の変化により、物事がこんな風に見えるんだ、と新鮮な驚きを持って読了しました。