現存する世界最古(130年前)のフィルムですね。撮影実験か、カメラの販売プロモーション用らしいです。
※有料公開した世界最古の映画は『ラ・シオタ駅への列車の到着』。
ルイ・ル・プランスによる約2秒の動画。ラウンドヘイとはイギリスのほど中央。
相当金持ちの家の庭で、4人のレディース&ジェントルメンがダンス(というより移動)している様子が映っている。
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現存する最古のフィルムに景色などではなく「人間」が写っていることは興味深い。
(世界最古の写真(1826年)は窓から見える街並みの景色。)
しかも、たとえばフェルメールの「牛乳を注ぐ女」のような日常的な動作を写すのではなく、この撮影直前にとっさに振り付けしたような動きを撮ったのも何故か。
この撮影者は芸術家でも研究家でもない。
動画は単なる記録技術にすぎなくて、芸術になるうるものだなんてそのときには思いもしなかったのではないか。
実際、ルイ・ル・プランスは発明家であり、カメラの特許を出願したりカメラの販売旅行をするなど、なかなかのやり手。
(妻のエリザベスは芸術家だったが)
映像に映っている右から2番目のサラおばあちゃんはこの10日後に亡くなったわけだから、きっと家族はサラおばあちゃんのこの元気な後方移動を何度も見直したはず。
てことは、動画が単なる科学技術ではなく、人の感情に寄り添うものだということを世界の誰より早く気づいた人たちでもあるかも。
ちなみにルイ・ル・プランス自身もこの2年後、列車の中で謎の失踪を遂げている。
(2003年、パリ警察の記録の中からル・プランスによく似た1890年の溺死体の写真が見つかっている。怖い。)
ちなみに1888年のイギリスといえば「切り裂きジャック」事件が起きた年。。
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この動画には老夫婦と若い男女が意図的に対比して描かれている。
女性は比較的おとなしい動作だが、男性はだいぶ快活に動いている。1888年の男女差が現れているのかもしれない。
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●一番右のジョセフおじいちゃんは、白ヒゲを蓄えてロングコートの裾を大きく揺らしながらサラおばあちゃんの周囲を45度ほど周遊。
ジョセフおじいちゃんが一番楽しそうに動いているので、ジョセフおじいちゃんはこの撮影にノリノリだった模様。
●右から2番目女性はサラおばあちゃん。彼女は「回転しながら後方に歩」いているらしいけど、どうみてもヨロヨロしながらただ後ろに下がっているだけ。
そしてこの撮影の10日後サラおばあちゃんは逝去なさいます。すでに具合悪かったのかも。
●一番左のアドルフは「2秒でそんなに移動できるのか!」と驚かせるほどに長い脚でスタスタと右から左へ移動する。
アドルフはこの映画の監督であるルイ・ル・プランスの息子である。
●そして謎の女、ハリエット・ハートレイ。
この女性についての記載はない。ハリエットについて調べてみたので、下の方を読んでいただきたい。
もしかしたら、ハリエットとアドルフは付き合っていたか、もしくは周りの大人たちによって結婚を勧められていた2人かもしれない。
しかしハリエットとアドルフの動きにまったく親密さは読めない。
アドルフはちょっと照れているようにも見えるが、ハリエットの回転からは「冗談じゃない!何なの!」感が満載。
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謎の女 ハリエット・ハートレイ
トリビアのとこで、彼女の名前は「アニー・ハートレイであり、ルイとルイの妻それぞれの自伝に彼女のことをアニーと書いてある。誰かが間違って〝ハリエット・ハートレイ〟と記載してしまったのだ」と書いてある。
アニー・ハートレイでいくら検索しても彼女の情報は出てこない。アニーのことについて追うことはできなかった。残念。
これからも永遠にハリエット・ハートレイ、いや、アニー・ハートレイは未来人である我々に背を向け続けるのである。