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映画『スリー・ビルボード』ネタバレ&あらすじ

2018-02-13 | ネタバレあり
映画『スリー・ビルボード』ネタバレ&あらすじ








ミズーリのはずれにある架空の寂れた町、エビング。

主人公ミルドレットが車を走らせていると、路肩に3つの大きな看板が目に入った。
何十年も使われていなそうな看板だが、ミルドレットはふと思いつく。
「この広告買って署長へのメッセージ書いたれ」。

この看板はミルドレットの家に近いのできっと何度も通っているはず。
何度もこの古看板を見ていたけど目に入ってなかった。
怒りや焦燥感が臨界点に達したことで「この看板使えるじゃん!」と思ったのでしょう。

最後の広告は「…of your life」というコピーが辛うじて読めるほどに朽ちた1968年製のもの。
それを剥がして「娘はレイプされて殺された。署長、逮捕まだ?」という文字を貼った。
広告費は月5000ドル。大金。元夫の車を勝手に売って調達。

広告会社へ依頼するときミルドレットは、窓際でひっくり返った瀕死の虫を指で起こして助ける。

***

広告が出来上がるとさすが田舎町。噂は一瞬で広まり、警察が広告会社に乗り込んでくる。
広告会社のケイレブは「警察でも法的に正しく契約された広告を剥がせない」と警察に立ち向かう。
署長と警官ジェイソンは「警察を敵に回すのか。これは戦争になるぞ」。

***

ジェイソンは人種差別主義のひどい警官。
しかし署長は実は住民からの人望も厚い、良い人。

署長は、操作は最大限に努力していることそして自分がガンで余命僅かであることをミルドレットに告げる。
ミルドレットは「署長がガンであることは町中知ってる」。
「知ってて広告出したのか!?」と素でびっくり。「死んでからじゃ意味ないでしょ」とミルドレット。
署長はミルドレットの狂気のような覚悟を知る。

***

ミルドレットの家には神父が。
広告のことでミルドレットの息子が高校でいじめられたことをネタに神父は家に上がり込み「あの広告は全員が反対している。撤去してくれ」と言ってくる。

「神父は教会内で他の神父が少年や少女をレイプしていても知らんぷりしてきた。私の人生や娘の広告に口出ししないで」とミルドレット。

***

ミルドレットは「来月分の広告費を今日払ってくれ」と広告会社のケイレブに言われる。
5000ドルなんて大金もうない。
そこに「この金を広告費に使ってくれ」という匿名の小包が広告会社に届く。ちょうど5000ドル。
広告は無事に継続して掲示される。

***

真剣に再捜査を始める署長。

部下のジェイソンの人種差別主義的態度を何度も注意する。
しかし「人種差別する警官を辞めさせたら3人しか残らない。しかもその3人はゲイ嫌いだ」と署長。

***

当初は母の広告を仕方なく我慢していたミルドレットの息子だったが
「毎日帰り道に広告を見て思い出す!アンジェラはレイプされて死んだと!みんなにも知られた。レイプされたことじゃない。殺されたことじゃない。レイプされて殺されたことが!毎日が最悪だ!」と激昂する息子。

そこに乗り込む元夫。
「広告じゃ生き返らないぞ。俺だって娘に会いたい」

***

署長、美人奥さんと小さな娘2人を学校休ませて湖へ出かける
家族4人の幸せな1日が終わり、娘たちも寝かしつけ、夫婦で幸せな会話をしてワインでほろ酔いの妻も寝入る。

そして署長は布を頭に被り拳銃で自分の頭を撃ち抜く。

***

署長は複数の遺書を残していた。
妻にはこれからガンに蝕まれて苦しむ自分を見せて家族を苦しめたくなかったこと。
広告と自殺は無関係であることを告げた。

ミルドレット宛の遺書を妻はミルドレットに届けに行く。
「私はこれから何をすればいい。夫が自殺した日に私は何をすればいいの」と妻。

ミルドレットには来月分の広告費5000ドルを払っておいたこと。
そして広告を使うのは良いアイデアだと思っていたこと。
でも本当にちゃんと捜査はしていた、手がかりのない事件もあること、を告げる内容だった。

***

部下ジェイソンはイヤホンでアバの「チキタータ」を聴いている。
歌詞は〝苦しみの眼差しに希望は見えない〟と歌っている。

そこに署長の自殺の報せが。

激怒したジェイソンは警察署の向かいにある広告会社に乗り込んで、ケイレブを殴って窓から落とす。
ジェイソンの怒りは収まらない。

一連の行動を見ていた新しい署長がジェイソンをクビに。
ジェイソンは警察バッヂを返せと言われるが、バッヂを紛失していた。
(つまりジェイソンは警察官ではなかった、という隠喩)

***

広告が燃やされた。怒りに震えるミルドレット。

新署長が温かく声をかけるも一切信用しないミルドレット。
「敵ばかりじゃないですよ」と新署長。

***

前署長はジェイソン宛にも遺書を残していた。
夜中、それを署内で読むジェイソン。
「お前は本来いい人間だ。だがたまにキレる。刑事に必要なのは愛だ。愛があれば心が安らぐ。心が落ち着けば考える。考えれば、いつかわかる。もしゲイだと言われたら同性愛差別で逮捕しろ」

そこにミルドレットは警察署に電話をする。
ジェイソンはまたイヤホンをして音楽を聴いているので電話の鳴っている音が聞こえない。
署内に人がいないことを確認したミルドレットは警察署に火炎瓶を5本くらい投げ入れる。

燃える署内。自分が死ぬかもしれない状況の中アンジェラ殺害事件のファイルを懐に入れ脱出するジェイソン。

***

全身大火傷を負ったジェイソン。まるで焼死体となったアンジェラのように。

ミルドレットのことを好きな男、ジェームズの計らいによってミルドレットにアリバイができてミルドレットは警察署放火事件の疑いを逃れた(こんなんでいいの??と思ったけどラスト近くで事情がちょっとわかる)。

***

ジェイソンは全身に大火傷を負い、全身包帯を巻かれて入院。
同室にはなんと自分が窓から落として大怪我をさせたケイレブがいた。
(劇場ではここで大笑い)

「悪かった…」と涙ながらに謝るジェイソン。
包帯グルグルの男がジェイソンだと気付いたケイレブは、震えながらもジェイソンにオレンジジュースを差し向ける。ちゃんとストローをジェイソンの方に向けて。
ケイレブもジェイソンも泣いている。
(劇場はここで涙)

***

ジェームズが「今度食事でも」と言うのでアリバイを作ってくれた恩があるミルドレットは渋々レストランへ。

渋々感が強すぎるミルドレットに対して「俺はデートのつもりだった。確かに俺は理想の相手じゃないだろう。でも君はどうだ。俺をずっと見下してきた、イライラしている広告女じゃないか」と怒るジェームズ。
ジェームズは130cmの低身長の男。周りからよくバカにされる男だが毅然と生きてきた。

人種差別的な警官ジェイソンを憎んでいたミルドレットだが、その実自分も人を見た目で差別していたのだった。

そこに元夫も登場。「悪かった。広告を燃やしたのは反省してる」
ミルドレットは広告を燃やしたのはジェイソンだと思ってた。
観客もみんなそう思ってた。

***

火傷から回復したジェイソンは退院。
飲み屋で隣の席の男がヒソヒソ声で、昔レイプして殺した女の話をしているのを聞いた。

ジェイソンはその男の車のナンバーをメモって、わざと喧嘩を売ってその男の皮膚を掻く。
ボコボコにされたジェイソンだが、家に帰り証拠品を入れる容器に、自分の爪に入り込んだ男の皮膚をしまう。

ずっと母親から精神的に離れられなかったジェイソンだったが、この時初めて母を拒絶して心配したフリして過干渉してこようとする母を決して部屋に入れない。毒母からの卒業。

翌日、その証拠を持って新署長の元へ。DNA検査を依頼する。
と同時に警察バッヂが見つかったと言って新所長にバッヂを返す。
(この時初めてジェイソンは警察官になっていた)

***

ジェイソンは「多分あの男が犯人だと思う」とミルドレットに話に行く。
少し心を打ち解けあう2人。
「署に放火したのは実は私なの」とミルドレット。
「あんなことするの君しかいないだろ」とジェイソン。みんな知ってた。

***

DNAを照合したが別人だった。さらにその男は事件当時軍隊として「砂漠のあるところ」に派兵されていたこともわかった。
完全に別人だった。

しかしその男が「砂漠のあるところ」でレイプ殺人を犯したことは間違いない(自分で喋っていたから)。

***

ジェイソンとミルドレットは車にライフルを積んでその男を殺しに向かう。
しかし。
「乗り気?」とジェイソン。
「…いや、実はそうでもないの…」
「…どうしようか…」
「道々考えながら行きましょう」

****

今まで怒りに任せて即行動に移してきた似た者同士の2人。
怒って次の行動を決心しても「ちょっと落ち着いて考えてみよう」と言う穏やかな心を手に入れた2人。

それは命と引き換えに署長が与えてくれたものだった。








実際の事件の映画化『ウイスキーと2人の花嫁』

2018-02-09 | ネタバレあり
実際の事件の映画化『ウイスキーと2人の花嫁』











グラスゴー(スコットランド)沖にある小さな島が舞台。
この島がかわいいっ!港も船も家も島民もみんなかわいい。
なんか全部お菓子でできてるんじゃないかと思うほど。


この映画は実話ベースで、ナチスによるロンドンへの空爆が激しくなっている頃の話。
すぐそこに戦火が迫っているというのに島民が落ち込んでいるのは「ウイスキーの配給停止」。。

〝命の水〟を失って落ち込んでいる島のすぐそこでなんと〝5万ケースのウイスキー〟を積んだ船が座礁。
実話じゃなければ嘘くさくて絵本にしかならない話。

船員を救助した後ウイスキーも『救助』するわけですが、そのウイスキーを探している関税消費庁や民兵や政府の人間などが島に隠されたウイスキーを探し回ります。
島民一丸となって知恵を絞ってウイスキーを隠すが…。

四コマ映画『ウイスキーと2人の花嫁』→


***

という実話に、結婚間近の2人の娘を持つ父親の気持ちや、戦時中であっても好きになった男性と結婚することで自分の人生を選ぶ2人の娘や、厳格な母に押さえ込まれてきた息子の反乱や、その母親自身の新しい扉、などなど人間ドラマも盛り込まれています。

が、とにかく全体的にほのぼの。
ちゃんと笑えるし、ハラハラするし、感動できる。
しかも98分ですよ。
大好き、こういう映画。


『ウイスキーと2人の花嫁』→
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〝歴史〟が為政者に作られるものなら〝昔話・伝承〟は庶民が作るもの。
1941年スコットランドで起きた実在の貨物船座礁事件から始まるこの話はスコットランドの人はずっと語り継いで今でも大好きなんだそう。

この話のどういう部分をみんなは好きなのでしょうか。


戦火がすぐそこまできているという段階でも「酒が呑みてぇんだよ!」という素直な欲求でみんなが一丸となって協力し合う姿はたしかに痛快。

この映画で描かれる逞しさやしたたかさに人は惹かれるんでしょうね。
こんな風に自分を貫きたいなと(しかもそこまで迷惑かけてる訳でもないしね…)。

全体主義や厳しすぎる宗教観に飲み込まれてるキャラも出てくるけど、和気藹々と「ウイスキー救出作戦」を実行する人々と比べるとやはり人間性を失っているように描かれている。

『ウイスキーと2人の花嫁』となって現れたこの〝昔話・伝承〟は、細かな事実が消えて削ぎ落とされて本質の〝民衆が求める物語〟として成立してます。