緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

半夏瀉心湯のこと:明日の外来に活かせそう!

2024年10月06日 | 医療
緩和医療学会の地方会、関東甲信越支部学術大会で松本に出張。
医学系の学会は、数千人から大きい学会では万を超える参加者がいるため、使える会場が横浜、神戸、福岡などばかりなのだけど、地方会は数百人規模のため、アクセスがよい各地域の都市に行くことができ、ほっとします。

コロナの影響でリモート参加が続き、そろそろ皆に会いたいなあと思っていた頃、現地での開催が増えてきました。
そう思っていたにも関わらず、いざ・・となると、ちょっと腰は重たく、出不精になってしまっています。
日頃から、そもそも出歩くことが億劫なもので・・

ただ、今回は、何人かの方に会って、伝えたり、意見交換する必要があったこと、さらに、知りたいことが学べるセッションがあることがわかり、とても楽しみでした。

座長のご依頼を頂いた上園保仁先生のセッション。

 
ちょうど一年前に、イリノテカンの排便障害(便秘と下痢)の患者さんの症状緩和の依頼を受け、外来で様々なアプローチを行う中で、半夏瀉心湯の効果を実感したことがありました。
半夏瀉心湯がイリノテカンの代謝産物の産生を抑制するだろうと言われていること、また、抗炎症効果がイリノテカンによる消化管粘膜障害に対し有効に働いたことがその効果だったと考察しています。
どの成分がどのように効果を出すのだろう・・

放射線や化学療法の口内炎に対する効果も臨床的に実感しています。
ただ、とても苦くて不味いとよく言われます。
何とかならないのかしら・・



こうした臨床疑問に基礎、薬学的なアプローチで解説頂けるセッション・・                                                                                                                           

半夏瀉心湯の中の、オウゴン、オウレン、乾姜の3つに抗炎症効果があり、なんと、cox-2のみ抑制するのだそう。
Cox-1が胃粘膜障害を起こします。
つまり、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬(ロキソプロフェンなど))と異なり、胃粘膜障害を起こさない。

鎮痛薬効果がありながら、胃を荒らさない・・そのようなものが自然界にあったのか・・


その作用は、胃腸粘膜上皮細胞に対し外から効果がある・・
つまり、吸収されて血液に乗って効果を出すのではなく、粘膜に触れれば効果がでるということ。

口なら、咳嗽で効き、下痢ならオブラートに覆って内服して腸管で接触すれば効く・・
褥瘡に上から塗っても効果はあるらしい・・



問題の飲み辛さは、オウレン、オウゴンが原因とわかりました。
こればっかりは避けられない・・

で、コツはありませんかと質問したところ、
ココアに溶かすと苦みが緩和され、ミロもよくて、これらココアなどのタンパク成分が加わっても、オウレンやオウゴンの作用減弱など好ましくないことは生じないとのこと。
ミロにはビタミンが含まれているのでとてもありがたい。


ほお・・
驚きの連続でした。
確かにこれは、口がただれていたい人など、抗がん剤の下痢だけではなく、色々な消化管障害にに効きそうです!

PexelsによるPixabayからの画像

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 頑張っているのに誰も褒めて... | トップ | つらさのマウント:応酬が始... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

医療」カテゴリの最新記事