寝ても覚めても
麦が再び現れて朝子がサッとついていく。
そして亮平のもとへと帰る。
ここが小説だとなんか説明あるかと思って期待したけど、朝子がたしかにその都度なんか喋ってんだけどイマイチ意味がわからない。。
結局映画の印象と変わらない。だから映画が凄いなとも思います。
豊崎さんの解説を読むと、ま、どうやらセックスのない性欲の話らしいですね。
麦とは性欲、亮平とは愛・結婚、ですかね。
『イット・フォローズ』のソレの意味のようにわかっちゃうと「まぁそうか…」と思って、わからないままの方が魅力的だったかなと思うわけですが。
ま、違うかも知んないし。
***
小説は東日本大震災前だったのでその描写はないですが、地震の描写自体は何度かありましたね。
映画版では、朝子は「間違ってはいないことをしたかった」ってことで毎週のように東北まで車でボランティアしに行ってた。亮平と一緒に。
で、麦と朝子が車で逃げた先は仙台。
麦は「海が見たい」っつって仙台の海岸まで車を走らせたけど、海が見えない。高い堤防ができてるから。
「海見えない。こんな堤防できちゃって…」と麦。
「え?知らないの?ここで何があったか、知らないの?」と朝子。
麦は東日本大震災に興味がなかった。いくらその時日本にいなくても情報は入ってきただろうけど、興味がないから記憶にない。仙台の海で何が起きたか。
柴崎さん曰く「麦は宇宙人で地球にきたばかりで人間の感情を学んでいる最中」とのこと。
***
そんなことよりですよ。
小説のラストのポパイ刺青黄色自転車男!
小説のラスト、緑道で朝子と亮平と千花との対決があるわけですが。
途中突然、黄色い自転車に乗ったポパイの刺青入れた坊主男が割って入ってくるんです。口笛吹きながら。
完全に三人の間で止まったわけです。
でもこの三人はポパイを無視。存在に気づいてる描写もない。
普通に喧嘩続けるわけです。
こんなこと地球上では起きませんよ。。
で、千花は「いこう、げんちゃん!」っつってポパイの自転車の後ろに乗って去っていく。
去っていく千花について朝子も亮平もリアクションなく会話を続けてから4ページ目で小説完結。
何これ。。怖い。。
きっと朝子が千花を消したんですね。邪魔だから。
だからポパイを作り出して、千花をこの場から消し去った。
もう怖くて。。この存在しないポパイが。。
そういえば朝子は混乱すると嘘言うんですよ。突然起こり得ないことを言う。読者に。
どうも読みにくいなこの本と思ってたけど、豊崎さの解説に朝子のことを「信頼できない語り部」と説明してたから、多分そう。
柴崎さん自身も朝子は宇宙人だと書いてる。
いやぁもう『寝ても覚めても』やばいよ。。
で、この異常な原作に手を加えて同じような味わいに仕立てた映画もやはり凄いのさ。。。。
寝ても覚めても