映画感想(ネタバレもあったり)

映画コラム/映画イラスト

映画『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』多分これが僕の観たかった続編

2024-11-25 | 映画イラスト

ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ(2024年製作の映画)Joker: Folie à Deux
上映日:2024年10月11日
製作国:アメリカ
上映時間:138分
監督トッド・フィリップス
脚本トッド・フィリップススコット・シルヴァー
出演者ホアキン・フェニックス レディー・ガガ ブレンダン・グリーソン キャサリン・キーナー サジー・ビーツ ハリー・ローティー



目次

  1. 前作『ジョーカー』(2019)の好きなとこ
  2. ②については興味が湧かなかったけど
  3. ネタバレは以下に!



前作『ジョーカー』(2019)の好きなとこ

前作『ジョーカー』(2019)を①、
今作『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』を②とします。


①の感想で僕は「自分がジョーカーになる可能性もあるし、自分がジョーカーを生み出す可能性もある。」と書いていました。
てことは、単純にいうと僕はジョーカーが嫌いだったんですね。

絶対なりたくなんかないし、心酔も応援もしない。
同情するし、必要な社会的支援の手が差し伸べられるべきだと思うけど。
で、
①の好きなポイントは「アーサーがあのジョーカーではないかもしれない」点なんです。
これは監督が言っていたかと。

僕はアーサーがジョーカーじゃない方が好きな解釈でした。
ただのおじさんでしかないところに悲しさや恐怖があると思いました。

なので、
続編が作られると知った時、
しかもハーレイ・クインも出てくると知った時、
「嘘だろ、じゃぁ彼はジョーカーだったってこと????」とゲンナリしました。


②については興味が湧かなかったけど

ところがアメリカで公開されるや否やの大酷評!!
からの大コケ!
インスタで繋がってるアメリカの人とかも
「安心して!2がいくら酷くても1は汚されない!」と投稿してました。

てことは観た方がいいのかも、と劇場へ。




ネタバレは以下に!









以下、僕の解釈です。

僕が希望するのは「最後の3分くらいだけが事実であとは全部アーサーが死ぬ直前に見た妄想」。

前作の犯行で捕まって病院入って、アーサーは地味な感じになっていた。
前作での事件でおそらく熱狂的なファンは生まれたし模倣犯も出たのでしょう。

しかしそれもしばらくしたら収まった。
もちろんテレビドラマなんかにはなっていなかった。
みんなで見るテレビはただアニメを流しているだけ。

で、
アーサーに面会が来た(普通に弁護士でしょう。裁判中なはずだから)。
廊下を歩くアーサー。
おそらく数少ない前作の"ジョーカー"に熱狂していた男が後ろから追ってくる。
もしかしたら彼はアーサーがいるからこの病院に入ってきたのかも。

で、
「全然俺の期待と違うんだけど…しょぼ…期待を裏切りやがって!お前なんかジョーカーじゃねえ」
ってことでアーサーを刺殺。
彼はアーサーを刺したナイフで自分の口を裂いた。
ジョーカーっぽい人誕生???

この映画は刺された後死ぬまでの妄想。
てのが僕の希望。

***

以下は箇条書き。

デントがトゥーフェイスになっちゃったよ。
爆破で顔半分燃えて。あれ冷めたわ〜。
一応アメコミの設定やってみました感はちょっといただけない。
そりゃアメコミファンの方たちが怒っても仕方ないと思う。
***
「歌はもういい。歌わなくていい。」byアーサー
観客みんなの気持ちを主役が代弁してくれた。
冗長でちょっとチープなミュージカルシーンはわざとでしょう。
「もういいよ、歌は」と観客に思わせたかった?
「ミュージカルシーン多いし長い。眠かった〜。期待したジョーカーじゃかなった〜〜。」と観客。
じゃあ、期待したジョーカー像とは?
一体何を観せられているんだ…
いや、違う!
俺が自由意志で観に行ったのだ!
***
レディ・ガガこそ本物のエンターテイナー。
幕が降りても夢を見せる人。
アーサーは違う。
超つまんないギャグを言う人(ジョーカー)。
***
2回以上観る気の起きない映画ではあるし、おススメもしない。
ただ、僕が観たかった②はこれだったんだと思う。
けど、②はなくてよかった。
しかし、制作者側は②を作らねば!と思っただよね、社会的な影響を考えて。
じゃあしょうがない!!!

映画『本心』原作者いわくテーマは「最愛の人の他者性」とのこと。

2024-11-25 | ネタバレあり
本心(2024年製作の映画)
 上映日:2024年11月08日
製作国:日本
上映時間:122分 
監督 石井裕也 
脚本 石井裕也 
原作 平野啓一郎 
出演者 池松壮亮  三吉彩花 水上恒司 仲野太賀 田中泯 綾野剛  妻夫木聡



原作者いわくテーマは「最愛の人の他者性」とのこと。

めちゃくちゃ大事ですよね。。
僕はパートナーとも親や兄弟ともかなり強い他者性を感じてます。

若い頃はとくにパートナーについてはもうちょい自分と近かったけど
ある時から「あれ、どこまでいってもめっちゃ他人だな…」と思ってから
どんどん他者性を強く感じるようになって
だからこそたまに「この人、人生の伴侶なんだ…」と実感すると恥ずかしながらあたたかい気持ちになったりする。

**

などとエッセイを書いたのも、、
公開日に見て感想書くまで3週くらい経ってまして
あんま映画の内容を覚えていないから。。

原作小説が内容てんこもりなのでしょうね。
この映画も内容もりもりで、前半と後半とでテーマが違ってるかのようにやってることが変わってくる。

小説原作の映画だなぁって感じ。
先が読めない感じ。
あっちこっち話が行っちゃう感じ。
映画らしい映画よりも勝手な感じでこれはこれで好き。

**

石井裕也監督が今作ではそんなに怒ってないなぁという印象。
石井監督の怒りにはとても共感はするけど
ちょっと疲れるのも事実。。

近年の石井監督作の中ではライトでロマンチックな印象。
コメディシーンもあるしほんとに吹き出したりしました。

**

田中裕子がやはりすごい。
この人がすごくなかったことがない。


田中裕子のヴァーチャル・フィギュア感が凄い。
特別な演技をしてるわけじゃないのに何故かドットの集合体に見えてくる。
アレクサ感がすごい。
ほんと不思議な人。

**

三吉彩花、化けましたね!
あのビジュアルで石井裕也監督のヒロインにハマれるようになってしまった!
無敵ではないか!

池松壮亮も未だかつてないくらいイケメンに撮られたように思います。
ラブストーリーの側面が強かったからかな。

妻夫木聡の存在感も日本映画に収まってるのがもったいないレベル。

そろそろこのあたりの監督や俳優がガツンとドカンと世界で注目されてほしいなぁ。

**

ラストネタバレは以下に!








ラスト 

母は雨の日 ノラの?黒猫を心配して嵐の日川に近づいていた。 
それが死の原因? 

黒猫は三吉彩花のアバター? 

母の言いたかったことは 
「あなたを産んで良かった 本当に幸せ 死ぬなら今かな」

 「それずっと冗談ぽく言ってたよ本心だったの?」by 池松壮亮 

母を追い求めて伸ばす手(池松壮亮) 
その手を掴もうと震えて伸びる手(三吉彩花?) 

終わり 


さくや(池松壮亮)が学生時代のあやかを好きだったと思えないんよね。
 で、三好彩花のことも好きじゃなかったわけでしよ。 
そうすると、さくや自身が色々揺らいでくるよね。 

さくやって実は…と。

 結局、観客だって主演キャラの本心なんてわかってないのだ。


映画『オールド・ジョイ』「悲しみは昔味わった喜び」の意味

2024-11-24 | ネタバレあり
オールド・ジョイ(2006年製作の映画) Old Joy  
上映日:2021年07月17日
製作国:アメリカ
上映時間:73分
監督 ケリー・ライカート
 脚本 ケリー・ライカート  ジョナサン・レイモンド
 出演者 ダニエル・ロンドン  ウィル・オールダム


『ファースト・カウ』が素晴らしかったので同監督の2006年の『オールド・ジョイ』。


製作にケイト・ブランシェット主演『キャロル』の監督をしたトッド・ヘインズもいますね。


**


だいぶ低予算感の強いロードムービー。
登場人物はほぼ2人。
2人とも30代半ば?


数年ぶりに会う旧友のマークとカート。
一泊二日の車での温泉旅行に出る。


マークの妻は妊娠中。
マークは妻に「旧友から旅行にさそわれた。君が嫌なら行かない。嫌なら行って全然行かないから」と言う。


↑これめちゃ腹立ちますよね。。


「君が嫌なら行かない」って。。
嫌だから行くなって言えるわけないじゃんね。
そもそも行こうとしてる段階でちょっと腹立ってるわけだし
「嫌だって言われたから行かなかった」という事実が生まれることが死ぬほどイヤ。
だから勝手に行けよ、と。


マークが大人になろうと頑張ってる姿だとは思うけど、まぁまだまだだよね。


**


タイトルは「old joy」。


劇中に「悲しみは昔味わった喜び」という謎の言葉がある。


「昔味わった喜び」ってなんじゃいと思って調べてみたら
日本語にも旧歓という言葉が。


きゅう‐かん〔キウクワン〕
昔味わったよろこび。
とのこと。


そこはかとない寂しさは感じますね。
昔はあったけど今はない、というニュアンスを感じる。


**


で、この映画。


昔仲良かった男子2人が数年振りに会ったら
片方は社会に適応しようとしてる段階で
片方はまだまだ社会からはみ出た生き方に憧れてて
2人の間には深い溝ができていた…という話。


まだ感想書けていない空音監督の映画『HAPPYEND』が似ている構図(真逆とも言える)だと思いました。


社会に反抗していたこたで繋がっていた2人が離れていくのがこの映画。


片方が政治的な活動にのめり込むことで2人に溝ができるのが『HAPPYEND』ですかね。




**


ラストネタバレは以下に。










念願の温泉にたどり着いたけれどもはや会話のないふたり。
 なんにも話すことがない。

そこでカートが動く。 
2人とも温泉に入った状態でカートがマークの肩を揉む。 
ギョッとするマーク。 
しかし身を委ねる。 

言葉ではなく イデオロギーでもなく 
ただ友愛の気持ちを持っている人間同士の労わり。 

そして車に乗って帰路。
 家に着き、別れ。
 おわり


映画『ルックバック』「なんで描いてんだろ なんの役にも立たないのに」

2024-11-24 | 映画感想
ルックバック(2024年製作の映画) 
上映日:2024年06月28日
製作国:日本
上映時間:58分 
 監督  押山清高 
脚本  押山清高 
原作  藤本タツキ 
出演者 河合優実 吉田美月喜


「なんで描いてんだろ なんの役にも立たないのに」

**

藤本先生の四コマ漫画が面白すぎて。。
だいたいこういう作中作品ってつまんないことが多いんですけど、
藤田先生の四コマ全部読みたいっ!てなるくらい面白かった。

『秘密』ってタイトルでしたっけ?
先生をお父さんって呼んじゃうやつ。
最高。

**

僕も絵描きの端くれとして前半はとても身につまされながら見ましたし
「ファンですっ!」と言われるシーンでは速攻泣きました。

**

ただ、、重い。。
あの出来事は重すぎる。。

あの大きな出来事を描きたかったんだからしょうがないんだけど、
再現シーンが怖すぎて悲しすぎて、、
後半正直話があんま入ってこなかったんですよ。

あの男が怖すぎて。。

原作漫画にかなり忠実とのことなので
きっとあのシーンも原作にあったのでしょう。
あのシーンを入れたかったんだからホントにしょうがないんですけど、

僕があのシーン以降集中力が削がれてしまったのもしょうがないこと。。

名作っ! 映画『パスト ライブス/再会』ラストネタバレあり

2024-11-08 | 映画感想

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画) Past Lives
上映日:2024年04月05日
製作国:アメリカ 韓国
上映時間:106分
監督 セリーヌ・ソン
脚本 セリーヌ・ソン
出演者 グレタ・リー   ユ・テオ  ジョン・マガロ



「ニューヨークでは泣けないの?」


「私は人生をつかみたい。なのにソウル行きの便ばかり探してる」

**

名作ぅぅ!


恋愛というよりは、
結構可能性高くあったかもしれないもう一つの人生、でしょうね。

自分の意思と関係なく親にアメリカへ連れてこられたけどそこからは自分の意思で人生を掴んだ。

なんの悔いもないのに
自分の故郷の韓国から初恋の男が「君の本当の人生はこっちだったのかもよ」と近づいてくる!!

やめてよそんなこと思わせないでよ、と。
そりゃ韓国の方が苦労はなかったかもしれないし
今の夫も微妙だけど
アメリカだからこそ女性でも劇作家として活躍できてるのかもしれないし
誰だっていつだって「夫は微妙」なものでしょ、と。。

**

「いいえ、私は1秒も乱れていません」てな感じなノラだけど
ぐるぐるぐるぐるとメリーゴーランドのように回っている。

メリーゴーランドのバックにした2人の会話シーン、最高!

監督のセリーヌ・ソンは韓国系カナダ人もしくは在カナダ韓国人かな。
1988年生まれの36歳!

この映画の主役のノラと境遇が似てる!と思ったら、半自伝的な作品とのこと。

**

「韓国ではノーベル賞は取れない」というセリフがある。


この映画公開のときまではそう。

それまで韓国では金大中(大統領当時)のノーベル賞平和賞が唯一の受賞だった。

2024年10月韓国の女性作家、ハン・ガン(韓江)さんがノーベル文学賞を受賞!
おめでとうございます!

**

この映画、下手したら
大人になったノラとヘソン2人だけのニューヨーク散歩短編映画になってた可能性もあるよね。


むしろそれの方が自然?

よくこの(薄い)内容で長編映画にしようと思ったわ。

韓国時代のノラの家族の様子とか
もちろん子供の頃のノラとヘソンとか
リモートの時期とか
ヘソンのダサいパーカー大学生時代とか
兵役とか。

なくても成立はするけど、
ぜんぶめちゃくちゃ大事ですよね。
ぜんぶ効いてる。
兵役とか特に。

**

あと重要なのが夫!

(『ファースト・カウ』の主役ジョン・マガロ !!)

夫のネチネチ感がいいですね。
「君は寝言を韓国語でしか言わない。僕は君の夢がわからない」

「僕は君たち2人が主人公の物語の邪魔なアメリカ夫じゃないか!」
ってセリフは突然メタ構造に入ったのかと思うほど。

だからこの夫はめちゃくちゃ視野が広いんですよね。

何が起きてるのかはわかってる。
妻が愛欲で揺れてるわけじゃなさそうなことは頭ではわかってる。

もっと深く人生の帰路に立ってるっぽい!
だからこそ不安。

「あったかもしれないもうひとつの人生」が近づいてきて揺れている妻を拘束はしないんよ。

ちゃんと向き合ってきな、と。
だからこそのあのラストさ。

**


ラストは以下に!







2分後にウーバー(タクシー)が来る。
おそらくさすがにもう2度と会わないであろう2人。
アメリカ式のフリして抱きしめちゃおうかな
最後だしずっと我慢してたからいいよね
なんだったらキスとかしてもいいかな
だってここアメリカでしょ
アメリカ人って結構軽い意味でキスしたりすんでしょ
あ〜全然無理
全部ノラに見透かされてる感じするし恥ずかし無理無理
でも見透かされてるっていうか
そもそも僕の気持ちは全部ノラは知ってるはずで
ここは男らしく悔いが残らないように
アメリカ式のハグのフリなんかじゃなく
韓国男としてノラを抱きしウーバー到着……。 

結局アメリカ式のハグ。笑顔。
 ウーバー着いてから長々と喋り出すヘソン。
 ヘソン「来世でも僕らであったらどうなる?」
ノラ「わからない」
ヘソン「僕もわからない」
 ↑何この会話 
ウーバー走り去る。
 歩いて家に戻るノラ。
玄関先で夫が待っている。
ノラを抱きしめる夫。
ノラ泣く。 初めてノラが感情を露わにした。
 夫はノラを抱きしめながら2人は部屋に戻る。