世間はマスコミや政治家などの発言が大きな影響を与えますが、その発言の取り上げているところの社会問題は、そのほとんどが名もなき小さな人々の事柄です。社会問題は社会の底辺で起きていることが多く、そこで生きている人々は、社会に対する発言力を持っていません。社会問題を世間が取り上げるとき、その多くは発言力を持つ政治家や評論家、マスコミ等ですが、当事者の生の声が真に伝わることは少なく感じます。当事者と共有すること、分かち合うことは知識だけでは理解できません。世間一般には社会問題を知識で理解しようとしますが、知識だけでなく、当事者の生の声を共有し分かち合うことが出来なければ真の問題解決にはなりません。これからも一人ひとりの小さな生の声を大切に活動を続けていきたいと思います。
24日は薬害エイズを考える山の手の会で先日、最高裁判決で敗訴が確定した薬害イレッサ訴訟原告近澤昭雄さんをお呼びして学習会を行いました。学習会が終わってから近澤さんと参加者で懇親会をして家に帰ってきたのが日付が変わって夜中になってしまい、ブログも1日あけてしまいました。近澤さんいは8年もの長い年月を裁判で闘ってきた心境をありのままに語ってもらいました。裁判を始める時の苦労、裁判をつづけることの苦労、裁判が終わっても問題解決していないことの今の心境など1時間ではとうてい語り切れませんが、それでも熱弁をふるっていただき、ことのほか重い言葉でした。近澤さんは長い間の苦労や敗訴判決の悔しさにもかかわらず、支援者への感謝と、まだ達成されていない医薬品服作用被害救済制度に抗がん剤を対象にすることへの訴えを力強くされました。近澤さんは抗がん剤の裁判を起こすことで数々のバッシングを受けてきました。お金が欲しいのかとか・・・、しかし、近澤さんは自らの費用で薬害を二度と起こしてほしくないと全国の薬学部、医学部を回って自らの体験をお話してきました。その苦労が報われるのは薬害を起こさない社会をつくることです。最高裁判決は出ましたが抗がん剤イレッサ問題は何ら解決していません。解決するためには私たち一人ひとりが他人事ではなく薬害を起こしている社会の一員として自らが当事者として薬害防止のために行動することが大切です。
「時勢は、人を造るものだ。今日いろいろの学問や、知恵のある人たちが、これから種種の困難に出会って、実際にその学問をためしたり、その心胆を練ったりなどすると、将来に起こるべき、東洋の大禍乱をも、切り開くだけの人物になれるだろうよ。今日は、実に不権衡(不釣合い)の時代だから、万事思うどうりにならぬのだ。経験もあり、信用もある人物は年をとらないうちに、はや老朽してしまい、若年の敏腕家は、まだ経験と信用とがないというふうで、とうぶんは、どうしようがないよ。」(勝海舟「氷川清話」より)
いつの時代にも時勢から人物は造られます。幕末であろうと明治維新であろうと、そして現代であろうと・・・現代もまた混乱の真下、一人ひとりがそれぞれの場で生きています。今生きている場を活かして生きるとことによって素敵な社会が造り出されるのだと思います。
本日の夕方、新宿御苑前のスモンセンターにおいて8月23日の薬害根絶デーの実行委員会が行われました。いつものメンバーに加えて新しく学生と新人弁護士が参加してくれました。学生や弁護士は先輩からの誘いで参加して毎年後輩へと引き継いでいます。難しいのは社会人の支援者です。勤めていて参加が難しいのもありますが、活動との接点もなかなか結びつきにくいこともあります。最近ではフェイスブックなどを使って呼び掛けもしていますが、社会人の参加はなかなか難しく毎年同じメンバーで高齢化が進んでいます。何か日本の社会構造を反映しているかのようです。様々な呼びかけをして若い社会人にも参加してもらえるよう動いていきたいと思います。
現代は事務所も住まいもマイオフィスやマイホームと言った自分で所有することなく事務所をいくつかの会社と同居するシェアオフィスや住まいを仲間と同居するシェアハウスが増えてきています。仕事も短期間にいくつもの仕事を変えたり、また副業というよりはいjくつかの仕事を同時に持つ復業が増えているようです。住まいも都会の高額な高層マンションを購入して住むよりも自然環境豊かな田舎のシェアハウスに住むといったライフスタイルも変わってきているようです。さて生身の人間はどうでしょうか。どんな時代でも人間の心のシェアはそう簡単には変えられません。健康な人でも病気を患っている人でもお互いの心のシェアは時間をかけて回数を重ねて徐々に深まっていくものではないでしょうか。仕事や私生活でも事務所や住まいのハード面は変わってきていますが、時代が変わっても人間の心は変わらないと思います。ただ少し気がかりなのは、ハード面の機械化、効率化が進み人と人との心のシェアが希薄になっているような気がします。ハード面の機械化、効率化がすすめば進むほど便利さゆえに一人だけで自由に生きられるようになると錯覚しまいますが、なにか事故が起こったとき人と人との対応は取りにくく助けは得られません。私自身も独り身で自由で便利なようで、いつどうなるかわかりません。事故が起こったり大変なときこそ、普段からの人と人との心のシェアが力を発揮するときはありません。そんなことに気づかされたのも薬害被害者に出会いお付き合いする中での体験です。
薬害エイズを考える山の手の会は小さな心のシェアの体験の機会です。毎回、薬害被害者の生の声を聞きながら参加者と心のシェアー分かち合いをしています。次回の山の手の会は
日時:4月24日(水)19時~21時
場所:東京ボランティア市民活動センター会議室A(JR飯田橋駅隣セントラルプラザ10階)
内容:抗がん剤イレッサ問題を問うー薬害イレッサ訴訟原告近澤昭雄さんおお話
参加費:無料