かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 100

2020-09-19 15:49:24 | 短歌の鑑賞
   渡辺松男研究11(2014年1月)
       【『精神現象学』】『寒気氾濫』(一九九七年)四〇頁~
       参加者:崎尾廣子、鈴木良明、渡部慧子、鹿取未放
        レポーター:鈴木良明 司会と記録:鹿取 未放


100 捨てられし自動車が野に錆びていて地球時間に浸りていたり

        (レポート)
 錆びるという現象は、水や酸素が豊富にある地球の現象であることを改めて思わせる。そればかりではなく、「地球時間に浸りていたり」と詠むことで、地球という時空のなかに捨てられ、錆びてゆく自動車の存在がくっきりと浮かびあがってくるのだ。また、地球時間の外側にある宇宙時間のことなどをも想像させ、思いは広がってゆく。捨てられて野積みになった自動車は、昔、裕福なアメリカの象徴であったが、そのような、声高ではない静かな文明批評としても読むことができる。(鈴木)

         (発言)
★人間の手から離れて日常とは違った、スケールの大きな地球時間に投げ出されて錆び
 てゆく自動車って、言われてみればよく分かります。(鹿取)
★言葉が正確、的確。核心ついて。普通は地球時間なんって言えないけど。(鈴木)
★「猿の惑星」て映画の自由の女神をちょっと思いましたが、あの映画には「地球時間」
 という言葉と概念が使われていたので、渡辺さん、知っていて使ったかもしれないで
 すね。一連を考えると、地球時間に浸る棄てられた自動車って、人間が滅びた後の風
 景のようでもあります。意馬心猿の心が作ったみなとみらいの超高層ビル、赤城山か
 ら双眼鏡で見る霜柱のような新宿のビル、みんな人間が滅びても地球時間に浸り続け
 るんでしょうね。そう考えると目の前の現実をリアリズムで歌っているようで、実は怖
 い歌ですね。(鹿取)


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