映画感想(ネタバレもあったり)

映画コラム/映画イラスト

ラストネタバレあり 『下女』(1960) 『パラサイト 半地下の家族』に強い影響を与えた歴史的名作映画

2021-02-26 | 映画イラスト
下女(1960年製作の映画)
하녀/THE HOUSEMAID
製作国:韓国上映時間:108分
監督キム・ギヨン
出演者キム・ジンギュ チェ・ジュンニョ イ・ウンシム アン・ソンギ





『パラサイト 半地下の家族』に強い影響を


『パラサイト 半地下の家族』のポン・ジュノが影響というか、インスパイアというか、引用したて感じで公言しているのが、韓国の古典的名作『下女』。
下女とは召使いの女性のこと。
確かに、金持ちの家に貧しい人間が入り込んで家を乗っ取っていくという筋は一緒だし、
「階段」や「悪臭」というモチーフが両作品とも印象的に使ってる。
共通点は多いとは言えやはり思い出してみても
『パラサイト 半地下の家族』は凄かったなと改めて思います。
情報量も人物も多いし、映像もかっこいいし、しかもコメディとしてガンガン進む推進力もすごかった。




動きます。堕ちます。
 ↓ ↓
  
アニメ版『下女』四コマ映画→https://www.youtube.com/watch?v=6220xiGfybo






現代でも通用する性差別に対する批判的な描き方

『下女』は主役が下女なので、女性映画なわけです。
格差社会も批判しているけど、
性差別に対する批判的な描き方は、現代でも古くない、今でも十分使える内容です。
1960年の映画なのに。
すごいですよ、監督キム・ギヨン。
特に若い女性に対する男(特に中年)の酷さ、がちゃんと批判的に描かれていますね。

ラストシーンが不気味。。。
突然始まるコント番組みたいな。。
あれを真っ直ぐ「若い下女には気をつけましょうね♪」って捉えてはいけない。
これだけの凄惨な人生を見せられて、
陰惨な事件を並べられても結局は
「美しくて若い女には気をつけないと!怖い怖い!」って片付けちゃう「男」と「男社会」への批判ですね。


あのアホらしいラスト

この映画が下女がやっぱ主役ですし、
他の登場人物もほとんど女性でしたから、女性映画なんですよ。

それだけずっと女性を描いてきたけど結局「若い女には気をつけませんとなぁ!ハッハッハ!」ってのはやっぱ、
男のこういう感じを批判している、と思います。
あのアホらしいラスト

もう、、ぜひ見て欲しい。
それまで一回も笑ってなかったある人物がもう、ニッコニコなんですよ。
キラッキラの笑顔。
こんな特異なラストなんだから、そこには痛烈なメッセージがあるはず。



下女役のイ・ウンシムの怪演

『パラサイト 半地下の家族』との違いは、下女と妻が立場が逆転するとこですね。
ほんとに家を乗っ取る。
家族の食事を作るために雇われた下女なのに
いつの間にか妻が下女の食事を作るようになる。。
下女役のイ・ウンシムの怪演もあって、ずっと面白い。
ネズミを手掴みしたり、何回も窓から侵入したり、殺鼠剤で家族を翻弄したり、、
ご本人もどれほど楽しかっただろうと思いますよ。
ラストの階段落ちが不気味だし、可哀想だし。
単なるサイコパスではなく、
這い上がる機会もないし
這い上がる意欲を持たされることもなかった下層の人間の哀しさ。。

****



ラストネタバレは以下に。


夫・許してくれるか?下女を姦通して妊娠させた私を。
妻・そんな汚い体で私を抱いたの?私の体にも悪臭がついてしまったわ!
夫・僕を信じて助けてくれるんだろ?
妻:あなたを信じたから苦労もしてきたのに。私を物欲の女だと思ってたのね!あなたが死んだ方がマシよ!
夫・間借りならこんなことにならなかった!お前が金に夢中だからだ!
妻・私の責任だと?工場は従業員が姦通されたことを許さないでしょうね。
夫・女工じゃない。
ピアノの音が聞こえる。
妻・あの娘(下女)なの?あの娘にひざまづいて助けてもらうのよ!
階段を登る妻。
めちゃくちゃにピアノを弾く下女。
妻・妊娠してるって
下女・出て行けというなら出ていくわ。女工たちが助けてくれる。
妻・女同士なら助け合えるわ。私があなたを助ける。
下女・奥様の言う通りに。奥様を苦しめたくない。
泣き崩れる下女。
***
妻・簡単に説得できたわ。
階段の上から夫婦の会話を盗み聞きする下女。
妻・苦労を水の泡にしたくないもの。
***
階段から転げ落ちて床に倒れる下女。
妻・医者を呼ぶわ。
下女・黙って見てるつもり?
夫、下女をお姫様抱っこ。一連の流れを見てる子供ら。
下女・あなたの子が死んだのよ。奥様の命令で!私も死ぬわ!
医者到着。
妻・死んだそうよ。あなたの子がね。
苦しみ悶える下女。
下女・水を!水を頂戴!この家の奴らときたら身勝手なもんよ!お母さん、水を飲ませて。。。
***
下女・奥様、私を助けて!
妻・あなた医者を呼んで。
頭を抱える夫。
***
妻・10日も過ぎたわ。
下女はずっとベッドに寝ている。妻が一切の面倒をみている。
下女・血が止まらないの
妻・血?世の中が逆よ!私が愛人に食事の用意をするなんて!
妻、吐き気。
妻・言い過ぎたわ。今日産まれるかもしれないの。
妻、妊娠していた。今日出産予定日。
下女、お粥的なものをドアに投げつける。
****
妻、家で出産。
****
弟、下女の部屋のドアを笑いながら蹴る。
****
妻・すべて計画通りよ。あの女をどうやって追い出すか。
****
姉、ピアノを弾いてる。
弟、絵を描いてる。
窓から下女が見ている。
姉・お父さんがおかしな女は相手にするなって!
弟・喉が渇いた!水を持ってこい!
***
夫婦の寝室に入る下女。
下女・三日も食事なしなんて殺す気?
妻・そうなの? と夫に聞く。
夫・怖くて。。。
妻・私が作るわ。飢え死ににはさせない。
下女・あんたたちを道連れにして死ぬわ。
生まれたばかりの赤ちゃんの手を握る下女。
下女・かわいいね。私の子は?この家じゃ夫が妊娠させて妻は下ろせと。私の体はおもちゃ?父と同じになるかも!
赤ちゃんを奪う下女。
妻・下女を張っ倒す。
夫、下女をビンタ。部屋から追い出す。
下女、炊飯器の米を食う。水を飲む。視線の先に殺鼠剤。手に取る。
水を入れたコップ。
****
さっき水を飲みたいって言っていた弟にコップを持っていく。
弟・お前が先に飲んでみろ
下女、一口飲む。
弟、それを見てから全部飲む。
下女、口から水を吐く。
下女・死ぬわよ。
パニックになって階段から落ちる弟。死亡。
姉・こいつが毒を!
下女・水道水よ。嘘はあんたたちから習ったわ
夫・お前が殺したのか?
下女・私の子もよ!
夫・お前が死刑になるまで死にきれない!警察へ行く!
妻・この子は生き返らない。世間に知れたら家族は露頭に迷うわ
下女・いい気味よ
妻・服でもなんでもあげる
下女・先生(夫)が欲しい
妻・好きにして
下女、あなた、私の部屋に来て
***
数日後?
下女・私も自殺するわ。遺書を書いたの
遺書を破る夫。
下女・死なせてくれないの?
夫・葬式は終わってない
***
弟の葬式。
***
姉・いつか弟の復讐を
下女・水飲む?
姉・飲まないわ!
***
下女・私の隣で寝て
夫・人殺しの隣で?
下女・警察に行くわ
妻・あなた、部屋に行って
下女・明日の朝ごはんを持っていて と妻に言う
妻・あなた、体が良くなったら、また裁縫の仕事してお金ができたら子供を連れて家を出るわ
姉・父さんどこへ?
下女・私と寝るのよ
姉・水は飲まないでね
夫の服を脱がし、肩を噛む。はっ倒される下女。足に縋る。神で夫の顔を覆う。足を絡める。
****
ミシンをする妻。また具合が悪そう。
台所。殺鼠剤がなくなっているのに気づく。
***
後日?
殺鼠剤が元の場所に戻っている。スープの中に入れる。
姉・リスが死んだ!あの女が殺したのかも!
料理を運ぶ妻をじろっと睨む姉。
下女と夫が二人で食事を取る。
下女・私のだけ砂糖が入ってる!毒を入れたわね!殺すつもり?昨晩、毒と砂糖水を入れ替えたのよ
夫・ほんとか
妻・地獄から家族を救ってあげたくて
下女・出て行って
姉が妻を部屋の外に連れ出す
***
姉。普通に歩ける。歩けないフリしつつ2階へ。
下女と夫が一緒に寝ている。夫は裸。
姉、毒を手に取る。
窓から下女が見ている。
姉を追い出し、毒は壺に隠す。
***
下女が作った食事。
姉・毒は食べない
下女・もう二日よ。食べなさい。大丈夫だから、お母さんも。
姉の口にご飯を詰め込む下女。泣きながら食べる姉。
ミシンをやり続ける妻。
***
タクシーでキョヒンが来た。女工。夫にピアノを習ってる女。下女と同部屋だった。
キョヒン・ピアノを触りたくて
夫・ピアノが仇になった
台所で皿を落とす下女。包丁を手に。
下女・弾かないで。下心があるのね。悪い女だわ。
と、キョヒンに包丁をむける。
下女・追い出して。この家は私のものよ
キョヒン・先生!
夫・帰ってくれ。ここは人間の住む家じゃない
下女・先生と呼ばないで!この人は私のものよ!
下女、キョヒンの肩を刺す。家を出て行くキョヒン。
****
夫・もう終わりだ、明日警察に行く。
下女・子供が二人死んだ。幽霊になってる。私と奥さんが一緒に死刑台に。
妻・妻は許してくれる
下女・一緒に堕ちてもらうわ
夫、下女の首を絞める。殺せない。
下女・死んで欲しいなら死ぬわ。一緒に死んで。嫌なら奥さんを殺して私も死ぬ。私を世界で一番幸せな女にして!
抱き合う二人。
****
毒を入れた水。
下女・もう怒らないで。先に飲んで
夫、飲み干す
夫・可哀想な女だ
下女・いいえ、あなたのような素晴らしい人と永遠に一緒だから。天国では枯れない花が咲き乱れて、真珠の大地が輝いているそうよ。
手を握る。恋人握り。
苦しむ二人。
手を解いてタバコを吸う下女。
夫・お前の言う通りにした。でも最後は妻の隣で死にたい。命はお前にくれてやったが、魂だけは渡さない。
下女・だめよ。今逃したら天国で会えない。
階段を降りて妻のところへ行く夫。
しがみつき、頭を何度も打ちつける下女。
力つき、階段に倒れる。仰向けになって階段を落ちる。
妻のいる扉の前。
ミシン台で寝ている妻。
夫、張っていく。
ミシンの音で夫に気づかない。
ミシンだに手をかける。気づく。
夫・僕は死ぬ。最後までお前を愛したが裏切って全てが壊れた。僕が死んだからお前はどうなる?子供を頼むよ。
姉、寝ている。
夫、死亡。
夫の目を閉じる妻。
妻・私が家を欲しがらなければ…
赤ちゃんの泣き声
****
妻・理解できないわ。教養と人格のある男が下女に誘惑されるなんて。
新聞を読んでいる。
夫・それが男の弱点だ。女を見ると原始に戻りたくなる。
妻・原始?男は下品な生物だと認めたら?
下女、紅茶を運んでくる。
弟も生きている。
妻、下女を部屋から追い出す。
妻・若い下女は「虎の前の生肉」よ
夫・ははは!その通りだ!
夫、カメラ目線。
夫・男は歳をとるほどに若い女に幻想を抱くもの。だから女に引っかかったりして時には身を滅ぼします。あなたもそうだし、違うと首を振る亜タナも。
めっちゃ笑顔の夫。ウィンクまでしてくる。指をこっちに刺す。笑う。
終わり







動きます。堕ちます。
 ↓ ↓
  
アニメ版『下女』四コマ映画→https://www.youtube.com/watch?v=6220xiGfybo

映画『あの頃。』原作読まなきゃ良かったなぁ。。。

2021-02-21 | 映画感想
あの頃。(2021年製作の映画)
上映日:2021年02月19日製作国:日本上映時間:117分
監督/今泉力哉 脚本/冨永昌敬 原作/劔樹人 出演者/松坂桃李 仲野太賀(太賀) 山中崇 若葉竜也 芹澤興人 コカドケンタロウ 大下ヒロト 木口健太 中田青渚 片山友希







原作『あの頃。 男子かしまし物語』読みました。

読んじゃいました。。。


****


人として割とクソな言動を行なう男子グループのわちゃわちゃ感を映画として観れるレベルに抑えていたのは、

俳優陣の愛らしい演技と今泉監督の懸命な演出があってこそだった

というのがわかりました。。


時折「なんなのコイツら…」と訝しげに見る"女性"の視線が入ってくることで
別にこの男たちの全ても賛美してるわけじゃないよ、というのが伝わっていました。

しかもそれが"女性の視線"であることで
"男性性の暴走"を批判しているニュアンスも強まるので
映画版は嫌な感じが抑えられていたんだと思います。


****


映画内のエピソードはほとんど原作通りなんですけど、
改めてエッセイとして読むと「ほんとにこんなことする人間いるんだ…」とちょっと引きながら読みました。。


決定的だったのは「ゲイ疑惑」。

ある登場人物について女っ気がないなどの理由で「ゲイ疑惑がある」と、書かれてまして。

本の中盤あたりなんですが、本閉じましたよね。

ゲイは不正でも犯罪でもないので、疑われるような存在でもないし
「暴かれるべき真相!」でもない。


もしかしたら後半のページでフォローがあるのかも知れないと思って
読み進めましたけど、ない。

それどころかこの人物は一切出てこない。。

「ゲイ疑惑があったけどほんとはゲイじゃなくて良かった〜」っていうのがなかっただけマシだったと思いますけど。

もしゲイだったらこの仲間からは除外されていくんでしょうかね。
ゲイであっても今までのなんら変わらない関係性だったのでしょうか。
だったら「疑惑」って何?
ギャグ?冗談?
笑われるような存在なの?



実際この映画版にはこの人物出てきませんしね。。

原作にもこれ以降一切出てこないし。。


******


あと、

あの頃楽しかったなぁ、じゃなくて
今が一番楽しいよ

というメッセージがこの映画のいいところだし
感動したんですけど

この主役の人、映画では全然描かれてなかったですけど、、、
そりゃ楽しいでしょうよ!っていう状況にあるんですね。。

そりゃそうでしょうね。。と思って、シラけてしまいました。。。。。。


いい話としてほんわかと朴訥とした雰囲気で終わってるけど、、、
あぁそうでしたかぁ…みたいな気持ち。。


******


映画版はうまく作っていました。

でも
うまく作ってたな〜ってのは
うまく隠してたな〜ってのにも似てるんで、、
映画自体もちょっと下がっちゃいました。。


読まなきゃ良かったなぁ。。。。



******



原作読む前の感想。。楽しそうな文章。。。

 ↓ ↓ ↓ ↓






目次
  1. さすがの今泉監督。
  2. 若手俳優の層の厚さが要因かなと思います。
  3. ちゃんとコメディとして面白い。ちゃんと笑える。
  4. 『花束みたいな恋をした』感がありましたね。
  5. でも、違った!!!!!


さすがの今泉監督。

濃い原作の方が今泉監督は輝きますね。
僕が若かった頃の邦画、
特にこういう「人気原作!」「人気俳優出演!」みたいな映画って
もれなく絶対100パーつまんなかったのに
今の邦画はちゃんと良い映画になるんだもんね。。




若手俳優の層の厚さが要因かなと思います。


20〜30代の俳優さんたちの芝居にかける本気度が昔よりはるかに上がってる気がする。
バブルの時代(僕はバブル世代じゃないですよっ!)に浮かれてはしゃいでて
映画とか文化とか全然吸収する欲求もなかった人たちとは違って、
世界の映画、文化を普通に吸収しまくってる俳優さんたちが
「自分たちだってあのレベルの映画作れるよ」ってな気合いで映画に臨んできてくれたおかげで
ほんと近年の邦画のレベルが上がってる感じすんのよね。
ほんとに楽しいですよ。誇らしいですよ。
ありがとうございますよ!

****





ちゃんとコメディとして面白い。ちゃんと笑える。

映画の中で「○○かよっ!」っていうツッコミもなくてもちゃんと笑いが成立する。
ツッコミは観客ができるから。
若葉竜也が「夢芝居」を淡々と歌うだけでちゃんと笑いが起きてましたからね。
すごいことですよ。
ちゃんとそれまでに映画の空気と観客とか繋がっていたから成立する笑い。
嬉しい映画体験ですよ。
コカドケンタロウが普通に喋るだけでもう面白い。

****





『花束みたいな恋をした』感がありましたね。

幸せの絶頂から始まって………という構造。
仲間たちとアイドルを推してる幸せな時間もいつかは終わる…。
コカドケンタロウがネクタイを締めるシーン、あ…終わるんだって思いましたね。
ってか、始まった時からもうすでにそう遠くないいつかの終わりが匂わされてましたね。。。
ずっと切なかった。
楽しければ楽しいほど切なかった。

**







でも、違った!!!!!

この登場人物たちは常に今が一番楽しい人たちっ!
「あの頃、めっちゃおもろかったな。でもそう言うてるお前もめっちゃおもろいけどな!」
by 仲野太賀
仕事始めても
名古屋と東京と離れても
ずっとめっちゃおもろいままでいられる。

楽しい時間はいつか終わるなんていう呪いは、この映画にはない。
それは、ずっと続いてるハロプロのように。

韓国映画『ノンストップ』地上1万メートルの密室アクションコメディ!

2021-02-10 | 映画感想
ノンストップ(2020)
오케이 마담/OK! MADAM上映日:2021年02月12日製作国:韓国上映時間:100分


ハイジャックされた飛行機には
偶然、何年も前に工作員を辞めた女性が乗っていた!
美しい女性工作員だった彼女の現在と過去の写真を見比べて
「これが同一人物か?」
「ここは韓国ですよ」
という韓国ギャグも面白い。。



『오케이마담』四コマ映画→http://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=2665
(↑ハングル版です。多分カタコトです。。ごめんなさい。。)








飛行機の中の道具を使った攻撃や
狭さを利用したアクションが痛快で楽しいです。

***

誰が敵か味方か、観客をも騙してくるので意外と気が抜けない。
「そういうことだったのかっ!」とラストで謎が明かされたり、
真相が明らかになったりしますが、
前半でちゃんとつかんでいないと、、ちょっと難しい。。

***

元工作員の女性を演じたオム・ジョンファが面白いですし、、アクションもカッコイイ!
隙なくコメディエンヌとして映画の真ん中に立ってくれてるのが嬉しい。

***

特筆すべきは、男性乗務員のぺ・ジョンナムですね。
長身のイケメンなんですけど、ほんとにコメディが似合う。
ナイフを顔に当てられてちょっと感じちゃってる表情とか、、、
「エージェントに憧れてるちょっと虚言癖のあるおっちょこちょい乗務員」
ていうだけでキャラが渋滞してるのに
なんでわざわざドMキャラもちょっと載せてるんだか。。
でも、ぺ・ジョンナムの爽やかでスピード感のあるコメディ演技でスカッと楽しめるキャラになってます。

****

中国語が話せないハイジャックの1人とか、、
孫をアメリカ国籍にするために嫁にハワイで出産させたい姑とその嫁とか、、
高所恐怖症のキム・ナムギルとか、
面白キャラがてんこ盛り。。
あ〜、ハワイ行きたいな〜(行ったことない)。



****



『ヤクザと家族 The Family』 ラストネタバレあり ネクストレベルの綾野剛と俳優全員のキャリア最高の演技!

2021-02-08 | 映画イラスト
ヤクザと家族 The Family(2021年製作の映画)上映日:2021年01月29日製作国:日本上映時間:136分













キャラクターが自由に動いてる。


ダメな映画には、
物語に奉仕させられて消費されるキャラクターがよく出てきます。
作り手が言いたいことを言うために使われるだけのキャラたち。
使い終わったら画面から消える。
こういうキャラがいると悲しい。虚しい。
人間を使い捨てにしているわけだから、いくら素敵なメッセージを発信する映画だとしても、そこで引っかかっちゃう。
この映画のキャラは自由。
特に終盤のキャラの入り乱れ方はすごいですね。。




テーマである「生きる権利」と合致したラスト


僕はラストが長い映画あんまり好きじゃないし
この映画はラストが長い方だと思いますけど
このラストには意味がある、というかこのラストはこの映画の生命力の証拠です。
キャラが消えてくれないんですよ。。
それぞれ強力だから。。
いつまでも画面から去らない。。
いなくなったと思ったらバッと戻ってくる。
そして戻ってくるのにはその人物なりの重大な理由がやはりちゃんとある。。

「生きる権利」の映画ですからね、この手法が合致している。
手法というか、恐らくキャラが動いちゃったんだと思います。
こういう映画は面白い。




キャリア最高の演技




俳優さん全員が恐らくキャリア最高の演技をされてますよ!
舘ひろし、尾野真千子、磯村勇斗、市原隼人、北村有起哉、みんな最高。

特に磯村勇斗は可愛らしい顔だし、失礼ながらここまでの人だとは思っていなかったのですが、、、怪演と言っていいくらいでした。


綾野剛の凄さ

まぁ、言うても綾野剛です。綾野剛の凄さ。
インタビューを色々見て、主演として現場を引っ張り、俳優たちのケアをし、監督ともアイデアを出し合ってこの映画を作っていたのがわかりました。
それでいて自分は自分でまたキャリア最高の演技をしてましたからね。。
なんか「演技」という言葉で済ませていいのかと躊躇するくらいの、、、
「存在」?「映画」?「生きるということ」?



綾野剛がインタビューで語っていたことが印象的でした。

これは間違った考え方だと思いますが、
僕は俳優をやっていることで初めて生きることを許されている気がする。
生きることを許されるために俳優をやっている

的なことを言っておられました。

この熱気が空回りする俳優さんも多いと思うんですけど、
これがちゃんと傑作として結実させられるってのが本当にすごい。。



日本映画、次のレベルへ




近年、日本映画が次のレベルへ行きたがってる感じがしますね。
世界に打って出る熱量がグツグツ煮えたぎってる感じ。
やっと世界の人たちが「アジア人の顔」に見慣れてくれてるんで、、
ここで日本映画らしい「狂気」と「繊細」と「感動」で切り込んでいってほしいんでですけどね。。


****

尾野真知子による(ほとんどアドリブだそうです…)コメディパートも面白いですし、
ヤクザ映画らしい「いろんな殺され方」もちゃんと面白いです。
駿河太郎ちゃん、良かったですね。。





アメリカのアカデミー賞外国語映画賞候補(予想)

僕の予想は本当に外れるんですけど、、、
綾野剛と磯村勇斗は演技賞総ナメしますし
多分この映画は
アメリカのアカデミー賞外国語映画賞の日本代表になります。
そしてノミネートされると思います!

****

僕の好みで言うと、ちょっと湿っぽ過ぎて。。。
ラストあたりの感動を誘う音楽にちょっと白けてしまいました。。すみません。。。
個人的にはもうちょっとカラッとやってほしい。。
でも、これが日本映画なんだと思いますので、この方向でガンガンやってってください!

***



ネタバレは以下に




大原(二ノ宮隆太郎)が運転する車。後部座席に柴咲(舘ひろし)と賢治(綾野剛)。
柴咲:加藤を決裂しちゃったよ。これからはお前たちの時代だからな。
様子がおかしい賢治。
柴咲:女ができたのか?
キョドる賢治:どうなんすかね
柴咲:顔見りゃわかるよ
賢治:気の強い女で
柴咲:良かったじゃねえか
窓外にフルフェイスヘルメットの二人乗りのバイクが接近。銃撃される。大原死亡。

大原の葬式。
柴咲:会長!そんな話飲めませんよ!
組長である柴咲も会長には逆らえない。柴咲も中間管理職。
大迫(岩松了):柴咲組が全員路頭に迷いますよ。今回の件、警察に預けることにしてください。
賢治:俺にけじめつけさせてください
柴咲:ケン坊、もう終わったことだ
大原殺害がテレビのニュースで報じられる。

加藤のとこに市長と大迫。加藤、大迫に大金を渡している。

賢治、川山を銃殺しに向かう。
川山が射殺。撃ったのは、賢治より先に着いていた中村(北村有起哉)。
賢治:柴咲組には兄貴(中村)が必要です。俺が被ります
賢治は撃たれて瀕死の川山のお腹をさらにグチュグチュやる。


その足で賢治は由香(尾野真千子)の家へ。
「あ、こいつ本物のヤクザなんだ…(こないだ「ヤクザってなんで夜なのにサングラスしてんのぉ?」とかいじっちゃったけど…)」と思いながら、血だらけで震えている賢治を抱きしめる由香。
キスからの朝チュン。賢治はもういない。300万円置いてある。

賢治、逮捕。感動的な音楽が流れるが、刑務所の檻がガチャンッ!と閉まる音で音楽も切れる。

2019年。賢治、出所。
ガランとし事務所。柴咲組という看板も禿げている。

柴咲:ご苦労だったな。これ気持ちだ。
柴咲は賢治に金が入っているであろう封筒を渡す。しかし、めちゃくちゃ薄い。。。
体も声も弱くなった柴咲。

賢治にあてがわれたアパートはものすごく安そう。
下っ端の新人が賢治にケータイを渡す。
賢治:自分で買うよ
下っ端:買えないんす。ヤクザはケータイ持てないんす。

出所祝い。全員で7人。寂しく暗い。
賢治:今、どんなシノギしてんスカ
柴咲:何してんだろうな

組員のおじいちゃんたち、海に入って密猟。なんか小さい魚?を取ってる。
「これが飯を食わせてくれるんだ!」


産業廃棄物処理の仕事に就いた細野(市原隼人)。結婚して小さな娘もいる。
細野:5年間はヤクザやめても仕事に就けないんです。人間として扱ってもらうまでに5年かかるんです。
賢治:由香って女、今何してるか知ってるか?


地下格闘技。背中に翼のタトゥーの男。翼(磯村勇斗)。半グレになっていた。
賢治に「俺らみたいになるなよ」と言われ「うんっ!」と答えていた快活で勉強好きだった翼。

細野:兄貴といたら俺も反社反社って言われちゃうんす
と焼肉屋の代金をテーブルに置いてサッサと逃げ帰っていく。
寂しく見る賢治と店長(寺島しのぶ)。


由香のいたクラブは閉店。
翼:ヤクザが表立って仕事できなくなってから、俺たちが仕事してんす。今じゃ義理人情で食っていけないすからね。


賢治と中村。中村は組を潰さないために禁断のシャブを売っていた。賢治の父親はシャブで死んだ。それが許せない。
中村がシャブを売っているのを柴咲も知らなそう。
賢治:シャブ売って密猟して、それが極道か!
中村:店潰されて、親父が入院して!
殴り合い。
賢治:兄貴に組任せたんだろ!
中村:すまん
賢治:俺もすみません
賢治:兄貴もシャブやってんすか?
中村:そこまで落ちてねえよ
中村:綺麗事じゃ食えねえんだよ


死後の世界のような事務所に賢治が1人。
細野:由香って女、見つかりました!

役所で働いている由香。賢治の姿を見てギョッとする。

由香、300万円を渡す。由香は使ってなかった。
賢治:俺んとこ来いよ
由香:養える?私と娘
賢治:それ俺の?
由香:んなわけないでしょ!親がヤクザなんて!あの子に絶対言えない!

柴咲の入院先。賢治。
柴咲:ヤクザしか生きられなかった奴らをどこが拾ってくれる?お前は組を抜けろ。まだやり直せる。

組の兄貴たちが密猟している。中村は自分の腕にシャブを打っている。


朝。賢治と由香とその娘(アヤ)。幸せな朝の朝食シーン。穏やかな照明。幸せすぎるシーン。つまり、フラグ。。。。

賢治の除籍通知。全国の組(警察にも?)に送られる。


侠葉会の加藤の家に翼が呼ばれる。
加藤:俺らが面倒見てやるよ
翼:俺らヤクザじゃないんで


3人で幸せな暮らし。
アヤ:私のお父さんに会ったことある?
賢治:会ったことはないな

賢治、細野が勤める産廃業者に就職できた。
参拝業者の若手の男:ヤクザって辞めた後も5年働けないんですか。
細野:今回は俺が社長に無理言って頼んだんた。


翼と大迫。
翼、大迫が加藤から金を受け取ってる写真を、大迫に見せる。
翼:教えてくださいよ、父のこと


参拝業者の若手の男:こんなことになると思ってなかったんです!
細野がボロボロに殴ってる。
若手の男がTwitterに「うちの職場にヤクザがいるんだが??」と賢治と細野の写真をアップしていた。

賢治の就職は違法だった(?)ので、もちろん賢治は失職。おそらくその責任を追って細野も失職。

役所。ざわざわしている。由香が上司に呼ばれる。
上司:ネットでここまで騒がれると
由香も失職。

アヤが学校でハブられる。

大迫:お前らのしてきたことにしてみりゃ、当然の報いだろう!

賢治、由香の家に。もう夜だがアヤは帰ってきてない。

由香、土下座。お願いです。出てってください。

由香たち、引っ越し。アヤも転校。


死に際の柴咲:ケン坊、家族大切にな

賢治が書いた由香への手紙:普通の人間になりたかった。少し退屈でもいいから。そんな生活がしたかった。アヤを産んでくれてありがとう。

細野、帰宅すると家がガランとしてる。妻と娘が出て行ってしまった。孤独。

翼、徒党を組んでバットを持って大迫を加藤を襲撃しにく。
バット殴られる大迫と加藤。
そのバットを持っていたのは賢治。

遅れて到着する翼。


堤防。海を見ている賢治。
細野が賢治の腹を刺す。

細野:アンタさえ戻ってこなければ。畜生、兄貴。
抱き合う2人
賢治:細野、ごめんな


柴咲、病院で死亡。

賢治、海に転落。映画の冒頭の海に沈む死体は賢治だった。海の中から見える太陽の光に手を伸ばす賢治。


堤防に花を添える翼。そこにアヤ。

アヤ:あんたヤクザ?
翼:ヤクザなんて食えねーだろ
アヤ:お父さんでどんな人だったの?
翼:少し話そっか

おわり