緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

研究用語で定義が曖昧なBSCは緩和ケアと同義語ではないのです

2017年07月30日 | 医療

2012年BSCの記事を書きました。

言葉は難しい・・BSC
http://blog.goo.ne.jp/e3693/e/4ba07e2f937e4e37beb53b327ef0c3eb

 

でも、未だに抗がん治療医の方々の話に
BSCという言葉はよく耳にします。

「もう、抗がん剤は副作用の方が強くでるようになってきたので、
効果以上に体に負担をかけてしまうようになっています。
これからは、BSCにしましょう」

といった具合です。





Best Supportive Careとは、
前述の2012年の記事に書いたように、
臨床試験用語で、
ある薬物治療薬+BSC vs BSC
というように、使われる言葉なのです。





次の論文にこのBSCについて
書かれています。

SY. Zafar. Defining Best Supportive Care. J Clin Oncology, 26(31), 5139-5140, 2008.

JCOのCorrespondenceとして
2ページに短くまとまっています。


以下で、全文を読むことができます。
    ↓
http://ascopubs.org/doi/pdf/10.1200/JCO.2008.19.7491



要するに、新しい抗がん治療開発にあたり、
その対側アームに、BSCとしているが、
実際には定義がきちんとされていない
と指摘されている論文です。








2008年グラスゴーで開かれた緩和ケアコングレスで、
以下のようなシステマティックレビューの発表がありました。

Jack, B. (2008) Defining best supportive care: a systematic review of best supportive care in lung cancer trials. Palliative Care Congress, 29 April - 1 May, Glasgow Royal Concert Hall, Glasgow.

(引用元 https://repository.edgehill.ac.uk/1514/

要するに、ここでも、肺がんの臨床試験の論文の
システマティックレビューをやってみたが、
どれも、対側のBSCはどんなことをすれば
BSCか記載されていないということが書かれています。

考察では、それぞれのBSCには矛盾が認められたり、
事実ではないことに用いられていたりしていると
記載されています






つまり、BSCは、
抗がん治療を止めなければいけなくなった
臨床状態にある患者さんの治療方針として
使用する言葉ではなく、
あくまでも、研究用語であり、
かつ、その内容は定義づけされていない
曖昧なものなのです。

ですから、冒頭に記載した、
「もう、抗がん剤は副作用の方が強くでるようになってきたので、
効果以上に体に負担をかけてしうようになっています。
これからは、BSCにしましょう」
という使い方は望ましくないのです。

(そもそも臨床上のQOL維持のための医療といったことに用いられない用語なのです。)

抗がん治療に従事している医師の方、
特に、教育現場では若い医師への啓蒙のためにも
是非、BSCは用いないで、
説明をしてくださいますようお願いしたいものです。


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