かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『泡宇宙の蛙』の一首鑑賞 39

2022-04-01 12:43:58 | 短歌の鑑賞
  渡辺松男研究2の6(2017年11月実施)『泡宇宙の蛙』(1999年)
    【夢監視人】P32~
     参加者:泉真帆、T・S、曽我亮子、渡部慧子、A・Y、鹿取未放
     レポーター:泉 真帆    司会と記録:鹿取未放
     

39 夢監視人われすこしまだ若ければ星尾峠の名に引かれ来し

         (レポート)
 歌に詠まれている「星尾峠」は群馬と長野の県境にある。作者はこの名に魅せられ、また、名にある星の引力にひかれるように心滾らせ峠に来てしまった。もう青年ではないが夢を実現したいと渇望する若さが心にのこっていた。そう気づいた瞬間、自分はもう夢をおいかける当人ではなく、夢をえがく心を監視するだけの大人になってしまっていたのだと気づいたのではないか。(真帆)


        (当日発言)
★真帆さんのレポートに賛成ですが。自分は若さが残っているので無謀なところがあってそれを監
 視しなければならないというふうに取りました。この歌は「夢監視人」をどう読むかに掛かって
 いる歌ですよね。(慧子)
★慧子さんは、まだ自分の中に少し夢が残っていて、それがなくならないように監視している監視
 人が自分であるというように解釈されましたが、そうなのかと腑に落ちました。(真帆)
★自分の夢を監視するということがよく分からないのです。しかし、結句はなにか反語的ですよね。
 星尾峠はネットで調べましたが名前はロマンチックだけど寂しい所ですよね。(A・Y)
★いや、結句は別に反語的でないですね。「夢監視人」というのは造語ですよね。そして寝てみる
 を監視しているのではなく自分の抱負を監視しているのだというのが真帆さんと慧子さんの解釈
 でした。〈われ〉はまだ少し若くて全ての夢を捨てたり失ったりしている訳ではないので、星尾
 峠というロマンチックな名前に惹かれてやってきたよというのですね。平たく解釈すると青春の
 名残を惜しんでいる歌でしょうか。星尾峠の標高は1270mくらい、開けた尾根のイメージで
 すが、見晴らしは悪いそうです。 (鹿取)


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