逆説反応
精神病院の中には、さらに、個室が数部屋ある。ここは、トイレとベッドしかなく、拘置所より、環境が悪い。テレビもない。患者があばれて物を壊す可能性があるからだ。鉛筆やシャープペンも、禁止の場合がある。尖ったものは、自傷の道具になるからだ。もちろん、自傷の危険が無いと判断されたら、鉛筆は、許可になる。
きれいな個室もあるが、きれいでない個室もある。民間病院は、経営が苦しく、建物を改修する費用がない所が多いからだ。
さて、個室が適応と判断された患者は、重症の患者なのだが、そういう患者には、奇妙な、最悪な事をする場合がたまにあるのだ。トイレの水で顔を洗ったり、自分の便を食べたり、などである。偽善的な事は、あまり言いたくないが、そういう行為は、本当にやりきれない。患者がかわいそうである。しかし、そうする原理は、容易にわかる。これは、何も精神科の患者だけでなく、一般の人でも、ある苦しい状況に置かれたら、起こりうる感情だ。しかし、その原理を書いたものが、見当たらないので、私は、そういう行為を、「逆説反応」と名づけた。これは、そう難しい心理ではない。患者は、してはならない最悪の事をしてしまうのである。これは、精神が追いつめられた時は、落ち着いてものを考えられないから、「してはならない」行為を、「してはならない。してはならない」と、思っている内に、そのタブーが、かえって強迫観念になってしまうのである。患者は、その強迫観念に悩まされつづける。そして、その観念がどんどん強くなって、患者を苦しめるのである。もう、患者は精神的に耐えられなくなってしまう。そこで、「してはならない」ことを、する事によって、精神の苦しみが、解放されるのである。
精神病院の中には、さらに、個室が数部屋ある。ここは、トイレとベッドしかなく、拘置所より、環境が悪い。テレビもない。患者があばれて物を壊す可能性があるからだ。鉛筆やシャープペンも、禁止の場合がある。尖ったものは、自傷の道具になるからだ。もちろん、自傷の危険が無いと判断されたら、鉛筆は、許可になる。
きれいな個室もあるが、きれいでない個室もある。民間病院は、経営が苦しく、建物を改修する費用がない所が多いからだ。
さて、個室が適応と判断された患者は、重症の患者なのだが、そういう患者には、奇妙な、最悪な事をする場合がたまにあるのだ。トイレの水で顔を洗ったり、自分の便を食べたり、などである。偽善的な事は、あまり言いたくないが、そういう行為は、本当にやりきれない。患者がかわいそうである。しかし、そうする原理は、容易にわかる。これは、何も精神科の患者だけでなく、一般の人でも、ある苦しい状況に置かれたら、起こりうる感情だ。しかし、その原理を書いたものが、見当たらないので、私は、そういう行為を、「逆説反応」と名づけた。これは、そう難しい心理ではない。患者は、してはならない最悪の事をしてしまうのである。これは、精神が追いつめられた時は、落ち着いてものを考えられないから、「してはならない」行為を、「してはならない。してはならない」と、思っている内に、そのタブーが、かえって強迫観念になってしまうのである。患者は、その強迫観念に悩まされつづける。そして、その観念がどんどん強くなって、患者を苦しめるのである。もう、患者は精神的に耐えられなくなってしまう。そこで、「してはならない」ことを、する事によって、精神の苦しみが、解放されるのである。