2012年BSCの記事を書きました。
言葉は難しい・・BSC
http://blog.goo.ne.jp/e3693/e/4ba07e2f937e4e37beb53b327ef0c3eb
でも、未だに抗がん治療医の方々の話に
BSCという言葉はよく耳にします。
「もう、抗がん剤は副作用の方が強くでるようになってきたので、
効果以上に体に負担をかけてしまうようになっています。
これからは、BSCにしましょう」
といった具合です。
Best Supportive Careとは、
前述の2012年の記事に書いたように、
臨床試験用語で、
ある薬物治療薬+BSC vs BSC
というように、使われる言葉なのです。
次の論文にこのBSCについて
書かれています。
SY. Zafar. Defining Best Supportive Care. J Clin Oncology, 26(31), 5139-5140, 2008.
JCOのCorrespondenceとして
2ページに短くまとまっています。
以下で、全文を読むことができます。
↓
http://ascopubs.org/doi/pdf/10.1200/JCO.2008.19.7491
要するに、新しい抗がん治療開発にあたり、
その対側アームに、BSCとしているが、
実際には定義がきちんとされていない
と指摘されている論文です。
2008年グラスゴーで開かれた緩和ケアコングレスで、
以下のようなシステマティックレビューの発表がありました。
Jack, B. (2008) Defining best supportive care: a systematic review of best supportive care in lung cancer trials. Palliative Care Congress, 29 April - 1 May, Glasgow Royal Concert Hall, Glasgow.
(引用元 https://repository.edgehill.ac.uk/1514/)
要するに、ここでも、肺がんの臨床試験の論文の
システマティックレビューをやってみたが、
どれも、対側のBSCはどんなことをすれば
BSCか記載されていないということが書かれています。
考察では、それぞれのBSCには矛盾が認められたり、
事実ではないことに用いられていたりしていると
記載されています
つまり、BSCは、
抗がん治療を止めなければいけなくなった
臨床状態にある患者さんの治療方針として
使用する言葉ではなく、
あくまでも、研究用語であり、
かつ、その内容は定義づけされていない
曖昧なものなのです。
ですから、冒頭に記載した、
「もう、抗がん剤は副作用の方が強くでるようになってきたので、
効果以上に体に負担をかけてしうようになっています。
これからは、BSCにしましょう」
という使い方は望ましくないのです。
(そもそも臨床上のQOL維持のための医療といったことに用いられない用語なのです。)
抗がん治療に従事している医師の方、
特に、教育現場では若い医師への啓蒙のためにも
是非、BSCは用いないで、
説明をしてくださいますようお願いしたいものです。