濱着口上書第十二ページ、上の画像の五行目六行目
解読 宿舟同道、断出候付直様村役人中
舟中へ罷越、尚沖間難風始末委細ニ
読み 船宿同道、断り出候に付き、直ぐさま村役人中
舟中『せんちゅう』へ罷り越し、尚沖間難風始末、委細に
解説 「宿」と「舟」の左に返り点「レ」が見えます。これは漢文の読み方の説明で、下から返って読む印しです。従ってここは「宿舟」ではなく「船宿」と読みます。このケースは単なる書き間違いで、書き直さずに返り点で補正したものと思われます。船宿は現代もありますが、江戸時代の船宿は、入港した船員の宿だけではなく、積み込む食料の世話をしたり、資金を貸したりなど金融業も兼ね信用が有りました。本件の様な遭難事故では、詳しく事情を訊いて、役人への仲立ちもしました。 「同道」・・・「道」は元の形が推定出来ない最も難しい崩し字の一つです。 「断出」の次の点は「候」、「候付」で「候に付き」と読みます。前行と同じ。 「直様」・・・『すぐさま』と読みます。 「村」の次の字は「役人中」。「役」が難解。役人連中。役人一同。 「舟中」・・・『せんちゅう』と読みます。 「罷」は三行目と同じく、アミガシラと「能」が離れているので読みにくい。 「沖間」・・・沖での。沖に於ける。 「難風」・・・船に困難な風。台風。暴風。 「始末」・・・事情。顛末。 「委細に」・・・くわしく。事細かに。