かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 352

2021-11-05 17:19:32 | 短歌の鑑賞
  渡辺松男研究42(2016年9月実施)『寒気氾濫』(1997年)
    【明快なる樹々】P143~
     参加者:M・S、鈴木良明、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:鈴木 良明     司会と記録:鹿取 未放


352 樹のどんなおもいが春を呼ぶのかとけやきの幹に耳押しあてる

      (レポート)  
 樹を擬人化して、樹のおもいを探ろうとしている。葉が茂ってくれば、そのそよぎの中に樹のお
もいを聞くことも可能だろうが、小枝や風がごまかすこともあるし、そもそもその季節ではない。勢い本音を訊こうとして「けやきの幹に耳押しあてる」のである。また、現象的には、樹が「春を呼ぶ」のではなく、春が巡ってきたので、樹は自ずからそれに反応するわけなのだが、自然から遊離した人間から見れば、自然そのものである樹が「春を呼ぶ」ように思えるのである。(鈴木)


    (当日意見)
★樹に耳があるとか眼があるとか歌った例はありますけど、この歌甘くなっていなくていいと思い
 ます。(慧子)
★樹が水を吸い上げる音が聞こえると聞いたことがありますが、何か樹の思いが聞こえるような音
 があって、この樹と定めて聞く人がいるそうですね。(M・S)
★樹に耳を押し当てて聞いてくああ春が来たんだなと思う歌はけっこうありますね。これは逆に樹
 の思いに主眼があって、それが面白い。(鹿取)

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