映画感想(ネタバレもあったり)

映画コラム/映画イラスト

韓国映画『KCIA 南山の部長たち』 実際にあった大統領暗殺事件

2020-12-29 | 映画感想
KCIA 南山の部長たち(2018年製作の映画)남산의 부장들/The Man Standing Next 上映日:2021年01月22日 製作国:韓国 上映時間:114分

破竹の勢いの韓国の社会派エンタメ映画ですが
今作でまたレベルが一段グッと上がったのではないですかね。


****

『KCIA 南山の部長たち』四コマ映画→ http://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=2629




今までの作品は
史実を基にした社会派の内容だけど割とコメディ要素や派手なアクションもたっぷり入れますしもちろんグロ描写も忘れてないよ!
みたいな作風が多かったと思います。

もちろんこれらも凄いし大好きですよ。

しかし今作!格調高っ!品格凄っ!
とにかく削ぎ落として削ぎ落として終盤までじっと我慢。。。

そしてラスト、ボカーンッ!主演イ・ビョンホーンッ!


***


物語の組み立てとしはわかりやすい。

側近が大統領を暗殺した、という史実がありますし
映画の冒頭もそこから始まりまして
で、40日前にさかのぼって
「どうしてこの男は大統領を暗殺するに至ったのか」を丁寧に見て行くことになります。

その流れをジリジリと時間使って見せられます。
スカッとズバッとは進まない。

しかも話の規模の割に登場人物も少ない。

それで持つのか。持ちます。
なぜなら主演がイ・ビョンホンだから。。。。


****

イ・ビョンホン、そんなに毎度毎度観ているわけではないのですが、
やっぱたまに観るとこの人すげえなと思います。

主役としての存在感もあるし、繊細な感情表現もありつつも、観客が彼に乗って映画にライドできる隙間さえも残してくれている。。

この役、めっちゃ強いんですけど、サラリーマン的な匂いも強い。
戦う技術は高いんだけど、性格的には文化系な感じもするんです。

喋り方がオラオラ系ではない。ちょっとケンカ慣れしてない感じ。

それがリアルで面白い。


****


で、終盤までジリジリジワジワと来てからのラスト。

長回し!
あの巨大セット、この長回し撮影用に作ったらしいですよ。
そうじゃないと、上へ下への大移動を撮影すんの大変ですもんね、外にも出ちゃうし。。

すごい緊張感。。呼吸を忘れて窒息死寸前。。


****


『KCIA 南山の部長たち』四コマ映画→ http://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=2629

映画『日日是好』 ものすごい監督の演出力! 

2020-12-29 | 映画感想
なかなか観たことのないテンポ感、空気感の映画でした。
素晴らしかったですよ。よくこのバランスが成立したなぁと感心します。

これをやろうとして失敗してる映画が多いんでしょうね。
成功してるのを初めて観たかもってなレベル。

監督の力かと。


茶道ってやったこともないし全然知らないんですが
たぶんこの映画の雰囲気のものなんでしょうね。


****


鶴田真由のセリフがいい。

茶道を開いた千利休が生きていたのは戦国時代。
今日会った人とまた会えるかどうなんてわからない時代。
本当の意味での一期一会だったんでしょうね、
的なセリフ。



世界はコロナ禍の渦中ですし
毎年日本のどこかで大きな災害が起きていますし
一期一会という言葉が以前よりもヒリヒリしたものに感じます。


そんな渦中でも
意地でも着物着てお茶室で季節を感じながらお茶を飲むんだ!
という姿勢が
平和に対する希求のように感じました。

お茶室に集う着物姿の女性たちから、ほとんど怒りのような平和への祈りを感じました。


**



あと、面白かったのは。
この映画は25年間を描いているのですが。


最終的に45歳になった黒木華が見た目は完全な(色気たっぷりの)お姉さまになっていましたけど、
内面には20歳の頃の黒木華が残っているんです。

僕も41歳ですけど、中身は20歳くらいからそんなに変わっていない。。
きっと多くの方が同じように思ってると思います。


でも、しっとりとした45歳の女性を見て「中身は20歳なんだろうな」とは思わないんだけど、
この映画だとあの45歳の黒木華の中身は20歳に見えました。


25年という時間は長くて恐ろしいものだけど
同時にあっという間で優しいものなのかもな、などと。


**


2回観たんですけど、、
(『EVERY DAY』は4回観たし、、ヒマかっ!)
2回見ると先生役の樹木希林からもまた25年を感じることができました。

樹木希林はラストあたりで黒木華に
「あなたも教える立場になりなさい。教えることで教わるのです」的な事を言う。


25年前の樹木希林もまた
教えることで教わっている状態だったんですね。

だから
いかにも現代の若者って感じの黒木華と多部未華子を優しく包んでいた。

初めての茶道をキャッキャッと楽しんでる若者から、樹木希林も何かを学ぼうとしていたんですね。

この時の樹木希林(の役)はたぶん50歳前後かと。
その歳であっても、学び、吸収する。


**


たまに茶道あるあるみたいなコントっぽいシーンも面白いですね。

あけましておめでとうございますゴニョゴニョゴニョゴニョとか
どうもどうもあらまぁあらまぁの応酬とか
大奥みたいな謎の儀式とか。


**


ぜひ!

『プライベート・ライフ』ラストネタバレあり  不妊治療がテーマの映画

2020-12-29 | 映画感想
こちらも大変良作でございます。

ネットフリックス制作の映画は当たり外れがある
っていうかあんま当たりにあったことないかな。。
ただ、映画祭ではいくつか賞を獲るような良作だけど中小規模の映画でスターは誰も出てない…っていう映画だと
アメリカでも公開されずに円盤スルーになったりもする。
そういう作品をネットフリックスが配信権買って全世界で観られるようにするってのは
作品にとっては「まだ」幸せな展開ではあるかな、と。
ほんとはね、映画館でちゃんとかかってお客さんも集まるのが望んだ幸せかと思いますが。
これから映画はどんな風に変わっていって、我々はどれほどそれに合わせていけるのでしょうか。

**

という僕のエッセイはどうでもよくて。。

**
監督のタマラ・ジェンキンスは女性。
今作の主演のキャスリン・ハーンと顔そっくり。
今作がどれほど監督の自伝的要素が入っているのか、全然入っていないのかはわからないけど、まぁまぁめちゃくちゃリアル。

いとこの娘セイディが入る芸術村(ヤッドー)に、タマラ監督も入っていたことがあるようですね。
そこで『マイ・ライフ、マイ・ファミリー 』The Savagesの脚本を書いて、のちに監督もして作品も成功した、と。
**
男女の結婚生活もしたことなく、妊活も、体外受精も代理母探しもしたことないのに
「この映画はリアルだ」って感じるのもおかしな話ですが。。

物語とはそういうもの。
ストーリー展開に翻弄されるキャラクターたちのリアクションに圧倒されてしまうのです。

主人公夫婦は僕が体験したことのない事態に見舞われるわけですが
まず僕はこの2人と年齢が近めですし
なんつったって同じ人間だもの。
その苦しみや苛立ちは伝わってきます。

**

「子供できないなら子供がいない人生を楽しめばいい!以上!」
なんて思考停止で切り捨てたりなどできないわけです。

**
僕は子供のいない人生ですし
かなり高い確率でこれからも子供いませんし
そもそも子供のいる人生を考えたこともなかったし
大人になってから考えてみても子供を望む気持ちはないのです。
子供がいない人生でも充分手一杯で大変で、、、子供なんて勘弁してくれというのが正直なところ。

**

だから僕と主人公夫婦はだいぶ立ち位置が遠いわけですが
「希望を捨てられずに苦しむ」というシチュエーションは僕だってわかりますよ。

その苦しみたるやどれほどか、と。

**
ラストシーンが良いですね。
素晴らしい。
好きなラストシーンTOP8に入りますね。

あれは演技なのでしょうか。




ラストネタバレは以下に。





追い詰められたケイディは妊娠のための薬を過剰摂取してしまう。
そのことで彼女の体が危険な状態に。
結局セイディは入院。
代理出産も中止。
夫婦はセイディに申し訳ない気持ちを抱きつつも、またかダメか、、と落ち込む。

夜。同じベッドにいる2人。眠れない。
妻「かなしい」
夫「正直ホッとした。妊活し始めてから僕らはおかしい。セックスレスだし」
妻「セックスがしたいの!はいどうぞ!」
とバイブレーターを差し出す。
夫「……」
妻「私はかなしいの」
夫「悪いけど君のかなしみを癒す余裕がない」
妻「そう…」
セイディは芸術村(ヤッドー)に合格して、この芸術村で生活しつつ執筆活動に専念できる状態に。
セイディ「コネを使って私を芸術村に入れてくれてありがとう」
妻は「コネなんて使ってないわ」
セイディ「…そうなの?」
妻「そうよ」
芸術村の入居はセイディの自力だった模様。
自分には何もないと思っていたケイディだったが、初めて自分に自信を持ち始める。
もう代理出産することで自分に価値を付加しなくてもいい。

ハロウィン。
「トリックオアトリート!」階下の子供たちにお菓子をあげる。
今年はちゃんとお菓子を用意していた。

夜。パレード。
ニクソンとクリントンのマスクをかぶった夫婦。
夫に電話。
「…フリーダイヤルだ!」
電話の主はバージニア州の代理出産希望者らしい。

数日後。バージニアに車で向かう2人。
待ち合わせの場所のダイナー。

2人は初めは4人席に向かい合わせて交互に座っていたが
夫が妻の横へ移動。
そろそろ来るであろう女性を待つ。
メニューや水の位置を整える。
夫、妻の手を握る。
笑顔の妻。
ドアの方を見る2人。
窓の外を見る。
女性はまだ来ない。
また来ないのかもしれない。
2人は会話もなく待つ。
ドアの方を見る。窓の外を見る。
エンドロール。
終わり。

**
ラストシーンは演技ですかね。
なんか演技に見えなくて。。

もしかしたら監督から
「2人は座っててね。いい頃合いで女優さん入ってくるから。絶対喋らないで待ってて。いい人そうな女優さん用意してるから。安心した顔見せて」 
とか言っておいて
いざ本番始まったら
そんな女優さん用意してなくて
一向に誰も入ってこなくてただ待ってなきゃいけないっていうシチュエーションを作ったのでは。
主役2人は「え、全然入って来ねーんだけど」
と思いつつ、
「あ、そういうこと?」
「そういうラストな訳?」
「わたしたちにはハッキリとした希望は提示されずに終わるの?まさか…」
と思いながら
喋っちゃダメって言われてるから喋れないし
ただただ1秒毎に「来ないかもしれない度」が増す状態で待たされる。
って感じで撮影されたんじゃないかなぁ。
って思うくらいにリアルだった2人の演技。。



映画『ピータールー マンチェスターの悲劇/ピータールーの虐殺』(2018) 「世界は良くなってる?」

2020-12-29 | 映画感想
ピータールー マンチェスターの悲劇/ピータールーの虐殺(2018)
Peterloo
上映日:2019年08月09日/製作国:イギリス/上映時間:155分
監督マイク・リー脚本マイク・リー
出演者ロリー・キニア
ノミネート
金獅子賞 ·/ヴェネツィア国際映画祭 女優賞/ヴェネツィア国際映画祭 男優賞/マルチェロ・マストロヤンニ賞/ヴェネツィア国際映画祭 審査員特別賞




ピータールーの虐殺(1819年8月16日)のシーンが凄すぎる
面白い。
ラストの虐殺のシーンは規模もものすごいし
音楽もなく
大喧騒の中
殴られる女性、刺される老人、馬に踏まれる赤ん坊などを
手抜きのないカメラアングルでガンガン撮りまくっていく。
どんなに大変な撮影だったことか。。


〝1819年にイギリス・マンチェスターで起きた、イギリス史上最も残忍かつ悪名高い事件として語り継がれるピータールーの虐殺”
へ向かうまでの道のりを
さまざまな人物や集団を通してすべて描いていく。

『シカゴ7裁判』っぽい。

そりゃ2時間35分かかるわ。
国の酷さ、指導者の胡散臭さ、民衆の無知さ
集団ごとに演説する人が数人いて
それぞれが結構長々と演説するんですけど、
喋ってるうちに自分の演説に酔ってきちゃって
悦に入った大演説になってくる。
ほとんどキリスト化しちゃう人もいるし
ミュージカル風になっちゃう人もいる。
それを聞いて飲み込まれる人がおおいけど
訝しげに見たり
そもそも喋ってる内容に疑問を持っている人もいる。

誰かを主人公にすることなく
とにかく全ての人を描く。
ひたすらに手抜きなく描いていく。
**
人物像がほんとに多彩。多面的。
なんでこの映画、評価低いんだろ。。
**

民衆の愚かさも描いてます。

人身保護法が停止される。
人身保護法は不当な逮捕や拘束から国民を守る法律。
この法律が停止されることの重大さを国民は知らない。
人身保護法自体を知らないし、その価値も知らないから。
知らないからむしろ
人身保護法の停止を支持してしまう。

存在の薄かった女性たちを色濃く描く

市民に投票権をっ!
っつっても当然のように「男性のみ」だし
女性団体もそんな男性を全力で支える。

紙を抑えるだけの女性とかほんとに残酷な描写。。
それをさせてることに何の疑問も持ってないあの指導者の酷さよ。
集会に参加する女性たちに
「夫のそばに戻れ!」
「子供の世話は!?」と罵声を浴びせるのもまた女性たち。。


「権利とは要求するものではない。
生まれたときからすでにあるもの。
ないのなら奪われてる。」

**

そして、ついに集会の日。
女性や子供も参加する集会は、
武器もナシで、
正装して
旗と月桂樹だけを持って
ほのぼのとした空気で始まる。

ものすごい規模の撮影だな。
エキストラ何人いんのさ。

そこに刀を持った騎馬隊が大量に侵入してくる。
女性も子供も関係なく容赦なく刀で攻撃される。

200年前の出来事だが、命を落とした名もなき市民が私たちに問いかける。
「世界は良くなってる?」

2020年 旧作映画ベスト10

2020-12-29 | 映画感想

パドルトン

Paddleton製作国:アメリカ上映時間:89分




ピータールー マンチェスターの悲劇

Peterloo上映日:2019年08月09日製作国:イギリス上映時間:155分
複雑な視点 誰も安心できない映画 https://note.com/fukuihiroshi/n/n105949211894




真夜中のパーティー(1970)

THE BOYS IN THE BAND 製作国:アメリカ上映時間:120分
リメイクよりも全然面白い。緊迫感が違う



つばさ(1927)

WINGS製作国:アメリカ上映時間:140分
室井琴星さんの講談も面白くて。



ブルーアワーにぶっ飛ばす

上映日:2019年10月11日製作国:日本上映時間:92分
俺の話かよ。



プライベート・ライフ(2018)

Private Life 製作国:アメリカ上映時間:124分
名作。ラストシーン最高



シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢

L'incroyable histoire du facteur Cheval/The Ideal Palace上映日:2019年12月13日製作国:フランスベルギー上映時間:105分
主演俳優の演技最高。



Every Day

上映日:2016年07月23日製作国:日本上映時間:95分
https://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=2503



日日是好日

上映日:2018年10月13日製作国:日本上映時間:100分
平和な日常への怒りに近い希求。



ペンギン・ハイウェイ

上映日:2018年08月17日製作国:日本上映時間:119分
ただただ名作。




映画『ウルフウォーカー』 今年観たアニメの中ではダントツ! 

2020-12-27 | 映画感想
ウルフウォーカー(2020年製作の映画)
Wolfwalkers 上映日:2020年10月30日製作国:ルクセンブルクアイルランドアメリカ上映時間:103分



ダントツ!

すっっっっっっごいね。。。
今年観たアニメの中ではダントツです。
ダンットツッ!!

絵が素晴らしいっ!

どのシーンもポストカードやカレンダーになりますよ。
グラニフだったらシャツの柄になりますよ。

***

『ブレッドウィナー』(旧題『生きのびるために』)ではちょっと弱く感じた、絵の力、絵の動きが、今回は、もうもうホントにとんでもないことに。
ラストバトルではホントに手に汗握りましたよ。

重みとか圧力が伝わってきました。

刀を歯でキャッチするシーンも、そんなことした経験はないんだけど、、見てるだけで歯茎にグッと力が入りましたよ。




視点が複数なのもいいですね

単純な物語になっていない。

中盤で舞台上でのバトルがあるんですが、檻に大きな狼が入れられてて…ていうシーン。

そこも結構深刻なバトルなはずなんです。

父と娘にとっても難しい状況ですし
狼たちにとってはもちろん大変ですし
父なんてそこで人生のターニングポイントとなるある出来事が起こるわけですから
かなりエモーショナルなバトルシーンなんですけど、
そこにいる市民(観客)がせせら笑ってるんです。

嘲笑しながら見てるんですよ。

これは本当に素晴らしい演出ですね。
こんな距離感持って物語書ける人そうそういないのでは。

めっちゃ笑いながら見てましたからね、市民は。

盛り上がりを終盤にとっておく、という効果もあるでしょうけど
視点の複雑さ、豊さ、ですよ。
素晴らしい。




イフを描いてるんですよね

『ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒』ももちろん絵の力がえげつないんですけど
話のまとめとして感じた違和感が今作にはない。

イフを描いてるんですよね。
絵的にも寓話的なわけですし。

現実の問題にを目を向ければ「あ〜ぁ」って落ち込みますけど、
このイフには希望が込められている。


「王子様と結婚しましたぁ。幸せを手に入れましたぁ。」という物語のラストに
じわじわと苦しめられてきて
じわじわと次の世代を苦しめてきた近代を生きる私たちですが、
今作のように希望と広がりのあるラストを持った物語が
次の世代の生き方をじわじわと自由にさせてあげることができたら、とても嬉しい。

映画『ミセス・ノイズィ』ネタバレあり やれやれ俺が言ってたことを守ってりゃこんなことにならなかったんでしょ?俺はずっと前からわかってたよ。は〜ぁ。 

2020-12-27 | ネタバレあり
ミセス・ノイズィ(2019年製作の映画)
上映日:2020年12月04日製作国:日本上映時間:106分



展開が面白い!

想像していたのよりもっと先に話は進むし、
勢いもいいし、
キャラもいいし、
演技もいいし、
ディテールも素晴らしいので、
うわぁ!うわぁ!と心の中で叫びながら展開を楽しみました!

篠原ゆき子の声がいいですね。



「申し訳ありませんでしたっ!」

終盤の
「申し訳ありませんでしたっ!」は
そう言えば一番引っかかっていたポイントだったし
観客としてもそういうことだったのか!と
申し訳ありませんでした!
と謝りたいタイミングでした。
もうバッチリ。




真実を知るには手間も時間もかかる

元は小説ですし
これは映画。

『ミセス・ノイズィ』の背表紙、かなり厚かったですね。
あれはだいぶ読むの大変。。
映画も2時間かかります。

真実を知るにはそれだけの労力がかかるってことですね。

ワイドショーやSNSや動画サイトで
切り取られて煽られた情報とも呼べないような情報をキャッチして
瞬時にリアクションするだけで
何かを達成したような気になってるけど
事実を知り、人物を知るのは
結構一個一個大変な労力が必要。

ニュースタイトルやサムネイルの数文字読んだだけで
それに準じる動画を数秒観ただけで
なんか分かったかのような気になるな、ってことですね。。

反省しますよ。。
気をつけます。。




ブーメランぐさり

映画いっぱい観て偉そうなレビュー書いて
この映画によって問題意識を新たにしました
みたいなこと書いて、
何かやったかのように気になってる、、、
俺じゃん。。。

ブーメランぐさり。。。流血。。。




お客さんほぼ満席でした。

武蔵野館でもヒットを受けてロングランになったそうです。
日本映画のこの規模の映画がヒットするのは嬉しいですね!

今年は
日本映画も素晴らしいじゃないかっ!
と胸を張れる映画が多くて嬉しい一年でした。

**


が、、、



この映画に関してどうしても気になる点が、、、、


弟!あの薄っぺら男。
アイツが無罪放免なのはいいや。

スケボーで急坂を下っていくラストは不穏なイメージとも取れるし、
結局アイツは無罪放免でした…今も野放しです…っていうメッセージを込めているって感じもするので。

ただ、あの夫は何?????????

ラスト、妻が夫の背中に向かって謝罪するけど、
「やっと俺の言ってきたことを理解できたのか、やれやれ」みたいな表情、、、何、あれ。。。

おれも子育てなるべく手伝うから発言とかさぁ
急にこれから3日会社に泊まることになるから発言とかさぁ
全然家庭のこと、妻のこと、娘のこと考えてなさそうな夫の
「やれやれ、冷静に対処すればこんなことにならなかったでしょ」感、、何。。。

夫には夫の事情がありまして、、、ってそれを汲み取れっていう示唆なの?
だから、あのおじさん編集者も嫌な存在に見えくる。

「ずっと言ってきたことをやっと書けましたね」感。

結局は男の言うこと聞いてりゃ収まったって話。

女同士のプライドを賭けた戦い!!!を男の手のひらでやってただけみたいになっちゃってるよ。。

これはちょっといただけません。。


**


けど、
なんか、こうやって、、スマホに文字打ってる自分が情けなくなってきた。。。


「2時間観ただけで分かったふうなこと書いて、申し訳ありませんでしたっ!」


***



この夫について監督が語られておりました。


https://youtu.be/d9FsGvcB2EY?t=3686

映画『ミセス・ノイズィ』天野千尋監督が語る!!立場によって変わる被害者と加害者 活弁シネマ倶楽部

編集段階で夫の嫌なヤツさが際立ってしまった、的なことのようです

映画『異端の鳥』ラストネタバレ 列車の窓に書いた文字

2020-12-22 | ネタバレあり
異端の鳥(2019年製作の映画)
The Painted Bird 上映日:2020年10月09日 製作国:ウクライナ スロバキア チェコ上映時間:169分

観てからだいぶ経ってます。
やっと冷静にこの映画を咀嚼しはじめられてる状態。






自称「普通の人々」が他称「普通じゃない人々」を攻撃する様子

ずっと描かれるのは、
自称「普通の人々」が
他称「普通じゃない人々」を攻撃する様子。
しかも今作では子供ですからね。。。
見てらんない人は見てらんないでしょうし、見なくていいんじゃないですか。。

「人間は自分を普通の人々だと思い込んで普通じゃない人々を攻撃しちゃいがちなので自分はそうしないように肝に銘じておこう!」って思っているなら、もうこの映画見なくても大丈夫ですよ。

そうじゃない人は絶対必ず100パー観てください。




『サタンタンゴ』よりは見やすい

ただ、意外と映画的な面白さも多くある映画なので、『サタンタンゴ』よりは見やすいと思いますよ。
2時間 49分ありますけど、9章に分かれてるのでサクサク進むし、時間の省略が気持ちよく入ります。
映画らしい映画とも言えます。

ネズミとロープのシーンとかサスペンス映画的だし
ちゃぶ台ひっくり返しシーンとか
ヤギの頭部を窓から投げ入れるシーンとかは笑っちゃったし。

ラストも希望の光を確実に感じるものですし。

そこまで恐ろしい映画ではなかったなというのが、僕の感想でもあります。
観る前は「観たら死ぬんじゃないか」と思ってましたけど、意外と死ななかった。
ただ、観た後ほんとに結構長い間、心が動揺してましたので、、そんなに薦める気も起きないです。。
今大変な時期ですからね。
まず自分が生きるのが先決ですからね。




戦争中、田舎へ疎開



かなりに「死」に近い状況にいたこの少年は、
ある人物らによって安全な場所に運ばれました。
運ばれた後からこの映画は始まるんです。
だけどそこもそんなに安全でも幸せでもなかったし
しかも訳あってそこを離れなきゃいけなくなって、ひとりで土地を転々と移動し始める。
「死ぬよりはマシだろう」ってことで単身移動させられた少年は
「死ぬよりはギリギリマシ?それともこれってほとんど死?地獄?」みたいな状況に置かれます。
少年を保護(?)する大人ごとに章が分かれてまして、全部で9章あるんですが、その都度新たな地獄、いろんな地獄がやってくる。





人生経験のない子供だからこそ受け入れてしまう

過酷すぎるんだけど、子供にとってはそれが世界だから表面的には馴染んでしまう。
淡々と受け入れてしまう。
だけど当然精神はダメージを受けていくので、表情もなくなり言葉も失っていく。
感情表現もできなくるんだけど、第6章でのある仕打ちを受けた後、泣くんです。
これが一番辛かったですね。。。
やっぱあれはほんとに許されない行為なんだな、と見せつけられましたよ。
めっちゃくちゃに人間の尊厳を傷つける行為なんだなぁと。。

その全てに大人が介在していた
そうこうしていくうちに2年くらい経ちまして
撮影自体も2年経ちまして
少年も風貌も変わってきちゃう。

顔がどぎつくなっちゃったし
同年代の子供たちと遊ぶなんてことしたこともなかったので、
大人たちに混ざってる方が楽になっちゃう。

その大人ってのも、多分仕事もなく生気もなくただ燃える火を見てるだけのようなおっさん集団。

そのおっさん集団に入って一緒に火を見てるのが一番落ち着く。
「夢・希望」とは真逆の世界。野望もない世界。

子供ですからね。
本人が何の選択をしたわけでもないのに、そこまで連れて行かれてしまった。
その全てに大人が介在していた。

***

『異端の鳥』四コマ映画→http://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=2623




ラストネタバレは以下に。







戦災孤児として孤児院に入れられた少年。
戦争が終わったのかな。
まだこの少年の名前はわからない。本人も忘れているのかもしれない。
そこに父登場。
「帰ろう。母さんが待っている」
父も憔悴しきっている。やっと息子を発見できて嬉しい表情もあるが
父は息子を見てちょっと引いてる。2年前とは別人。
顔つきも違うし、目力やばいし、何よりも自分に対してめっちゃキレてる。。
「ボクを捨てやがって!ボクは地獄を生きてきた!」と。
両親は
ユダヤ系である自分たちが強制収容所に連れていかれる前に
息子だけは!と老婆の家に疎開させた。
あの老婆は祖母ってわけでもなかったのかな。
親戚かな。
両親もなんとかホロコーストを生き残り、おそらく孤児院を調べてまわってやっと息子発見。
(この辺りは映画『FUNAN フナン』も離れ離れになった親子を親目線で描いていて、この両親も死ぬ思いで息子を探していたんだろうな…と。)
父はおそらく安アパート的なところを借りて生活してた。
多分ここを拠点に息子を探してた?
何にもないその部屋で息子が昔好きだったスープを作ってやるけど、
具材も調味料も全然ない。
父はなんとか息子と温かい空気を醸し出そうとするも、息子は怒りおさまらず拒絶。
父はショックを受けるけどまぁ時間かかるわなぁという表情。
実は息子も、これだけ自由に安心して感情をぶつけられる相手にやっと巡り会えた。
その喜びなんて彼は感じてないだろうけど、やっと終わったんだという安心感はきっとあったでしょう。
翌日。
列車で母のいる家へ向かう。
疲れて眠る父の腕に番号の刺青。強制収容所で入れられた刺青。
それを見て「あぁ父も死の際を生きていたんだなぁ」と知る。
※番号の刺青を見ただけでわかりますかね。。ホロコーストがあったことが広く知られるのは戦後だいぶ経ってからでは?まぁこの映画は架空の国の架空の話だからいいのか。
そして少年は窓に「ヨスカ」と自分の名前を書く。

おわり






反発→混乱→対話→共感→融和

2020-12-22 | 映画感想
ジョジョ・ラビット(2019年製作の映画)
Jojo Rabbit 上映日:2020年01月17日製作国:アメリカドイツ上映時間:109分


映画としての出来は良いけど、やってることはそんなに褒められたものでもないのでは?


限界があるでしょ

差別意識を持っていた相手と対話したら
全然悪い人じゃないってわかったので
差別意識が消えました♪

って話、好きじゃないんですよ。。

無理だから。
差別を受けている〝全て〟の属性を持った人と対話したり何らかの方法でよく知ったりすることは
物理的に無理だから。

限界があるでしょ。

よく知らないことを差別する理由にしちゃダメなんよ。




全く無力


そもそも、このような
「理解し合えば差別はなくなる」
と言うメッセージは、
理解し合おうという気がさらさらない人には全く無力。

ほとんどの差別主義者は相手側を理解しようなんて気、さらさらないでしょ。

とにかく殲滅しようとしてんだから。
国から出て行けっつってんだから。
生きてても良いけど平等なんて求めるなっつってんだから。


**

自分の生活と関与がない他属性のことを能動的に知ろうとする人は
そもそもそんなに差別意識ない人ですよ。

 


反発→混乱→対話→共感→融和

しかもこういう映画で描かれるのは、
例えば

娘の婚約相手が異人種だった!

とか

息子の婚約相手が異教徒だっだ!

とか

難民と一緒に住むことになった!

とか

隣人が!とか同僚が!

と、

他属性が自分の生活に強く関与し始めてから

反発→混乱→対話→共感→融和

という丁寧な手順を踏んで
やっと差別がなくなっていく。


全ての属性に対して全員がこの手順踏んでくれるの?


自分の生活が脅かされる!
かと言って単純に拒絶もできない!
という特殊な状況になってから初めて
これだけの手順踏んでくれるんでしょ。

それを、良い話でございましたでしょ!って映画にされても。。。


**


現実世界ではほとんどの場合、
他属性は自分の生活にあまり関与もなく
しかも単純に拒絶しても問題ないでしょ。

そしたらやっぱ
「理解し合えば差別はなくなる」というメッセージは無力。
理解する必要がないんだもん。




差別するかしないかの2択じゃねえんだよ

日本は単一民族国家だとか
周りにはLGBTはいないとか

他属性と融和するも何も
いないことにしようとしてるんだから

「差別しないように理解し合いましょう」は通用しない。

お前の理解なんて必要ねえんだよ。
差別するかしないかの2択じゃねえんだよ。

差別しないの1択なんだよ!

って言ってやんないと。



「善きユダヤ人」


特に今作は、
匿われているユダヤ人が若い美女。

これが、
美女ではなくチビデブハゲの油ぎったオヤジだったら成立したでしょうか。

あの少年は守ってくれたのでしょうか?

油オヤジだったらすぐにゲシュタポに通報されて射殺されてたのでは?


美女だったとしても
性格悪かったりしたらそもそもスカヨハは彼女を匿わなかったのでは?


「善き黒人」という問題がありますけど
彼女はかなり「善きユダヤ人」でしたよ。


邪魔せずに大人しく品行方正にしてたら生きてて良いよっていう「善き黒人」と同じじゃん。


**

映画としての出来は良いけど、やってることはそんなに褒められたものでもないのでは?



映画『羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来』Flashアニメから大ヒット映画へ

2020-12-19 | 映画感想
羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来(2019年製作の映画)
罗小黑战记/The Legend Of Hei上映日:2019年09月20日製作国:中国上映時間:101分



まず、絵がものすごく上手いです!
ポスターの絵はちょっとよくあるアニメタッチになってますが、
本編の絵はオシャレでちょっと独特で、上手いし、見ていて面白い絵でしたよ。

とくに人物はすごくて、、「うまいなぁ、、、」と感嘆しながら観てました。
素朴で強弱のない、ちょっと太めの線で、線の量も少なめなんですが、
ちゃんと立体的な丸みが表現されてて
しかも動いてるわけですから、、
ものすごい手書きアニメーション技術なわけです。

クレイアニメの会社ライカを彷彿とさせる、技術力と変態性ですよ。
すごすぎ、うますぎ。。。

**

webで発表された28話のFlashアニメの前日譚、ってことのようですね。

「○○の属性っっ!!」って言いながら戦うタイプのアニメです。

**

食べ物も美味しそう。
「アニメで美味しそうな食べ物入れときゃアイツら喜ぶんだろ」
みたいな感じのアニメもあるけど
ちゃんと食べ物に対して愛情があるのが伝わってくるので
心から美味しそうにみえて幸せになりました。

**

敵と味方が入れ替わっていくのが面白いし、この映画の大きな特徴でしょうね。

なんか中学の時にヤンキー集団に入っちゃった人みたいな感じ?
「俺たち仲間だよな」「一家だよな」みたいな感じでひとかたまりになっちゃうんだけど
よくよく考えてみたら
コイツらやばくね?みたいな。

**

キャラデザインがかわいくておしゃれだし、
ギャグも(笑いは起きてなかったけど、、)面白かったです。

アクションシーンも凄かったです。

その分、車とかビルとかが急に簡素な3Dになっててちょっと残念。。

映画『ワンダーウーマン 1984』 なぜ1984か? ダイアナは何を止めようとした?

2020-12-19 | ネタバレあり
ワンダーウーマン 1984(2020年製作の映画)
Wonder Woman 1984上映日:2020年12月18日製作国:アメリカ上映時間:151分



クリス・パインと悪役2人

クリス・パインの加藤茶っぷりは今回も良かった。

悪役はどちらも魅力的でした。
どちらにも泣かせポイントがあったし成功してると思いました。
俳優の演技力の賜物。


ワンダーウーマンって天然さが良かったんだけどね。。

前作では人間界に来たばかりで全然溶け込めてない天然さが面白かったし、
それゆえに愛すべきキャラだったんだけど、
なんか今回は、、、、
ちょっとヤな人になってません???
強いわ賢いわ美しいわと完璧過ぎるし
どこにも隙がないし
結構頑なであんま人に心開かないし。。

敵に「いつも上から目線で偉そうに!」って怒鳴られるんだけど
確かになぁ…と思いましたよ。。。

いくら愚かな人間だなぁと思っても
やっぱ上から目線のエリート気取りで対応しちゃダメなんよね。。。
それが火に油を注ぐことになってんだから。。

これは反省しなきゃいけないことなんだから。。。





ネタバレは以下に。





長く続いた米ソ冷戦は、
1985年のソ連のペレストロイカから緩やかに終結に向かい、
1989年に冷戦の終結が宣言された、と。
1984年は分岐点の年だったわけですね。


**

今作のガル・ガドットによるカメラ目線のスピーチは
『チャップリンの独裁者』(1940)でのチャップリンのスピーチを彷彿とさせます。

チャップリンは当時の独裁者であるヒトラーを止められず、第二次世界大戦が勃発してしまった。

回避できませんでした。

**

ガル・ガドットは誰を止めようとしたのか。

悪役の1人マックスはトランプそっくりですね。
監督も認めています。

コロナがなければ全米公開は2020年6月でした。
その後に大統領選でした。

大統領選の前に公開したかったね。。。。。。。。。。。。。

でも、回避できたね。
とりあえずは、止めることできたね(たぶん…)。

ワンダーウーマンの力を借りなくても、
人間は自分たちの未来を選ぶ事ができたよ。

最悪を(とりあえず)回避できたよ!


安心してね、ダイアナッ!

****

てことで、
あのカメラ目線のスピーチは相当な禁じ手ですよ。

ヒーローがカメラ目線で、しかもホントに、全世界の観客に向かって話してんだからね、あれは。

あんなこと禁じ手ですよ。

いろんな映画が同じことやり始めたらめちゃくちゃになっちゃうし、
ガル・ガドットという稀有な大スターだから成立することでもあるんだけど。
世界はそれくらいヤバい状況ってことですよ。。

それが怖い。。

ガル・ガドットがカメラ目線で喋っちゃうくらいの危機的状況な訳よね、今。。。

**

ワンダーウーマンはフィクションだけど
『チャップリンの独裁者』は現実ですからね。。。。

当時の世界的大スターが映画の中でカメラ目線で警告を鳴らしたけど
回避されずに戦争へと突入してしまった。。

これはリアルだからね。。

まだまだ気ぃ抜けませんわ。





イタリア映画『天空の結婚式』 同性婚を望むゲイカップル〝が巻き込まれる〟騒動!

2020-12-19 | 映画感想
映画『天空の結婚式』
Puoi Baciare Lo Sposo上映日:2021年01月22日製作国:イタリア上映時間:90分





舞台はイタリアのチヴィタ・ディ・バニョレージョ。



『天空の城ラピュタ』のモデルとも言われてまして(確かに縦横に入り組んだアーチがそれっぽい)、
個人的には『マスターキートン』11巻「鉄の砦」の舞台として使われていた場所としての印象があります。

美しい観光地でもあるんだけど、要塞都市としての一面もある。
しかも2500年以上前に作られた町。

そこを舞台に人類のアプデ案件を描くコメディ映画です。




****


結婚を決めたゲイカップル。母は賛成だけど父は反対で……。というスタート。

ライトなコメディ映画、という皮を被ってますけど
なかなか芯の通った力強い映画でしたね。

原作は2003年初演の舞台『My Big Gay Italian Wedding』

16年前のものですが現在まで断続的に上演されて
おそらくその都度アップデートされてるでしょうし、
この映画も明らかに今日的なアップデートがなされているのがわかる話の展開になっています。


主役というか、話の主軸はお父さんですね。

演じたディエゴ・アバタントゥオーノの演技が素晴らしいですし、実際今作の演技で助演男優賞候補になっているとのこと。
イタリアでは有名な実力派俳優でもあり、コメディアンでもあるんですね。
だから顔は死ぬほど怖いんですけど、かわいらしくて面白いんですよ。
このお父さんは村の村長さん。
リベラルな考えの持ち主で変化を否定しない人物。
しかし、息子が男と結婚!となると急に差別発言連発で堂々と思考停止しちゃう。
ホントは息子を受け入れたいのに、それが難しい、、、という人物。




こういうタイプの映画でありがちな〝融和〟じゃないのがすごく良いです



この映画はもちろんアントニオとパオロの2人の話なんだけど
描きたいのは、周囲の人物の受容過程。
(でもま最終的にはその点も含めて批評的に描かれます)
いろんな人物がいますが、重点が置かれて描かれるのはやはりお父さん。
同性婚を頭から否定してるわけじゃないけど自分の身内となると…、というのはリアルな反応ではないでしょうか。
このお父さんの心もようを丁寧に描いているというのが、この映画の大きなポイント。
やさしいポイントかと。


***


こういうタイプの映画でありがちな〝融和〟じゃないのがすごく良いです。

異文化とか異人種とか異なる宗教とかの対立と融和を描くとき、
当人同士が釣りしながら語り合ったり
2人とも奥さんに追い出されて語り合ったりして
お互いをよく理解することで融和しました、あ〜良かったねっていう映画、よくあるんですけど。

この映画はそうではない。

無理ですからね。
「全ての事象」について深く知ったり、
「全ての属性を持っている人」とゆっくり語り合うなんて、物理的に無理なことなので。

よくわかんないから拒絶する、という理屈は成立しない。

この映画はそうしない。

これがとても良い。
どういう感じなのかは本編を観てくださいな。



そもそも〝成人〟が〝お互いに〟決めた結婚に対して許すも許さないもないんよね。。。



****



ラストの展開がこの映画のほんとの肝なんですけど、、
やっぱラストのことなんで書くわけにいかないんですよね。。。

結構、痛快。痛烈。

「騒いでんじゃねえよ」っていうことですかね。
「関係ねえよ」ってことですかね。。

大好きだし、ものすごく納得の展開とラストの締め!


ラストネタバレは、公開後に!!!



映画『燃える女の肖像』 ネタバレあり 男は映らないけど男に支配された世界 

2020-12-18 | ネタバレあり
燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)
Portrait de la jeune fille en feu上映日:2020年12月04日製作国:フランス上映時間:120分

現代よりも情報量もなく正しい知識もなかったであろう1700年代で、同性愛者、ましてや女性が生きるのは、ほとんど暗闇を手探りで進むようなことだったんだろうなと思いました。



異常に精細な音と映像


衣装の生地のそれぞれ風合いまでが克明に映されてました。
ドレスってこんなにもいろんな種類の生地で作られていたのかと初めて知りました。
それらの全てを精細に映す撮影が素晴らしかった。海も、砂も、岩も、ほつれた髪の一本も、腕毛さえも、全部鮮明に映す。
あと、音も。
黒炭が紙を滑る音。筆で絵の具を混ぜる音、掬う音。ドレスが擦れ合う音。鼻息。唇が触れあう音。離れる音。
ASMRか!ってくらいの微細な音でした。





不在の男性による抑圧


ここまで全ての音を録って、物を映しているのに、男だけはほとんど映していません。
(序盤と終盤に出てきますが話には関わってこない)
男は映らないけど男に支配された世界。

この映画に悪人は出てこない。
娘たちを閉じ込めていたあのお母さんも悪役としては描かれていなかった。

女性の集団に対してすぐに「本当は仲悪いんでしょ?」と揶揄したり
「女同士のプライドを賭けた戦い!」を男が高みの見物をするような映画も多いですけど
この映画の女性たちは皆同じく苦しみながら連帯していました。



地面スレスレのスカート


あの時代の女性のスカートって見るたびに異様に思うんですが、ほんとに地面スレスレ。
あれで泥道も草原も砂浜も歩く。どう考えても汚いし、不便だったはず。
でも女性はスカートを脱ぐことは許されなかった。あのスカートは抑圧の象徴に見えます。

そのスカートが燃えました。

ちょうど裾から火がついて、このままスカートが燃えてしまえば「自由」になるけど、それは命を危険に晒すもの。
自由か死か。

その数秒後、女性たちによって火は消されます。
スカートは燃えなかったけど、エロイーズとマリアンヌの心にはむしろ火がついてしまいました。

で、初キスからの、どうみても女性器の形を模したような岩の割れ目に2人は吸い込まれてのキス。

キスもなんか、あんまりいやらしく見えなかったです。
あんまりみたことのない雰囲気でした。
男目線で撮られないからでしょうか。




差別と抑圧の苦しみが描かれた映画ですが、自虐的な人物はいませんでした。

「私たちみたいな人間は一人で生きていくしかないのよ!」などという呪いの言葉を誰も言いません。

呪いの言葉で苦しみの中に閉じ込めようとする人物はいません。
本来誰もが自由であり心の自由は誰にも奪われないのだと伝えてくれる、傑作映画でございました!!







ラストネタバレは以下に。





純白のドレスを着たエロイーズはほとんど幽霊みたいな雰囲気で結婚へと進みます。

マリアンヌは絵の先生として生計を立てつつ、画商のオークション(?)に出品。
女性画家の絵は売れないってことで父の名前で。

マリアンヌの知人っぽい初老の男性のみ話しかけてきましたが、他は誰もマリアンヌの絵を見ません。


その会場にエロイーズの肖像画があることを知るマリアンヌ。走り寄ります。

そこにはエロイーズとおそらく彼女の娘であろう可愛らしい少女。目力は彼女譲りに見えます。

エロイーズの手には本が。マリアンヌが拘っていた手です。人差し指が28ページを開いています。

28ページにはマリアンヌの自画像が描いてあるのです。
もしかしたらいつかマリアンヌが見るかもしれない。
伝われ、マリアンヌへ!とメッセージをこめた28ページ。

画家「あの、奥さん、、その本、、めくれてますけど…」
エロイーズ「いいのです。全て描いてください」
画家「はぁ…」
エロイーズ「何ページが開かれていますか?」
画家「え、あ、28ページです…」
エロイーズ「描いてください」
画家「はぁ…(怖い人だなぁ)」
っていうやりとりがあったかも。



ラスト。オーケストラ。

マリアンヌに勧められたオーケストラ演奏会にエロイーズが来ます。
初めてなのか、何度目なのかはわかりません。

それをマリアンヌが遠い席から発見します。
エロイーズはマリアンヌに気付きません。

でも、オーケストラの演奏が始まるとエロイーズは記憶の中のマリアンヌを呼び出します。

鮮明に撮影された皮膚、髪、唇が離れた時の唾液。
ソファと服が擦れる音、呼吸音、彼女と一緒に聞いたさざなみ。
これらがこのシーンで効いてきます。

マリアンヌは双眼鏡でその状態のエロイーズを観察します。
でも、もう画家とモデルという観察ではありません。

「明らかに私のことを思い出してるっ!私のこと思い出してああなってるっ!」という喜びがマリアンヌはあったことでしょう。

画面には恍惚とするエロイーズの顔しか映っていませんが、観客にもエロイーズとマリアンヌとの逢瀬が鮮明に蘇ります。

ほとんどオルガズムのような表情で映画はおわり。



***


その後の2人をこの映画は決めていません。
会場の出口で張っていればマリアンヌはエロイーズと再会することは容易いでしょう。


どうするのでしょう?


んなもん、マリアンヌが勝手に決めることです。私たちには無関係です。




映画『おろかもの』 タイトルから想像できない自由で広がりのあるラスト!

2020-12-14 | ネタバレあり
おろかもの(2019年製作の映画)
Me & My Brother’s Mistress上映日:2020年11月20日製作国:日本上映時間:96分




めっちゃ面白いし、めっちゃ感動しまして、


役それぞれの深みがすごいし、話の展開も終わり方もすごい。。

上映後のトークイベントを聞いたり、パンフ読んだり、インタビュー動画見たりしたら
ちゃんとした考えと手間があってこそ、この素晴らしい映画が作られたことがわかりましたよ。
ちゃんとした意思があって、ちゃんと考えられていて、愛情を注がれた映画。
そしてそれが観客にも伝わるという、なんという幸せな映画なのでしょうか。。




明確な悪役を作らない


明確な悪役を作らないってのは『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』と同じテーマですよ。
しかも『おろかもの』を撮影したのは2年半前ってことなのにで『ブックスマート 』より早いっ!
あと、
「矛盾してもいいんだよ」という芳賀監督のメッセージも当たり前なんだけど嬉しい。
がんじがらめにされやすい現代社会において、特に若者を生きやすくするメッセージだと思います。




自由に開かれた展開


序盤は説明過多だなぁと思っていたのですが
話が進むにつれて、どんどん研ぎ澄まされていくし、キャラが面白くなっていくし、キャラ同士の掛け合いによってそれぞれのキャラがさらに魅力的になっていくし、
まぁラストですよ。
ベタベタコンテストで1位取れるくらいのベタなシチュエーションだけど
一回も観たことない展開。。。
『おろかもの』というタイトルから、このあらすじから、想像もできなかったほどに自由に開かれた展開。。
ギューっと縮こまっていた体がパーっと開く感じ。
世界も俺もこんなにも自由なんだったか!と思わせてくれる映画。
まさかこんな感想になると思いませんでしたよ、タイトルからして。。やりやがったな!



不倫相手、深津美沙


どうすれば登場人物全員があんなにも自由に動けて、
しかも機能しているという状態になれるんだろう。。
一番難しいのは、深津美沙ですよね。アイジンさん。
単純に言えば、女の敵なハズ。
「女の敵」にも十二分になれるほどの美貌だしスタイルだし前髪の立ち上がりだし。
敵(悪者)としての魅力もなきゃいけないし
友達になりたい相手にもならなきゃいけない。
同情や可哀想だけじゃなくて、強さやしたたかさを見せなきゃいけないと思うし。
ちゃんと人物として、これだけの振り幅を持ってる人間を演じられるって、ほんとどういうことなの。。
クズ男を引き止めるときに言う「やだ、やだ」はほんと泣けましたね。。
  



妹、高城洋子


高城洋子は探偵役ですから、観客はこの人に乗らなきゃいけない。
この人の視点でこの物語を観させられる。
この人がいかに信頼に足る人物で、しかも余白のある人物なのかが重要。
ミステリーならば「信頼できない語り部」ってのもありえるけど
これだけ繊細で自由な人間ドラマの場合、「真面目」「真っ当」な人物でないと難しい。
だからこそあのラストでの、洋子ちゃんの動きが感動をさせるわけですね。
あの飛躍。飛翔。
真面目でちゃんとしてる洋子ちゃんが、真面目でちゃんとしつつも、立ち上がって……。(泣)




婚約者、果歩


果歩はキャスティングが最っっっっっっっっっ高でした。
思い返してみれば、この役は台本の中では「都合のいい役」だったかもしれない。
主要人物の中では出番もセリフも少ないし、「よくできた凡庸な人」のくせに、一番不可解な行動しますからね。
演出や演技によっては
話の展開に必要な言動をその都度取らされるだけの一貫性のない人物になっていたかもしれない。
猫目はちさんの魅力ですね。。
強力な人間力で、短い出演時間だけど多くの観客は「この人、私だ」って思ったことでしょう。




クズ男、健治


北川悠仁をお湯でふやかしたような見た目。
健治を単純な「悪役」にしない、という監督の意思が最初からあったとのこと。
演技では出せない「憎めない感」を包含してるイワゴウサトシさんがキャスティングされたと。
あのフワフワ感、ヌルヌル感、空っぽ感、それでいてそんなにはイライラさせない感。素晴らしかったですね。。
洋子ちゃんによる右胸へのグーパンチはなかなか強烈でよくやった!と思いましたけど、
あれは一発じゃ足りないですね。花を投げつけるだけじゃ足りないですね。
柄杓で脛を殴って欲しかった。



この映画の仕上がりは偶然ではない



パンフレットを読むと、この映画の仕上がりが偶然ではないことがわかります。
ちゃんと俳優を見て、脚本を書き換えたり、役の関係を変えたりしていたようです。
これはものすごく高度なことだと思いますし、この映画に対する愛情、熱量を感じますし、それはまた俳優に還元されるものでしょうし、結果、これら全ては観客に伝わって、胸に残る、というよりはこの映画の場合は、ほんとに「広がる」ってことですね。
しつこいけど、あんなにも広がりのあるラストが成立するなんて。。




ネタバレは以下に。






ラスト。結婚式。
健治と果歩が神父の前に立っている。
洋子も参列している。美沙が乗り込んでるんじゃないかと気が気じゃない。
バーンと扉が開いて美沙登場。赤いドレス。
健治、動けない。
果歩、健治の前に無言で移動。美沙の前に立ちはだかる。
ここでの美沙と果歩の信頼関係が良い。
美沙と果歩は敵同士ではない。
果歩は美沙の間違いを正したいけど
言葉を使ってしまったらやりすぎてしまう。
自分で自分を制して欲しい。
だからただただ果歩は健治の前に立つ。
「これより先は行かせないよ」と首を横に振る。
美沙も果歩が憎いわけではない。
自分よりも強い意志で健治の前にたちはだかる果歩を見て、自分の弱さを知っただろうし、果歩の優しさも知った。
で、これ、、どうすんの???とみんな思っていた時に
洋子が立ち上がり、美沙の手を取って走る。「行こう」
ドアを開け、二人とも振り返り、笑顔。ドアから消えていく。
果歩も笑顔で健治を見る。健治、呆然。

健治の先輩である宗介が美沙と果歩に感動して、泣きながら拍手を送る。
しかし他の参列者はしら〜っとしている。「あ、違った」みたいな感じで小さくなって座る宗介。
美沙の行為は全然褒められて行為ではない、と言う冷静な視点も素晴らしい。

美沙も果歩、走る。あんなピンヒールでよく走れるもんだ。
息が切れて立ち止まる2人。
美沙「洋子ちゃん、お腹すいた」
洋子「何食べます?」
美沙「中華」
洋子「中華行きましょう」
手を繋いだまま、2人去っていく。

終わり。

****

「恋愛ドラマ」や「男性」に奉仕しない女性像でしたね。
脚本の沼田真隆さんがこの辺りのことを相当意識をして書いたようです。
(深田晃司監督『本気のしるし』は逆に〝青年漫画に出てくる女性キャラ〟が実在したら?という映画でしたね)
まず、この話のスタートとラストだけ決まっていたそうです。
結婚式で、兄の不倫相手と妹が手を取り合って走り出す、という、あのラストは最初からあったと。
その間を埋めて映画が撮られたと。
で、さらに撮影中にキャスト同士(兄の結婚相手と不倫相手。村田唯さんと猫目はちさん)がリアルに仲が良くなっていったので、それで脚本を直していった、と。
それだけちゃんと俳優を見てるのもすごいし、
「この感じこの映画に合ってる!」って判断できるのもすごいし、
監督と脚本家で3人もいるのに、この機動力がすごい。。
****

あと、明らかな悪者を作りたくなかった、ともおっしゃれまして。
単純に考えれば今回の悪役は「美沙」だったはずですけど
観客は彼女が出現して早い段階で彼女を「悪」だと見なくなったはす。
その流れが上手いし、まぁ村田唯さんの演技ですよね。。
エロさや危うさもあってファムファタル感も溢れてるのに、同時に友達になりたい感もあった。

****
「悪役を作らない」ということで言うと
新時代の名作青春映画『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』と同じですね。
『おろかもの』は2年半前に撮ったらしいので、『おろかもの』の方が先んじている!
『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』の監督、オリヴィア・ワイルドがインタビューでこう答えています。
「悪役を登場させ続ければ、観客はどんな物語にも悪人がいるんだと思い込んでしまう。
そうすると、人生においても絶対どこかに悪人がいると考えてしまうと思います。
初めて観る人は本作でも、誰が悪人なんだろうと探しているんですよね。
それが興味深いです。
モリーが経験するのと同様に、トイレのシーンでも誰かが意地悪なんじゃないか、だから自分を守らなきゃいけないみたいに思ってしまうかもしれないけど、みんなそれぞれ自分の人生を生きるのに必死で、彼女に対抗する敵はいないのです。
なので、もう少しみんなリラックスして、自分を他から守らなきゃいけないという気持ちを緩めることができれば、いろんなチャンスが生まれてくると思います」
(https://i-d.vice.com/jp/article/935m3v/interviewbooksmart-olivia-wilde-interview)

現実社会で行われている「悪者探し」を助長させない映画。
これを意識して作られていたんですね。
『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』には素晴らしい点がいっぱいありますけど、この点にはほんとに感動してしまいました。
すげえなぁなんて思ってましたけど『おろかもの』でもやってるじゃないっっっっ!
ありがとう!
『おろかもの』!!!!

****
僕はこの映画から百合っぽいものはあまり感じませんでした。
途中で小梅が「2人の百合感良かったのに」的なことをハッキリ言ってるんで、その風味もあるとは思いますが。
「百合」と決めてしまうより、その辺も曖昧にして、とにかく自由に開かれたラスト、関係、というのがこの映画の魅力かなと思いました。

これを男女逆転させて、ラスト男性2人が手を握って走り去っていったら、どうしようもなく薔薇感は出ますね。
女性2人が手を繋ぐってのはライトですけど、
男性2人が手を繋ぐってのはちょいとヘビーに映りますね。
ここにも性差がありますね。。
いずれ男女逆転バージョンの映画も見てみたいです。
そして「あんま薔薇感感じなかったなぁ」って思える時代が来て欲しいです。

韓国映画『詩人の恋』ヤン・イクチュン主演 カテゴリー分けを拒否する韓国映画

2020-12-06 | 映画感想
詩人の恋(2017年製作の映画)
시인의 사랑/The Poet and the Boy上映日:2020年11月13日 / 製作国:韓国 / 上映時間:110分



ゲイ映画?BL映画?

相当良いですね、この映画。
かなり良いですね。すごく良いですよね。

ジャンル分けを拒む映画。

これをゲイ映画と言い切れる人はだいぶ少ないのでは。

(ゲイとはまっったく無関係である)BL映画と呼びたい人も多いでしょうけど、果たしてそうでしょうか。

****

冒頭の映像と音楽

映画始まって一発目のシーンが良かった。

もうこれ一発で「あ、ある一定のレベルを超えてくる映画だな」と信じられましたよ。
全然何気ない景色の映像なんですけどね、構図も色合いも綺麗なんですよ。

なので、その後
冒頭の音楽はちょっと感傷的すぎたり、コメディチック過ぎてちょっとヤバイなと思いましたが、

きっとこれは中盤以降過酷な展開があるから
冒頭くらいはほっこりしてね!ということだろう、と信じながら見ることができました。

その通りでした!ありがとう!

***


映像が綺麗。自然や町もいいけど、家の中さえもいい。
セリフ以外の仕草、シチュエーション、衣装、ヘアメイク、音楽で伝える、つまり「映画らしさ」が素晴らしい。

なおかつセリフも素晴らしい。


****



懐かしいな あのドーナーッツ屋ッさ〜ん by ZARD


****


形のない、名前のない、どこか一部をつまむと全部が消えちゃいそうな、繊細な映画

こういう感じの素晴らしい映画って、、どうレビュー書いていいかわかんなくなります。。
書かなくてもいいんだけど。。
何か一つ書くと「違う」と
別の何かを書くと「それだけじゃない」と
否定してくるもう一人の自分が現れる。
僕のレビューなんかで表現できるような単純だったり、他の映画と比較できたりする映画ではない。。
形のない、名前のない、どこか一部をつまむと全部が消えちゃいそうな、繊細な映画。

お手上げ。。




主人公はクソです



一個確実に言えるのは、主人公のテッキ (ヤン・イクチュン)はクソだということです。

ヤン・イクチュンがかわいらしく魅力的に演じているからそうは見えないけど、クソです。

自分でも自分の未熟さこそが問題だと言ってるし、
幼稚だし
自分よりも不遇なものに手を差し伸べることで自分の価値を高めようともするし。

何度も「施しはやめろ!」と言われても、やめないもんね。。。
それを自分で認めたから最後封筒を渡したワケでしょ。

自分でもわかってたけどやめられなかった。

もちろんそこに性愛の気持ちもあったんだろうし。

***

頼りなくて、優柔不断で、言い訳がましくて、ダサくて、太ってる(あんなもん全然太ってねーよっ!)という
全く主人公になり得ないキャラクター。

そいつが流す涙よ。
そいつがソッと置いた手よ。

そこに詩があり、映画があるんよね。。

以上っ!




女性キャラが素晴らしかった

あ、書かなきゃいけないことあるわ。
奥さん、素晴らしかったですね。

やっぱこういう描写力は女性監督ならではなですよね(こういうこと書くと怒られそうですが)。

出てくる女性が全員面白い。ちゃんと人間(←当たり前なんだけどね…)。

こういう「男同士の」みたいな映画の場合、
ほんと女性キャラが書き割りみたいになっちゃってることが多い。

男たちに都合良く邪魔したり、
都合良く自分の存在を消したり、
最終的には都合良く許容してくれたり、
最終的には都合良く賛美してくれたりする。

舐めんなよ、ってことですよ。
人間なんだぜ、と。

奥さん良かったですね。。
演じたチョン・ヘジン。

ヤン・イクチュンとの貧しくてもほのぼのとした楽しい家庭を継続したかったんよね。。
自分が持っていない「世界を新鮮に見る目」を詩人である夫から共有させてもらって、自分の世界を輝かそうとしたんよね。。

それだけで幸せと思ってたんだけど、、、子供欲しくてたまらなくなっちゃんよね。。

そうこうしてるうちに夫が……、ですよ。。

そりゃ苦しいし全然ブチギレしていい案件ですよ。。
いやあ、素敵なキャラだったし、素敵な演技でした!

以上っ!

***