映画感想(ネタバレもあったり)

映画コラム/映画イラスト

映画『Winny』 東出昌大の存在感の危うさ 

2023-10-31 | 映画感想
Winny(2023年製作の映画) 
上映日:2023年03月10日
製作国:日本
上映時間:127分 
監督 松本優作 
脚本 松本優作 岸建太朗 
出演者 東出昌大 三浦貴大 吉岡秀隆 渡辺いっけい 吉田羊 吹越満 皆川猿時 和田正人 木竜麻生 渋川清彦



面白い!

僕はwinny事件全然知らなくて
映画観てから色々調べました。

↓こちらの動画が一番わかりやすかったです

壇俊光弁護士と語る「Winny事件」
https://www.youtube.com/live/jjhQh8kwk3U?si=Hx0C2Ta4z8zaa2Py


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新しい技術が世に出たときの起きてしまう不具合の責任を技術者に背負わせてはいけないわけね。

罪に問われるかもしれないって恐怖があると技術者は萎縮しちゃうし
海外へ流出してしまうし。

(実際優秀な人はGoogleに流れてしまったらしい)

で、
不具合があって違法行為(著作権違反とか)が行われた場合は、
その都度技術を開発して修正していくし。

実際無法地帯だったYouTubeは著作権に厳しくなっている。
後発のSNSもそれに倣っている。

だから、
開発者が悪いってことで逮捕勾留するなんてのは最悪なこと。
不具合を修正できなくなるわけだから、と。

winny事件では不具合が修正されないまま何年も放置されて、被害が出てしまったじゃんよぉ!と。

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理屈はわかったんだけど、
なるほどね!スッッキリした!!とはならないんよね。。

清濁合わせ飲む必要があるというか、、、
技術開発のためには多少の犠牲には目を瞑らなきゃいけない、、んだよね、ってな感じの、スッキリしなさ加減。

これが現実なんだろうし
正しい考えなんだろうけど

もし自分が「多少の犠牲」側になったとしたら
被害の大きさにもよるけど、、
ふざけんなよ、おい!とは思うだろうし。。

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↑って、ウジウジウネウネ考えることも含めて面白かったです。

自分の考えが全然最先端側のものではないことを思い知れて、面白かったです。

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撮影時監督は30歳っっっっ!!!

まさに若い人が活躍しとるじゃないかっ!
金子さんのおっしゃっていた未来っ!

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映画としても面白かったです。

東出昌大の存在感の危うさが、この役にぴったりハマっていましたね。

渡辺いっけいも良かったぁ。
久しぶりにまともに見たけどめちゃいいですね。

あとは、女性がほぼ木竜麻生ひとりしかいなかったのも良かった。
事実なんでしょうね。
ほんとに全然女性いなかったんでしょうね。


映画『白鍵と黒鍵の間』明日どうなるかわからないフリーランスの世界よ 

2023-10-31 | 映画感想
白鍵と黒鍵の間に(2023年製作の映画)
 上映日:2023年10月06日
製作国:日本
時間:94分 
配給:東京テアトル
監督 冨永昌敬 
脚本 冨永昌敬 高橋知由 
出演者 池松壮亮 仲里依紗 森田剛 クリスタル・ケイ 松丸契 川瀬陽太 杉山ひこひこ 中山来未 佐野史郎 洞口依子


ぶっ飛び〜!
いやぁ面白かった。


実際はどうかわからないけど、
どんな映画にするか考えながら撮った感じ。


観る前はまさかコメディだとは思ってなかったから変なノリには戸惑ったけど
ある種のグランド・ホテル形式のコメディかと受け入れてからは楽しかった。


ゴールを決めてない感じや
青臭さがとてもいいし
切なかったな。


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この映画のウリであろう〝音楽〟もとても良かった。


今年公開のジャズ漫画の映画もあったけど僕はこっちのジャズの方が好み。


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ヤクザ、ピアノ教師、ピアニスト、ギタリスト、歌手、バー経営者、ホステス、ホームレス……。


いろんな人間が出てくるけどみんな結局同じに思えた。


ヤクザかどうかは紙一重。
ホームレスも紙一重。


あの崇め奉られているピアノ教師の彼も、ピアノの教師になるのが夢だったのだろうか。


無謀な若きピアニストも
セカンドキャリアを臨むピアニストも
全員が今この瞬間ここにいるだけ。


明日どうなるかわからないフリーランスの世界よ。


だからこそ、明日の来ないこの一夜が愛おしい。




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クリスタル・ケイはとても好きだし
さすがに歌も存在感も素晴らしかった。


が、ちょっと役柄がもったいなかった。
もっと面白い役にして欲しかった。


映画『月』 ネタバレあり 僕を殺そうとする人がいる 

2023-10-27 | ネタバレあり

(2023年製作の映画)上映日:2023年10月13日 製作国:日本
監督 石井裕也
脚本 石井裕也
原作 辺見庸
出演者 宮沢りえ 磯村勇斗 二階堂ふみ オダギリジョー 長井恵里 大塚ヒロタ 笠原秀幸 板谷由夏 モロ師岡 鶴見辰吾 原日出子 高畑淳子



四コマ映画『月』




オススメはできない。
どうぞ観に行って!とは言えない。
しかし満点だっ!

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ある種の〝嘘臭さ〟

ホラー映画のような手法や
すごく不自然なカメラワークや照明が多用されています。
全体的に芝居も大きかったと思います。

↑これらのある種の〝嘘臭さ〟がとても機能してると思いました。
強烈で圧倒的な事実があるからこそできる技法。

所詮映画は嘘(作り物)だよ〜、というのめり込みすぎてない感も良かった。

しかも、ある女性キャラが〝嘘〟をつくんです。
嘘をついて命を守ろうとします。

嘘っぽさってのはそことも繋がると思いました。

「真実を!」「本当のことを!」ってキリキリキリキリ突き詰めてしまうと、見失うこともあるのでは、と。

かと言って「嘘には良い嘘もあるんだよ〜」なんていう短絡的なメッセージなわけもなく。。

だからこの映画は難しい(好き)。

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僕を殺そうとする人がいる

僕は、
日本のある政治家の言うところの
〝生産性のないLGBTQ〟のうちのGの当事者です。

この映画で描かれる凶器(狂気)は僕にも向いているものです。
終盤のシーンはほんっっっっっっとに怖かった。

見終わったあと手も体も震えたし、今でもドキドキしている。
(もし全容が映されていたら僕は気絶してたかも。そんくらいのことです。)

自分を殺そうとする人がいて、そいつはそれを正義だと考えていて、そいつの背中を押すような言動をする権力者がいる。

その事実をドーーーーンッと力強く、
勇気と誠実さを持って描かれた映画が作られて公開されたことは、
大きな希望に感じました。

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が、
衝撃が強いのであまりオススメはできない。。

僕はおっさんで図太くもなってるし
映画をそれなりに観てるので映画との距離感も保てている方だと思います。
それでもショックが大きかった。。

で、
そんなに親切な映画でもないので感じ方も難しいと思う。
わかりやすい落とし所に連れて行ってくれる映画でもない。

平和で安静な気持ちにはさせてくれないことでしょう。
ご覚悟っ!

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誠実って何かね

石井裕也監督に対する信頼感ってのもあったけれども、やはり画面に映っているものから「誠実さ」をなぜ感じていました。

上記の通りのホラー映画っぽい映像技法などが、
この題材をエンタメとして消費しようとしてるんじゃないかと心配にもなったけど、
きっと大丈夫なんだろうと思えたのは、やはり映像から伝わる「誠実さ」があったから。

誠実さって何なのだと自問してみてもわからないのですよ。
ただそう感じるだけ。

でも、全100ページのパンフを読んでみると、事実としてこの映画が誠実さを持って作られたことがよくわかりました。

可能な限り障害者施設へ取材をしたり
俳優が施設に入って障害者の方と温かい関係性を築いたり
音の聴こえない俳優をキャスティングしたり
障害者の方も俳優として出演したり。

しかもこれらが「こんだけやったからいいでしょ」という免罪符のための準備ではないことが映画を見たらよくわかる。

免罪符なんか機能しそうにないくらいにやり尽くした映画になっているという点からも、映画というものへ誠実さも感じました。



相当な心配

観る側にも相当な覚悟が必要な映画ですし、観た後もそれはそれは疲れるわけですが
パンフを読んだり、話を聞いたところによると
本当にこの映画の製作は大っっっっっ変だったみたいです。
想像以上でした。

まずは製作が始めるまでにいろいろ反対されたとのことですし
これだけのキャストが集まっていても途中で止まったらしいですし
「この映画が上映された後は今までと同じようには生きていけないかも」的な言葉も聞きましたし、

それくらいにこの題材ってのはアンタッチャブルなものなのかと。。

***

優生思想を持った犯人を描く映画ですからもしかしたら共感しちゃう観客が出てくるかもしれない。

という心配もあるわけですが、

でもどう考えても「優生思想を持った犯罪者を描いた映画」よりも
優生思想を持ってる政治家が存在していることの方がヤバイでしょうよ。

また、この映画が誰かの都合のいいように切り取られたり
メッセージが湾曲されて便利に使われるかもしれないという心配もあったでしょう。

どちらにしても映画が悪いのではなく、現実社会が悪いのに、その現実社会に怯えて映画が自粛させらてしまうのだとしたら、
もう、目も当てられない事態でした。。

***

が、
この映画『月』はちゃんと誠実さと勇気を持って作られたし、上映されたわけです。

口まで水に浸かってギリ鼻呼吸で生きているような世界ですが、まだ未来を照らす明るい光が、細〜い細〜い三日月くらいに細い光かもしれないけど、まだ光はあるんだなぁと思わせてくれる映画です。

ですし、こういう映画を見たならばちゃんと自分の生活、社会に何かしら落とし込んでいきたいなと自戒しました。




小説『湖の女たち』

偶然数日前に、小説『湖の女たち』を読んでいました。
全然知らなかったんですがこちらも似たような題材が含まれている内容でした。
しかも『湖の女たち』もなかなかに難しい展開でした。。
けして安心したラストに行ってくれない。

読者を「気持ちいい正しい安全な場所」に置いてくれない。

松本まりかと福士蒼汰で映画化もされるわけですが、どちらかというと心配ですね。。。
大森立嗣監督なので大丈夫かとは思いますけど、、小説自体がだいぶ素っ頓狂なので、、一体どうなることやら。。

むしろオミットするなら松本まりかと福士蒼汰の役だと思っていたので。。
まさかそのまま映画化するのかしらん。。




ラストネタバレ






終盤、宮沢りえと磯村勇斗が大量のセリフの応酬をします。
言葉で全部言い合う。

磯村勇斗にぶつけているはずが、途中から向かい合っているのが自分自身になっている。
そして自分自身がめちゃくちゃ言い返してくる。
自分の欺瞞が偽善を自分が暴こうとしてくる。
でもけして負けてはいけない。

↑映画的に上手な(上品な)シーンではないと思うけど、この無骨さや力強さは好きだし、
この映画の根幹だと思います。

***

ラスト、殺人事件が起きる。それをテレビで知る。
所詮、この主人公夫婦にとっては他人事なのだという残酷さ。
逃げようと思えば逃げることもできてしまう残酷さ。
でもこの夫婦は向かおうとする。
原動力は「愛」だ、と。
しかも「がんばろう」っていうとてもとても恥ずかしい言葉。

もはやそれしか残っていないんだもん、しょうがないじゃん。
前作『茜色に焼かれる』でも「ま、がんばりましょ」だった。
情けなかろうが、ダサかろうがしょうがないじゃん、、、それしか残ってないじゃん、、もう。。。


イラン映画『熊は、いない』 熊とは何か いないんだよね、熊…いないよね… 

2023-10-08 | 映画イラスト

熊は、いない/ノー・ベアーズ(2022年製作の映画)Khers nist/No Bears / خرس نیست
監督 ジャファル・パナヒ
脚本 ジャファル・パナヒ
出演者 ジャファル・パナヒ ナセル・ハシェミ




息子であるパナ・パナヒ監督の『君は行く先を知らない』と同時期に日本で公開される、
父、ジャファル・パナヒ監督の新作!

***

ジャファル・パナヒ監督は
反体制だってことでイラン政府から
「イラン国内での映画制作禁止」と
「イラン国外への出国禁止」を言い渡されています。

そんな中にあって
「脚本を読むのは映画製作ではない」という持論のもと、パナヒ監督が、軟禁生活の中で脚本を読みながら構想中の映画を再現した
『これは映画ではない This Is Not a Film』(2011年)や

監督自身がタクシーの運転手に扮し車内に設置したカメラが偶然町の人たちを撮影してたという設定の
『人生タクシー Taxi』(2015年)など

血気盛んに、検閲との闘い自体を映画に包含させてきたパナヒ監督。

***

新作!そりゃ気になるでしょう。


国外出ちゃダメで国内で映画撮っちゃダメ。

てことで、リモートで映画を撮影します。
撮影クルーは隣国。監督はノートパソコンで指示をします。
国外に出てない!国内で映画撮影してない!セーフ!というコントのような撮影方法。

しかしこの「リモート撮影」がこの映画の根幹ではない。

説明もめんどくさいくらいに
ドキュメンタリーとフィクションが入り組んでるというか侵入し合ってるし
メタ構造っていうか第四の壁っていうか、
どれが事実でどれが物語なのか。

ていうか映画なんだからフィクションだし、でも話自体は全部現実社会で起こっていることだし。

観客は自分がどこにいたらわからなくなることでしょう。

***

ただし、話自体はわかりやすい。
何やってんのかわかんないことにはならないと思う。

緊迫感が強く、面白い。

古い因習に縛られたムラのお話。
イランだけの特別な話ではないですね。

とても日本っぽいなぁと思う展開でした。

***

「熊がいるから気をつけろ!」と言ってくる人物がいます。
そう言われると「気をつけよう」って思っちゃうのが人間。

自分自身で行動を制限してしまいます。
「熊がいる」って言われただけなのに。

行動を制限させたい時には「熊がいるぞ!」って言えばいいんですね。
勝手におとなしくなってくれる。

本作のタイトルは『熊は、いない』
英語タイトルの『No Bears』
原題『خرس نیست』もNo Bears。

熊とは何か。
熊がいる設定だと都合がいい人たちとは誰か。


『X エックス』A24のホラー映画 三部作の一作目

2023-10-05 | 映画感想
X エックス(2022年製作の映画) X 
上映日:2022年07月08日 製作国: アメリカ 上映時間:105分 
監督  タイ・ウェスト
脚本  タイ・ウェスト 
出演者 ミア・ゴス ジェナ・オルテガ ブリタニー・スノウ


今アマプラで観れますよ。


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ハワード凄いなぁ。。
あの年齢で。。


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三部作の
一作目『X エックス』(2023年3月アメリカ公開)、
二作目『Pearl パール』(2023年9月アメリカ公開)、
そして三作目が『MaXXXine』。公開日未定。


僕は二作目『Pearl パール』を先に観ました。
一作目『X エックス』の前日譚でした。


前日譚を先にみていたので「あの人がこうなっちゃうんだぁ」という思いもあってエックスを楽しく観れました。


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逆にいうと、
『パール』を観ずに『エックス』を突然観た人は楽しむのが難しかったのでは、、と思います。。


歴代ホラー映画の文脈とか、
本作でリスペクトされてる過去の名作ホラー映画に明るい人なら楽しめたのかと思いますが。。。


結構、高尚なホラー映画なんだと思います。
僕にはその素養がなかったかなぁ。。


2作目の『パール』を先に観たことによる
キャラクターへの愛着とか
作品への信頼度があったから集中できたけど。。。


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ボンボン殺してバンバン話が進んでいくタイプではない。
それは『パール』と同じ。
ジリジリじわじわと進む。


で、映画の映画なんですね。
映画というものに憧れを持っているキャラご多いし、
映像も妙な違和感を感じるほどに〝映画的〟



おそらく三作目の『MaXXXine』で強いカタルシスが来るんだと思う。


一作目二作目でじわじわとジリジリと舞台を設定したんだもん。
準備万端!
さぁ誰たちをどんな風に殺す?
そしてそれは何のため??


〝映画〟のホラー映画なんだから
当然メタ的な意味合いも包含するでしょう。


賞レースさえ視野に入れて来るんじゃないかなっ!三作目に期待!