◆第三セクターへ移管となる魚津駅と廃止される475系(2014.8)
JR時刻表3月号を取り出して、おもむろにぺらぺらと眺めていると、いよいよだなと思う。
平成25年3月14日、今回のダイヤ改正は私の記憶する中では最も大きな改正である。
最も大きなことは、日ごろメディアで取り上げられている通り、北陸新幹線の開業であろう。
北陸新幹線は東京から上信越と北陸を経由して新大阪を結ぶ整備新幹線である
1997年に長野駅まで部分開業し一般的には長野新幹線と呼ばれていたが、いよいよ長野-金沢間が開業する。
今まで東京から北陸地方への主なルートは上越新幹線で越後湯沢駅もしくは長岡駅まで行き、そこから在来線特急で向かう形であった。
東京-金沢間の所要時間は4時間弱であった。
今回、新幹線が開業すると、速達タイプの「かがやき」は両都市間を2時間28分で結ぶ。
これは驚異的である。
どちらかというと関西との結びつきが強かった北陸地方との距離が格段と近くなる。
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一方で、北陸新幹線が開業すると、並行するJR在来線はJRから分離し、第3セクターへと移管されることになる。
信越本線・長野-妙高高原間が「しなの鉄道」、
信越本線・妙高高原-直江津間および北陸本線・直江津‐市振間が「えちごトキめき鉄道」、
北陸本線・市振‐倶利伽羅間が「あいの風とやま鉄道」、
北陸本線・倶利伽羅-金沢間が「IRいしかわ鉄道」
といった具合である。
以前は高崎から分岐し、軽井沢-長野-直江津-長岡-新潟の長距離を結んでいた信越本線もぷつぷつと分断されて、
いよいよ高崎-横川間、直江津-新潟間のみとなってしまった。
北陸本線もこれから同じ運命をたどることになる。
かつて特急街道と呼ばれた両線は結びつきを持たない地方シャトル型の路線へと変わる。
新幹線では速く便利に目的地へ向かう。
それは現代社会において歓迎されることである。
だが、点と点を結ぶ都市偏重型の思想は確実に地方を歴史と記憶から忘れ去ろうとしている。
新幹線や高速道路は生活と同じ視点で景色を見ることができない。
どこか神のような視点で、下界をへいげいするように、瞬間的に通り過ぎていく。
鉄道は異なる地域を結んで人とモノを運ぶ。いわば様々な色が混ぜ合わさる公共空間だ。
景色は次第に変わっていき、乗っている人の言葉も変わっていく。
生活する人々に混じって、同じ視点で景色を眺めることもできる。
だからこそ鉄道は面白いのだ。
しかし、時代は変わった。
1964年以降、高速度幹線鉄道である新幹線は全国に枝を伸ばし、2015年、ついに日本海側に到達する。
新幹線とはその名の通り、在来線に取って代わる新しい幹線である。
ものの見方も、人とモノの流れも変わりつつある。
新幹線の時代が来た、といってもいいかもしれない。
それに伴って、旅のかたちも少しずつ変わっていくことだろう。
旅とは目的地へ行くことだけでは収まりきらないほど多くのものを与えてくれるはずである。
これからは改めて、旅の可能性を考えなくてはならないと思うのである。