かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺『』『泡宇宙の蛙』の一首鑑賞 19

2022-03-12 10:52:05 | 短歌の鑑賞
  渡辺松男研究2の3(2017年8月実施)『泡宇宙の蛙』(1999年)
    【四葉鵯】P19~
     参加者:泉真帆、T・S、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
   レポーター:渡部慧子    司会と記録:鹿取未放


19 静止せる蒼き山々見わたせば死にてゆたかになれる山々

      (レポート)
 「静止せる蒼き」とは「山々」を指すのに当然すぎるが、四句「死にて」とあるので、あらかじめ死を暗示する詠い起こしだと思う。では、どのような死を暗示しているのか、やはり山そのもののように蒼き透明性、神秘性も含めてゆたかになれる状態であろう。作者の死についての想念の中に、悠然があり、蒼き山々と重なっているのだろう。(慧子) 


       (当日発言)
★「死にてゆたかになれる」って山が主語なのよね。(鹿取)
★山のことを詠っているけど人のことでもある。人も死んでそんなに悲惨な状態ではない。(慧子)
★私はよく分からないのですが、「死にてゆたかになれる」って具体的には山のどういうことを言
 っているのでしょう?(鹿取)
★この蒼を使っているのは山が遠くにあって透明な感じの時。迫ってくる山ではなくなだらかに
  あるのをゆたかさと言っているのではないでしょうか。(慧子)
★山頂から遠くの山を見渡していると蒼く連なった山々が見渡せますね。それを「静止せる蒼き
 山々」と言っているとして、それがなぜ「死にてゆたかになれる」山々なのか、まだ分からないの
 ですが。なにか本質的なことを言っているとは思うのですが。(鹿取)
★私は活火山と死火山のことかなと思いました。活火山だとマグマが流れ出したりするけど死火山
 なので活動が静止して周りに樹が生えて豊かになった。(真帆)
★なるほどね、すごく合理的な解釈ですね。でも、この歌ではどうも違うような。また、慧子さん
 のように、この歌が人のことでもあるとも思いません。とはいえ、山が死ぬってどういうことか、
 ごめんなさい、よくわかりません。(鹿取)


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