横浜の高台、根岸森林公園内に建つ不思議な建造物こそ
旧根岸競馬場一等馬見所。
かつてこの場所には根岸競馬場があった。
この競馬場の歴史は外国人が横浜に居留し始めた幕末期まで遡ることになるが、
やがて20世紀初頭に競馬は全盛期を迎え、1929年にはJ・H・モーガンによって新たに競馬場が設計された。
現在残る部分も、モーガンの建築である。
やがて第二次世界大戦が悪化し1942年で閉鎖、
戦後は一帯が米軍に接収され、競馬場へ戻ることのないまま半世紀が過ぎた。
競馬場だった場所は現在、根岸森林公園と米軍施設となっている。
地図上で見てみると森林公園の形は往時を偲ばせるものとなっている。
競馬場が無くなって半世紀以上、
現在でもその一部が残されている。
それが一等馬見所だ。
現在は使用もされず放置され、謎の巨大廃墟と化している。
はじめて見たら『あれはなんだ!』となること間違いなし。
独特のデザインと異様な存在感から一度見たら忘れられない。
この建物は根岸競馬場の一等観覧席として建設され、
最上階には貴賓室もあったという。
2009年に「近代化産業遺産」に指定された。
建物そのものは立ち入り禁止だが周辺は公園として整備されている。
富士山や横浜みなとみらいビル群の見える芝生広場に隣接した形で建つ。
建物の背後にはパネルが整備されていて写真や設計図などの図像資料を見ながら
往時を偲ぶことができる。
写真からもわかるように鉄骨部分はすでに撤去されている。
近寄ると巨大さに圧倒される。
建物は印象的な3つの塔で成り立っており、塔の高さは約30m。
背後から見て一番右側の塔にはびっしりと植物が絡みつき
廃墟としての風格を上げてしまっている。
どうやら夏場は緑が茂るらしいが、冬場はこのように枯れてしまっていて
これはこれで味がある。
周囲は立ち入らないように鉄条網が。
窓のいくつかは塞がれてしまっている。
一階にはいくつかの出入り口のドアが存在するが
その扉さえも植物が絡みついている。
恐ろしい生命力に少しゾワゾワする。
正面には米軍施設があるため立ち入ることはできず、
斜め横からしか見る事ができない。
印象深い塔の部分はいくつかの丸窓が存在する。
丸窓のフチにはブーケのような凝った飾りがついている。
ふたつの対称な窓がまるで目のようで、不思議だ。
現在でも根岸森林公園周辺や一部の街中からも見える一等馬見所、
取り残された3つの塔の建物は
何かを主張するようにそこに立っている。
横浜には歴史的建造物が数あれど、
この建物が異質な存在であることは間違いないだろう。
また、公園内には馬の博物館もあり
馬の歴史やこの根岸競馬場の歴史も紹介しているという。