緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

働く世代のがん患者さんは1年間に企業660人に1人の割合で診断され、支援体制の充実で2人に1人は両立も可能

2018年09月24日 | 医療

病院といった組織の外でも
疾病を持った人々の支援に当たれないか・・
と思い、二つのことを始めました。

一つは、親ががんになった子どもたちの支援の
コアラカフェ®

もう一つは、産業医となること。



まだ、産業医として活動は始めていませんが、
更新のための講習に
がん就労が含まれるようになってきました。


この週末の講習から。






専任産業医が配置された企業は
50人以上の従業員がいる規模になります。
そうした企業(ここでは大企業とよんでいます)
における実態調査では、


新たに病休となった職員(病休者)数は
一位 メンタルヘルス不調 
約210人の組織で1人/年

二位 がん
約660人の組織で1人/年

三位 脳卒中
約2000人の組織で1人/年

と、がんは予想以上に多いようです。
(遠藤源樹;企業ができるがん治療と就労の両立支援 実務ガイド.日本法令,2017)




復職後の5年勤務継続率は
なんと、51.1%!
(同)

つまり、
がん患者の復職支援を充実させれば、
2人に一人は、がん治療と就労は
両立させることが可能と考えます。


がんの種類によって、
治療も異なるため、
この数字も変わってきます。





時短で勤務に戻ってくるまでに、平均80日(2か月半)、
フルタイムでは、201日(6か月半)。

でも、がん種でみると、
時短勤務は、
尿路系がん   52日
胃がん     60日
肝胆膵がん 194日
血液がん  241日
とかなりの開きがあります。
血液がんでは、寛解に入るまで入院化学療法が続く傾向にありますが、
固形がんでは、外来化学療法(薬物療法)での継続等となることが
その理由のひとつと考えます。

多くのがん患者さんは、
治療や受診などから時短勤務が必要で、
特に、胃がんと食道がん の患者さんには、
その配慮が必要という結果が出ていました。

(時短/フルタイムの数字が
 他のがん種に比較して
 大きい結果が得られている)

(Endo, et al; Journal of cancer survivorship, 2015)






一方、その復職後において、
5年間の再病休率は38.8%
5年間の退職率は 10.1%

特に再病休率は
復職から1年を乗り切れば 半数は両立が可能となっており、
復職から2年を乗り切れば 75%は両立が可能という結果でした。

つまり、
復職後2年間の支援が、特に、
大切ということでした。
(遠藤源樹;企業ができるがん治療と就労の両立支援 実務ガイド.日本法令,2017)


(つづきます。)


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