小説家、反ワク医師、空手家、浅野浩二のブログ

小説家、反ワク医師、空手家の浅野浩二が小説、医療、病気、文学論、日常の雑感について書きます。

臨終

2010-01-05 22:13:20 | 医学・病気
臨終
人の死に対する医者の態度で感動したことが一度ある。二年の研修病院でも、人の死は何度も見ている。だが医者の態度に感動したほどの事はない。私が感動したのは研修を終えて130床の地元のオンボロ病院に就職した時である。そこの院長は性格、温順な誠実な先生だった。先生は糖尿病で薬の処方は私がサインした。医者は自分の飲む薬の処方のサインを自分では出来ないのである。
ある時、人の臨終に先生と立ち会った。家族も来ていた。脈が無くなり、呼吸が無くなり、対抗反射が無くなった。先生はそれを確認した後、家族に向かって家族を直視し、黙って深々と一礼した。こう書くと、読む人には何も伝わらないと思う。まず私は、言葉を言わない事に感動した。そして先生の目や表情、その一礼の態度から伝わってくる先生の心に私は感動したのである。人の死において、一番いい言葉は、無言なのかもしれない。
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