緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

骨転移の痛みに放射線治療を行うときプレガバリンを併用するとより痛みは抑えられるのでしょうか

2019年04月21日 | 医療
最近読んだ論文。

Marie Fallon , Peter J. Hoskin , Lesley A. Colvin , et al.
Randomized Double-Blind Trial of Pregabalin Versus Placebo in Conjunction With Palliative Radiotherapy for Cancer-Induced Bone Pain
JCO., 2016, 34(6):550-556


〇PICOは・・・
(P:対象患者、I:介入、C:コントロール、O:アウトカム)
がんの骨転移痛がNRS4/10以上ある患者において、放射線治療にプレガバリンを併用することは、併用しないことに比較して、疼痛をより緩和することができるか。

〇患者は、
一か所以上の骨痛に放射線治療が予定(8Gy(1fr)または20Gy(5fr))
予後2か月以上の見込み
疼痛NRS4以上

〇除外基準は、
ガバペンチンまたはプレガバリン投与中
腎機能がCcr<60mL/min
放射線治療の照射野が広範囲の患者
試験前に疼痛に影響のある抗がん治療に変更があった患者

〇介入方法
割り付けした患者数はN
 プレガバリン投与群(N=116):
   プレガバリン(75㎎)1カプセル、1日2回(12時間毎)、35日間
 コントロール群 (N=117): ;
   プラセボ

放射線治療は
 8Gy(1fr)または20Gy(5fr)で実施され、

鎮痛の改善は、
 NRS≧2の減少 
  and/or
 患者が鎮痛目標は達成したと感じることができた場合

ベースライン評価(放射線治療24時間前)し、
割り付けられ、
投薬35日間+放射線治療

その投薬は、
1日目より プレガバリン150㎎ 2X
8日目からは      300㎎ 2X
15日目                           450㎎ 2X
22日目                           600㎎ 2X と増量



〇結果
2008年8月13日~2012年4月30日 スクリーニングN=1970人  腎機能障害(19.0%)拒否(8.7%)、プレガバリン等を使用してしまったこと、疼痛不足から n=233人

前述の割り付けで、
 最悪の疼痛、平均の疼痛、EuroQOLに差なし。
 HADS(抑うつと不安の評価尺度 )に差あり。
  調整平均差 -1.1(95%CI、-2.1〜0.1、 P = 0.031)
 突出痛
  回数、強さ、長さ、予測可能性(随伴性)、鎮痛薬の投与に差なし
  持続時間(分)に差あり P=0.037

 AE(副作用)
  プラセボ群/プレガバリン群;53%/43%  認知障害;9%/3%

つまり・・・
骨転移痛がある患者さんで放射線治療を行う場合、
すっきりと痛みが取り切れないことが少なからずあるため
(完全な除痛に至るのは20%程度との文献が引用されており)
プレガバリンを併用するとよいのではないかという仮説を立て、
プレガバリンを600㎎/日まで併用してみたけれど、
鎮痛効果は
突出痛の持続時間が短くなった程度で、
回数や強さは変わらず、
患者さんは痛みがよくなったと自覚できなかった
というネガティブな結果。
副次的に、うつうつとした気分に対しては、
プレガバリンの持つスタビライザーによるものか
効果があったとのことでした。


でも・・・
600㎎/日も内服しても効かないのですね・・・

日本人は眠くて、フラフラしてしまいそうな量なのに、
被検者の英国人のこの試験では、
副作用には眠気、ふらつきは生じておらず、
人種差はないだろうと思ってはいますが、
驚いた結果でした。

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