映画感想(ネタバレもあったり)

映画コラム/映画イラスト

映画『17歳の瞳に映る世界』ネタバレあり 男子には聞かない質問Never Rarely Sometimes Always 

2023-03-30 | 映画感想
17歳の瞳に映る世界(2020年製作の映画) 
Never Rarely Sometimes Always  
上映日:2021年07月16日
製作国:アメリカ イギリス
監督 エリザ・ヒットマン 
脚本 エリザ・ヒットマン 
出演者 シドニー・フラニガン タリア・ライダー


愛想ない不機嫌な17歳だからって冷たくされていいわけじゃないわな。

**

セリフ少ないっ!
でも映像も演技もディテールもキャラも豊かだからぜんぜん見れる。

セリフの少なさが、
どんなに語り合っても分かり合えないヤツらと
語り合えわなくても分かり合える人との差が描かれているようで良かった。

**

スーツケースのデカさも良かったですね。

決して足取り軽い楽しいほのぼのした旅じゃないもんね。
あのデカスーツケースが彼女らの自由を制限する足鎖の鉄球のように見えた。

登場人物が少ないのもあって
もう1人のキャラクターのようにも見えてきた。

「共に苦しんでる女性たち」を連れて歩いているかのよう。

**

原題は『Never Rarely Sometimes Always』。
中絶手術をする前に聞かれる質問から来てる。

相手にコンドームをつけることを拒否されたことがある?
一度もないNever
めったにないRarely
時々あるSometimes
いつもAlways

相手から性行為を強要されたことがある?
一度もないNever
めったにないRarely
時々あるSometimes
いつもAlways

こういう質問ってきっと男性はされないですよね。
女性だけ。
フランス映画『あのこと』で描かれていたような、強烈な性の不均衡を感じます。。

**

中絶のできない田舎からバスでニューヨークに来て
ここが自分を自由にしてくれる街だと感じつつも
大都会の厳しさもあるし
キリスト教の保守派が行進してたりするし
なかなか彼女たちが安心できる場所はない。

でもちゃんと調べて助けを求めればあるし、民間支援を使ってお金のことも助けてもらえる。

ここまで辿り着けない女性たちもきっといるかと思うと辛い。

**

親友であり従姉妹のスカイラーがあまりにも守護天使のような存在で、正直ちょっとリアリティはない。

リアリティが無さすぎる。
きっとそこには意味がはず。


「こうかな?」と思うことは以下に。







スカイラーも妊娠中絶をした過去があるのかな。 
だから無言で超協力してくれたのかな。

 もしくはオータムが急遽作り出したイマジナリーフレンド。
 あのデカいスーツケースのスタンドのような存在。

 ** 

あと、これはほんと思いつきを越えないことですが妊娠させたのは義父かな。
 オータムと母親は良い関係のようなのにオータムは母に妊娠のことを言えなかった。 

自分が義父に強要されたことを母に知られたくなかった、とか。

 ** 

逆に 「妊娠の相手が誰なのかは関係ない」というテーマかも知れない。



고속도로 가족 (Highway Family)

2023-03-28 | 映画感想

https://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=2936

“지갑을 잃어버려서 그러는데, 2만 원만 빌려주시겠어요?”








고속도로 휴게소에서 텐트를 집, 밤하늘의 달을 조명 삼아 살고 있는 기우(정일우)와 가족들.
다시 마주칠 일 없는 휴게소 방문객들에게 돈을 빌려 캠핑하듯 유랑하며 살아가던 이들이
어느 날, 이미 한 번 만난 적 있는 영선(라미란)과 다른 휴게소에서 다시 마주친다.

인생은 놀이, 삶은 여행처럼 살아가던 고속도로 가족과 그들이 신경 쓰이는 영선.
이 두 번의 우연한 만남은 예기치 못한 사건으로 이어지는데…

고속도로 가족Daum영화에서 자세한 내용을 확인하세요!movie.daum.net


https://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=2936




韓国映画『高速道路家族』コメディとスリラーのリズムとテンポが素晴らしい

2023-03-27 | 映画感想
上映日:2023年04月21日
製作国:韓国
上映時間:128分 
監督 イ・サンムン 
脚本 イ・サンムン 
出演者 チョン・イル ラ・ミラン キム・スルギ ペク・ヒョンジン


■四コマ映画『高速道路家族』




■コメディとスリラーのリズムとテンポが素晴らしい韓国映画クオリティ

ある貧困家庭が高速道路のパーキングエリアを転々としながら生活している様子からスタート。

確かにパーキングエリアには食べ物が売ってるしトイレもある。
テントを寝床にすればできそうな気がしてくるし、家族は楽しそうに暮らしている。

ただパーキングエリアにテントをテントを貼って寝泊まりするのは犯罪だし
金の調達の仕方は完全に犯罪。。
なので、同じパーキングエリアに長期滞在はできなくて転々とするしかない。

↑ここまでが起承転結の「起」ですね。
次の「承」で、彼らを定点観測する人物が登場します。
「パーキングエリアを転々としながら生活してる家族がいんの?なにそれ」と気づいた女性。

つまりやっと社会が彼らを発見したわけですね。
すると彼らのパーティーは終わるわけですが、
同時にそれは福祉という名の救いの手でもあるわけです。

次に起承転結の「転」。
どう転んでいくか、がこの映画の個性ですね。
単なる福祉の話では収まらないバイオレンススリラーになっていく(なんでだよ)。
ここが面白いですね。

で、「結」にもある工夫が。
切ない。。悲しい。。


■社会問題を提起するだけにとどまらないエンタメ

この余裕。韓国映画すごい。。
次回問題だからってじっとりジメジメぬるぬるやらない。。

楽しいピクニック映画にも見える導入から
考えられないバイオレンススリラーになっていく(改めてなんでだよ!)。

この豊かな映画の広がり。
ホントすごいなあ。。



2023年5月公開 イタリア映画『帰れない山』 強烈な父性から解毒 息子二人の友情

2023-03-27 | 映画感想
上映日:2023年05月05日 
製作国:イタリア ベルギー フランス 
上映時間:147分 
監督 フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン シャルロッテ・ファンデルメールシュ 
脚本 シャルロッテ・ファンデルメールシュ フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン 
原作 パオロ・コニェッティ 
出演者 ルカ・マリネッリ アレッサンドロ・ボルギ


原作は世界的ベストセラー『帰れない山』(原題:「LE OTTO MONTAGNE」八つの山)



本作の原作は、イタリア文学の最高峰「ストレーガ賞」、フランス「メディシス賞」外国小説部門「英国PEN翻訳小説賞」などを受賞し、世界39言語に翻訳された国際的ベストセラー小説「帰れない山」。
とのこと。

2022年2月現在は1年の半分をアルプス山麓で、残りをミラノで過ごしながら執筆活動に専念する。
ともあるので、原作者と主人公ピエトロはかなり重なってるんでしょうね。


小説が原作なだけあって物語が強い。
映像に頼った雰囲気映画ではなくちゃんとキャラクターがあるし
映画化を考えてなかったからだと思うんですけど、結構いろんな国に行くので、、ロケ大変そうでした。。


映画予告編の四コマ漫画





とはいえやはり山の映像すご

アルプス山脈の2番目に高い、イタリア北部モンテ・ローザの映像がすごい。
夏は気持ちよさそうな風と美しい緑なんですけど
冬は軽地獄ですね。雪地獄。
「やっぱ自然っていいよね」なんて軽々しく言えない。

途中、都会からピクニック気分で若者数人が来るんですけど彼らの異質っぷりが際立つ。
自然からも、自然と同化している主人公のひとりブルーノからも彼らは拒絶されるそりゃそうだ。


ブルーノとピエトロの友情の物語

話の主題は男二人の友情の物語。
監督が「この友情をラブストーリーのように撮った」と言っているのが合点がいく。

その「愛してる」は友情由来のもの?それとも??
っていうシーンの連続。
どこへ行くの?ふたりはどこへ向かっているの?全然いいんだけど、行っちゃうの?

ってハラハラドキドキしながら観れて、もう本当に楽しかったです!!


都会っ子ピエトロ、自然っ子ブルーノ、それぞれの父

この映画には、ピエトロとブルーノと、存在感の大きいピエトロの父、そして不在のブルーノの父の4人の比重が大きいです。

こう考えると「強い父に押し潰される息子ふたり」の物語な感じがします。
「父との和解」?

父の押し付けてくるものや期待からなんとか逃れようとしたり、飲み込まれたりして大人になって
父の死後、父という存在を受け入れる、受け流す儀式をしたんだろうね。

それを一人ではなく、ふたりですることができたんだ、ピエトロとブルーノは。


男女の差

性差について原作者や監督がどれほど自覚的に描いているのかわからないけど、、めちゃくちゃ描かれている。
とにかく「母・妻」と「父・夫」の差異が大きい。大きい。大きい。

あ、原作者パオロ・コニェッティ、僕と同い年だ。1978年生まれ。
39歳の時に小説『帰れない山』を発表。
2022年2月現在は1年の半分をアルプス山麓で、残りをミラノで過ごしながら執筆活動に専念してるとのことなので、都会が疲れちゃう人なんですかね。特に人間関係。


山、自然は逃げ場ではない

ピエトロとブルーノがある約束を果たすために「家」を作りまして、そこが二人の桃源郷のようになりまして、

そこでの暮らしはロマンチックだしロバは可愛くてほのぼするんだけど
そこに「現実」や「社会」がじわじわと降り積もってくる。

いつまでもビオトープみたいに生きていきたいけどね。。














宮沢賢治『銀河鉄道の夜』の〝デスゲーム版〟!舞台『たぶんこれ銀河鉄道の夜』ネタバレあり

2023-03-23 | 映画感想
STAFF
脚本・演出:上田誠 (ヨーロッパ企画) 音楽:伊藤忠之 美術:長田佳代子 映像:大見康裕 振付:EBATO 照明:倉本泰史 音響:加藤 温 歌唱指導:福井小百合 衣裳:髙木阿友子 ヘアメイク:大宝みゆき 演出助手:山田 翠  舞台監督:川除 学 宣伝美術:山下浩介 宣伝写真:神ノ川智早 宣伝衣装:手塚陽介 宣伝ヘアメイク:大宝みゆき 制作:武藤香織 加藤恵梨花 新井莉音 制作進行:佐々木康志(PRAGMAX&Entertainment)/近藤由弥(ニッポン放送) プロデューサー:後藤隆志(ニッポン放送) 宣伝協力:TOHOマーケティング 制作協力:PRAGMAX&Entertainment ヨーロッパ企画/オポス 企画・制作:ニッポン放送



宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』をベースにしているとのことなんですが、『銀河鉄道の夜』全然読んだことないし、小説読むの大変なのでアニメ映画の『銀河鉄道の夜』を観ておきました。








アニメ版はテンポの悪さが尋常ではなく、、視覚化された銀河鉄道の世界もあまり魅力的には見えなかったし、、ほぼ全員が猫キャラクターで共感も難しくて、とても眠かった。。し、話もよく分からなかった。。


小説であれば宮沢賢治の言葉の宇宙を泳ぐような体験ができたかと思いますが、アニメとして絵的に見せられてしまうとつまらなく感じてしまいました。


話もよく分からなかったのでネットで色々調べると、なるほど、と。


宮沢賢治の宗教、思想の中で「大事な友達の死を受け入れる儀式」をやったわけね。




***




で、舞台の方。


ある程度原作を知っておいた方が楽しめるとのことで、客席にも簡単なキャラ説明や原作の解説文が置かれていました。


が、割と舞台が始まるとすぐキャラクターたちが「これ銀鉄(銀河鉄道)じゃん?」みたいな感じで、世界観を解説してくれるので、全然知らなくてもそれはそれで楽しめたかと思います。




***


演劇は「生で」「限られた空間で」という制限の多いエンタメだと思います。
小説に「文字だけ」という制限があるように。


小説でこそ銀鉄の世界を魅力的だったように(あ、俺小説読んでないのに…)
この舞台も制限があるからこそ銀鉄の世界を魅力的に見せていたんだと思います。


これが実写映画でやられてもそんなに楽しくなかったかと。。




***




今作は〝デスゲーム〟という主題も加わって、エンタメ性はさらに増し。




原作小説がラッコ乱獲やタイタニック号沈没事件を取り入れていたように、今作でも現代の時事風俗を大量に取り入れてました。




炎上Youtuberやカスハラ(カスタマーハラスメント)、バカッターなどヒリヒリするようなキャラクターばかりが銀鉄の乗客となっています。


**


銀鉄の乗客というのは実はみんな死んだ人。


現代のネット用語での「死」は炎上などの社会的リンチを表すので、今作のキャラたちもみんな「死んだ人」。


でも主役のジョバンニは悪いこともしてないし炎上もしていない。
ただジョバンニは、母が病気で寝込んでるし父は犯罪を犯したっぽくて家に帰って来れないし生活費学費を稼ぐためにバイトを掛け持ちしていて、クラスでもいじめに遭っている、
という死んだに生きている人。


***


今作ではこれが主役のナオ。同じような境遇。


ジョバンニ(ナオ)を助けるのがカンパネルラ(レナ)。
ジョバンニ(ナオ)をいじめるのがザネリ(サツキ)。


原作ではザネリは銀鉄に乗っていません。


サツキは乗っているので「サツキがザネリである」というのは劇中でも揺らいでいた件ですが、ラストで原作同様サツキはレナに助けられるのやはりレナはザネリの変形だったかと。


そう、レナはサツキを助ける。そして原作通り死んでしまう。


原作では時系列が歪んでいるのか、予知夢だったのか、カンパネルラはすでに死んでいたからこそ銀鉄に乗っていたんですかね。


そうすると、カンパネルラの変形であるレナもそもそも死んでいたのか。


ラストで自ら語りますが、レナはいじめの加害者側だったという過去があった。
おそらくバレなかったし責められも炎上もしなかったのでしょう。
ただ自分の中での罪の意識から逃れられず死んでしまっていた。
そして銀鉄の乗客になってしまった、と。


***


サツキとレナは音楽フェスに行き、そこで大盛り上がりの客の波に押されて、レナはサツキを庇って死亡。


ちなみに原作では川で溺れているザネリをカンパネルラが助けてカンパネルラだけ死亡。


原作がそうだったように、そのあと割とあっさりと終了。。


***






舞台『夜は短し歩けよ乙女』と印象が似ている劇でした。







劇版が現代っぽいオシャレな音で
ちょっとラップっぽい歌で、原作小説の美しい文章を洪水のように客席に浴びせていきます。




***




ヨーロッパ企画のお兄さん方も面白かったですし、もちろん主役のお二人や若い俳優さん素晴らしかったですが、
やはり藤谷理子さん。。


誰より歌がうまくてダンスも上手い(そもそもバレエをやっていた方)。
嫌なヤツを演じていても観客が共感できる人間らしさを備えているし、笑える場所では全部滑り知らずでした。


これは末恐ろしいですね。ヨーロッパ企画、ほんと宝物を手に入れましたね。


今年の本公演も楽しみ!













映画『小さき麦の花』100パー今年ベストテン級 

2023-03-22 | 映画感想
小さき麦の花(2022年製作の映画) 隠入塵煙/Return to Dust  上映日:2023年02月10日製作国:中国
監督 リー・ルイジン
 脚本 リー・ルイジン 
出演者 ウー・レンリン ハイ・チン


100パー今年ベストテン級。


**


眠気と戦う映画かと思ってたら全然あと3時間観てたかった。


夫婦はもちろん麦やロバ、家、燕、鶏、までもが愛しい。
日乾煉瓦や屋根、馬車まで宝物のようだった。
どれひとつも欠けないで!!と願った。


映画ってここまでのことができるんだなと、感謝の気持ち。


**


彼らが大事に大事に生きている(そうせねばならない分けですが)ことによって、
大事なもの一つずつ増えていく。


麦の穂や鶏が増えていくし、ロバや馬車の重要度がさらに増していく。


もう怖いわけ。
フラグじゃん。


幸せになればなるほど怖い。
不幸せな方が幸せなんじゃないかと思えてきてしまう。


***


でも
「幸せな方が不幸せ」なんてことあるわけがなく、
2人のあの愛おしい毎日毎時間にこそ生きる意味がおそらくあって、
中国でもそれに憧れた若者を中心に大ヒットしたのでしょう。


**


時間を止めてっ!と願ったけど時間は止まらなかった。


時間を止めるのは無理だけど、弱い立場にいる人たちに手を差し伸べたりそのための仕組み作りをしたりしようとしてる人を応援することはできるわな。


アニメ映画『銀河鉄道の夜』 めっちゃキリスト教 

2023-03-21 | 映画感想

めちゃくちゃ単純に言うと「大事な友達の死を受け入れる儀式」?

**

めっちゃキリスト教!
 
自己犠牲を1番の〝徳〟とする世界観が僕は合わない。。
ただ、
賢治は農民たちの貧しい暮らしを知って
裕福な家庭に生まれた自分と比べて贖罪を感じいていて、
それが作品を覆っているとのことで、それはよくわかる。

**

全体的にはファンタジーだけど
ラッコ乱獲やタイタニック号沈没事件など現実世界と結びつけようとする工夫が効果的。

**

原作をザッと目を通しましたが、このアニメは原作からの改変があまりなさそうですね。
乳をミルクと言い換えてるのは気づいたけど、他はむしろ原作通りのセリフを喋ることを企画にしてるくらいにそのままなような気がする。
とはいえキャラクターは何故か猫になっているわけだが。。
**
このアニメはそんなに好きではないですが、
原作『銀河鉄道の夜』にえも言われぬ魅力があることはわかりました。
色んなことを自由に想像できる遊びがあるし、
堅苦しく考察する価値がありそうな高尚さもある。

**

『銀河鉄道の夜』は死臭に覆われているんですね。
だからか。
舞台『たぶんこれ銀河鉄道の夜』を明日観るので、予習としてこの映画を観ました。
『たぶんこれ…』はデスゲームものらしいのです。
たぶん乗客が次々と列車から降ろされて(殺されて)いくんでしょうね。



映画『BLUE GIANT』「音楽に飲まれてたまるかこっちも絵に命かけてんじゃいっ!」ってアニメーターさんの声が聞こえるような気迫と喜び溢れる

2023-03-16 | 映画感想
BLUE GIANT(2023年製作の映画) 上映日:2023年02月17日製作国:日本上映時間:120分
監督 立川譲 
脚本 NUMBER 8 
原作 石塚真一 
出演者 山田裕貴 間宮祥太朗 岡山天音

原作未読。

このアニメ化が実写化の代替版のようだったらヤだったんですが、とんだ杞憂!

演奏シーンが
「音楽に飲まれてたまるかこっちも絵に命かけてんじゃいっ!」ってアニメーターさんの声が聞こえるような気迫と喜び溢れるアニメーションで、
それにも泣けて泣けて。

**

もちろん音も最高🎷

大のサックスの音を作ることが大変だったはず。
死んでもいいと思いながら吹いている野蛮さもあるし、ジャズが好きだという喜びもある音を作った馬場智章すごい。

**

原作未読なんですが、10巻ある話をよく2時間にまとめたなと思いました。

ジャズバーのアキコさんが謎の女だったり、、サブキャラが薄めでしたがまぁ致し方ない。
エピソードをめちゃくちゃ削ったんでしょう。

それよりは演奏シーンをがっつり観せるってのは素晴らしい決断だったかと。

**

ちょっと惜しかったのは、、
日常シーンですよね。。
「演奏シーンがんばるんで……」という声が聞こえてきました。。

あと、上原ひろみによる劇伴。
JASSの演奏曲は素晴らしかったんですが、
いわゆる映画音楽がなんか「映画音がってこういう感じでしょ」って感じの曲ばかりでした。

上原ひろみならではの個性たっぷりの劇伴を楽しみにしていたんですが、、、
あれなら劇伴は別の作曲家に頼んじゃうってのでも良かったかも。。





映画『SOLO 孤独の淵で』実話だと悪口言いにくい

2023-03-16 | 映画感想
SOLO 孤独の淵で(2018年製作の映画) Solo  
製作国:スペイン上映時間:91分 
監督 ウーゴ・ストゥーベン 
脚本 サンティアゴ・ラリャーナ ウーゴ・ストゥーベン 
出演者 アラン・ヘルナンデスア ウラ・ガリード ベン・テンプル





とにかく美男美女ばかりで
話にも「美人」だの「美女」だのの言葉がよく出てくる。

で、ドラマパートがぬるい。

さっさと遭難してくれと思ってんのに
全然遭難シーンが始まらない。。

いよいよ崖から落ちそうになって
やっとかよと思ってたら
そこでもドラマパートがぬるぬると何度も挿入される。

遭難パートもゆるい。。
緊迫感がない。
主演俳優の表情が乏しい。

で、割とすぐ助かる。。

**

で、何が一番嫌ってこれは実話だから、、
「さっさと遭難しろ」とか
「割とすぐ助かる」とか言ってる僕が酷いみたいになる。。

映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』 エブエブ開眼!って盛り上がってるけど開眼しろよマジで ネタバレあり

2023-03-11 | ネタバレあり

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022年製作の映画)Everything Everywhere All at Once上映日:2023年03月03日製作国:アメリカ上映時間:132分
監督 ダン・クワン ダニエル・シャイナート
脚本ダン・クワンダニエル・シャイナート
出演者 ミシェル・ヨー キー・ホイ・クァン(ジョナサン・キー) ステファニー・スー ジェイミー・リー・カーティス ジェームズ・ホン アンディー・ル


笑ったり眉をひそめていいとされている〝ヘンな行為〟が羅列されている映画ですね。

で、観客はそれを見て盛大に笑ったり堂々と眉をひそめたりしながら映画は後半部分へ突入。

人によるだろうけど中間あたりから「あれ?これ笑うこと?」と思い始める人が出てくるでしょう。

人によっては「え?めっちゃ笑われてる…不快…」と思う人もそりゃ出てくるよね。

で、一番ウケるソーセージバース。
「なんだそれくだらねーワッハッハ」と笑ってたけど、そのバースのエブリンとディアドラが……という展開。

「ちょっと待ってよー」と笑ったけど、あれ?そこは笑うポイントじゃないわ、と気づく。。

で、その2人がピアノを弾くわけよ。
そこも笑い起きてたけど、あの弾き方を笑うのってめっっっっちゃヤバくない??

続きはネタバレありの感想(下の方)へ。


***

まさかここがミシェル・ヨーとジェイミー・リー・カーティスがカンフーバトルする映画がアカデミー賞最有力候補作品になる世界線だったとは!


いろんな世界線があったはずだけど俺が生きてるここがこの世界線で良かったぁ!

否っっっっっっっっっっ!

たまたまじゃないよね。偶然じゃないよね。
アラカンのアジア女優がアクションコメディ映画の単独主演で1億ドルの大ヒット!
しかも賞レース席巻!
ってのは色んな人がジワジワと世界を広げて戦ってきた結果だよね。

そして先頭切って走ってくれるミシェル・ヨー先生がいてくれたから!
これで主演女優賞獲れない世界線なんてどのバースにもないよ。

***

ネタバレ書かずに感想書くの面倒なので、ネタバレあり感想は以下に!!





黒ベーグルの中に入ると消えてしまう。
それは「死と同じようなもの」とジョイは言ってましたね。
てことは黒ベーグルに入ることは自殺の隠喩。
ジョイは生きる希望も気力もなくして死のうとしていた。
レズビアンである自分をずっと否定されてきた女性でした。

眉をひそめられ、程度の低いものとされ、笑っていいものとされ、コケにされ、違法なものとされたり、法や行政から無視されたり、時には暴力の標的にされてきた。

↑そりゃ死にたくなるよね。なんなのこのクソ世界って思うよね。

****

ソーセージバースではエブリンとディアドラがレズビアンカップルでした。

ソーセージバースが一番くだらないので伸び伸び笑ってたところに、
突如エブリンとディアドラがイチャイチャし始めて「えええええ!」って笑っちゃったけど、あ!やべ笑っちゃいけないやつ!

リューベン・オストルンド監督作かと思いましたよ。危ない危ない。怖いことしないで。

***

この世界線では〝ヘンな行為〟とされていることをすると、他の世界線のパワーを借りることができる。

〝ヘンな行為〟を観客みんなで盛大に笑ってきたけど、あれ?笑って大丈夫なんだっけ?と。

そうこうしてるうちにエブリンとディアドラが足でピアノを弾き始めましたね。
腕がない人でピアノを足で弾く人はこの世界線でもいらっしゃいますもんね。
「足で弾いてるヨォ!ワッハッハ!」はマズイ。。。

***

てことは、変なのー!って笑ってきた観客も自然と「今まで笑ってきたのって大丈夫かな…」と心配になってくる。

あれは笑っていいもの、これは笑っちゃいけないもの、あれはどう考えてもヘンな行為、これはヘンではない。
という線引きをどこでするのかについて、何にも考えなくていいわけがない。

そういう映画じゃない。
だったらゴンゴンおじいちゃんもエブリンもなんの反省もしなくて良かったはず。

「人それぞれ価値観違うよねー 世代もあるしー 文化も違うしー」で許されるものではない、若者を自殺に追い込んでるんだから。
(キリスト教にとって自殺って禁忌だよね)

***

観客にブーメランを刺す構造の映画は多い。

この『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が奇怪なアクションコメディ感動作なだけだったら、ここまでの評価はされていないと思う。

「エブリンが反省して娘と夫と仲良くなって良かったねー」ってだけで済む映画なわけない。

娘は自殺しようとしてたんですよ。

娘を追い込んだのはエブリン。
エブリンが主役の映画。
観客は主役に乗って映画を見る。
観客とエブリンはイコール。

ブーメラン刺さって当たり前。
そういう構造の映画。

エブリンは反省して、態度を改めた。

***

エブエブ開眼!って盛り上がってるけど、開眼しろよマジで、俺。




映画『丘の上の本屋さん』 全ての人間は生まれながらにして

2023-03-11 | 映画感想
丘の上の本屋さん(2021年製作の映画) Il diritto alla felicità/The Right to Happiness 上映日:2023年03月03日製作国:イタリア上映時間:84分
監督 クラウディオ・ロッシ・マッシミ
脚本 クラウディオ・ロッシ・マッシミ
 出演者 レモ・ジローネ コラード・フォーチューナディ ディー・ローレンツ・チュンブ モーニ・オヴァディア


異色作と言っていいのでは。

メッセージはいくつか発せられているけど
本命の特大メッセージはラストにドーンと提示する。
喪黒福造だったらホントに「ドーン!」ってやってると思いますよ。
少年の顔もドーンってやられた表情してたし(してない)。
**
人物の背景が極端に薄い。
これはわざとでしょう。
だって主人公である古本屋の店主リベロさんも名前が「自由Libero」って意味であること以外に人物像がない。
相棒となる少年エシエンも移民であること以外語られない。
家族構成や何に困ってるとか何がしたいとかは語られない。
ほぼアイコンのような、記号のような存在。
その分、観客が自分と置き換えることが容易。
**
観客は、若者に「知」を伝えるリベロでもあり、「知」を受け取るエシエンでもある。
実際僕はエシエンが最初の方に借りる本、
ピノキオも星の王子さまも白鯨も読んだことはない。。
今年で45歳になりますけど。。
全然エシエン側です。。
年齢的にも、責任的にもリベロ側であらねばならない。
そのためには自分に「知」がないとね。。

**

この映画、ラストのドーン!が全てなわけです。
それまでゆっくりと少しずつ積み上げてきて、突然ある出来事が起きてからのドーン!
あれを計画していた側がどんな気持ち(願い)を持っていたのか、
なぜ移民の少年がこの映画のキーパーソンとして登場してきたのか、
あのラストドーンでなるほどと膝を打ちますね。

**

かなり寓話っぽい雰囲気ですけどあくまでも現代だし
現実と同じように歴史を積み上げられてきた世界。
戦争も紛争も差別もバリバリ起きている。
この映画では一切出てこないけど。
すぐ外ではガンガン行われてる。
だからこそ人類の、大発明である、アレを。
ラストでドーン!!と。

映画『逆転のトライアングル』 ネタバレあり 僕ちょうど先月初めてフェリー旅したんです

2023-03-07 | ネタバレあり
逆転のトライアングル(2022年製作の映画) Triangle of Sadness  
上映日:2023年02月23日
製作国:スウェーデン イギリス アメリカ フランス ギリシャ
上映時間:147分 
監督 リューベン・オストルンド 
脚本 リューベン・オストルンド
出演者 ハリス・ディキンソン チャールビ・ディーン・クリーク ドリー・デ・レオン ウディ・ハレルソン ズラッコ・ブリッチ オリヴァー・フォード・デイヴィス


同監督の2014年『フレンチアルプスで起きたこと』は2回観たくらい好き!
2017年の『 ザ・スクエア 思いやりの聖域』もDVD買ったくらいに好き!

とにかく嫌〜〜〜〜味なシーンをネッチネッチネッチネッチと長〜くやってさらにそれを繰り返す。
大〜〜好き。

**



でもまずは、

主演女優(だよね)のチャールビ・ディーンについて。。。

ルックスはスーパーモデルで尚且つ素っっ晴らしく多面的で愛らしい演技を見せていたので、
映画見終わってどんな経歴の人なんだと調べていたら、
昨年夏に死去とのこと。。。なんと。。
言葉が出ない。。

素晴らしい才能と努力と愛らしさをフィルムに残せて良かったなんて無責任なことも言えないし、、、
「知らなかったけどこれからとんでもない世界レベルの女優になるんだろうな」と思いながら観ていただけに、、本当に惜しい。。

**

オストルンド監督がすごいのは監督として売れてもスター俳優を使わない。

今作はウディ・ハレルソンが唯一出てるけど、ウディ・ハレルソンってとこがまた反骨精神感じるじゃんね。

**

ネタバレは以下に!





冒頭の男性モデルのオーディション?シーンが一番面白かった。
 バレンシアガ、H&Mの無限ループ。 
オストルンド監督の嫌味さがたっぷり出てて「今作も絶対面白い!」と期待しました。

 ** 

僕ちょうど先月初めてフェリー旅したんです。
横須賀から門司まで21時間。 

だからかな、フェリー映画に厳しくなっちゃってるかも(なにそれ)。 
映画内の船はめちゃくちゃ揺れてましたね。 
でも残念ながらワイングラスのワインや水の表面は揺れていなかった。。。。
 ちょっとは揺れてましたよ。 
でも船の揺れとは全然リンクしてなかった。。

 ゲロはCGでしたね。
 グラスの中の水もCGで頑張っていただきたかった。 
もしくはなるべく映さないか。
 あんだけ映しといて揺れてないなんて。。

 ** 

つまりはあのシーンが長いんよ。 
船揺れて、ゲロ吐いてゲリして、おっさん2人が偉人のイデオロギー的な名言を羅列するシーンが長い。。 

とにかくあの金持ちたち、武器商人たちのことを糞だ!吐瀉物だ!と数日忘れられないくらいに繰り返し言いたかったでしょうよ。
 長いのがこの監督の特徴だしそれやりたいんだから仕方ないんだけど、 じゃあちゃんとやってとは思う。

 途中から飽きてグラスの水が揺れてないとこに気が向いちゃった。

 **

 ラスト。 

ヤヤはアビゲールに殺されてしまったんでしょうね。 
(わかんないけど) 

だからカールが走ってるシーンがラストだったんでしょうね。 
(わかんないけど) 

あの島が特大リゾートホテルだった、と。
 ヒエラルキーが逆転したのに実はそこも金持ちたちの遊び場だった。
 エスカレーターを見つけて、それに乗って助けを求めればこの島から脱出できる。 でもそれをしたらアビゲールはまたヒエラルキーの下に落ちてしまう。 

アビゲールに殺されるかもと気づいたヤヤは提案する。 
「私のアシスタントにしてあげるわよ」と。 

は? 
アシスタント? 
ふざけんなよ 
ですよね、そりゃ。

 ** 

面白かったんですけど、、前2作ほどではないな。。

ゲロゲリとイデオロギーのシーンが長くて耐えられなかったし、、
 無人島でのヒエラルキー逆転も割と既視感のある設定だと思うし。