映画感想(ネタバレもあったり)

映画コラム/映画イラスト

アナと雪の女王/家族の思い出(2017年製作の映画) 3.5

2018-04-28 | 映画感想
アナと雪の女王/家族の思い出(2017年製作の映画)
3.5
『リメンバー・ミー』への助走(序奏)として最適!
〝伝統〟というものに縛られすぎないで今そばにいる人との思い出を大事にしようというテーマ。
リメンバーミーと同じ。



オラフは結局は集めた〝伝統〟をすべて失ってしまう。
しかもそれは、それぞれの家庭(一番小さな集団)でのそれぞれの伝統。

誰かにとって大事な伝統が自分にとって大事とは限らない。
逆も真なり。


突如出てくるサウナ男も仕草からしておそらくゲイキャラ。
〝伝統的な家族のあり方〟に固執すると誰かの幸せを踏みにじることがあることの示唆ですね。

****

これだけ全方位的に気を使いまくって シャープなメッセージ込めて、しかもエンタメにできてるなんてさすが!

でも、長いね。。。

リメンバー・ミー(2017年製作の映画)

2018-04-28 | 映画感想
リメンバー・ミー(2017年製作の映画)
5.0
ラスト、絶対あのシーンが来る!ってわかっちゃうんだけど、
わかった時点で泣いちゃう。
10分くらい前からそのラストシーンを予想して泣いちゃう。。


***


同時上映『アナと雪の女王/家族の思い出』ですでに提示したあった
〝伝統に固執しすぎちゃいけないよ〟というテーマそのまま。

ご先祖様は大事にしなきゃいけないけど、伝統として形骸化されて本質がなくなってしまっていないかを確認しなきゃいけない。
実際この映画では伝統(禁忌)が間違った真実から生まれたものだとわかるわけですから。


****

おばあさんとひいひいひいおばあさんの役がだいぶ執念深く柔軟さに欠けるキャラクターでしたが、話の筋からして必要なことでしたね。

でもどちらにも愛すべきポイントはあって、特にひいひいひいおばあさんのキャラは最高。


***

背景のすごさとか水の表現とかもう普通に観ちゃったんだけど
それではやはり驚く豊かな表情!
骸骨の質感!

骸骨があんなにも表情豊かでしかも可愛いってデザイン力どうなってんのさ。。

ミゲルの表情ほんと最高。
秘密の屋根裏部屋で憧れの歌手エルネストの映像を食い入るように見るときの顔。
完全にその世界に引き込まれている子供の顔そのもの。


***


あとはココおばあちゃんですね。。
そりゃ泣くよ。。

イザベル・ユペール無双『Eva』(2018年製作の映画)

2018-04-24 | ネタバレあり
イザベル・ユペール無双『Eva』(2018年製作の映画)

フランス、いや地球の至宝イザベル・ユペール(65歳!)がファムファタルの娼婦を演じるということでもうワクワク。
特に近年は革新的な女性像を演じて、ほとんどの地球人を置いてけぼりにしてますが、今作でも痛快。

気安く共感されることを拒否しているような『エル ELLE』よりは、だいぶ常人に近いキャラだけど、だからこそもっと怖い。。

さらに、女性性を抽出しただけのいわゆる今までのファム・ファタルとは違って、 複雑で町内会にいそう感さえも醸し出してるイザベル・ユペールの演技が面白い。

冒頭とラストでタイトル「EVA」という文字がバーンと出るわけですが、真ん中のVだけが赤くてしかもどんどんでかくなる。
ものすごく下世話な意味でのVなのかな…なんて思ってましたが、、VersusのVかも。
それくらいにイザベル・ユペールに相対するイケメン青年もかなりキテますから。。


四コマ映画『エヴァ EVA』→ http://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=2007



***


ちなみにこのタイトル、『ELLE エル』のヒットにあやかってると思われるでしょうが、原題どおりです。


***


7月7日 ヒューマントラストシネマ他で全国ロードショーだそうです。


マ・ドンソク無双『犯罪都市』(2017年製作の映画)

2018-04-24 | ネタバレあり
マ・ドンソク無双『犯罪都市』(2017年製作の映画)

なんっの文句もない!超絶楽しい!

『新感染』でずるいほど美味しい役をやってたまん丸おじさんマ・ドンソク主演の新作『犯罪都市』。

『新感染』でも『犯罪都市』でも美味しい役ではあったけど、これだけ観客の心を鷲掴みにできるのはやはり彼の肉体と演技力の賜物ですね。

例えば他のイケメン俳優が演じてたとしたら、どちらもこれほどまでに人気キャラになったか。。


****


この映画、韓国では青少年観覧不可映画とのことですが日本では指定ナシ。
誰でも観れます。

ガンアクションはなくて斧とナイフで戦いますから、なかなか痛いシーンが多いんですが、残酷描写になるとサッとカメラが避けたり場面が変わったりして、その辺もすごくうまいっ。

とは言え、最恐の敵〝チャン・チェン〟の常軌を逸した攻撃は恐ろしくて観てられない、つまり楽しいっ!



***


四コマ映画『犯罪都市』→http://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=2008



***



121分だけど90分くらいに思えるほどにスピーディー。

ちょっと話がしっとりしたかと思うと次のシーンではハッとするアクションが突如始まったり、停滞しそうになるとコメディが入ってきて展開がリズミカルで全く飽きない。

暴力描写にコメディを織り交ぜてくるのが韓国映画の特徴だけど、これはそのバランスが絶妙だし、
いかにも笑わせようとしてるんじゃなくて顔は真面目で淡々と喋って笑わすってのはかなり日本人好みかと。
劇場かなりウケてましたから。



***


褒め言葉が尽きないな!


***




マ・ドンソク以外の俳優さんもみんないいです。

登場人物多いけど、多分ほんと脚本と演技がうまいからすぐにそれぞれのキャラに感情移入できる。

警察チームのほのぼの感もいいし、イス組の組長も可笑しいし泣ける…、最恐の敵チャン・チェンの手下の2人さえもちゃんと描いていてグッとくる切ないエピソードもある。

なんども言うけどそれでいて全然くどくない。どうやったらこんな映画を作れるんだろうかいなマジで。


***


実話ベースなんだけど、どんなに無理してでも続編作って欲しい!絶対に!寅さんのように続けて欲しい。




アシュラ(2016年製作の映画)

2018-04-23 | 映画感想
アシュラ(2016年製作の映画)
4.0
音楽が良い。
大乱闘の末の殺害シーンに、あれはなんというジャンルの音楽なんでしょうか、ブルースみたいな歌が流れます。
このシーンに合わせると違和感からちょっとアホっぽいがする。

全体的にはスリラー映画ではあるんですが、滑稽さも散りばめられてる。

ファン・ジョンミンがお尻出して怒りながら部下が恐る恐る彼のズボンをあげるシーンなんか笑わせにかかってるし、〝棒切れ〟がロッカーの上に逃げるシーンも猿みたいで可笑しい。


***


そういう人間の両面を描く演出のための選曲かと思いきや、歌詞を調べて見るともうちょっと深そう。


曲名は「 Way Down in the Hole」。
その歌詞は、イエスと悪魔の話なんですが
〝私たちは悪魔を守らなきゃいけない〟と歌ってる。

難しい歌詞なのでちょっと理解できないのですが。。

阿修羅ってのは仏教で言う所の「戦いの鬼」。
まぁ悪魔のことですわな。
で3つの顔を持つと。


この映画の3つというと、主人公と市長と検察。
弟くんは入らないのかな…。弟は主人公のもう一つの選択肢を選んだ男か。


なんかいろいろ深そうなのですが、追いきれません。。


***


ファン・ジョンミン最高!

最後の大殺戮シーンはトラウマ!
『鬼が来た!』以来のトラウマ!

カーアクションシーンでオッシャレなCG!
こういうCGの使い方は良いね、スマート!

でもせめて120分にしようよ!

シェイプ・オブ・ウォーター(2017年製作の映画)

2018-04-23 | 映画感想
シェイプ・オブ・ウォーター(2017年製作の映画)
4.5
風格がハンパない。

鋭利な社会派という側面が評価されたんだろうけど、演技から美術から音楽から脚本家から全てに風格があってたしかにオスカー作品賞とるに値する顔をしている。

この風格ってやつはどっから湧いてで来るのか。
ギレルモの怒りからか。

おれも怒ってるよ、ギレルモ!


***


傷ついたもの(人魚)は傷を治せる。
迫害する者(マイケル・シャノンが代わりに演じてくれた差別する人間)は傷つけたり殺すことしかできない。

冷戦下のアメリカを舞台にしたファンタジーだけど、もちろん現代の半径3メートルの話。

ちょっと説教くさいかなと思うけど、これくらい十分説明した社会派映画にしないと「奇想天外ショーだったねえ!感動したよねえ!」で片付けられちゃうから仕方なし!

ブラックパンサー(2018年製作の映画)

2018-04-22 | 映画感想
ブラックパンサー(2018年製作の映画)
5.0
前半で実際のアフリカの歴史と受難と、現在の世界情勢と、映画の世界観と敵を説明するのがちょっともたつくんだけど仕方ない。物凄い情報量詰め込んでるから。

でも前半の説明部分もあとでそれぞれ全て伏線となって効いてくるからご安心を。


アフリカっつったっていろんな民族いるしチーター世代もいて、混在してるそれらに全方位的に気を使いまくって、
なおかつギリギリのギャグを入れる余裕もあり、元彼だの元カノだのの話で親近感も沸かせる。



音楽も、
オーケストラとアフリカの民族楽器の融合した曲も盛り上がるんだけど、
対極のビッキビキのエレクトロなブラックミュージックもあって〝アフリカ〟のイメージに偏りがない。


最先端の科学技術を持ったワカンダ王国だけど伝統的な暮らしを選ぶ部族も多くて、先進化=西洋化ではないことも示してる。


ヒーローもの好きじゃないんだけど、『ワンダーウーマン』と『ブラックパンサー』は大好き。



****

ヒーロー映画って、それぞれいろんな技や個性があるはずなのに結局最後は殴り合うだけってのがものすごく嫌いで、、もう2度としないで欲しいくらいなのです。。

でも、このブラックパンサーは殴り合いにも意味があるのでオッケー。
しかも王座を掛けての戦いはスーパーパワーも無力化した状態だし。

全員で戦うとこはそれぞれの部族ごとの個性的な戦闘スタイルで戦うからまぁまぁ面白いこと!



****


全体通してアフリカ風のデザインが素晴らしい。
あのフォントも買いたいくらい。

で、特に最高なのが
エムバクの玉座の木の枝が吊ってあるインテリアと、
エンドロールのグラフィック!

かっこよすぎる!
絵っぽい仕事してる人はみんな見に行ったらいいのに。



****



演技面でも、
ティチャラの頼りない感じもいいし、ナキアは上手いしかっこいいし美人だし、オコエのカリスマとアクション凄えし、シュリちゃん絶対人気出るし、ゲットアウトのダニエル・カルーヤもマイケル・B・ジョーダンも流石に上手い!

黒人俳優っつーとすぐにチンピラや貧困層の役をやらせるけど、こういうゴージャスで複雑な役があれば魅力的に演じられる俳優さんはたくさんいる。

ワンダーウーマンとブラックパンサーによってこれから映画界がどれほど可能性が広がったか。
ワクワクしかない。

ガス人間第1号(1960年製作の映画)

2018-04-22 | 映画感想
ガス人間第1号(1960年製作の映画)
4.0
『ガス人間第一号』っていうタイトルから敬遠してたけど、観てみると素晴らしい人間ドラマ。

恋愛ドラマでもあり、芸術に人生を賭ける女性映画でもあり、ガス人間にさせられてしまった男の再生と社会との闘いでもあり、ギャグもあり(流石に笑いはしないけど)、。


****


オーディオコメンタリーではなんと八千草薫自身が語ってるっ!


****



八千草薫の美しさが地球代表にしても誰も文句つけないだろうっていうくらいの美貌!ほんとに綺麗!

この世ならざるほどの美しさがあることによって、この世ならざる〝ガス人間〟に愛されるという映画的な説得力もある。



****


街並みが可愛い。
車も女性のファッションもオシャレで可愛い。


****



ほんと観て良かったぁ。

『ガス人間第一号』っていうタイトルから想起されるゲテモノ感は良い意味であるし、それを凌駕する人間ドラマ、そして八千草薫の美しさ!

彼の見つめる先に(2014年製作の映画)

2018-04-21 | ネタバレあり
彼の見つめる先に(2014年製作の映画)
4.5
最高かよ!ってヤツです。はい。

観客を『ゲット・アウト』する映画ですね。
「視覚障害者だから、ゲイだから、可哀想だなぁ健気だなぁって思いたかった?」って言われた感じがする。

ゲイ映画って最終的にはブルーな気持ちになるのが多いし、ハッピーなのはバカ騒ぎ系だったりするので、今作のようにピリッとビターな描写もたくさんあるけどラストは…っていう映画は本当に稀有。

ここまで出来が良くて眩しい映画って今まであったかなぁ。


****



主演のジュレルメ・ロボが素晴らしい。
ほんとに目が見えないかと思った。。

それでいて表情の豊かさよ。
そしてあの小動物さ。。
ブラジル期待の星ですね。

繊細なのにうっとおしくない。青春の瑞々しさそのものを体現してる。


****


音楽が最高で劇中歌でも主題歌でもあるベル・アンド・セバスチャンの「トゥー・マッチ・ラヴ」(Belle & Sebastian - There's Too Much Love)は絶対iTunesで買いますけど、インストゥスルメンタルも良い。

歪みのようなチェロの音色は完全に『ムーンライト』の劇版そのもの。

観ている最中「あぁムーンライトから引用したんだなぁ」と思っていたけど、なんと今作は2014年公開。ムーンライトは2016年公開。
びっくり。
むしろムーンライトが今作の音楽を真似た可能性も。
もしくは、この苦悩や切なさを音で表現するにはあのチェロの歪みにたどり着くのかもしれない。


****


ネタバレはコメント欄に。

黄金を抱いて翔べ(2012年製作の映画)

2018-04-21 | 映画感想
黄金を抱いて翔べ(2012年製作の映画)
4.0
ホログラム、アトミック、トライブとあんま面白くない映画が続いたのでなんか映画観んのってつまんねーなーと思ってたところで、良かった!面白い。

井筒監督の『ヒーローショー』をちょっとマイルドにした感じかな。

生々しさがほんとに良かったなぁ。

予測できない方へ計画が破綻して行く感じとか、キャラそれぞれのバックボーンと技能を凝らした活躍が面白い。



****

後半ほんとに手に汗握る金塊強奪作戦が実行されるんだけど、大阪らしいギャグが挟まれてフッと楽になる。

でも、前半で結構容赦無く悲劇的なことが突然起こるので安心できないし、振れ幅の大きさに心地よい疲れが。。


浅野忠信良いね〜。
こういうサイコが合うね〜。
素っぽくていい。

妻夫木くんは頑張ってなりきってて隙もないはずなんだけど、あまりにもナチュラルな浅野忠信とのタッグとなるとかわいそう。。

ウィッチ(2015年製作の映画)

2018-04-21 | 映画感想
ウィッチ(2015年製作の映画)
4.5
勧めてもらって観たけど、面白い。
何やってんだろこの人たち、と思うんだけど、、
最初っから面白いしさらにどんどん面白くなる。。


俳優さんみんないいけどとくに弟ケイレブが最高。
ちょっと精神状態が心配になるほどの狂いよう。。面白いわ。。


こんなにも低予算でこんなにも面白いとは。。


****


で、ものすごく怖いのは、ウチの犬どういうわけかこの映画に釘付けでずっと画面を見続けてた。。チョー怖いんだけど。。



****


以下、映画の導入。

何をしたかわかんないけど、本人にとっては不当に裁かれて村を追い出された男は新たな土地を開墾し、家族とともに暮らし始める。

この家族は恐ろしく厳格なキリスト教徒。娘が主人公。

ある日、まだ赤ちゃんの弟をあやすために〝いないないばあ〟してたらほんとにいなくなっちゃった。。

****

痩せた老婆が裸で体に何か塗りたくってる。果物的なものを煮詰めたような赤いゲル状のもの。不気味。魔女か?
いなくなった赤ちゃんがいるっぽい。

****

家族の家。

赤ちゃん(サム)が見つからなくて母が狂ひ泣きしてる。

娘は寝てる。
別の弟(ケイレブ)がはだけた娘の胸元を覗いてる。お前の姉だろ。

父「きっとサムは戻らない。この苦難に負けるわけにいかない」


****


父とケイレブが森に入る。
森に仕掛けた罠が壊れてる。

父「誰が善き人で誰が悪しき人かは神しか知らない。サムやお前(ケイレブ)が天国へ行けるかは私には言えない」


****


父は、母の銀コップとインディアンが使う罠を母の許可なく勝手に交換してた。

父はウサギを撃とうとしたが失敗。
庭で飼ってるヤギが暴れて父コケる。
どこ行ってたんだと父が母に怒鳴られる。
父の威厳が下がっていき、かろうじて取れていた家族の均衡が崩れていく。。。

そして、ひとり、ひとり、消えていく。。

22年目の告白 私が殺人犯です(2017年製作の映画)

2018-04-19 | ネタバレあり
22年目の告白 私が殺人犯です(2017年製作の映画)
4.0
数年前、テロリストに拉致されて首を切られて失血死していく人を正面から撮影したビデオがネットに出回って、僕は見れなかったのですが、、、興味本意で見た人はかなりブルーな気持ちになったそう。


****


オープニング。
1995年の事件と連続殺人事件についてニュース映像と、わかりやすいスーパーを入れて丁寧に説明してくれるけど、俳優さんやスタッフさんの名前も同時に出さないでよ。。


****

お!と思う演出もあるし、夏帆とかの演技も良かった。

とくに、伊藤英明がいいですね。
重みもあるしアクションもできるし、繊細な演技をしてるときの気恥ずかしさもない。
日本のスター俳優の中でもノワールがハマる人かも。
しかもコメディもできるし、もっともっと飛躍してほしい。


****



殺害シーンはめっちゃいい。
手口としては残忍な方じゃないけど、愛する人が目の前でっていう説得力が最初から強烈に感じられる。

殺される人、それを正面から見せられる人を演じた俳優さん皆さん素晴らしい。
夏帆のお母さん役の女優さん誰だろ。

あのテレビクルーの宇野祥平さん、黒田大輔さんもとてもとても素晴らしい。


****



規模の大きな映画ゆえに細部まで緊張感を持たせられなかったのは惜しいけど、テーマもいいし、ちゃんとした映画を撮ろうという気概もいい。

そんで、ラストはあと2秒早く終わって欲しかった!
走り出した瞬間に終わったらどんなに良かったか。


****

本家『殺人の告白』がエンタメ要素詰め込みすぎ&登場人物多すぎだったけど、
今作はわかりやすいしカッコイイ出来。


ネタバレはコメント欄に。

ウィッチ(2015年製作の映画)

2018-04-17 | 映画感想
ウィッチ(2015年製作の映画)
4.5
勧めてもらって観たけど、面白い。
何やってんだろこの人たち、と思うんだけど、、
最初っから面白いしさらにどんどん面白くなる。。


俳優さんみんないいけどとくに弟ケイレブが最高。
ちょっと精神状態が心配になるほどの狂いよう。。面白いわ。。


こんなにも低予算でこんなにも面白いとは。。


****


で、ものすごく怖いのは、ウチの犬どういうわけかこの映画に釘付けでずっと画面を見続けてた。。チョー怖いんだけど。。



****


以下、映画の導入。

何をしたかわかんないけど、本人にとっては不当に裁かれて村を追い出された男は新たな土地を開墾し、家族とともに暮らし始める。

この家族は恐ろしく厳格なキリスト教徒。娘が主人公。

ある日、まだ赤ちゃんの弟をあやすために〝いないないばあ〟してたらほんとにいなくなっちゃった。。

****

痩せた老婆が裸で体に何か塗りたくってる。果物的なものを煮詰めたような赤いゲル状のもの。不気味。魔女か?
いなくなった赤ちゃんがいるっぽい。

****

家族の家。

赤ちゃん(サム)が見つからなくて母が狂ひ泣きしてる。

娘は寝てる。
別の弟(ケイレブ)がはだけた娘の胸元を覗いてる。お前の姉だろ。

父「きっとサムは戻らない。この苦難に負けるわけにいかない」


****


父とケイレブが森に入る。
森に仕掛けた罠が壊れてる。

父「誰が善き人で誰が悪しき人かは神しか知らない。サムやお前(ケイレブ)が天国へ行けるかは私には言えない」


****


父は、母の銀コップとインディアンが使う罠を母の許可なく勝手に交換してた。

父はウサギを撃とうとしたが失敗。
庭で飼ってるヤギが暴れて父コケる。
どこ行ってたんだと父が母に怒鳴られる。
父の威厳が下がっていき、かろうじて取れていた家族の均衡が崩れていく。。。

そして、ひとり、ひとり、消えていく。。

未来よ こんにちは(2016年製作の映画)

2018-04-16 | ネタバレあり
未来よ こんにちは(2016年製作の映画)

こんなにもオトナな映画が日本にあるんでしょうか。
(あったらごめんなさい。。)

オトナっつってもエロとか禁断の…とかじゃないですよ。

時の流れに乗ってる生物だったらいつか来る喪失の時。
この映画の主人公の場合はそれが一気に来るもんで、かなり映画的だけど。

子供の独立、夫の浮気により離婚、母の死、仕事も時代遅れ感…。
時間が経過するってことは変化し喪失すること。

フランスの、いや地球の至宝イザベル・ユペールがまたもや素晴らしい。

普通の人を演じることもできるんだ(笑)。
それでいてカッコよくて尊厳があって憧れる。

どんどん転げ落ちて行く物語はほとんどコメディのようで
その中に繊細な心情表現があって「おおっ!」と思うし、
フランスの田舎の美しさと
美しいからこそのめんどくささと
オムファタールとの(ネタバレ)。。


***

哲学者が「幸福」や「孤独」についてそれぞれが思索して来たってことは、太古の昔から人間は「幸福」と「孤独」と戦いながら生きていたんだなと思いました。



映画『心と体と』

2018-04-15 | 映画感想
映画『心と体と』


減点するところが見当たらないんですが。。

冒頭とラスト手前にビックリ描写があるんですが、それも毎日あるところで、または日常的にどこかでは行われていることですし。

特に冒頭のは本当に心がガンガン揺さぶられるのですが、その後の何気ない生活描写や森の中の映像にものすごく深い意味を感じるようになります。

『心と体と』👉http://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=1998


物語としてはオーソドックスなラブコメの作りです。
この2人のやり取りは誰もが共感するし、至る所で笑えると思います。

ハンガリー映画ですが、淡々としたギャグが日本人でも普通に通用するので、笑うところでは笑ってビックリするところではビックリして泣けるところで泣ける映画だと思います。


***

映像が常に素晴らしくキレイなのですが、特に鹿パート。
所々で挿入される森の二頭の鹿の映像がまぁ美しい。

かなりの接写で撮っていて、呼吸によって肺が広がってそんで背中が盛り上がってそれによって腰のあたりの筋肉もちょっと動いて、もちろんそれにつられて毛も動いて…っていうひとつひとつが美しい映像で見せられる。

「生きてるって動くってことなんだな」とものすごく単純なことを説得力ある映像、というか鹿という〝命〟を見せられて強く感じる。

オス鹿がメス鹿がモーションかけてフラれた時のオス鹿の目が、完全に告白してフラれた男子の目になっていて可笑しい。

***

目の描写にインパクトがあって、野生の鹿との対比として食品加工会社にいる牛の目。
この牛が空を見上げる目。。。勘弁してください。。と思う。。

***


水の中で氷がカラカラとぶつかる音を使った音楽も素敵。寒々しいんだけどどこか滑稽だし生活感もある。
自然の音なんだけど、生活の中でもよく聞く音でもあって、これはこの映画のテーマに沿うものだと思う。


***



会話や仕草のひとつひとつが丁寧で、意味があって見ていてほんと感心します。

モテ男が主人公の女性を口説いているシーンで、サッと通り過ぎるモブの女性がそれを見て「は〜ぁ」とため息を着く仕草をしてたり。
これだけで、このモテ男が普段から誰彼構わず声かけてるのがわかるしそれが周囲からは疎まれていることもわかる。

主人公の女性がCDショップで視聴するシーン、あれもなくてもいいけどあれがあることで女性の特性がより強調されるし、店員さんの対応にもグッと来るし、最終的に選ばれた歌も力が増す。


***


自信をなくておそらくスランプに陥ったのであろう分析医さんや、昔モテモテだったっぽい掃除婦のおばあさん。
主人公の男性のこと好きだったっぽい女性同僚や。
〝本当の犯人〟が最後に明かされることによってモテ男が結構繊細な男だったことがわかったり。

登場人物は少ないけど、みんな多面的で面白い。


***

そして、こういう上品で面白い周囲に囲まれながら進行していく主人公2人のラブストーリーは驚くほどにオーソドックス。

老齢に差し掛かり生きる希望もない男性と心にちょっと事情があり対人関係が苦手な女性の恋。
この2人が同じ夢を見ているというのは考えてみればだいぶメルヘンなのですが、
映像のすごさとか人物描写の的確さから言って全然違和感なく受け入れてました。

その夢の描写がまた凄いしね。。


****


この映画で得られるメッセージはたくさんあって、一体どれを受け取ればいいのだ!と悩むかもしれませんが、ご自分が感じたことそのままでいいんだと思います。

人間は考えすぎ。たまには動物のように一瞬一瞬を生きてもいいのかも。



****


マリーアを演じる女優さんも常人ならざる感じで素敵なんですが、エンドレを演じる俳優さんが凄い。

当然ハンガリーの名優なのかと思って観ていたら、演技経験のない「翻訳家、編集者」の方だそう。
表情の細やかさとか存在感とか風格とか、演技経験なくてこんなことできちゃうの??驚き。。


『心と体と』👉http://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=1998