緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

医者の奥底(1)医者が心をひらくとき(JAMA “A piece of my mind”)

2018年04月15日 | 医療

アメリカ医師会誌(JAMA)の
コラム “A piece of my mind”は
医師が体験した心に残る患者のことを
記述したページですが、
正規の手順を踏んでいて、
レビューが入ることで有名です。


これを翻訳した本

「医者が心をひらくとき」
李 啓充訳. 医学書院 (06年)


時々、心が萎えそうになるとき
この本を手に取り、
この序文を読むことがあります。


自分の原点を思い出させてくれ、
何度読んでも、心が熱くなります。







序文の中で、キャスリン・モントゴメリは

「著者たち(医師)は、・・「白衣の戦士」ではない。
 ・・患者とその家族をケアしながら
 常に心にさまざまな考えや思いを抱える人々であり
 恐怖や罪悪感を克服しながら
 自分たちの職業の意味を発見する。」

と述べています。




編集委員のロクサーヌ・K・ヤングのまえがき。

ある末期エイズ患者さんは10歳の息子さんがいました。
毎日見舞いに来る10歳の息子さんの苦しみを見る事は
苦痛を終わらせる死が中々訪れないことをみまもるつらさ以上につらかったと書いている医師。

葬儀の終わるころ、この息子さんが抱きつきながら
「お母さんを診てくれてありがとう」
と叫んだというエピソードを挙げ

「著者に、
自分がなぜつらい仕事にかかわるのか
 という理由を思い出させてくれた。
 そして、患者たちが、その勇気を見せてくれることで
 自分をよりよい医師にしてくれているということを
 実感させられたのだった。
 ・・・・そもそも自分達はなぜ
 医に関わる職業に就いたのかという
 理由を再確認させたいことにあるのだろう。
 それは、他の人々の助けになりたいという
 人間としての単純な行いであり
 医師であることの喜びでもある。(後略)」

『医者が心をひらくとき(上)』
序および編者まえがきより.
李 啓充訳. 医学書院 (06年)

(以上再掲にて、次回に、つづきます。)

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2 コメント

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ありがとうございます (若紫)
2009-04-30 22:07:21
初めまして。私は新米の緩和ケア医です。
いつもこのブログで勉強させていただいたり励ましていただいたりしています。
病院に緩和ケアチームを立ち上げたばかりで、まだ手探りの状態ですが頑張っているところです。

ご紹介下さった序文とまえがきを読んで、涙してしまいました。
本業の消化器内科の仕事も忙しく、最近ちょっと疲れていましたが、また力が湧いて来ました。
ありがとうございました。
少し前に先生のご著書も購入し、読み始めたところです。
これからもよろしくお願いします!
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こちらこそ、はじめまして。 (aruga)
2009-04-30 23:08:35
緩和ケアチームの医師であり、消化器内科の医師でいらっしゃるのですね。

コメントを頂き、本当にありがとうございます。こうして書き続けることの原動力になります。

私も、この文章を読んだとき、電車の中であふれてくる涙に困ってしまいました。同じですね。これからも、どうぞ、よろしくお願いいたします。本の購入ありがとうございます。MTパッチに切り替わっているので、早く改訂しなければいけないのですが・・
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