かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

馬場あき子の外国詠 124(ネパール)

2019-12-12 21:08:03 | 短歌の鑑賞


馬場一行が旅したジョムソン。ピンクの○印が泊まったマウンテンリゾートホテルの位置。


   
       
   ホテルの正面に見えたニルギリ。インスタントカメラの画像をコピーしているので不鮮明ですみません。


  馬場あき子の外国詠15(2009年1月実施)
    【ニルギリ】『ゆふがほの家』(2006年刊)81頁~  
     参加者:K・I、N・I、T・K、T・S、N・T、
         藤本満須子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:渡部慧子 司会とまとめ:鹿取 未放
                    

ネパールのアッパームスタンに「こしひかり」を実らせた
  近藤亨翁をたずねてジョムソンに行った。
(この詞書のような2行は、「ニルギリ」の章全般に掛かる。鹿取注)


124 未踏峰ニルギリに対かひ化粧(けはひ)する水のごと冷たき朝のひかりに

             (レポート)
 「未踏峰ニルギリ」をのぞむ宿の一室に朝のひかりが差し込んでいる。この聖域をおかすごとく「化粧する」のであろうか。いやいや、その朝も常のごとであろう。「未踏峰ニルギリに対かひ」一人の女性が朝の身支度をしている。(慧子)


         (まとめ)
 ネパールは北海道の2倍弱の狭い国である。人口は日本の2649万。平均寿命は61歳。識字率は66%。世界でもいちばん貧しい国の一つである。首都のカトマンズは奄美大島と同じくらいの緯度で亜熱帯に属するが、馬場が訪れたジョムソンは標高2700メートル、年間降雨量200㎜の乾燥地帯で、川のほかは瓦礫の大地と隆起した岩山があるばかり、年中強風が吹いている。アッパームスタンとは、ムスタンを南北で分けた北半分の名称で、南半分をアンダームスタンと呼ぶ。ジョムソンはアンダームスタンの中心地。馬場はカトマンズから飛行機を乗り継いでジョムソンに入ったが、飛行機だとカトマンズから中継地ポカラまでは35分、ポカラからジョムソンまでは20分で着く。土地の人はポカラからジョムソンまで2日かけて歩くそうだ。
 馬場あき子一行(私もそのひとり)が訪れたのは2003年の11月初旬だが、統計ではジョムソンの11月の平均気温最高は14.3度、最低は1.2度。東京は16.7度と9.5度。ただし日中は日差しが強いせいか体感ではジョムソンの方がずっと暖かく感じた。しかし夜は冷えた。四つ星のホテルだったがシャワーはぬるいお湯が少量出ただけ、ユタンポが配られた。夜中の戸外はどのくらいの気温だったのか、あるだけのセーターを重ね着した上ダウンジャケットをはおってもまだまだ寒かった。
 そんな地で近藤亨氏は、NPO法人ネパール・ムスタン地域開発協会を設立、ジョムソンで果樹園や魚の養殖場を作り、農業指導に当たっていた。「こしひかり」を実らせたアッパームスタンは更に高い所に位置する。標高3600メートルのガミ村にも農場があって、ジョムソンからガミまでは更に馬で2日かかるという。
 この歌は崇高な「未踏峰ニルギリ」と対峙するかのように、あるいはその崇高さの恵みを受けるかのように、旅人の〈われ〉が化粧する姿を描いている。朝のひかりを水に例えているが、おそらく時刻は早朝だったのだろう。冷たく清冽な水のようなひかりの中で化粧する心震える喜びがある。ちなみにニルギリ山は標高7061メートル。ネパール、ジョムソン等のデータはwikipediaから抜粋。また、近藤亨氏は2016年にお亡くなりになった。(鹿取)


            
             
                   近藤亨氏死去の報道



  



             

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