血栓症ではありません!
がん患者さんの急な体重減少
そんな時、消化器症状を認めたら
鑑別診断に含めたい症候群です。
そんな時、消化器症状を認めたら
鑑別診断に含めたい症候群です。
痩せたことで
二つの血管に十二指腸が挟まれ
食事がとれなくなったりします。
二つの血管に十二指腸が挟まれ
食事がとれなくなったりします。
転移ではありません。
食後の体位の取り方で
軽快することができる病態です。
軽快することができる病態です。
ただ・・
これは、がん患者さんだけの
疾患ではありません。
若い患者さんでも少なくなく、
2年程前、10代の男性が
2年程前、10代の男性が
名古屋の日本赤十字病院の
救急外来を受診し
この疾患を見落としたことで
問題になった疾患です。
つまり、念頭に置いていないと
見逃されやすい疾患なのです。
●病態を知る
〇正常な解剖
胃から食物は、十二指腸に流れていきます。
十二指腸は水平部(右から左に水平に走行する部位)(①)で
背面(後ろ):大動脈(②)上下に
腹部側(前):上腸間膜動脈(③)上下に
走っています。
十二指腸は水平部(右から左に水平に走行する部位)(①)で
背面(後ろ):大動脈(②)上下に
腹部側(前):上腸間膜動脈(③)上下に
走っています。
つまり・・
十二指腸(①)が
二つの動脈(②③)に
挟まれているのです。
十二指腸(①)が
二つの動脈(②③)に
挟まれているのです。
通常はこの挟まれた空間には脂肪組織があります。
〇SMA症候群の病態
痩せる
↓
腸管が下垂
↓
③(SMA)が下に引っ張られる
③上腸間膜動脈(SMA)は腸管(小腸(空腸、回腸)、結腸(上行から横行結腸)等へ広く血液を供給している動脈(静脈より強固で1㎝ほどの動脈)のため、やせて消化管が下垂(下に引っ張られること)すると動脈はぐっと下に引っ張られます。
つまり
③が下に引っ張られ
③が下に引っ張られ
↓
①の十二指腸を圧迫(ペタンとなる)
①の十二指腸を圧迫(ペタンとなる)
↓
胃からのものが流れなくなる
〇胃拡張し、食事がとれなくなる
胃~十二指腸への流れの悪化
↓
胃拡張(胃が大きくなること)
↓
心窩部(みぞおち)が張ってくる
↓
胃下垂(胃が下がること)
腹部単純写真立位像:
大きな胃や胃泡、胃下垂像
↓
胃下垂(胃が下がること)
腹部単純写真立位像:
大きな胃や胃泡、胃下垂像
他の消化管を押しのけている像
〇特徴
体位によって流れることも
つまり
症状が一定しないのです。
症状が一定しないのです。
がんの進展や浸潤ではありません。
●症状
悪心、嘔吐、心窩部や上腹部の張り
(食後だけ~一日中張るように)
(食後だけ~一日中張るように)
悪化:仰臥位(仰向け)
一度に沢山の食事摂取
一度に沢山の食事摂取
軽快:左側臥位(左横向き)
四つん這い
起坐位
(座って前のテーブルに枕など置き、うつ伏せになる体位)
少しずつ食事をとる
四つん這い
起坐位
(座って前のテーブルに枕など置き、うつ伏せになる体位)
少しずつ食事をとる
●診断
鑑別診断が重要
腫瘍の浸潤や圧排の有無等
腫瘍の浸潤や圧排の有無等
立位腹部単純X線写真
胃拡張を伴う胃下垂
CTにて
十二指腸、上腸間膜動脈、大動脈の位置や狭窄状態の確認
脱水、栄養障害の評価
●治療
楽になる体位の探索
脱水や栄養障害の補正(輸液等)
嘔吐時は、胃管によるドレナージ
●緩和ケア医療スタッフが知っておきたいこと
悪心、食欲不振はよく経験する症状です。
特に、オピオイドを開始していると、開始時の悪心、便秘による悪心など、その副作用として考えがちになります。
便が出ていれば大丈夫と考えがちな緩和ケアスタッフは少なくありませ音。
逆に、排便があるにも関わらず、難治性の悪心を認める場合は、膵の腫瘤、リンパ節転移などと共に、上腸間膜症候群も鑑別診断に入れておくことを忘れないでください。
Joanna WielgoszによるPixabayからの画像
(この画像の食事が原因になるということではありません)
いつも拝見しています。
今回の十二指腸のお話は
自分の症状と似て驚き、
そして有り難かったです。
食後の姿勢など
試したいと思います😊
コメント、ありがとうございます。
この症候群は他の病気が隠れていないか鑑別診断が大切なので、医療者に相談しながら進めてくださいね。
膵頭部は良く診てもらって頂けると良いと思います。