
昨年3月に機関車留置機能を廃止した旧東京機関区は今月に入るとその姿を消し、今は、完全な更地となってしまいました。私の趣味の原点でもあるし、また憧れだった東京機関区の姿が消えてしまう事は時代の流れを感じずにはいられません。更に気がつけば旧品川客車区の検修庫もその姿を見ることが出来なくなってしまいました。分割されずに全国一社制の国鉄が残って、自動車社会の中で厳しいながらも長距離旅客輸送を続けていれば、東京機関区も品川客車区も縮小はされたものの残っていたのではないかと思ってしまいます。
改めてこの工事の説明をしますと旧東京機関区・旧品川客車区を迂回する形の線形になっていた東海道下線を田町(札の辻)から品川駅まで直線で結び、そこで生まれた土地を再開発してオフィス街に使用というものです。
その工事の一環とて品川駅東海道線第六(11番線・12番線)ホームの工事がまもなく始まります。ホームの工事要点はホーム自体を大阪寄りに移動させ混雑緩和を図る事と東京よりで大きくカーブしていたのを線形改良によりほぼ直線にするという工事です。そしてその工事に支障があるとの理由で長年親しんだ東海道線下りホームの立食ソバ屋が閉鎖されると事になりました。
このソバ屋には私自身30年前の思い出があります。それはまだ社会人になって間もない頃の事です。いろいろなおとなの遊びを知り始めると新入社員の手取9万円の賃金では十分なはずはなく、賃金支払日前になると100円玉がいくつあるか数えて昼休みを迎えたものでした。そんな時にお世話になったのが東海道線下りホームにあった立食ソバ屋のメニューのひとつにあった”品川丼”でした。品川丼とは蕎麦に乗せるかき揚げを白ご飯の上に乗せた丼です。味噌汁代わりに何も入っていない蕎麦汁が出て、蕎麦汁にはカウンターに出ている揚げやワカメあるいはネギなど数十種類の具を好きなだけ盛れる物でした。20歳前後の食欲ですので丼一杯を食べても空腹感を満たすわけもなく、蕎麦汁に溢れんばかりに具を乗せて口にほうばったものでした。
しかしこの品川丼を食べた後には必ずと言っていいほど胃モタレが襲ってくるのが常でした。なんといっても口でいくら噛んでも、噛んでも噛み切れず”これはゴム?”と思うほどのイカがかき揚げの中に入っていて、更にけして上等とはいえない油で揚げている事が原因だったと思います。当時は品川丼は200円台であったと記憶していますが、金欠には魅力的価格のな昼食メニューでした。余談ながら賃金支払日直後は品川駅高輪口にあった京浜デパート食堂のチャーハン定食を食べる事が何度かありました。品川丼が200円台に対してチャーハン定食は500円程度したと思います。ボリュームも20歳代の私の胃袋を満足させるだけの量もあり、味付けも美味しかったのを思い出します。金があれば京浜デパートのチャーハン。金が無ければ品川丼と言う図式が私の頭に出来上がっていました。

数年前に再び品川を勤務地としていた後も、昔を懐かしみ何度か品川丼を食べる機会がありましたが値段も当時の倍近くの450円になっていました。丼と蕎麦汁のスタイルは変わらないもののかき揚げは当時とは比較にならないくらいに上質な物になってイカも噛み切れる物になっていました。また当時は品川丼の印象が強すぎたからでしょうか、最近訪れるとお好みソバというメニューがありかけ蕎麦(またはかけうどん)の上に具を乗せ放題で更に卵サービスと言うメニューがあることも知りました。
今月になって何気に東海道線下りホームを歩いていると(通常は通勤の往復に横須賀線を利用しています。)例の立食ソバ屋に閉店の告知がされているではありませんか…それでは品川丼を注文して丼と店内風景を写真を撮ってブログで紹介しようと思っていたらいつの間にか「店内は写真撮影禁止」の告知がぁ…致し方なく外観だけを撮影して来ました。