馬場あき子の外国詠58(2012年11月実施)
【ラインのビール】『世紀』(2001年刊)213頁
参加者:K・I、崎尾廣子、曽我亮子、藤本満須子(紙上参加)、T・H、渡部慧子、鹿取未放
レポーター:渡部 慧子 司会とまとめ:鹿取 未放
419 ゆきてかへる心こひしき夕暮の半歌仙速しドイツの秋を
(レポート)
旅の地は「ドイツ」そして「秋」そこで「半歌仙」を巻いた。歌仙は懐紙を折りたたんでしたためてゆくのが元々の起こりで、旅やある場での即興にふさわしい座の遊び(文芸)であった。36句の形式を半分の18句に収めるのだから「半歌仙速し」となろう。下の句から読み始めたが、上の句「ゆきてかへる心こひしき夕暮の」とは下の句の為の序詞の働きをしていよう。「半歌仙」が速く終わってしまったそのはかない感じへみちびくべく、上の句から下の句への流れである。と言葉から受けるイメージによって上の句を解したのだがどうであろう。(慧子)
(当日意見)
★いつも外国旅行すると終わりの方で半歌仙をやるんです。ただ時間が無くてあわただしい。でも
現地でやるのは気分が高揚しているから面白いんです。(鹿取)
★「ゆきてかへる心こひしき」が分からない。里心がついたことか。(T・H)
★日本からやって来て帰ってゆく、そういういっときのはかない気分を愛しんでいるのでしょう。
(鹿取)
(まとめ)
「読者と行く吟行の旅」であるから、作者は旅の終盤に講師として半歌仙のとりまとめをする。旅の途上だから正式ではなく、月の座、花の座、ここは恋を詠むなど簡単な決まりを設けて行う。36句続ける時間は無いので半分の18句ですませるのだが、旅の終わりに巻く半歌仙の慌ただしさとはかなさ、速く終わるのが惜しい気分を詠んでいる。(鹿取)