海潮音から
わすれなぐさ ヰルヘルム・アレント
上田敏 訳 (海潮音より)
ながれのきしの ひともとは
みそらのいろの みづあさぎ
なみ、ことごとく くちづけし
はた、ことごとく わすれゆく
川の流れの岸辺に咲く一本の(一株の)勿忘草
空色の水浅黄
波が口づけするかのように打ち寄せては
しかしながら、忘れ去ったかのように引いていく
ドナウ川の岸辺にさく花を
恋人のために摘もうとして
川に流されたルドルフが叫んだ言葉
Vergiss-mein-nicht! (Forget-me-not)
から付けられた名前が
勿忘草でした。
人生の出来事も
波のように
訪れては去っていく・・
でも、心の芯には
忘れないでほしい
忘れないでいるからね
そんな気持ちがみずあさぎの色に
感じられるのです。