古文書に親しむ

古文書の初歩の学習

第十一章 濱着口上書・その四十三

2012年06月25日 07時21分44秒 | 古文書の初歩

 

 

 

濱着口上書第十二ページ、上の画像の五行目六行目

解読 宿舟同道、断出候付直様村役人中

    舟中へ罷越、尚沖間難風始末委細ニ

読み 船宿同道、断り出候に付き、直ぐさま村役人中

    舟中『せんちゅう』へ罷り越し、尚沖間難風始末、委細に

解説 「宿」と「舟」の左に返り点「レ」が見えます。これは漢文の読み方の説明で、下から返って読む印しです。従ってここは「宿舟」ではなく「船宿」と読みます。このケースは単なる書き間違いで、書き直さずに返り点で補正したものと思われます。船宿は現代もありますが、江戸時代の船宿は、入港した船員の宿だけではなく、積み込む食料の世話をしたり、資金を貸したりなど金融業も兼ね信用が有りました。本件の様な遭難事故では、詳しく事情を訊いて、役人への仲立ちもしました。 「同道」・・・「道」は元の形が推定出来ない最も難しい崩し字の一つです。 「断出」の次の点は「候」、「候付」で「候に付き」と読みます。前行と同じ。 「直様」・・・『すぐさま』と読みます。 「村」の次の字は「役人中」。「役」が難解。役人連中。役人一同。 「舟中」・・・『せんちゅう』と読みます。 「罷」は三行目と同じく、アミガシラと「能」が離れているので読みにくい。 「沖間」・・・沖での。沖に於ける。 「難風」・・・船に困難な風。台風。暴風。 「始末」・・・事情。顛末。 「委細に」・・・くわしく。事細かに。


第十一章 濱着口上書・その四十二

2012年06月24日 07時28分18秒 | 古文書の初歩

 

 

 

濱着口上書第十二ページ、上の画像の三行目四行目

解読 右沖間へ罷越、萬端致手配、今廿四日朝

    五つ時過当浦へ漕入候付、右難事之趣

読み 右沖間へ罷り越し万端手配致し、今二十四日朝

    五つ時過ぎ当浦へ漕ぎ入れ候に付き、右難事の趣

解説 文字が細く、且つかすれていて読むのは困難ですが、「右沖間へ」・・・遭難船が辿り着いた沖合いへ。 「罷越」・・・「罷る」は謙譲語、又は接頭語で、この場合は深い意味はありません。遭難船が流れ着いた現場の沖合いへ到着したと言うこと。この文章は荷主への報告の手紙ですから、丁寧な物言いになっています。「罷」の頭の「アミガシラ」と下部の「能」が離れすぎです。 次の「萬端」も読むのは困難です。万端『ばんたん』すべての事柄。 「致手配」・・・下から返って読む。「手配致し」。「致」も難しい。 「朝」・・・前ページでも出ました。形で覚える字。 「五つ時過」・・・午前七時過ぎ。「過」も難しいですが、前ページに出ました。 「当浦」・・・大嶋浦の事。 「漕ぎ入れ」の次の短い縦棒は「候」。 「候付」の場合は、送り仮名は付けませんが、「候に付き」と読みます。 次の「大」に見える字は「右」です。「右」の中の「口」は右下がりの横棒になります。これに対して「左」の中の「エ」は右上がりに書く事が多いようです。 「難事」・・・「事」は縦に長く書いています。下に小さく「之」か見えます。最後は「趣」・・・内容。てんまつ。様子。シケに遭い難破した顛末『てんまつ』。


第十一章 濱着口上書・その四十一

2012年06月23日 07時11分35秒 | 古文書の初歩

 

 

 

 

濱着口上書第十二ページ、上の画像の一行目二行目

解読 上ケ候ニ付、遠見御番所より見受志らせ来り

    漕助ケ舩数十艘差出し、村役人御乗組

読み 上げ候に付き、遠見御番所より見受け知らせ来たり

    漕ぎ助け船数十艘差し出し、村役人御乗り組み

解説 (印しを)「上ケ」の次の点は「候」です。 「遠見御番所」・・・異国船往来が多くなり、紀州藩でも海岸の高台に見張り所を設置しました。遠めがねを使用して監視。遠見御番所と言います。藩の役人ですから、「御」とつけています。「遠」と言う字は考えても分かりません。形で覚える字です。 「御番所」も難しい。 「より」は合成字。 「見受」・・・『見つけ』、「受」も難解です。 「志らせ」・・・「志」は変体仮名の「し」。遠見番所より村の役人へ「知らせ」が入ったと言う事。 航行が出来なくなった大きな船ですから、漕いで曳航する舟が数十艘必要でした。この地方は沿岸捕鯨業が盛んで、捕獲した鯨を運ぶ持双船『モッソウブネ』のような強力・高速の漕ぎ舟もありました。捕鯨用の舟が、難破船救難用にも使われたと言うことです。 「村役人御乗組」或いは「村役人も乗組」。「御」は「も」と読む事もできます。


第十一章 濱着口上書・その四十

2012年06月22日 07時47分06秒 | 古文書の初歩

 

 

 

 

濱着口上書第十一ページ、上の画像の最終行

解読 未明ニ當浦近く相成り候由ニ而、色々招印を

読み (朝)未明に当浦近く相成り候由にて、色々招き印しを

解説 「未明」・・・『みめい』夜がまだすっかり明け切らない時刻。「明」が読みにくいですが、「未」から長く伸びているので紛らわしいのです。 「當浦近く」・・・「当浦」とは大嶋浦の事。「近く」・・・前行にも出ましたのでもう分かりますね。 「相成り候由ニ而」・・・相成り候よしにて。 「招印を」・・・「招きしるしを」。相手を呼ぶ合図の旗。救難の印しの旗。


第十一章 濱着口上書・その三十九

2012年06月21日 07時20分38秒 | 古文書の初歩

 

 

濱着口上書、第十一ページ、上の画像の五行目六行目

解読 いたし度相働候内、登り汐早く廿三日

    夜半過樫野崎近く流来り、同廿四日朝

読み いたし度相働き候内、登り汐早く二十三日  

    夜半過ぎ樫野崎近く流れ来たり、同二十四日朝

解説 「以多し度」・・・致したく。「以」は「い」。「多」は「た」の変体仮名。「度」は消えていますが、文意から推定します。 「働」の次の点は「候」。 「登り汐」・・・東から西へ流れる潮流。「登り」は何度も出ました。形で覚える字。 「廿三日」は一行目の最後と同じです。 「夜半過」・・・「夜」はともかく「半」はかすれています。「過」も難しい。形で覚える。 「樫野崎」・・・「樫」はともかく「野」は判読困難です。現串本町大島東端の一集落で、日本最古の石造り灯台が有ります。明治二十三年九月トルコ軍艦エルツールル号が樫野崎近くで沈没した史実が有ります。 「近く」・・・形で覚える字。 次は書き間違えて、文字の上からなぞっていて読めたものではありません。「流来り同」と読みます。 最後は「朝」これも形で覚える字です。