映画感想(ネタバレもあったり)

映画コラム/映画イラスト

映画『死刑にいたる病』 英語タイトルは『Lesson in Murder』。

2022-05-16 | 映画感想

死刑にいたる病(2022年製作の映画)
上映日:2022年05月06日製作国:日本上映時間:128分
ジャンル:サスペンス
監督 白石和彌
脚本 高田亮
原作 櫛木理宇
出演者 阿部サダヲ 岡田健史 岩田剛典 宮﨑優


なるほど!それでか!やられた!

前半で違和感を感じるポイントがいくつもあって
その中のいくつかが後半で「なるほど!それでか!やられた!」と膝を打つこともあった。

冒頭の"花びら"が川に落ちる時の効果音ポチャンッに
「花びらが川に落ちてポチャンって音鳴らね〜よ」とか、

手の甲の傷舌ペロリシーンで、「そりゃないわぁ…」と思ったけど、

それらにもちゃんと真相があって、さすが!と唸った。


しかし、


それ以外のいくつかはただ下手だっただけのポイントであり、
白石監督作にしては……と思ってしまった。

あのパン屋をワンオペで回すのは不可能では…??
さらに裏で時間をかけた犯行を地道にやってる設定なわけでしょ。。
睡眠時間削ってたのかな。

岩下志麻子の「まさかうちの山であんなことが起きるなんてねぇ……」ってセリフなんてコントの導入セリフみたいだった。。。

**

「配信で世界の猟奇映画好きの人たちが観てくれたらいいな」

いちいち挙げるのもめんどくさいんだけど
連続殺人犯としてもツッコミどころはたくさんある。

リアリズムという点ではイマイチの映画であるのは間違い無いと思います。
リアリティは追求してなかったと思う。

阿部サダヲを起用した時点で「猟奇エンタメですよ」という匂いはしていたし
実際そのつもりで作られたと思います。

**

なんか、「配信で世界の猟奇映画好きの人たちが観てくれたらいいな」って感じの映画な気がする。

日本発のサイコキラーを作りたかったのかな、とか。
若手俳優の演技の幅を広げる映画として制作資金が集まりやすかったのかな、とか。


**


毎回傍聴席に阿曽山大噴火がいるのは絶対ギャグだし
若い頃の阿部サダヲのカツラとかもホントは笑っていいはずだし
実際笑ったけれども
もっとコメディ箇所があった方がエンタメとして振り切れていたはず。

でも阿曽山大噴火では海外の人は笑わないよね。

**


後半は良かった。やっと本気出てきたって感じで。

ただ、時すでにお寿司。
後半ウニとか大トロ出されても
前半でエビマヨとかマヨコーン出されたのを忘れてないからね。

**

エビマヨ、マヨコーン、大好き。


Netflix イタリア映画 『ターニング・ポイント』身長差萌え ラストネタバレあり

2022-05-11 | ネタバレあり
ターニング・ポイント(2021)La svolta/The Turning Point
製作国:イタリア上映時間:90分
監督 Riccardo Antonaroli
脚本 Roberto Cimpanelli Gabriele Scarfone
出演者 アンドレア・ラッタンツィ ブランド・パシット




話はわかりやすいし

キャラクターもいいし
映像もいいし
何より演技が良かったです。
特に引きこもりの漫画家志望のルドヴィコを演じたブランド・パシット。
目の演技が素晴らしくて、ブランド・パシットの顔が写ってるだけのシーンも結構多い。
彼の表情を見ているだけで何が起きているのか、どんな状況なのかがわかるってのは、相当な技能だと思いますよ。

子役としてキャリアをスタートしてイタリアではドラマで人気の俳優さんのようです。
ルックスもいいですし、小柄で子犬のような可愛らしさは世界的にも人気が出そうです。

***


BL(的なもの)ですよね

僕はBLについて詳しくはないのですが
おそらくこの映画は「BL的」というカテゴリーに入る作品だと思われます。

マフィアから大金を盗んだ窃盗犯の男ジャックと
ほぼ引きこもりの漫画化志望の男ルドヴィコの愛の数日間ですよ。

***


そうじゃないと説明がつかない

窃盗犯ジャックがマフィアから追われて逃げる途中で、ルドヴィコを見つけて、彼のアパートで潜伏生活を始める、という導入。
「ジャック→ルドヴィコ」という支配関係が結ばれなきゃいけないはずなんです。
ルドヴィコが隙を見て警察かマフィアに通報してジャックを売り渡すこともできるし、
ルドヴィコとしてはそれで解決だし
ジャックはそれをやられたらめちゃくちゃ困る。

「ジャック→ルドヴィコ」という支配関係はないんですよ。
2人の間に緊張感もない。

一目惚れです。

2人同時に一目惚れをしてほっこり温かな同棲生活を始めるんですよ。
そうじゃないと説明がつかない。

なんなのあのイチャつき。
す〜ぐイチャつきはじめるんよ。

ボディタッチが多い。


身長差萌え向け作品

身長差もあるし、
わざわざ身長差があることをセリフで言うし、
身長差がわかりやすいカメラの画角も多い。
身長差萌え向け作品。

****


一応、同じアパートにルドヴィコが好きな美女がいる、という設定だけど、女性キャラはことごとく存在感が弱い。
ほぼなんの意味もない。
本当はお互いに向けたい性愛の気持ちを近所の美女に向けてるだけってな感じ。

****


マフィアの怖さはかなり強調されて描かれてはいます。

手下とかすぐ殺しちゃうから。
(でもあんなにすぐ手下を殺したら組織運営できなくなるよね…)
マフィアパートで怖さとか緊張感を演出しているんだけど
ジャック♡ルドヴィコパートがこんな緊迫した状況なのにひたすらにほっこりし続ける。。。

マフィアに見つかったら殺される!っていう緊張感がそんなにないんですよね。。

水道局に扮したマフィアがルドヴィコの部屋を調査に来る、とかのシーンもあって
そう言うシーンはハラハラドキドキしますよ。
(そりゃそういうシーンだもん)

映画全体を通したピリッとした緊張感。
「どちらかが裏切るかもしれない」的な緊張感。

そういうのが必要な映画だと思うんですけど、ない。
でもしょうがない。
ジャック♡ルドヴィコは愛し合っちゃってるから。

****

なので、
とにかくジャック♡ルドヴィコのほのぼの感を楽しむしかないし、
ジャック♡ルドヴィコのほのぼの感だけを楽しみたい方は、映画終わる10分くらいで停止して一生観ない方がいいと思います。


ラストネタバレは以下に。







なんでこんな目に遭うの。。。
マフィアに居場所がバレてしまったと悟ったジャックはルドヴィコの部屋から出ていくことを決意。
荷物をまとめて一旦窓から出ていくも(ここも緊張感なさすぎなのさ。これならいつでも逃げられたよね…)、
ルドヴィコが濡れた子犬のような顔で寂しく見つめるので
結局ジャックは戻ってくる。
その夜、同じアパートの美女2人と4人で食事会。
2Pしてるうちにジャックとルドの2Pに移行するんじゃないかって雰囲気の中、
ルドヴィコがマフィアにボコボコにされる。
ジャックも銃で撃たれる。
ジャックがルドヴィコの銃を乱射してマフィアを殺害するも、マフィアからの弾を受けてしまったらしくルドヴィコは気を失う。
銃撃の音を聞いた美女2人呼んだらしい救急車が到着。
ルドヴィコはおそらく一命は取り留めたのでしょう。
で、ジャックは部屋の外に出てゴミ置き場で倒れる。
バッグの中の大金とルドヴィコのマンガをゴミ清掃員に見つかって、マンガを捨てられそうになるので「それは!」ってな感じで手を伸ばしたところで、ジャック死亡。
なんでこんな酷い目に遭わなきゃいけないんだろう。
ジャックは犯罪者ではあるけど。
ルドヴィコも犯人蔵匿の罪があるから?

***

この突然のバッドエンド(ま、ジャックがサッサと逃げてりゃ良かったんだけど)が来るってことは、
やっぱジャック♡ルドヴィコのほのぼの同棲生活はかなり意図的だったってことですよね。
ジャックとルドヴィコがずっと敵対しっぱなして全然幸せじゃない状況で1人瀕死で1人死亡っていうラストが来たら、「なんの話だったの…?」と意味がわからなくなる。
ジャック♡ルドヴィコを愛でる映画、ってことでいいんじゃないでしょうか。



ドキュメンタリー映画『フェルナンド・ボテロ 豊満な人生』 なんでも豊満に描いちゃう画家 公開中

2022-05-11 | 映画イラスト
フェルナンド・ボテロ 豊満な人生(2018年製作の映画)Botero
上映日:2022年04月29日製作国:カナダ上映時間:82分
ジャンル:ドキュメンタリー伝記
監督ドン・ミラー
脚本 ドン・ミラー
出演者 フェルナンド・ボテロ




自画像さえもふっくら、
マンドリンや瓶さえふっくらの謎。




****


正直、画家ボテロの絵は観たことはあったんだろうけど、記憶にはなかったです。
今回初めて知ったという認識です。
目には入ってたと思いますけどね。

というのも、
おそらくボテロの絵は一枚観ただけだと「へぇ、丸いんだぁ」で終わる可能性も高いと思うんですが、
今回のようにズラ〜〜〜ッと並べて「全部丸っ!なんで!」という「!」と「?」を強烈に感じられると、忘れられない画家になるのだと思います。

***


なので、
「ボテロ展 ふくよかな魔法」(https://www.ntv.co.jp/botero2022/outline/)のジャンプ台として観るにはピッタリだし、

東京の次は名古屋と京都で巡回展やるようですが「遠い…」という方はこの映画を観るだけでも十分楽しめると思います。


****


ボテロの絵はポップさが武器であり、
同時にポップさが批評家から嫌われる点でもあるようです。

でも、
そのポップさで広く強く作品を届けることができるし
おかげで負の歴史や反戦のメッセージも広く強く届けて「長く」残すこともできる、だろう、と。




第一回(?)レインボーマリッジフィルムフェスティバル (#RMFF2022) しかも中野で

2022-05-09 | 映画感想
レインボーマリッジ・フィルムフェスティバル (#RMFF2022)
開催日程 2022年 5月6日(金)・7日(土)
開催場所 なかの ZERO 小ホール 東京都中野区中野2丁目9-7
料金 無料


目次

  1. 映画祭の概要は以下の通り(https://rainbowmarriage.jp/ より転載)
  2. 日本初「結婚の平等(同性婚)」をテーマにした映画祭
  3. 上映作品5本
  4. グランプリを競うコンペティション部門入選作品(5本)
  5. コンペティション部門 全体の感想
  6. 「こんなにも素晴らしい"結婚"をみんなもどうぞ!」ではない映画祭
  7. 僕が好きなのは『さまよう朝』『Veils』
  8. グランプリは『私たちの家族』
  9. 第2回あるのでしょうか



映画祭の概要は以下の通り(https://rainbowmarriage.jp/ より転載)

映画祭について
世界の同性婚(結婚の平等)をテーマにした映像作品を上映
同テーマの短編映画コンペティションも同時開催!
国内で同性カップルを家族として認める「(同性)パートナーシップ制度」を導入している自治体が急速に広がっており、日本の全人口の4割以上をカバーするようになっています(2021年9月現在)。また全国で同性婚を求める裁判も起きており、いよいよ実現に向けて期待が高まりつつあります。映画を通して広く多くの方へ「結婚の平等(同性婚)」への理解と、同性婚がもたらす社会への影響を広く知ってもらうことを目的として、2022年5月に日本で初めてとなる「結婚の平等(同性婚)」をテーマにした映画祭「レインボーマリッジ・フィルムフェスティバル」(RMFF2022)並びに、短編映画コンペティションを開催いたします。



日本初「結婚の平等(同性婚)」をテーマにした映画祭

とのことで、テーマがかなり絞られているけど作品は集まるのだろうか、作品のレベルは保証されるのだろうか、など心配はありました。
が、その心配は杞憂でした。



上映作品5本

同性婚をテーマにした既存の海外映画を出品してもらって、無料上映させてもらっていました。
上映の許可だってそうそう降りないだろうし、しかも無料でって、レインボーマリッジフィルムフェスティバルがかなり好意的に受け入れられているということでしょう。



上映されたのは以下の5本。

第43回ベルリン国際映画祭 金熊賞受賞作の『ウエディング・バンケット』(1993)
同性婚が法制化される前後に密着した台湾のドキュメンタリー映画『愛で家族に〜同性婚への道のり』(2020)
アメリカ合衆国での「婚姻の平等」実現をめぐる戦いの記録『ジェンダー・マリアージュ ~全米を揺るがした同性婚裁判~』(2013)
エミー賞、ゴールデングローブ賞受賞作『ウーマン ラブ ウーマン』(2020)
米アカデミー賞4部門ノミネート、ゴールデングローブ賞 作品賞・主演女優賞受賞『キッズ・オールライト』(2012)



グランプリを競うコンペティション部門入選作品(5本)



上記の名作5本に加えて、グランプリを競うコンペティション部門には、日本の短編映画が5本エントリーされました。


『夫=夫』[ 2021 / 16min / 監督:山後勝英 / 出演:とよだ恭兵、中井健勇、入江崇史 ]
辰紀と佑大は夫夫(ふうふ)として長年連れ添ってきた。そしていま、別れの時が近づいていた。ありふれたどうでもいい日常の断片がかけがえのない大切な想い出となる……。


『さまよう朝』[ 2021 / 18min / 監督:喜安浩平 / 出演:吉田電話、鈴木睦海、葛堂里奈、高木公佑 ]
共同生活をしている二人。朝食の支度をしながら続く、たわいない会話。凡庸な時間の中、微かに変わり続ける二人の関係は、日差しの中を舞う小さな埃にも似て当て所がない。さて、ところでこの光景、“どんな二人”でも同じように甘く、淡ひに包まれて見えるだろうか。


『手のひらのパズル』[ 2022 / 25min / 監督:黒川鮎美 / 出演:黒川鮎美、長内映里香、竹石悟朗、なだぎ武 ]
金沢で生まれ育った梨沙と匠。付き合って一年半。30歳になり、周りからも結婚を囃し立てられるようになった二人は、周りの進めで同棲をすることになる。結婚を意識するようになった二人はお互いの時間を共有していく中で、少しずつあるズレに気づいていく。そんな時に結婚の相談をしていた女友達、真子とのある出来事をきっかけに、変わっていく梨沙の想い。自分らしさとは何かー 幸せの形とはー


『Veils』[ 2021 / 18min / 監督:なかやまえりか / 出演:なかやまえりか、相馬有紀実、横山美智代 ]
あゆみ(28)と紗香(28)は、交際5年の記念に結婚写真を撮ろうとしている。『LGBTQ対応可』のフォトサロンに問い合わせるが、届いた返答に落胆と怒りを隠せない。2人の幸せが満たされる場所はあるのか。


『私たちの家族』[ 2021 / 25min / 監督:雨夜 / 出演:マクレディ・エリン、森田みどり、マクレディ・平良、マクレディ・光琳 ]
エリンとみどりは結婚して20年、東京で3人の子供をもつ。2018年、エリンはアメリカで性別変更を申請し、日本でも性別移行と結婚書類の変更を進めた。しかし、日本では彼女の性別変更が事実上の同性婚の容認につながるとして認められなく……。



コンペティション部門 全体の感想

僕はコンペティション部門の5本を観ました。5本連続だったので2時間くらいだったかな。
「たくさんの応募作の中から純粋に面白い映画5本を選んだら結果的に多様な作品になった」と審査員が仰っていたように、
作り手もゲイやレズビアン、パンセクシュアル、シスジェンダーの男性・女性と、逆に集めようと思っても難しいくらいに多様でした。

内容も、ドキュメンタリー、実験的な映画、シスジェンダーかと思っていたけどレズビアンを自認した女性、声を上げることの大事さに気づいた女性カップル、ゲイカップルの死別までを描いたものなど、こちらも多彩でした。
「こんなにも素晴らしい"結婚"をみんなもどうぞ!」ではない映画祭
この映画祭の難しいところは、「結婚という素晴らしい制度をセクシュアルマイノリティにも使わせてあげよう!」っていうノリになっちゃったら困るわけです。
「同性同士でも結婚という"普通の幸せ"を得られるように!」ってことではない。
あくまでも、現状の結婚制度からセクシュアルマイノリティが除外されてるのは人権の観点からおかしいよね というそれだけの話。

「結婚=素晴らしい」「結婚=普通の幸せ」のままだと、
コンペティションの『手のひらのパズル』に登場したお母さんが言った「結婚して子供を産むっていう普通の幸せが一番なのよ」という呪いがこの先も維持されてしまう。
結婚したい人はすりゃいいししたくない人はしなきゃいい。という前提はありつつ、「結婚の自由」「同性婚」というテーマを描いて、何かしらの感動を与える映画じゃなきゃいけない。
これはなかなか高いハードルでしたが、コンペティションの5本がホントに多様だったので、この5本揃って観ることでクリアできていたと思います。


僕が好きなのは『さまよう朝』『Veils』

『さまよう朝』は、同棲している男女カップルの朝の何気ない会話劇で、一旦終わったかと思うと同じ会話同じ動きを今度は女性カップルで再生し、そして次は。。というシステム。
3回同じこと繰り返すので「また同じの観るのか…」と思うんですが、だんだん会話のテンポを早めたり、多分会話も端折ってたんじゃないでしょうかね、スピードアップはしていたと思います。
「登場人物の性別を変えても印象は変わらないのではないかと思って撮影したけど、観てみたらやはり印象は変わった。でもそれでは性別によるものではなく人間一人一人違えばその分印象は変わるのではと思った」的なことを、監督が仰ってました。
僕としても、異性カップル・男性同士カップル・女性同士カップルの3パターンで会話は確かに成立はするし、大きな印象は変わらないけど、やはり3パターンそれぞれの印象は違うと思いました。
やはり性別の特性は大きくあるよなぁと思いました。
グラデーションはあるけど、その性らしさってのは現状確かにあるものとして認識していいと思いました。

Veils(ベール)』は、制作スタッフに当事者を入れて制作されたとのことで、制作前にはたくさんの一般のレズビアンにインタビューをされたそう。
劇中で「私たちレズは!」というセリフがあって「お、レズって言うんだ」と思いました。
レズという言葉は差別的な意図で使われることが多くなったことで使わないほうがいい言葉として認識していました。
でもインタビューをする中でなんの自虐や差別的な意図もなく自分達のことを「レズ」と言うケースが多かったことで、劇中でも使用したとのこと。
ホモやオカマなど差別的な意味合いで差別加害者が使うことで差別用語として認定されて使用が禁止されてしまっています。
当事者であっても使うことに躊躇いが生まれ、使うには少しの覚悟が毎度必要な言葉になっています。
それまで普通に当事者たちが使っていた言葉なのに、差別加害者のせいでその言葉が奪われていってしまっている。
クィアという言葉は同性愛者への侮蔑の言葉になってしまったけど、あえて当事者が自己肯定的に使うことで適切な用語になっていった、という経緯があります。
奪われた言葉は取り戻すことができるという良い例です。
自分たちの言葉を取り戻す という意味でこの『Veils(ベール)』の功績は大きくなると思います。



グランプリは『私たちの家族』

最高賞であるグランプリは『私たちの家族』でした。
エリンとみどりというカップルのドキュメンタリーです。


エリンとみどりは結婚して20年、東京で3人の子供をもつ。2018年、エリンはアメリカで性別変更を申請し、日本でも性別移行と結婚書類の変更を進めた。しかし、日本では彼女の性別変更が事実上の同性婚の容認につながるとして認められなく……。
日本でも性別移行は認められています。
ただ、結婚している男性(夫)が性別移行して女性になると、女性同士が結婚していることになり、同性婚を事実上認めることになるということで、現状結婚している場合の性別移行は認められていません。
裁判は続いており、ま、時間の問題という感じですが、裁判で国と戦い続けるという手間と労力を個人が負わなきゃいけないってのは大変ですよね。。
それをやっているエリンとみどりのカップルにはものすごくエネルギーを感じます。
その分この映画自体もエネルギーに満ちているものでした。
この映画には「あの素晴らしい"結婚制度"を私たちにも感」がないんです。
どんどん遠くへ、どんどん広い未来を照射する力強い映画でした。

その作品にグランプリを与えるのだろうとドキドキしていたし、
正直まさか『私たちの家族』だとは思わなかったんですが、
レインボーマリッジフィルムフェスティバル の社会的な存在意義に制限をかけないという意志を感じる選定だと思いました。



第2回あるのでしょうか

毎年はちょっとキツそうなので隔年か3年に一回かオリンピックと絡めるか、って感じでも続けてほしい映画祭です。
八方不美人 さんたちの司会も楽しかったですし流石こういうイベントを死ぬほどやっている方々だけあって手慣れたものでした。
とても大好きですし何度でも観たいです。
でも、司会者もね、固定するよりは、、多彩な方がね、、いろんなセクシュアリティの方がね、、きっと良いですよね。。

映画『ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償』 南北旗を見ると思い出す。木に吊るされた家族を。

2022-05-06 | 映画感想
ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償(2020年製作の映画)
Judas and the Black Messiah 製作国:アメリカ上映時間:125分
ジャンル:ドラマ伝記
監督 シャカ・キング
脚本 ウィル・パーソン シャカ・キング
出演者 ダニエル・カルーヤラ キース・スタンフィールドジ ェシー・プレモンス




観るべき映画。

「南北旗を見ると思い出す。木に吊るされた家族を。」

**

「黒人俳優の中でも、より肌の色が黒い俳優には役が回って来づらい」


と言ったのはオスカー受賞歴のある女優ヴィオラ・デイヴィス。

そんな中にあって、
黒人俳優の中でも肌の色が黒めのダニエル・カルーヤがスター俳優として、
人気もカリスマも実力も評価もある立場で突っ走っているのは本当に素晴らしい。痛快。


『ムーンライト』の監督 バリー・ジェンキンスが「肌の色の違う黒人俳優を同じ画面で撮影するには照明に工夫が必要」的なことを言っていたので
確かに工夫は必要なんだろうけど
逆に言えば工夫すれば可能だいうことでもある。



**

で、
今作では恐らく意図的にダニエル・カルーヤの顔が暗いままのシーンが多い。



特に前半。
夜の室内シーンっつったって、間接照明や窓の外からの灯りとして顔を照らすことはできたはずだけど、
それをやらない。
その分、ダニエル・カルーヤの表情を見ようと必死になる。
白眼と黒眼のコントラストが印象的で、ミステリアスだしさらにカリスマ性を強めている。


で、
いよいよ演説シーンが来ると顔がバーンと映り、名演技名演説。
ほぼラップ、ほぼ音楽のような言葉の羅列。顔力&高身長&脚長で畳み掛けられると「ハハーッ!」と平伏したいカリスマに溢れてる。



**

実話ベースで、ブラックパンサー党の攻撃的な部分も描いているので、観客の気持ちとしては単純なものではいられない。


しかも、
主人公はブラックパンサー党の議長役のダニエル・カルーヤではなく
同じく黒人でありながらFBIのスパイとしてブラックパンサー党の内部に入り込むラキース・スタンフィールド。
黒人の権利を訴えるブラックパンサー党とFBIの間でぬるぬるとかなり器用にスパイとして活躍するラキース・スタンフィールドが面白い。。



彼の当たり役ではないでしょうか。
人が良さそうだし、場当たり的で誰にでもいい顔しそうな感じ(失礼…)。
わかりやすいイケメンだけどそんなにカリスマ性は感じられない(すごい失礼…)。
この役はスパイという現実離れしたものだけど、民衆に近いイメージ。
どっちかにつくわけではなく(FBIに利用されるけど)、ぬるぬるとその場に馴染んでいく。。

**

ラストではご本人登場ってことで、スパイだったウィリアム・オニール本人のインタビュー映像が流れる。



不思議なのはウィリアムはどっちにも一生懸命だった。
ブラックパンサー党の活動も一生懸命でハンプトン(ダニエル・カルーヤ演じる党のトップ)に心酔していたっぽいし仲間からの信頼も得ていた。
同時にFBIのスパイとしての活動も、良心の呵責や恐怖(バレたらめっちゃくちゃにされてころされる)もありつつも、FBIの期待に応える活動をしていた。

**


今作はアカデミー賞作品賞候補になってますね。


ブラックライブズマターの潮流に乗った作品の中でも完成度は高いし、
ダニエル・カルーヤ(助演賞受賞!)とラキース・スタンフィールドの演技も素晴らしい。
音楽も良かった。
ただ、、
ハンプトンとウィリアムの濃っっっっっっ厚で複っっっっっっ雑な感情の流れを描くには、、、ちょっと時間が足りなかったかな。。。

**

ただ、もちろん観るべき映画の一つであることにはなんら変わりはないよ。

ドキュメンタリー映画『私だけ聴こえる』(2022) コーダの少女たちの3年間を追った

2022-05-03 | 映画感想
『コーダ あいのうた』で広く知られるようになったきこえない・きこえにくい親をもつきこえる子ども、コーダ(CODA:Children Of Deaf Adults)。


両親ともにろう者の場合は、子どもが聴者であっても第一言語は手話という場合もあるという。


ろう文化と呼ばれる聴者文化とは異なる独特の仕草やコミュニケーションの取り方があり、
ろう文化で育ったコーダは地域の学校などの聴者文化でろう文化の仕草をしてしまうと、聴者から驚かれたりひかれたりすることがあるそう。


呼ぶときに体を叩いたり、目をじっと見て話を聞いたり、会話の中でのリアクションが大きかったり。
聴者文化にいるときのコーダは自分を押し殺して目立たないようにしている場合もあるとのこと。


***


この映画は監督の松井至さんがアメリカのコーダコミュニティを取材した長編ドキュメンタリー。


きこえない世界(家族)ときこえる世界(学校)との真ん中でもがく3人の15歳の少女たちと
東日本大震災を経験したろう者とコーダを取材した手話通訳士の女性の妊娠と出産を、3年間追っています。








***


『コーダ あいのうた』を見て感動した方にはぜひ観ていただきたいですね。。
いやぁ『コーダ あいのうた』がいかにポップだったか。。。


本当にどっち(ろうと聴者の世界)にも居場所がないけど、
きこえない家族のことは愛しているし何より大事で、
学校ではその家族のことを馬鹿にされ珍しいものとして見られ、
家族の中でも唯一のきこえる人間として分かり合えない一線をいつも感じてしまっている。








****


1人の少女は「私はろう者になりたい」と願う。


家族たちを見て、ろう者が幸せな人生を送れることは知っている。
それなら自分がろう者になることでせめてせめてどちらかの世界(ろうの世界)に入ってしまいたい、と思う彼女の気持ちは理解できる。


****


15歳〜18歳までの3年間のコーダの少女たちを追っていて、その時々に吐き出される言葉が一つ一つ、重い。








「普通の人はコーダやろうの文化があることすら知らない」


「知ろうとしないくせにジロジロ見てくる」


「私もろうに見える」


「聴こえる世界にずっといると気が狂いそうになる」


「醜い世界だから戦うために強くなった」




「壁を感じる。ろうである兄や彼の友達と。コーダキャンプでやっと友達が見つかった。いつでも私ははみ出しもの」
「聴こえる子とはノリが合わない」
「ろう者ともね」
「コーダとは違う。はみ出しもの同士だからね」


映画『アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ 監督〈自己検閲〉版』 ベルリン映画祭金熊賞受賞

2022-05-03 | 映画感想
原題 Babardeala cu bucluc sau porno balamuc
製作年 2021年
製作国 ルーマニア・ルクセンブルク・クロアチア・チェコ合作
配給 JAIHO
上映時間 106分
映倫区分 R15+


同じくフィルマークス評価平均3.5(2022年5月現在)で、
似ている作品一覧にも出てくる映画『ザ・スクエア 思いやりの聖域』は大好きで僕は5なんです。

**

映画『ザ・スクエア 思いやりの聖域』はカンヌのパルムドール(最高賞)。
この作品はベルリンの金熊賞(最高賞)。
ベルリンは社会派映画が評価される傾向にある映画祭なので、
まぁ腑には落ちる。
社会派的な意味で評価されたんだろうな、と。
**

冒頭にエッロエロの極エロシーンを見せられると
そのあと普通の街中を歩くだけのシーンでも、なんか要所要所エロく見えてくるのは面白かったです。
タイヤが2個並んでるだけなのにオッパイが思い浮かんだり、
細長いものが映るとアレに見えたり
飛び散った液体が映るとナニに見えたり
割れ目が映るとソレに見えたり。。
もっと直接的に性的な広告なども普通に街中に普通に貼られている。
街中に普通にエロ(性的、つまりは健康。或いは子孫繁栄)のイメージは氾濫しているぞ、という示唆でわざと画面に並べているんだとは思いますが。
なんか忘れたんですが、、
なんかの英単語が大きく映されてそれの日本語訳がエロい言葉の語感に近かったんだけど、、それはさすがに僕のエロスイッチがオンになっていただけで、、監督の意図とは違ったはず。。
恥ずかしい。。
「こんなことにエロを感じてしまってる自分」に気づいて面白かったんですけど、、
中盤以降が長いしつまんないので、、
前半の面白いところさえ忘れたのよ。。。
**

前半は面白かったです。
しかし、中盤と終盤の眠いこと眠いこと眠いこと。。。。。。。。。
中盤のアートっぽい感じは、眠いけど短くテンポ良く行ったからまだ良かったけど、
終盤のくどさ、長さ。。。

エロに対する規制のくだらなさ、を揶揄して「くだらないことを延々とやるのってどうなの?」ってことなのかもしんないけど、、、、
おれの40分間を何してくれてんのよ。。
つまんないことしないで。。。
『サタンタンゴ』は7時間18分あったけど、全秒素晴らしかったからね。
なんの後悔もないから。
サタンタンゴに費やした7時間18分 。

**

「エロ規制の話題ってくだらないですよね??」
ってことを伝えるために俺の時間をくだらなく費やさせないでほしい。
しかも、性表現の規制はくだらない話題じゃないから。
すげー難しくて大事だから。
今の人類ではクリアにできそうにないほどに難しくて大事なことだから。

映画『未来は私たちのもの』 寿司&セーラームーン ゲイの移民・難民 

2022-05-03 | 映画感想
未来は私たちのもの(2020年製作の映画)
Futur Drei/Wir/No Hard Feelings
製作国:ドイツ上映時間:93分
監督 ファラズ・シャリアット
脚本 Paulina Lorenz ファラズ・シャリアット
出演者 バナフシェ・フールマズディ アイディン・ジャラリー ポール・ラックス ベンヤミン・ラジャブプル




日本語タイトルが死ぬほどつまらなそうだけど、仕方ない。

確かに『未来は私たちのもの』で合っている。
未来はあなたのものだし
この映画が表しているのもそれ。

****

上映後にドイツにいるファラズ・シャリアット監督とオンラインで質疑応答がありました。

監督曰く
「移民の人に質問する時「どこからどうやってきたか」ばかりを聞きがちだけど「これからどこに行こうとしてるのか」は聞かれない。」
自身もイランからの移民2世である監督ならではの実感のある言葉。


***


主人公は、イランからの移民である親を持ちドイツで生まれたドイツ人男性。
しかし、家族や従兄弟はイラン人だしイラン文化を大事にしている。
ドイツ人からはドイツ人として扱われないし
イラン人からはイラン人として扱われない。

自分のアイデンティティの確立が難しい。

***


主人公の恋の相手は、イランからの難民で、難民施設で暮らすゲイ男性。
イランには戻れないし、かといってドイツでも居場所はない。


***


移民と難民の違いはあるけど、
ルーツ(過去)やアイデンティティ(現在)のことに縛られて未来のことが考えられていない点はどちらも同じ。

自分でもイメージできてないし、周りから未来のイメージを持たれたことがない。
ものすごく制限された未来しかないように思わされている。
(実際そういう状況にあるにしても)


*****


いやいや未来は無限に広がってるぜ
君だってヒーローになれるポテンシャルはあるんだぜ
ということを表現しているのが「セーラームーン」。

そして、ラスト近くの突然のMV的な映像シーン。

突然ポップスターのミュージックビデオ的振りや、コンテンポラリーダンスのような動きをつけられた登場人物たちがハウスミュージックに合わせてビシッと決める。

全然物語とつながらないシーンだし、なんの脈絡もない。。
でも当然わかる。
ラストのものすごく制限された話の展開の中で、このMVシーン。

「大丈夫!まだできる!ヒーローにでもポップスターにでもなれるエネルギー自体は君の中にある!」というメッセージかと。


映画『海に向かうローラ』 ネタバレあり  お母さん散々…… トランス女性当事者が主役を演じた

2022-05-03 | ネタバレあり
海に向かうローラ(2019年製作の映画)
Lola vers la mer/Lola
製作国:ベルギーフランス上映時間:90分
ジャンル:ドラマ
監督 ローレント・ミケーリ
脚本 ローレント・ミケーリ
出演者 ミヤ・ボラルス ブノワ・マジメル



目次

  1. 映像がいいとか、
  2. しかし、
  3. ラストについては以下に。



映像がいいとか、

映画としての語り口もよくできてるとか、
主演のミヤ・ボラルス自身のトランス女性でベルギーのアカデミー賞で有望女優賞を受賞しているレベルに演技も存在感もビジュアルも素晴らしいし、
父親(ブノワ・マジメル)のキャラクターも冒頭では一側面しか見えない古い価値観の男だったのが、じわじわ彼の多面的な部分も見えてくるとこのいいし、
LGBTQへの無理解という問題と同時に
「思春期の子供と親」という問題がそもそも大きいしそれって永久に解決されないよね
さらにそこにセクシュアルマイノリティの問題が絡んで難しくなっちゃってるね
フランスでさえもまだこのレベルなんだね、
ってとこもいいし、
いくらでも広げられる話を「父と子」のみにギュギュッと集約したこともいい。


***


しかし、

こんがらがった問題が解決されていくのが、ずっと
「実は知らないとこでこういうことが行われていた」
「実はこうでした」
「実はこう思ってた」
という事実が羅列されていって
「あ、そうだったんだ…」とお互いに軟化していく、という流れ。

これがいい。だからいい。という人もいるかも。。

***



ラストについては以下に。







お母さんの遺灰がさぁ、半分は下水溝に飲み込まれて行ったし、残り半分も車と一緒に燃えて車の灰と混ざっちゃって「燃えちゃったね」的な感じで、
お母さんがずっと酷い目に遭ってましたね。。。
「遺灰を砂丘に撒く、という儀式自体いらないよね」というメッセージなのかもしんないけど、、
お母さんの希望がなぜこんなにも叶えられなかったのかがわからない。。
***
ローラと父フィリップはラストで急接近してバックハグもしてローラは手術も受けられるくらいにハッピーエンドなだけに、、
お母さん。。。。
遺灰が下水溝に吸い込まれ、砂丘の手間の道路で車の灰と混ざってしまった。
その後は、ゴミ清掃業によって回収されて、焼却もしくは、埋め立て地に埋められますよね。
もしくはリサイクル??
****
なんかあまりにも、父と子が2〜3日一緒に過ごしただけで問題解決しすぎなんですよね。。
お母さんは生きてる間も夫と子供の間に挟まれて苦労したし、死んだ後も散々だし。。


映画『秋刀魚の味』 いやぁ、やっぱりいいんですね、小津。

2022-05-03 | 映画感想
秋刀魚の味(1962年製作の映画)
上映日:1962年11月18日製作国:日本上映時間:113分
ジャンル:ドラマコメディ
監督 小津安二郎
脚本 野田高梧 小津安二郎
出演者 岩下志麻 笠智衆 佐田啓二 岡田茉莉子



目次

  1. 語られ尽くされたこんな名作を今頃初めて観て、褒めるなんてそんなことできやしませんさぁ。
  2. ポスターがそうであるように、おんなじポーズをした人物をピタリと並べる違和感。
  3. 切ない。。「ヒョータンの奴、鱧食ったことないのか。そのくせ漢字だけは知ってたな。」



語られ尽くされたこんな名作を今頃初めて観て、褒めるなんてそんなことできやしませんさぁ。

*****

やはり画面の完璧さですよね。
全フレーム絵画。
色のバランスも綺麗。
全シーンに必ず赤が入っている、という前情報があったので
「あ〜確かに入ってるぅ」と驚きつつ観ました。
後半、赤狩りみたいな感じで赤を探しながら観ちゃいましたが。

****



ポスターがそうであるように、
おんなじポーズをした人物をピタリと並べる違和感。
佐田啓二んも後ろの岡田茉莉子なんてちょっとスタンド感ありますからね。
フワッと出てきたような。
似たような存在だけど実際は違う人間(当たり前だけど)、という表現ですかね。

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音楽もいいですね。
全然物語と関係ない。。
どんなに惨めで切なくて暗いシーンでも明るいポカポカした音楽。
「ま、だいじょ〜ぶですよ〜♪」感じもする。
「映画ですよ〜♪」って感じ。
入り込んでいない距離感がいい。

****

佐田啓二(中井貴一の父親)を見たことなかったんだけど、びっくりほぼ中井貴一。

切ない。。
「ヒョータンの奴、鱧食ったことないのか。そのくせ漢字だけは知ってたな。」
切ない。。

妙に長い軍艦マーチ。
笑顔の敬礼。
拠り所のなさ。過去の栄光。

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いやぁ、やっぱりいいんですね、小津。


映画『のらくろ二等兵 教練の巻(1933)』 おしゃれで面白い

2022-05-03 | 映画感想
のらくろ二等兵 教練の巻(1933年製作の映画)
製作国:日本
ジャンル:アニメ
監督 村田安司
脚本 青地忠三


1933年の『のらくろ二等兵』。
さすがにかなりアニメが進化して、奥行きや編集の技、ギャグがてんこもり。

1928年のディズニー映画『蒸気船ウィリー』と比べると質は雲泥の差だけど、、
ディズニーやフライシャー兄弟(『ベティ・ブープ』『ポパイ』)、チャーリー・チャップリンの影響を受けていそう。
絵も動きもとにかく可愛いし
結構な大スペクタル。


**

フィルムの状態が悪くて残念だけど
もし当時のまま残っていたら普通に楽しく見れるレベルかと。





映画『一寸法師ちび助物語(1935)』 鬼が弱過ぎて引く 

2022-05-03 | 映画感想
一寸法師ちび助物語(1935年製作の映画)
製作国:日本上映時間:10分
ジャンル:アニメ
監督 瀬尾光世



目次

  1. 一寸法師ちび助物語 (1935年)。上映時間 10分。
  2. 童謡いっすんぼうしの歌詞


一寸法師ちび助物語 (1935年)。上映時間 10分。


一寸は約3.03cm。
定規で見てみるとなかなかの小ささ。
名前は"ちび助"。



↑姫も20センチくらいしかない。

****

一寸法師ってそういえば、ただただ突然一寸の男の子なんですね。
どういう理由で小さいのかとか、何かの罰で小さくなったとかではなく、ただただ小さい。
さらに生活圏は人間界。

虫たちと仲良く暮らすだけではなく、
大臣の家来となって、お姫様のお供で京都の京都の清水寺にお参りに行ったりする。

***

そこに謎の生物、鬼が登場。

鬼「美しい姫だ。嫁ごぜにしてやる」
※嫁ごぜ…嫁御前(よめごぜ)。嫁を敬っていう語。

一寸法師は、木のうろ(樹洞)に隠してあったスタンプ(ハンコ)を出してきて、自分の形のスタンプを押すと押すたびに一寸法師は増殖されていく。
14匹くらいに増えた一寸法師は、カエルたちも仲間にして、火をつけたマッチを鬼に投げたりして、鬼を捕まえる。

鬼が弱い。。。
鬼はこんなに弱いのになぜ悪いことしようとしたのか。。


***


「鬼が忘れた打出の小槌」

打出の小槌は鬼が忘れて行ったものだったのか。
小槌の中に複数の一寸法師が入って出てくると1人の普通サイズの"ちび助"が出てくる。
「立派な姿に喜んだ姫と一緒に末長く幸せに暮らしたという、昔々の物語。一寸法師〜ちび助物語一巻の終わりであります」




歌詞がそのまま物語になってるんですね。
姫と清水寺行くとか、鬼が出てくるとか、お鎚で大男になる、とか。