映画感想(ネタバレもあったり)

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映画『マエストロ:その音楽と愛と』 共感イラネ 査定もイラネ 

2024-02-22 | 映画感想

マエストロ:その音楽と愛と(2023年製作の映画)
Maestro
監督ブラッドリー・クーパー
脚本ブラッドリー・クーパー ジョシュ・シンガー
出演者ブラッドリー・クーパー キャリー・マリガン


流石に面白いですね。

固形化したメッセージを伝えてこないのが面白い。
愛とはこうであるべき、などのべき論も唱えないし
なんなら共感さえも求めてこないし
本人たちの気持ちさえもイマイチわからない。

分かろうとしてくんじゃねーよ感、がいい。
査定とかしてくんじゃねーよ感が、好き。

***

3人の子供を含めたサブキャラたちが一様に薄っぺらい。
これはわざとでしょう。
友人たちも通り過ぎた男たちも存在が薄い。人格があまり見えてこない。
特に子供3人は全然描き分けがされていないのが異様なほど。

***

この映画で集中して描かれるのは、バーンスタインと妻のフェリシア。
夫婦の物語。

サブキャラたちはもちろん、この映画自体も結局はこの夫婦に踏み込んでいない。

「不倫ダメ!ゼッタイ!」とも言わないし
「2人には深いところで心の繋がりがあった」とも言わない
(そう感じるのは自由ですが)。

ただただ描いただけって感じ。
それがとても本人たちを尊重している感じがして好感が持てますし、
映画としてもとても広がりのある、深みのあるものになっていると思います。

***

にしても、
ブラッドリー・クーパーはよく自分の監督作で自分を主演してこんなにも美味しい役を、アップをたっぷり多用して美味しく美味しく自分を見せるものですよね。。

↑これがもう引っかかって引っかかって。。
特殊メイクもすごいし、本人感もすごいんだけど、
透けて見える本人自体の圧力の方を感じてしまった。。
大スターだからしょうがないけどね。。


猫の日2024 イヌ派が描いたネコ映画紹介マンガ😺

2024-02-22 | 映画感想





 









ボブという名の猫 幸せのハイタッチ(2016年製作の映画) A Street Cat Named Bob
製作国:イギリス
監督 ロジャー・スポティスウッド
脚本 ティム・ジョン
出演者 ルタ・ゲドミンタス ルーク・トレッダウェイ ジョアンヌ・フロガット アンソニー・ヘッド
  


僕は犬派ですし、
麻薬中毒の路上シンガーが?猫と出会って?人気者になって?ヤク中から抜け出して?そのこと本に書いたら世界で1000万部売れた?
で『英国王のスピーチ』の製作陣が映画化?
ハァ?
と思っていましたが、ビックリ、しっかり感動しました。。


四コマ映画→http://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=1784




ジェームスとボブ(猫)との出会いは映画の中ではジェームスの家にボブがフラッと現れたことになってるけど、実際は傷を負ったボブをジェームスが見つけたことが出会いだったらしいです。


そっちの方が全然いい話なのになぜ映画では採用しなかったのか。
多分あまりにも出来すぎたエピソードだからでしょうね。嘘くさくなっちゃう。


確かに全体的に「ほっこり猫ムービー感」を極力取り除きにかかってるのがわかる。演出は抑え目です。


ほっといてもボブは魔法のようにカワイイし、物語も童話のように感動的。下手したら実話なのに絵本になっちゃう。


だから全体的にはカラッとした演出になってる。
おかげでジェームスの父親との確執や薬物との戦いがリアルに伝わってくる。


ボブと一緒に歌うことで路上で人気者になっていく過程でジェームスはこんなセリフを言います。


「〝恐れ入ります。写真を撮っていいですか〟と、ある婦人に言われたよ。〝恐れ入ります〟だよ。前の僕になら誰も使わなかった言葉だ。ボブのおかげで僕にも違う未来があることに気づいたんだ。」


このジェームスの謙虚さがあったから、この現代の童話が多くの人に共感されたんだろうし、誰にでも〝セカンドチャンス〟をという問題提起ができる映画になったんでしょうね。


抑えた演出とはいえ、猫のぼぶの仕草はひたすらカワイイ。
ほとんどのシーンをボブ本人(本猫)が演じたらしいです。
あと、歌が全部いいんです。


四コマ映画→http://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=1784


短編映画『彼方に』 グリーフケアの大切さ 第96回アカデミー賞 候補 

2024-02-22 | 映画感想

彼方に(2023年製作の映画)The After 製作国:イギリス  ショートフィルム・短編 
監督 ミサン・ハリマン
脚本 ミサン・ハリマン ジョン・ジュリアス・シュワバック
出演者 デヴィッド・オイェロウォ ジェシカ・プラマー アメリー・ドクボ


監督のミサン・ハリマンは、、Black Lives Matter運動で最も広く知られている存在の写真家であり社会活動家とのこと。


今作が監督デビュー作。

きっと今後映画をいくつも撮るだろうし、名作も多いのではと思わせる今作の出来だと思いました。

**



第96回アカデミー賞【短編実写映画賞】候補作。


ちょっと(いや、かなり…)説明的な表現が多かったなぁ。。
18分の短編だからわかりやすく伝えないとと思ったのかな。

好みの問題かもしれないけど、もっと削ぎ落としてもよかったかな。
もっと淡々と、何も起きてないかのように進んで欲しかったな。
冒頭と終盤で大きな出来事が起きるのでその二つだけでも。

何年か前に観たけど感想を書けずにいる名作短編『愛してるって言っておくね』に近い衝撃。。

**

ただ、主演のデヴィッド・オイェロウォの魅力で惹きつけられながら観れました。

もう47歳なんですね。
十分活躍はされてますけど、もっともっとスターになってもいいはずなのに、なんか不思議。


ラストネタバレは以下に。







タクシー運転手となった彼。

ある夫婦とその娘を乗せる。
 亡くした妻と娘に似ている。
 不機嫌な夫ももしかしたらあの分岐点の先のもう1人の自分かもしれない。
 夫婦は後部座席で永遠に不毛な夫婦喧嘩を続けている。
 その娘はここにいないかのような表情でそれに耐えている。
 家に着いて夫婦は降りるがまだ喧嘩を続けている。
娘はタクシーから降りない。

 彼が降りるように促すと 素直に降り、娘は彼を背後から抱きしめる。
 彼は泣き崩れ路傍に倒れる。
 不審に思った夫婦とその娘は彼を置いて家の中に入る。

 彼は泣き止み起き上がり運転席に戻り車を走らせる。
 終わり。

 **

ラストの少女からのバックハグは、亡くなった自分の娘(と妻)によるものでしょうね。
少女の体を借りて父(夫)を抱きしめたのでしょうか。