2024年度版 馬場あき子の外国詠46(2011年12月実施)
【氷河鉄道で行く】『太鼓の空間』(2008年刊)167頁~
参加者:K・I、N・I、鹿取未放、崎尾廣子、曽我亮子、
たみ、藤本満須子、渡部慧
335 氷河渉るマンモスの足の重さもて佇めば襲ひくる白きアイガー
(まとめ)
「マンモスの足の重さもて」は、標高が高い為に体が動かしづらく、足も重く感じられたのだろう。そこを、歌で詩的に飛躍させている。マンモスは氷河時代に棲息していた哺乳動物だが、作者は獲物を求めて氷河をさまよう巨大なマンモスを思っている。空想しているうちに、餓えて氷河をわたりながら重い足を一時休めて佇むマンモスに作者がなりきってしまったのだ。その時、アイガーが「襲ひくる」のは、獣の本能的な実感であろう。「白き」という何でもない形容が、ここでは山の魔の恐ろしさをあますなく伝えている。ちなみにアイガーは標高3,970メートルで、切り立った峻険な北壁を持つ。(鹿取)
(レポート)
この歌は自身をマンモスに重ねてアイガーと向き合った歌なのであろうか。結句の「白き」は初句ののびやかさ、3句から4句の重々しさを跳ね返しアイガーを屹立させていると思う。シャープなシルエットが特色であるアイガーをそしてその高さをこのようなスケールの大きいユニークな表現で1首としたのであろう。(崎尾)
(当日意見)
★疲れ果てて作者は自分の足がマンモスの足のように感じられた。(N・I)
★作者は疲れてはいないが、自意識を出された。(慧子)
★雪崩が押し寄せて押しつぶされたマンモスが化石化している山。作
者はマンモスと一体化している。前半字余りでずっと続く部分(氷
河渉るマンモスの足の重さもて~佇めば)には、足を引きずり引き
ずり息もたえだえにやっと登ってきた様子がよく伝わってくる。富
士登山をしたときのこと思い出しました。(たみ)