ブログ版馬場あき子の外国詠1(2010年12月実施)
【白馬江】『南島』(1991年刊)74頁~
参加者:K・I、N・I、佐々木実之、崎尾廣子、曽我亮子、藤本満須子、
T・H、渡部慧子、鹿取未放
レポーター:渡部慧子 司会と記録:鹿取未放
日本書紀では白村江(はくすきのえ)。天智二年秋八月、日本出兵して
ここに大敗したことを太平洋戦争のさなか歴史の時間に教
へた教師があつた。その記憶が鮮明に甦つてきた。
258 たゆたひの心しばしば暗かりし韓国に来つズックを履きて
(レポート)
どのようなたゆたいなのだろう。日本と韓国の中世から近世へつづくながい確執を思うと作者の生きてきた時間の中に暗く立ち上がる罪意識に似た思いがあったというようなものであろうか。そんな思いを抱かせる韓国にこの度は「ズックを履きて」やってきたのだ。上の句の暗い心とは反対に下の句は旅にふさわしい軽装を言い、一首に明暗を織り込んでいるのだが、「ズックを履きて」暗くなりがちの心を引き立てているのかもしれない。(慧子)
(当日意見)
★負い目があってのたゆたい。(曽我)
★そうですね、日本人として負い目があるから韓国の旅をしようかしまいか、たゆたいがあった
が、ようやく決心して旅に出てきた。謝罪の気持ちを表すなら正装すべきかもしれないが、旅の
移動に楽なようにズックを履いてきた。ますます韓国には申し訳ないような気がする。「ズック
を履きて」の卑近な例示がリアルだ。「日本と韓国の中世から近世へつづくながい確執」とレポ
ートにありますが、そこは違います。白村江の戦いは古代ですし、明治から続いた韓国併合、戦
争中の諸々など20世紀も21世紀も大きな問題を抱えて、今なお確執は続いています。(鹿取)