国は、弁護士の需要の増加を見越し、弁護士を大幅に増やす必要があると判断し、法科大学院制度を作り、各地の大学に法科大学院が開校した。しかし、弁護士の需要は伸びず、また、司法試験の合格者も、当初は卒業生の7、8割の合格を見越したが、合格者の人数は従来とそれほど変わらず、卒業生の2,3割程度に留まっていた。それはそうだろう。司法試験合格者をたくさん出していた大学の法科大学院には、力のあって実務に詳しい教授陣を確保できるが、法学部と銘打っていても司法試験合格者が非常に少ない大学で、教授陣も押して知るべしだろう。とどのつまりは、法科大学院を出なくても、予備試験に合格すれば、司法試験を受られるという制度が加えられ、ますます法科大学院の人気は下降したという。定員割れの大学院が続出し、法科大学院をやめた大学や募集を停止した大学が増えているという。
これはまさしく政府の法曹界の需要見通しの誤りから起こったことらしい。しかし、こうした制度の失敗には、法科大学院を卒業したが、弁護士にもなれなかったり、弁護士にはなったが、仕事にありつけない人がたくさんいるわけだ。言わば、政府のずさんな需要見通しの誤りで、被害をこうむった人がたくさんいるということだ。この責任はいったい誰が、どうやって取るというのだろうか?
安倍首相は、獣医師会の反対を押し切って獣医学部を新設するという。それも、定員160人という大きな学部だ。安倍首相は岩盤規制を打破するというが、それで、獣医師の需要供給のバランスは大きく崩れ、獣医師になっても仕事に就けないという人も生まれてくるし、新設の獣医学部を卒業したが、獣医師試験に合格できないということも増えてくるだろう。試験に合格できないのは個人の問題と行ってしまえばそれまでだが、それではあまりにも無責任というものではないだろうか?法科大学院構想の失敗を失敗と認めていないから、今度の獣医学部の新設のような問題が生じてくるわけだ。もっと失敗を失敗として真摯に受け止め反省し、正していく姿勢が欲しいもんだ。