かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 1の52

2020-07-23 19:19:28 | 短歌の鑑賞
  ブログ版渡辺松男研究⑥(13年6月) 『寒気氾濫』(1997年)橋として
       参加者:崎尾廣子、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
        司会と記録  鹿取未放
                   

52 まなうらに日照雨(そばえ)降らせておりたれど核廃棄物輸送船過ぐ

 ★単純にいいますけど、日照雨が降るように核廃棄物輸送船がいとも軽やかに過
  ぎていく、という歌かなあ。文明批評の歌と読んだ。(慧子)
 ★「まなうらに」というところはどうですか?ここでは日照雨が降っているので
  はなく、まなうらに日照雨を降らせているとありますが。それから慧子さんの
  解釈だと順接ですが、この歌は「おりたれど」だから逆接ですね。(鹿取)
 ★すみません、分かりません。(慧子)
 ★外に日照雨が降っていて、それを見ていて目を閉じたからまなうらにその残像
  が残っている、とも考えられますが。でも実際には降っていないけど、まなう
  らにだけ降らせているのかも知れないし。日照雨ってお日様が照っているのに
  降っている雨のことかと思っていたら、辞書にはあるところだけ降っている雨
  って出ていました。下の句の核廃棄物輸送船はいろんな人が歌にしていて、私
  も歌ったけど、たぶん目撃して作っている人は少なくて、そういうものが航
   行していることはみんな情報として知っているので、それで作っているのじゃ
  ないか。まなうらに優しげで明るい日照雨を思い浮かべていたけれど、次の瞬
  間そこを核廃棄物輸送船が通っていったよ、つまり核廃棄物輸送船が過ぎてい
  くのもまなうら。だからどうなんだと言われると困るけど、穏やかな日常の中
  に忍び寄る生の脅威かな、でもそう言葉で解釈したら全然つまらない。
   核廃棄物輸送船というのは、だいたいって5000トンくらいの小さくて地
  味な船だそうです。核廃棄物をガラス固化体ってよく分からないけど、そうい
  う状態にして輸送するらしい。接岸している港を見にいったら別だけど、それ
  は一般には知らされないから無理だし、海峡などを通過していく場合もすれ違
  っても、あそこに核廃棄物輸送船が通っていくよって分からないんじゃないか
  な。(鹿取)

コメント
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