映画感想(ネタバレもあったり)

映画コラム/映画イラスト

映画『ファースト・カウ』怖いのに温かく優しい

2024-10-31 | 映画感想
ファースト・カウ(2019年製作の映画) First Cow 
 上映日:2023年12月22日
製作国:アメリカ
上映時間:121分
監督 ケリー・ライカート 
脚本 ケリー・ライカート  ジョナサン・レイモンド
 出演者 ジョン・マガロ  オリオン・リー


ケリー・ライカート監督は初めて観ました。
びっくり!
こんな映画撮る人がいるのかっ!!


2時間の映画で1時間経ってやっとドーナツを揚げはじめましたよ。


それまでの1時間何やってたんだっけ、と。
そしてこの後1時間何をやるっていうんだ、と。


そしたらその後、ずっとじわじわと怖い。。
怖いのに温かく優しい。。


ドーナツとミルクだけでずっと怖い。
そして景色は美しい。


詩のような、朝方に見た夢のような、映画。


映画『チャイナタウン』ファムファタルへの男たちの視線がキモい

2024-10-31 | 映画感想
チャイナタウン(1974年製作の映画) CHINATOWN  
上映日:1975年04月12日
製作国:アメリカ
上映時間:131分
監督  ロマン・ポランスキー 
脚本  ロバート・タウン 
出演者  ジャック・ニコルソン フェイ・ダナウェイ


そりゃまぁカッコいいし
まぁ話も面白いけど


登場人物ほぼ男の中での
超絶美女のファムファタルへの男たちの視線が今となってはキモい。


監督の性犯罪もあって
このファムファタルが背負わされた過去の設定もキモいし
彼女の末路も酷すぎる。
女性に対して酷すぎる。


ジジィたちがキモすぎる。


で結局のところの
「ここはチャイナタウンだ」ってセリフも人種差別でしょ。


これがOKだった世界が不気味。キモい。


名作っ!古典SFコメディ映画『不思議惑星キン・ザ・ザ』ネタバレあり

2024-10-20 | ネタバレあり

不思議惑星キン・ザ・ザ(1986年製作の映画) Kin-dza-dza!
上映日:2016年08月20日
製作国:ソ連 ロシア
上映時間:135分
監督 ゲオルギー・ダネリア
脚本 レヴァス・カブリアゼゲオルギー・ダネリア
出演者 スタニスラフ・リュブシン エフゲニー・レオーノフ ユーリ・ヤコヴレフ レヴァン・ガブリアーゼ









名作っ!
コメディの皮を被った政府批判!


いや、そもそもコメディとはそういう側面が強いものなはず。

低予算の雰囲気映画かと予想してたが、否っ!
映像も素晴らしく、なんと丁寧に考え抜かれて作った刺激的な作品か!

すぐ2回観ましたけど、2回目観ると演技の素晴らしさもわかりました。
1回目は話を追うので必死(しかもわからない…)でしたが
2回目心を落ち着けて観たらあらあら、抑えた演技の中で繊細な感情表がみなさん素晴らしかった。。

スパシーバっ!

**
SFコメディに仕立てることで検閲をスルリと抜けたとのこと。


なるほど、これがSFの効能の一つか!

中国でもBL映画を撮るために登場人物を人魚にしたりと、
作り手たちは閉じ込められている檻からなんとか両手を出して創造している!



**


『リバー、流れないでよ』に出てくるアレがキンザザ由来である、というのを知って


キンザザは興味はあったものの「眠そう」ということで避けてきたけど、
僕今週風邪で気管支炎で仕事以外ほぼベッドで倒れてて暇なので観ました。

**

1回目は、地球の未来の姿なのかな?と。

違いましたね。
キン・ザ・ザは当時のソビエト連邦の写し鏡だったんですね。


何の正当性もない階級社会。
そして階級社会を「生きる目標がある。上下がない世界では生きられない」と教え込まれている。

警察は暴力&賄賂。

表現活動はがんじがらめで、それはまるで檻に閉じ込められて歌を歌うことのよう。

規制や風潮の檻からなんとか両手を出して創造する様子は滑稽だけど愛おしい。

「地球では檻に入らずに歌っていいのか?」のセリフが切ない。

※地球でもほとんどの場合檻に入らないと歌ってはいけません



**

プリュク人はとにかく嘘をつくし、自己中心的で冷徹。


演じる彼らがキュートなので一見そうは見えないけど、酷いぜアイツら。

しかし厳しい社会構造の中で生きる彼らに、実際同じような社会構造に押し込められている地球人(観客も)は彼らの健気さを認めざるを得ない。


**


1回目観た時はずっと3割〜5割意味がわからず観てました。


それでもすごく面白かった。

だいたいの筋がわかって2回目観ると名作っっ!

省略がクール過ぎて。。
まず瞬間移動がほんとに瞬間。

何のエフェクトもなくパッと移動してるから観客はなんのことだかわからない。
それは主人公2人と同じ。

シーンのカットもクール。
バイオリンを割ったらマッチ棒を見つけた。
次の瞬間宇宙船が飛んでいる。
物語や設定が全部頭に入ってないと理解追いつかないですよ。。

だから後半どんどん、何をするために何をやってるのかが全然わからなくなる。
靴下の男も1回目はわかんなかった。
冒頭の地球に来ちゃってた男だったのね。

そして彼はマシコフとゲデバンが別の場所に移動しててもちゃんとそこに現れてくれる設定なのね。
知らないから、それは。。

**

あ、そうだ。
丸っこいウエフが「うるさい」って言ったんですよ。日本語で。

キン・ザ・ザの「うるさい」 

pic.twitter.com/Q49a7xkmVa


パニクってるっていう演出かと思うんですけど、
「キンザザ 〝うるさい〟 〝日本語〟」で検索しても出てこない。。

ロシア語で音も意味も近しい言葉があんのかね。


**

「ママ ママ どうしよう 寒い冬が来るのに ショールもコートもないよ」


の歌が最初は時代錯誤のものだなぁと思っていた
(映画の中でも〝古い流行歌〟)けど

次第に緊迫感が強まってくると「ママ ママ どうしよう」が切実なものに聞こえてくる。

それはおそらく当時のソ連でもそうだったはず。
この歌は〝古い流行歌〟ではなく、まさに今!厳しい冬を前にあたたかいコードのない子供がいるという貧困問題が、ちゃんと目を向ければあるのに目を向けていない。

それは日本も同じ!
20代や女性を含めた数百もの人が食事を求めて都庁の下に毎週集まっている。

その頭上では何十億もかけた(何十億もかかってるわけのないレベルの)プロジェクションマッピングが映されている。

ディストピア(反理想郷、暗黒世界)じゃんっっ!!
ファッッックっ!!
キューーーーーーー!!!!

**


ラストネタバレは以下に。






終盤、何度も嘘をついてきたプリュク人を救うために、
地球に戻るチャンスを捨てるシーンは泣けるし
プリュク人のふたりは結局マシコフとゲデバンの優しさにはピンと来てなかったっぽいとこも良い。
ラスト。
靴下男が瞬間移動を発動させる(地球人ふたりの許可も得ずに…)と
次の瞬間冒頭のシーン。
マシコフが帰宅するシーン。
これもね、いちいち覚えてないですからね。。
これが冒頭のシーンであることを。。
場所だけじゃなく時間もちょっと戻ってるってことね。
どうやら記憶も消えてるっぽい?
パンとマカロニを買ってきてと頼まれたマシコフは外へ。
ゲデバンから道を聞かれる。
顔を見るが思い出さない。
そこに清掃車。
車の上には黄色いランプが点灯している。
PJ様かと即座に反応してクーするふたり。
当然街の人は誰もクーなどしない。
ふたりが見つめ合う。
「バイオリン弾き」
「おじさん」
名前は忘れちゃった??
微笑んで空を見上げるマシコフ。
宇宙のどこかで今もクーしているであろう彼らを思い出してたのかな。

おわり

❷『死霊館のシスター 呪いの秘密』ネタバレあり そろそろ終わるっぽい

2024-10-15 | ネタバレあり

死霊館のシスター 呪いの秘密 
上映日:2023年10月13日
監督マイケル・チャベス
脚本イアン・ゴールドバーグ
出演者タイッサ・ファーミガ ストーム・リード


目次

  1. ■死霊館ユニバースまとめ(2024年時点)
  2. 『死霊館のシスター 呪いの秘密』四コマ映画
  3. 公開順でいうと9作目で、時系列的には2作目。
  4. グーニーズ化
  5. そろそろ終わるっぽい
  6. ネタバレは以下に!
  7. モーリス、死んじゃうかも知れなかったけど即決問題


■死霊館ユニバースまとめ(2024年時点)

以下時系列順

⓪『 The Nun(死霊館のシスター)』以前
①1952年『 The Nun(死霊館のシスター)』
②1956年『 The Nun Ⅱ(死霊館のシスター 呪いの秘密)』
③1958年『 Annabelle: Creation(アナベル 死霊人形の誕生)』
④1970年『 Annabelle(アナベル 死霊館の人形)』
⑤1971年『The Conjuring(死霊館)』
⑥1972年『Annabelle Comes Home(アナベル 死霊博物館)』
⑦1973年『 The Curse of La Llorona(ラ・ヨローナ〜泣く女〜)』
⑧1977年『 The Conjuring 2(死霊館 エンフィールド事件)』
⑨1981年『 The Conjuring: The Devil Made Me Do It(死霊館 悪魔のせいなら、無罪。)』
➓?年『The Conjuring: Last Rites(原題)』2025年秋公開?


死霊館ユニバースまとめ(2021年時点)
http://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=2775




『死霊館のシスター 呪いの秘密』四コマ映画







公開順でいうと9作目で、時系列的には2作目。

死霊館ユニバースにはアナベル人形ラインもありますけど、これは本筋の死霊館の方。

ウォーレン夫妻が『死霊館』(2013年)で戦ったヴァラクがどうやって生まれどうやってウォーレン夫妻の近くまで来たか?を『死霊館のシスター』『死霊館のシスター 呪いの秘密』でやったわけです。
で、
公開順の次の作品(10作目)は『The Conjuring: Last Rites(原題)』2025年秋公開予定でありまして、
こちらがウォーレン夫妻の〝最後の事件〟を扱うらしく、アイリーンも恐らく回想シーン的な感じで出演するっぽい、とのこと。


グーニーズ化

『死霊館のシスター』からアクションホラーになっているので、続編である今作もまさにそう。
終盤グーニーズみたいになるから、もうUSJとかでホラーアトラクションにすればいいんだよね。


そろそろ終わるっぽい

次の『The Conjuring: Last Rites(原題)』でウォーレン夫妻の筋は終わるっぽいですね。

実際のウォーレン夫妻はダークな存在なので、大ヒットしたからといってこんな風に元気にフランチャイズして大丈夫なものではなかったと思います。

特に『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』はもっと冷静に客観的に描かなきゃいけない(それでも無理だったかも)実際の事件だったのに、監督曰く「これは宗教映画」としてウォーレン夫妻側の一方的な視点で描いたエンタメ作になっていました。

で、このシリーズで僕が好きだった点は「結構冷静」で「宗教に対しても距離があった」からなんです。

『死霊館』『死霊館 エンフィールド事件』でもウォーレン夫妻は割と証言者を疑ってかかっていたし「そんなに超常現象なんてないよ」というスタンスでした。
それでそのまま超常現象はありませんでしたじゃホラー映画にならないので、そこはジャンル映画として〝あるのかも知れない〜〜〟というテンションで楽しむようにしていました。
また

前作『死霊館のシスター』でのアイリーンの「宗教は盲信じゃない。疑っていい。」というセリフがあってとても好きでした。
なのに、今作でのアイリーンはめっちゃ信仰心を強めていたし、結果信仰心が強いことで事件を収束させました。
なんだよ、全然好きじゃないよ。。

もちろん次作『The Conjuring: Last Rites(原題)』はとても心配。
でも終わるならそれはそれでめでたいかも知れない。
恐らく『アナベル』ラインは続くと思います。
いっそホントに『チャッキーVSアナベル』をPART6くらいまでやりゃいいんだよ。
チャッキーとアナベルが手を組んでゴジラを倒せばいいんだよ。



ネタバレは以下に!







モーリス、死んじゃうかも知れなかったけど即決問題

モーリスが「シスター、救ってくれたのか?」って言うけどアイリーンは悪魔を退治するためにフレンチーが死んじゃってもしょうがないと思ってたからね。
モーリスを殺さずにヴァラクを倒すにはどうしたらいいのかの逡巡せずにモーリスの命よりもヴァラクを倒すことを瞬時に優先したことが恐ろしい。

(モーリスに乗り移っている状態でもヴァラクだけを倒せると分かっていたのなら、聖ルチアの目をヴァラクに突きつけるシーンでアイリーンが泣いてるのはおかしいからね。悪魔祓いのためなら人殺していいの?)

国策映画&無声映画&モノクロ映画『警察官』(1933)ラストネタバレあり

2024-10-11 | ネタバレあり
警察官(1933年製作の映画) 
製作国:日本
上映時間:91分 
監督 内田吐夢 
脚本 山内英三 
出演者 小杉勇 中野英治


1927年にアメリカでは『ジャズシンガー』が初のトーキー映画として上映される。

日本では1931年『マダムと女房』が初のトーキー映画。
1938年まではサイレント映画は作られていた。

この『警察官』(1933)はサイレント映画。
劇版も効果音もセリフもなし。
黒地に白文字のセリフが映像と映像の間に表示されるシステム。

てか普通に画面の下にセリフの文字を表示しなかったのはなんでたろ。
映像に文字を乗せる技術がなかったのかな?
映像とせりふ文字を同時に見る習慣がなかっただけかな。

**

トーキー映画がで始めた頃のサイレント映画ってどういう立ち位置だったんだろう。

時代遅れ感もありつつも
老舗感というかホンモノ感はあったんじゃないかな。

特にこの『警察官』はだいぶ本格ノワールだし、
大衆向けって感じはしない。

**

ただ、この映画は国策映画なんですね。

現代の自衛隊モノのドラマや映画に似た雰囲気がある。

「みんなを守るんだ!!」感でねじ伏せてくる感じ。

**

さて、この映画の話。

指紋鑑定の手順を丁寧に映す

銃撃シーンすごい
おそらくスタントなし、命綱とか安全対策なしで
壁をよじ登って屋根の上を走るのと怖い
迫力
カメラワークと編集もテンポ良く。
モノクロならではの光の強烈さ。
カット数がものすごく多い。
ラストの全速力で走るシーンはもはや芸術的ですよ。
ガリガリ博士感があります。

**

言われているほどBL感は感じなかったです。


酔っ払って頭を近づけて畳に寝転がって、富岡が伊丹の髪を撫でながら話すシーンはなかなかのもんだなとは思いましたけど。

ただ1927年のアメリカ映画『つばさ』でも男性の親友同士が
今キスしたよねってくらい顔が近く抱き合ってたりするので
昔って男性同士でもこれくらい距離感近かったのかなぁ、とか。


ラストネタバレは以下に








ラスト。 
伊丹は旧友の富岡がギャング強盗の犯人の1人と睨む。
 指紋を取るために富岡のライターを自分のポケットに入れる
 富岡は返せと言うが伊丹は返さない。 

ていうか、富岡は警察官である伊丹に無邪気に近づきすぎるなんよね。。
 伊丹から警察の情報を聞き出そうとするわけでもないし、 やっぱただただ伊丹のことが好きすぎたのかな? 

指紋が一致。

 伊丹は苦悩しつつも富岡たちを捕まるために警察官を総動員。
 鉄橋の上から飛び降り(自殺ではなく逃げようとしたんですよね?)ようとする富岡の右手を伊丹が射撃。
 富岡は右手を撃たれて貫通。 富田は逃げるのを断念。
 伊丹は自分の袖を引きちぎって 富岡の右手に包帯のように巻く。
 そして両手に手錠をかけ、手を優しく握る。
 弾が手を貫通してんだから骨とか砕けててめっちゃ痛いだろうに富岡は大人しくしている。
 伊丹は富岡を抱きしめる。

 おわり

映画『本日公休』

2024-10-09 | 映画感想
本日公休 
上映日:2024年09月20日 / 
製作国:台湾 /
上映時間:106分 /
 監督 フー・ティエンユー 
脚本 フー・ティエンユー 
出演者 ルー・シャオフェン フー・モンボー


お母さんが意外と喋りますね。
勝手な予想で全然喋らないかと思っていました。。


実際、お母さんのセリフは8割くらい削っても大丈夫だと思いました。。


あと、お母さんを演じた女優さんが一言一言名言みたいに言うので、、
「そんな大したこと言ってないよ」とも思っちゃう。。


***


90分でサラリとやってくれてたらもっと好きな映画でした。
全然いいんですけど。。



映画『落下の解剖学』ラストネタバレあり 「個人」の自己実現よりも「家族」のことが「不均衡」に優先される

2024-10-09 | 映画感想
落下の解剖学(2023年製作の映画) Anatomie d'une chute/Anatomy of a Fall  
上映日:2024年02月23日
製作国:フランス
上映時間:152分 
監督 ジュスティーヌ・トリエ 
脚本 ジュスティーヌ・トリエ アルチュール・アラリ 
出演者 ザンドラ・ヒュラー   スワン・アルロー




素人臭いカメラワーク(わざとらしいアップや急なパン)は普通とても苦手なんですけど
この映画の場合は
その不気味さがとても良いですね。


「無罪なの〜?有罪なの〜?」と野次馬的に観てる自分(観客)の視線が不気味だぞと言われているよう。


**


物語の流れを作るためとはいえ、
あとからあとから新事実が出てくるのも普通ならすごく嫌なんですけど
この映画の場合は
それ自体が真実の揺らぎを表現しているのでとても良い。


**


性差別も表現されているのかなぁ。


これは日本だからそう感じるだけかなぁ。
フランスやドイツではもうクリアされているのだろうか。


「個人」の自己実現よりも「家族」のことが「不均衡」に優先される、
という状況は
性別関係なくキツい。
というのがこの映画の基本設定ですね。


「(個の願望を捨てて)家族を支えるのは幸せなことなんだよ」という思想が充満している世界では、この映画は成り立たない。
夫の気持ちが全くわかんなくなるからね。


また、昔の世界、
つまりは「女性は家族のために滅私奉公して当然」という思想の世界で
さらにこの映画が〝男女逆転〟していたならば
「働いている夫に逆ギレするワガママな妻」になっていたことでしょう。


**


ネタバレになるから何も書けない。。


ネタバレは以下に。









母は裁判で無罪になるけど、、 
「あ〜無罪だったんだぁ!」と100パー納得できた観客は少ないでしょう。
 ほんとに無罪だとは思い切れない。

 終盤で息子が突如、 
車中での父の長台詞を思い出してスルスルと法廷で喋ったのも不審。
自分が信じたい真実を息子は作り出したのかもしれない感がある。

 だが、僕は母が父を殺すほどまでの捻れた気持ちがあったとも思えない。
 だって離婚すりゃいいんだもん。 
殺すなんて一番めんどくさいじゃん。

 咄嗟の暴力で(ほぼ事故的に)突き落として殺しちゃうくらいに 激高するような人物にも思えないし 頭を何かで殴ってから突き落とすって結構な手間だしちょっと無理がある。

 ってことは、 
この映画の設定として「無罪か有罪かどっちかわかんないし、
おそらくそもそも決まっていない」んでしょうね。

映画『あなたの顔の前に』ラストネタバレあり 「私は自由になりました」

2024-10-09 | 映画感想
あなたの顔の前に(2020年製作の映画)
당신 얼굴 앞에서/IN FRONT OF YOUR FACE
上映日:2022年06月24日
製作国:韓国
上映時間:85分
監督 ホン・サンス
脚本 ホン・サンス
出演者 イ・ヘヨン チョ・ユニ クォン・ヘヒョ



クォン・ヘヒョ(監督役)のこと嫌いになりそう(笑)。

**

やっぱホン・サンスは間違いがないねぇ。
と言ってもそんなに見てるわけでもないし
観る前の覚悟がかなり必要な作風なんだけど。。

観たらやっぱ素晴らしい。

しかしもはやなぜこんなにも良いのかはわからない。。

**

今作を観ると、
同じくホン・サンス監督&イ・へヨン主演の次の作品『小説家の映画』が少し違って思えてきますね。

セカンドキャリアを考える中年女性に
もう少しタイムリミット感が強まるというか。

**


ラストネタバレは以下に














「幸いなことについこの前思い出したんです
もし顔の前にあるものだけを見ることができたら
何も怖くなりません 
なにもかも 
すでに顔の前にあるんです 
しかも完成して 
それ以上でも以下でもない 
完成されてます
わからないでしょう? 
それで構わないです 
私は自由になりました」

 ** 

映画監督は元女優のサンオクに出演依頼をするが 
サンオクは「私は5〜6ヶ月後に死ぬと医者に言われた」と断る。 
「ならば旅行しながら短編映画を撮りましょう」と監督は提案。 
サンオクは乗り気に。 

「ほんとに明日から?」 
「ええ、明日迎えに行きます」
 「お願いします」 
「明日旅行に行けたら良いですね」
 「私と寝たいのね」
「はい」
 「ありがとう」
「僕の方こそ」 

翌朝、ソファで寝ているサンオクのスマホに監督からのボイスメッセージ。
 「昨日の約束は実現可能かのか
 酒の勢いか 曖昧なのでメッセージを残します 
すみません 
はじめから実現できない約束でした
正直にお話ししていただきありがとうございました 
毎日幸せであるように願っています」

 サンオクはそれを何度も聞き直し何度も笑う。大きなため息。外は雨。

 そしてサンオクはベッド寝ている妹を見つめる。
「どんな夢を見てるの?」 
おわり

『ジョーカー』(2019)の ガッツリ復習〝8〟コマ漫画

2024-10-05 | 映画感想
ジョーカー 上映日:2019年10月04日 
 製作国:アメリカ
上映時間:122分
監督 トッド・フィリップス 
脚本 トッド・フィリップス
 出演者 ホアキン・フェニックス ロバート・デ・ニーロ


フィルマガ記事&イラスト担当しました!
『ジョーカー』(2019)の ガッツリ復習〝8〟コマ漫画です
 『ジョーカー』を漫画で復習 『#ジョーカーフォリアドゥ』に備えよう!→https://filmaga.filmarks.com/articles/311875/

改めて観直しましたが辛い… 
アーサーに同情することで暴力を…







***

公開直後に観たけどあまりに心奪われて言葉になりませんでした。。




***




ホアキン演じるアーサーがもちろん可哀想だし、
自分との共通点が見えてくるたび苦しくなって、、
「いやいや、おれはアーサーじゃないし、まさかジョーカーなんかにはならない!」とグッと体に力が入る瞬間も多かったです。


アーサーの動きが気持ち悪いですし、楽屋で座ってるシーンの背中は痩せて骨ばっていて、魔物か妖怪のように見えました。
手足も長いし、肩がちょっと上がっていて、ずっと何かを警戒しているような感じ。


自分とは別の生き物として客観的に観たいのに、全然そうさせてくれない。


アーサー(てかホアキン)の手の爪が丸いんです。
手を大写しにするシーンがありまして、僕も大人なのに爪がまん丸でちょっと恥ずかしいんですが、「爪一緒じゃ〜ん…」と恐ろしくなりました。。




***

フィルマガ記事&イラスト担当しました!
『ジョーカー』(2019)の ガッツリ復習〝8〟コマ漫画です
『ジョーカー』を漫画で復習 『#ジョーカーフォリアドゥ』に備えよう!→https://filmaga.filmarks.com/articles/311875/


改めて観直しましたが辛い…
アーサーに同情することで暴力を…

 四コマ映画『ジョーカー』→ 
http://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=2389


***


大ヒットですね。ま、話の筋も想像しやすいですし、実際に映画はものすごくわかりやすく作られてますからね。


ただ謎もありまして、監督は謎を謎として残したまま、絶対に答えを明かさないつもりのようですね。
(でもだいたいしばらくすると「あまりに何度も聞かれるから」っつって喋ったりもしますが)
なので、この話が結局どういう話だったのかは、現時点では明確ではありません。


****


自分がジョーカーになる可能性もあるし、自分がジョーカーを生み出す可能性もある。


この映画、ちょっとしたリトマス試験紙ですよね。
どういう感想持つかで人間性見えてきそう。


僕は「自分もジョーカーになる可能性がある」と怯える方が健全だと思いますけど。。




ラストについては以下に。








いかけっこしてまるでチャップリン映画のようにコメディ風味で終了。
 最後のセリフ 「理解できないさ」 この映画見てまるでジョーカーの作られ方を、サイコキラーの作られ方を理解したような気になっていたけど、甘い。 
んなもんは理解できないし。
ジョーカーには近づいていない。


映画『福田村事件』あなたはいつも見てるだけなのね 

2024-10-02 | 映画感想
福田村事件(2023年製作の映画) SEPTEMBER1923  
上映日:2023年09月01日
製作国:日本
監督 森達也 
脚本 佐伯俊道 井上淳一 荒井晴彦 
出演者 井浦新  田中麗奈  永山瑛太 東出昌大 コムアイ 松浦祐也



「朝鮮人とウチらどっちが下なんじゃ?」by穢多の男


「どうして大きな声でやめろって叫んでくれなかったの?あなたはいつも見てるだけなのね」by田中麗奈


「お前はデモクラシーに見捨てられたんじゃ」by水道橋博士


「せめて書いて償わないと」by木竜麻生


**


ちょうど一年前くらいに公開されてロケットスタートからのロングランヒット。


めちゃくちゃ〝ナウ〟でヒリヒリする〝史実〟を劇映画化したもので、
こういうものは韓国ではバリバリ作られて大ヒット連発させてるし
欧米でもエンタメ映画化されたり、ただただどんよりする映画になっている。


が、
現代日本ではとても珍しい映画。
この映画の存在自体が素晴らしく意義がある。


し、規模にしては大ヒットしたし
賞レースも賑わしたので
今後の映画界が変わっていきそう。


**


朝鮮の扇子のくだりで
あんなにすごく高そうなものをあげるだろうか、っていうのと
流石にあの緊迫する場面で朝鮮の扇子を出しちゃう?


暑いから扇子出そうと思ったけど「あ、これ出したらやべっ」って気づいて鞄に戻したところを水道橋博士に見つかって「お前何隠した!」って、やるとかね。


**


竹槍や鍬でホントに人が殺すって
いったい何回刺したり振り下ろしたりしなきゃいけないんだろう。


沖縄戦での自爆について知ると人ってなかなか死ねないもののようなので、、
竹槍一回腹に刺しただけで「ううぅ…」って死んだりしないでしょう。


てことは実際はブスブスに刺しまくったのでしょう。


この映画ではその描写はかなりライト。
効果音も嘘っぽいし人があっさりと死ぬ。


残虐性はかなり低くしてると思いました。
おそらくこれは意図したものでましょう。


観やすくしたんですね。
なのでそんなに怖がらずに観てね♪




**




女性の描き方は残念。


生活と〝性〟が強く結びついているのは事実だけど
あんなにいちいち性の匂いさせなきゃいけないもんかね。


とくに女性ばかりがそれを担ってた感じもするし。


↑この点がだいぶ足を引っ張ったと思います。


映画『ツイスターズ』観客が揺れなどに覚悟するために座り直したりする

2024-10-02 | 映画感想
ツイスターズ(2024年製作の映画) Twisters  
上映日:2024年08月01日
監督 リー・アイザック・チョン 
脚本 マーク・L・スミス 
出演者 デイジー・エドガー・ジョーンズ グレン・パウエル アンソニー・ラモス



だいぶ前に見たけど書いてなかった。


全人類が「まぁまぁ、言うても…」的な感じで期待してなかったと思うんですよね。
からの「結構良かった!」とか「大傑作っ!」という評価かと。


**


4DXで観ました。
観たというか乗ったというか。


風とか雨とか揺れとか熱風とかを浴びましたよ。
アトラクションなんですよ、もはや。


ただそれがものすごくよかったです。


日常シーンではさすがにそんなに揺れないので油断してるんですが
「竜巻が来るわ…」みたいなセリフで竜巻バトルが匂わされると
なんとなく観客が揺れなどに覚悟するために座り直したりする。


みんなで竜巻に挑もうとしてる空気があって良いんですよ。


**


で、
現代的なアップデートとしては被害に遭った住民たちの苦しみとそれを支えるボランティア、さらには彼らを食い物にしようとする奴らを描いたことですかね。


竜巻をエンターテイメントとして楽しむだけで終わるわけにはいかないんでね、現代の映画観客は。


こういうちょっとマジメなニュアンスがあると観てる方としても罪悪感が和らぐ効果がありますね(嫌味な言い方失礼…)。


**


ただそういうマジメ雰囲気だけではなくて
気象の魅力やそれに魅了された人たちも描いていたのが良かったです。


「気象ってすごいよね!」っていう根源的な喜びみたいなものも描けていて、
それはマジメ要素もちゃんと入れてるから成立するものだと思いました。




**


竜巻多発地域の住民たちがあまりに無防備すぎるとか
住民の中にも「アタシが(オレが)みんなを守るっ!」みたいに動く人がいるべきだったと思う。


地元の地理はその人の方が強いわけだし
その人と主人公たちが協力して立ち向かって欲しかったかな。


あまりに住民たちがモブ過ぎた。。



ドキュメンタリー映画『はりぼて』選挙制度をハリボテにしないようにしよう

2024-10-02 | 映画感想
はりぼて(2020年製作の映画)
上映日:2020年08月16日
監督 五百旗頭幸男 砂沢智史 
ナレーション 山根基世 
出演者 佐久田修



このドキュメンタリーを小中高の社会科の授業で毎回流して欲しい。
必須科目にしてほしい。

そうじゃなくても、
県議会とか市議会とかの様子を抜き打ちで学生たちに配信して欲しい。