飛行機を降りたところだったろうか、背景が18人乗りの小型機。
左が私で右がネパールの医師の方、日本に長く留学されていたそうで、「小さな飛行機は怖いですか?」と日本語で声を掛けられた。左右どちらに座ればより雪山を堪能できるか教えてもらった。
カーテンで仕切られた小型機の操縦室、客席は左右一人ずつ。
ジョムソン飛行場からホテルに行く途中に見た飛行場
馬場あき子一行は二十数名だったので、二機の飛行機に分乗した。載る前にグループ毎に記念撮影、
誰も口に出さなかったけれど、これでどちらかが墜落したらお別れという悲愴な気分だった。
8000m級の山を縫って飛ぶこの山岳飛行はそのくらい危険らしい。
写真追加版 馬場の外国詠19 (2009年7月)
【ムスタン】『ゆふがほの家』(2006年刊)91頁~
参加者:泉可奈、T・S、T・H、渡部慧子、鹿取未放
レポーター:渡部 慧子 司会とまとめ:鹿取 未放
153 眼前にダウラギリ屹(た)つ腰のほどわが小型機は唸りよぎれり
(レポート)
小型機に乗りすすんでいくのだが、そびえている「ダウラギリ」のちょうど「腰のほど」とでもいうあたりにさしかかる。壮大な山容を背景に「小型機は唸りよぎれり」とは、蠅か何か昆虫の生のひたすらさが連想される。小さな存在の人間とその営為の所産が八千メートル級にして迫力あるダウラギリの前をよぎっている。ダウラギリはⅠ峰からⅣ峰まであり、1900年に日本の仏教学者河口慧海は「泰然として安産せる如く聳えて居る高雪峰は是ぞ、ドーラギリ」と記している。また、イエティー(雪男)の棲む山として日本から探索隊を出すなどしている。(慧子)
(当日意見)
★「中腹」とかいわず、「腰のほど」といったところがイメージしやすくてよい。(泉)
★聳え立つダウラギリの腰のほどを小型機で唸りながら行く心弾み、爽快さを言っているように思
われる。(鹿取)
(まとめ)
この心弾みからするとポカラからジョムソンに初めて飛んだ行きの飛行機だろうか。18人乗りの小型機で、操縦席と客席はカーテンの仕切りだけだが、カーテンは開けてあった。ポカラの町からも見えていたマチャプチャレ6993mを右に見ながら飛び、まもなくアンナプルナ8091mが右手に見える。山と山のわずかな谷を飛行するので、これらの高峰が手に取るような迫力で迫ってくる。やがて左手にダウラギリ8167mが近づき、いかにもその腰のあたりをかすめて飛ぶのだ。「唸り」の部分も実感がある。
ちなみにダウラギリはサンスクリット語で「白い山」を意味し、その高さは世界第7位。3日間宿泊した「ジョムソン・マウンテンリゾート」の正面に聳えていた処女峰7061mのニルギリは「青い山」の意だが、雪を被って白かった。そして、一方カリガンダキ河以外は砂礫の風景の出口に、ダウラギリが白い屏風のような偉容を毎日見せていた。(鹿取)
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