Fuji Trip!

水豚先輩の週末旅日記

千鳥ヶ淵の桜

2014-05-23 01:00:55 | とりっぷ!


年明けにNHKを見ていて、さだまさしの「風に立つライオン」が流れた。
今年初めに聞いた曲、として記憶に残ることとなったこの曲の中に、

「昔君と見た 千鳥ヶ淵の夜桜が恋しくて」

という歌詞が含まれていて、頭に情景を浮かべつつ千鳥ヶ淵の桜に思いを馳せるのだった。


時は移ろい、4月の夜。
桜を見に行こうという話になって、東京の桜の名所は数あれど、千鳥ヶ淵にいくことに。
乗り慣れない新宿線に乗って、九段下駅に着くと改札外には大勢の人と警備員。


とりあえずは千鳥ヶ淵とは反対方向の出口から、人の波に乗って靖国神社へ。
巨大な参道をもつ靖国神社も今日は夜店が出て、たくさんの人で埋め尽くされている。
露店のどの商品も美味しそうに見えて、うろうろしてしまうのは皆同じなようで、人の動きも目線も入り乱れている。






まるで光に吸い寄せられる昆虫のようにうろうろしては立ち止まる。
でも実は光ではなくて、匂いに吸い寄せられている。

人は祭で虫になる。

タコ焼きに、ぶどう飴、お団子にフランクフルト。
頬張って満たされた後は桜を愛でにいこう。

花より団子と言われても、ショートケーキの苺は最後にとっておくタイプ。
一番の楽しみはお花見。





靖国通りに架かる歩道橋を渡って皇居方面に向かう。
階段を下りると目の前にあるのは復元された常燈灯台。
この灯台が完成した明治時代初期には東京湾を出入りする船の目印になっていたという。
ビルの林立する現代では信じがたい話だ。
モダンな感じが素敵な塔。


皇居周辺は街灯が少なく、先程の喧騒は嘘のよう。
しかし、桜を見るにはちょうどいい。
千鳥ヶ淵はまだ遠い田安門付近でも、見事な桜を見る事ができる。

桜の木が、水面に自らの姿を覗き見るような生え方をしているなと思う。
きっと緑の生い茂る普段はそんなことは感じないのだろうが。
細かく揺れる水面もまた美しい。






田安門から皇居のお濠を右回りに歩いていくと、それはそれは見事な桜並木。
千鳥ヶ淵もこの先にあるらしい。

夜桜なんて見たことがないから、手前の景色だけでも驚かされて見入ってしまう。
初めて訪れた人は皆同じらしく、「これが千鳥ヶ淵の桜かあ」と納得して感慨にふけっている人もいる。

しかし、
会場整理の人がしきりに声を上げて、

「千鳥ヶ淵はもっと先です!」
「この先が本当の見どころです!」

とか言っている。
皆入り口付近に立ち止まってしまうらしい。

いつの時代かの仁和寺の法師のように、一人早合点して目的のものを見ずに帰ってしまいかねない。
人々の列に倣って、お堀沿いの桜並木を歩く。



桜の合い間から見えるのもまた桜。
桜の木に囲まれている。

人工の明かりに照らされた遠くの桜の木々は額に納まった絵画を見ているように現実感がない。
対岸の風景を見ていると、桜の木々が実態なのだろうかと疑いたくなる。

喧騒の中にいても桜は恐ろしいくらいに穏やかで、黙っている。
明かりに照らされているからいいものの、満開の桜が月明かりだけに照らされていたら青白くて少し怖そうだ。
坂口安吾の「桜の森の満開の下」を思い出した。

気がつけば、しとしとと雨が降って人々は帰路につこうとしている。
千鳥ヶ淵の桜。
私はどこからが千鳥ヶ淵かもわからずに、ただ満開の桜が集まった不思議な空気がいつまでも忘れられないのだった。

自ら花見に行こうと思い立つことはこの先も少ないだろうが、どんな時に千鳥ヶ淵の桜が思い出されるのか。
私の感じた景色は「風に立つライオン」のそれとは、また少し違うんだろうな。と思った。

 



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