かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

馬場あき子の外国詠 330

2024-12-02 16:49:44 | 短歌の鑑賞
  2024年度版 馬場あき子の外国詠45(2011年11月実施)
      【氷河鉄道で行く】『太鼓の空間』(2008年刊)164頁
       参加者:K・I、N・I、泉可奈、崎尾廣子、曽我亮子、
          藤本満須子、渡部慧子、鹿取未放
       レポーター:N・I 司会とまとめ:鹿取 未放
   

330 上り上りつひに立つなるつるつるの氷河胎内の薄蒼き闇

    (まとめ)(2016年11月改訂)
 329番歌(人間が考へることとつぴでもなくて氷河の胎内にゐる)でも見たように、ユングフラウ鉄道の終点は、高度3454メートルのユングフラウヨッホ(ユングフラウの「肩」の意)駅。麓から9.3キロを50分ほどで到達するそうだ。始発のクライネ・シャイデック駅からの標高差は1393mで「上り上り」とあるが傾斜はきつく、日本の鉄道の最大の急勾配のさらに3倍ほどのきつい勾配もあるという。この駅は山の中に穿たれたトンネルの中にあるが、その先には329番歌で見た「氷の宮殿」があり、そこを歩いている場面かもしれない。ネットの旅行記の写真をいろいろ眺めているのだが、なるほどトンネル状の「氷の宮殿」は床も天井も左右も全て氷である。天井は低く写真だとせいぜい2メートルくらいに見える。全体に窮屈な印象で、それが胎内の感覚に繋がるのかもしれない。全て氷だからつるつるとよく滑る。「つひに」と「つるつる」の「つ」の音が響き合って、氷の危うさが感覚的に伝わってくる。ネットの写真類もこの氷のトンネルはうすあおく写っている。その薄蒼さを「闇」に冠したところが「胎内」にふさわしい。(鹿取)

コメント
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