かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 404

2025-02-15 10:50:06 | 短歌の鑑賞

 2025年度版 渡辺松男研究48(2017年4月実施)
     『寒気氾濫』(1997年)
     【睫はうごく】P160~
      参加者:T・S、A・Y、渡部慧子、鹿取未放
              レポーター:渡部 慧子     司会と記録:鹿取 未放          


 404 はろばろと雪渓は見えまぶしすぎるひかりのなかに睫はうごく

              (レポート)
 詠いおこしの「はろばろ」から全体の流れがきれいで作者の気分の壮大さと結句の細やかさまで表現され、その間のつなぎ「まぶしすぎるひかり」もよく効いている。とおく見えている雪渓から「睫はうごく」の結句まで景がみごとにひきしぼられ、ひかりの美しさもよく感じられる。(慧子)


              (当日発言)
★雪渓がきれいですね、それと睫っていわれたときにやっぱり黒々としたきれいな睫が浮かんで、相手も雪渓を眺めているのでしょうか、睫を揃えて瞬きをする、美しいって書いてないけど清楚で美しい顔が浮かびます。遠景と近景、雪渓の白と睫の黒、そしてまぶしすぎるひかり、コントラストが美しいですね。(鹿取)
★この「睫はうごく」は、歌からすると本人だと思うのですが。(慧子)
★遠い雪渓を女性は見ている、そして作者はその女性の睫を見ている。(T・S)
★そうですね、雪渓を見ている主体は〈われ〉、睫を見ているのも〈われ〉。この一連の題はこの歌からとられた「睫はうごく」。この「睫はうごく」30首で松男さんは1995年に「歌壇賞」を受賞されています。だから、この辺りは作者の思い入れの濃い作品なのでしょうね。(鹿取)


               (後日意見)
 「睫はうごく」一連で歌壇賞を受賞した松男さんが受賞の知らせが届いた時のことをことばで、次のように書いている。


      …つまり受賞の知らせです。「しかし」待てよ、きっと誰かの悪戯だろう。

  そうだ、応募歌の内容に僻んだ妻に違いない。…


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