かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 82

2023-07-27 17:35:08 | 短歌の鑑賞
 2023年版渡辺松男研究⑩(13年11月)まとめ 
    【からーん】『寒気氾濫』(1997年)36頁~
    参加者:崎尾廣子、鈴木良明(紙上参加)曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
    レポーター:渡部慧子
    司会と記録及びまとめ:鹿取 未放

 
82 ひとを待つあいだは紅葉見あげては皮裏(ひり)のくれない濃くしてゆけり

       (レポート)
 「皮裏(ひり)」がいかにも身体的なので「くれない」に血液を思い、それから想念を連想する。「ひとを待つあいだ」の身体的ドラマが感じられ味わいに深みが生まれる。 (慧子)


       (当日発言)
★早く会いたいとか、だんだんこころが濃くなっていく感じかな。(曽我)
★「皮裏(ひり)」にすごく作者の思いがあるんでしょう。紅葉の赤い色が待つ心を育て
 ていく。そして人を思う思いも熱くなっていく。(崎尾)
★この歌の内容そのものは分かりやすい恋の歌ですよね。皮裏は造語かと思ってい
 たが辞書に「皮膚の内側、転じて心」と載っています。紅葉を見上げてその色の
 反映のように皮膚の内側から紅くなっていく、はにかんだ男の人の気分というも
 のがよく出ている。心という意味もあるというから、崎尾さんのように待ちなが
 らドキドキしていく純情なイメージ。(鹿取)

コメント
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