かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『泡宇宙の蛙』の一首鑑賞 212

2022-12-17 10:43:44 | 短歌の鑑賞
   2022年度用 渡辺松男研究2の28(2019年10月実施)
     Ⅳ〈水〉『泡宇宙の蛙』(1999年)P138~
     参加者:泉真帆、岡東和子、A・K、菅原あつ子(紙上参加)、鹿取未放
     レポーター:岡東和子    司会と記録:鹿取未放


212 水にわが夢うばわれてゆくならん眼のなかにある水がふくらむ

       (レポート)
 水に自分の夢がうばわれてゆくようだ。眼のなかにある水がふくらむ。作者は自分の夢が、水にうばわれてゆくのを客観的に見ている。そして夢を奪われた悲しみに、涙が眼いつぱいにふくらんでいるのだろう。(岡東)


       (紙上参加意見)
 この水は何だろう。眼の中にあるのは涙か?とすると、涙のもとになる、悲しみや情のことか。他者とのかかわりの中で、情に絡まれて自分の夢をかなえられなくなってしまうことをいっているのか。(菅原)


         (当日発言)
★下の句は意味的には分かる気がするけど、上の句は分からない。この夢が眠っている
 時に見る夢だとすると眼球の中にある水分でざーと流されてゆくような感じ。でも、
 作者がどういう感じでうたったのか分かりません。絶望とか言っちゃうと全然面白く
 ないし。(真帆)
★初句の「水」と、「眼のなかにある水」は同じものなのですか?違うんですか?
   (鹿取)
★そうそう、それが問題。(A・K)
★同じものだとしたら、「眼のなかにある水」は普通は涙だから膨らんだら涙としてこ
 ぼれる。すると自分には夢があるけれども情に絡め取られて夢を貫くことができな
 い、そんな通俗的な解釈になってしまって、それじゃあ嫌だし。(鹿取)
★菅原さんもそういうことを書いていますよね。渡辺さんって天才的な歌を詠むときと
 とっても通俗的な歌を詠むときがあるような気がする。(A・K)
★この一連の冒頭からの「水」のうたい方を考えると、ここはもっと抽象的な水なので
 しょうね。きっと違う解釈なのでしょう。(鹿取)

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