映画感想(ネタバレもあったり)

映画コラム/映画イラスト

映画『ザ・ホエール』リズ、背負わされすぎ ネタバレあり

2023-04-28 | ネタバレあり
ザ・ホエール(2022年製作の映画) The Whale
上映日:2023年04月07日 製作国:アメリカ 上映時間:117分
監督 ダーレン・アロノフスキー
脚本 サム・D・ハンター
出演者 ブレンダン・フレイザー セイディー・シンク ホン・チャウ タイ・シンプキンス サマンサ・モートン



連ドラだったら全14話くらいになりそうな濃密&鬼展開!

登場人物全員のバックグラウンドが濃厚だし
短時間でそれを発露してくるし
さらに粉塵爆発みたいにスパークして
「そんなことする?」みたな鬼っていうか悪魔の展開に。

観客全員がジェットコースター乗らされたかのようにあっちこっち上へ下へ天国へ地獄へ行かされた感覚。

***



内容詰め込み詰め込み入れ替わり立ち替わりでパンパンです
よ。


タル・ベーラ版のじっっっっっっくりとした上映時間7時間半のヤツも観てみたい(ない)。

***


娘の動きだけでも4時間観てられたと思う。


娘の存在・動きが面白くて面白くて。。
まさかこんなキャラだとは。。
〝悪魔〟の象徴ですよね。
でも〝悪魔〟じゃないよと。
ましてやキリスト教でいうところの悪魔なんかじゃないよ(ていうかそんなのいないよ、と)。
セリーヌ・シアマ版の娘主役ver.観たい(ない)。

***

見終わった後は感動に震えて
「5じゃない?ちょっと久々の5だよね」と興奮しました。
が、30分くらいで落ち着いたのでしたぁ。。。






ネタバレ?は以下に


なんで別の監督のバージョンが観たくなっちゃってるんだろうと思うと、、
やっぱ僕はどこか不満に思ってたわけです。


この映画では同性愛を拒否するキリスト教原理主義を完全拒否していて、僕も同じ気持ちではあるけど、
ここまで怒りの矛先を限定されると「気持ちはありがたいけど、映画を観に行きたんだよなぁ」的な気持ちが一切湧き上がらないとは言い切れない。。


②リズに背負わせ過ぎ。
主役のチャーリーの友人であり、
チャーリーの恋人の妹であり、
チャーリーのゲイの側面を受け入れている人であり、
一緒にニューライフに反発してくれる人であり、
近所に住んでるめちゃ良い友人であり、
看護師の技術でサポートもしてくれて、
呼んだらきてくれて、
叱ってもくれて、
笑わせてもくれて、
ゆったりした時間も過ごしてくれて、
しかも娘を優先したい時にはその場からいなくなってくれる人。
そりゃ第95回アカデミー賞で助演女優賞候補になるよ。
↑何人分演じてんのさ。
すごい便利に説明してくれる役なんですよね。
それをアジア人女性がやってるってのもやっぱちょっと引っかかるし。。

むしろ逆にリズの役は要らなかったんじゃないかと思いますよ。
そうすると映画がものすごく長くなっちゃう。
だから7時間半やるか、ドラマとして14話やるか、要素を削るか。

③舞台っぽい。
閉じ込められてる感、海の底にいる感はありましたよ。
意味も効果もわかる。
ただ俳優の位置や動きやミザンスが、どうしても舞台っぽくて、、ちょっと面白くなっちゃった。。
もうちょっと外の様子を映しても良かったのでは。
あの狭い(広い部屋だけどね。。)部屋に閉じ込められているチャーリーを外から映して、外界と断絶してる彼の印象を強めても良いんじゃないかなと思いました。
なんか逆に、チャーリーの元に人間たちが次々と集まってくるから孤独とか断絶感はなかったんよね。。

④「下で待ってる」が決まりすぎ。
チャーリーがいよいよ死にますと。
娘と二人にしてくれって言われて素直にリズは部屋の外に出ます。
「下で待ってる」とリズ。
階段なんて降りられるわけのないチャーリーにとっては死んで運ばれる時が唯一下に降りる方法。
それが今だと。
下で待ってる。
上手いんだけど。。。
言わないであげてそんなこと、、と思った。。
おしゃれなキラーワードだけど、、
チャーリーには言わないであげて。。
せめて閉めたドアの外で独り言のように言うとかね。



映画『パリタクシー』 "有害な男らしさ"完全否定 !!  ネタバレあり 

2023-04-27 | ネタバレあり
パリタクシー(2022年製作の映画) Une belle course/Driving Madeleine
上映日:2023年04月07日
製作国:フランス
上映時間:91分
監督 クリスチャン・カリオン
脚本 クリスチャン・カリオン
出演者 リーヌ・ルノー ダニー・ブーン


観た直後の感想

主役2人とオールディーズにねじ伏せられた感もあるけど素晴らしい演技(人間力)と音楽になら正しいねじ伏せられ方かと。
2人の顔が素晴らしくて、顔だけで人生讃歌になっちゃう。
昨晩2時間くらいしか寝れなかったのもあって冒頭は眠気と戦いましたけど、、まさかの事件が勃発してからは目ランランだしまだまだ終わって欲しくなかった。
でも90分で終了!クール!カッコイイ!セボンッ!
ダニー・ブーン がとにかく渋かった。。。
『ミックマック』youtu.be/aTJJpaTJ5rQ のイメージだったけど、こんな深みと慈愛に満ちた男を演じられるようになってたなんて。。
立ち耳の何が悪いんだと。
立ち耳って可愛いじゃんね。
あ、男にしては可愛く見えちゃうから〝立ち耳〟はいまいちってことかな?だとするとテーマと近いのか。


『パリタクシー』の構造は単純に言うと「男性が女性の話を聞く」というもの。

しかもその話というのは、
上映時間のほとんどが女性の話を聞く時間な訳ですから(実際は回想の映像という形で)、
"長い"話なわけです。

女性の話は長いだの回りくどいだのと揶揄され続けてきたし、
ニュース番組の多くは「中年男性司会者の話を若い女性が聞く」というシステムのものが多かった。
それがここ数年変化してきています。
「話が長いのは男の方だ」という研究結果があったり
ニュース番組でも真ん中に女性が座っているというのも本当に多くなってきていると思います。

そこに来て『パリタクシー』は「男性が女性の話を聞く」構造。

****

最初は違和感がありました。

主役の老女は男性によって苦しんだ人生を送ってきた人なわけです。
その彼女がなぜ男であるタクシー運転手にペラペラと自分の人生を語ったのか。
こんなにいきなり喋るかな、と。
そうしないと映画が進まないってのもあると思いますけど、、、、
ダニー・ブーン演じるタクシー運転手が「有害な男らしさを持たない(が少ない)」男性だったからでは?と推測します。

****

人生の窮地に立たされているこの運転手は冒頭はとてもイラついていました。

しかし老女の話を聞くうちにどんどん柔和になっていく。
それに呼応するように老女もさらに心を開いていく。
"有害な男らしさ"の前では実現し得ないこと。

***

しかも彼女が語る過去の話は、
ひたすらに〝有害な男らしさ〟について。

フランスでさえも50年前はこんなだったのか、、と。
彼女はなかなか壮絶な闘いの半生を語ります。
それを聞いているのは男(運転手)。
女性同士で語り合っているわけじゃない。



ネタバレは以下に



マドレーヌは過酷な半生を経て、女性の権利向上の活動に後世を費やし一般的にもその名を知られるほどになった。
演じたライン・ルノー自身もHIVの研究を支援する団体を設立した人物。

ラスト。
老人ホームに入って自動ドアに阻まれる二人は良いシーンでしたね。
あれもとてもロマンチックでしたが
恋愛的な印象はなく、友情、友愛の気持ちに見えましたね。

彼女の人生は壮絶で、
単純に考えるならマドレーヌは「男」を憎み、嫌悪し、敵とみなして生きてきたと考えてもおかしくない。

なのに、
マドレーヌは男であるシャルルに自分の人生を開示し、
ラストでは101万ユーロ(約1億5千万円ですよ!!)を残した!
↑ま、これは寓話ですよね。リアリティよりもおとぎ話感でふわっと着地させたのでしょう。
(あと、あの豪邸ですから、まだまだ他にもたくさん寄付したんだと思いますよマドレーヌは。)

にしてもなぜシャルルを選んだのかっつったら
次の時代の新しい男性、優しくて話を聞ける男性に
「よろしくね」ってな感じで未来を託したのかな、と。


映画『あの夏のアダム』 1週間限定公開 今週金曜まで

2023-04-25 | 映画感想

あの夏のアダム ADAM
監督:リース・アーンスト
出演:マーガレット・クアリー ボビー・サルボア・メネズ
アメリカ/原題:ADAM


今のところイメージフォーラムで1週間限定上映(4月22日〜4月28日)!

限定上映ってのが勿体無いっていうか、全く不釣り合いなほどの良い映画!
これだけの材料を(バカコメディにすることもなく)甘酸っぱいひと夏の青春映画になってることが奇跡。



面白かったぁ。

田舎の高校生男子アダムが、レズビアンの姉の住むニューヨークでひと夏を過ごす。
のびのびとクィアカルチャーを楽しむ姉にひっぱられて、自身も大人の階段を登るべくビアンやトランスのコミュニティに潜入していく。
すると、アダムはあるレズビアン美女(ジリアン)に一目惚れ。

さらにジリアンはアダムのことをトランス男性だと勘違いし好意を持ち、訂正する機を逸し(ていうか嘘ついたよねついたよね気を引くために)、ビアンとトランス男性というカップルとして付き合い始めてしまうが。。。


というスタート。

色んな属性を持った人物(主に女性)が出てきて情報量は多いし展開もいっぱいあるんだけど、難解ではないし、全体として甘酸っぱい青春映画になっているところが、何度も言うけどビックリなんです。。

色んな属性出しときゃいいんだろ感がない。
あらゆるところを丁寧且つ端的に拾い上げて、しかも説教くさくなく教科書的でもなく、さらにドッキドキするようなオトナな描写もバンバン入れてきて、結局は青春映画なんですよ。。
こんなことできます????
できたんだよね。

監督は、Amazonプライム製作のドラマ『トランスペアレント』のプロデューサーで自身でも映画制作を続けてきたリース・アーンスト。


リース・アーンスト自身もトランス男性。

原作はドラマ「Lの世界」で脚本を担当したこともあるアリエル・シュラグ。
このふたりが原作をさらにアップデートさせ、

「現場のスタッフの50%をトランスの人たちでした」というほど気使いまくって気合い入りまくった作品。


教科書的ではない、複雑であいまいな

この映画が教科書的でもないし説教くさくもない、とても複雑であいまいな、しかも「2006年のニューヨーク」という、今よりももっと当事者自身も混乱していた〝居心地の悪い〟時期を描いている映画。

95分の映画だけど、観た後それ以上に考えさせられる映画だし、それは映画として素晴らしいものだと思います。

が、それは同時にとても危険なことで映画の中のある部分を切り取って炎上するポイントも多い、ということになってしまう。

まさにアメリカでは「観てもいない人たち」によって大炎上したとのこと。。

それくらいセンシティブなことを扱っているし、
それくらいトランスの人たちが現実世界で苦しんでヒリヒリとした気持ちで暮らしているということでもあると思います。


僕は「この映画はそうではない!!!」と言い切れる立場にないのですが、
この映画が当事者を含めた多くの観客に見られ語られることで
観てもいない人たちからのマイナス評価だけではなく
映画を95分観た正直な感想が増えたり
多く論じられることで「『あの夏のアダム』の価値」を観客たちが見出していけるような状態になったらいいなぁと願います。



映画『高速道路家族』ラストシーンの解釈 ネタバレあり チョン・イル怪演! 

2023-04-23 | ネタバレあり
고속도로 가족Highway Family
上映日:2023年04月21日
製作国:韓国
上映時間:128分
監督 イ・サンムン
脚本 イ・サンムン
出演者 チョン・イル ラ・ミラン キム・スルギ ペク・ヒョンジン



■四コマ映画『高速道路家族






■コメディとスリラーのリズムとテンポが素晴らしい韓国映画クオリティ

ある貧困家庭が高速道路のパーキングエリアを転々としながら生活している様子からスタート。

確かにパーキングエリアには食べ物が売ってるしトイレもある。
テントを寝床にすればできそうな気がしてくるし、家族は楽しそうに暮らしている。

ただパーキングエリアにテントを張って寝泊まりするのは犯罪だし
金の調達の仕方は完全に犯罪。。
なので、同じパーキングエリアに長期滞在はできなくて転々とするしかない。

↑ここまでが起承転結の「起」ですね。
次の「承」で、彼らを定点観測する人物が登場します。
「パーキングエリアを転々としながら生活してる家族がいんの?なにそれ」と気づいた女性。

つまりやっと社会が彼らを発見したわけですね。
すると彼らのパーティーは終わるわけですが、
同時にそれは福祉という名の救いの手でもあるわけです。

次に起承転結の「転」。
どう転んでいくか、がこの映画の個性ですね。
単なる福祉の話では収まらないバイオレンススリラーになっていく(なんでだよ)。
ここが面白いですね。

で、「結」にもある工夫が。
切ない。。悲しい。。



■社会問題を提起するだけにとどまらないエンタメ

この余裕。韓国映画すごい。。
社会問題だからってじっとりジメジメぬるぬるやらない。。

楽しいピクニック映画にも見える導入から
考えられないバイオレンススリラーになっていく(改めてなんでだよ!)。

この豊かな映画の広がり。
ホントすごいなあ。。




映画『高速道路家族』ネタバレは以下に



楽しそうに歩いている4人。
フェンスを超える。高速道の敷地内に。
「妻の実家に帰りたいのですが、財布を無くして、ガソリンも切れて、、2万ウォン貸してもらえませんか?」
パーキングエリアに車を停めている夫婦から金を借りる。(返す気ない)
「名刺を渡すのでアプリで返してくださいね」と女性。

***

テント張って寝る。パーキングエリアの端の方で。
母「これからどうしようか」
息子「背中が痛い。腹ペコ」
父「痛くないと思い込めばいい」

***

係の人「ここにテントを貼るのは禁止です。急いで」
トイレの洗面台で洗濯とシャンプー。

**

いい人そうな女性ヨンソンを捕まえてまた2万ウォンもらう。2千円くらい。さらにもっとお金をくれる。
ヨンソン「お腹を空かせているんでしょ」
母「こんなにもらうわけには」
父「貰っとけ」

***

係の人「どいてください。撤去します
男「突き飛ばしたな!警察に言うぞ!」
テントが壊れた。

***

母「ソキョンのサービスエリアは近いかな。」
息子「もう歩きたくない!足痛いもん!」
歯も抜ける。
姉、弟の歯を草むらに投げて願い事をする。
線路を歩く4人。

**

41年続けてきた定食屋が閉店。
小人症の男性。ライブスタジオのものをリサイクル業者が買い取り作業。ヨンソンの会社。

**

閉店する店からリサイクル品を買い取って売っている。レストラン開店する女性が椅子を買っていく。

**

母のお腹の中には赤ちゃんが。

**

ヨンソン「どんなに望んでも死ん子は帰ってこない。」
思春期の息子を亡くしたヨンソン。
ソキョン?のサービスエリアでまた2万ウォンをたかっている父の姿を見るヨンソン。4人の様子を観察する。
かくれんぼ。
弟が大型トラックの下に潜り込んで隠れる。
弟を助けようとした姉が轢かれそうになるのをヨンソンが助ける。
ヨンソン「この前7万ウォンカしたでしょ!あなたたち詐欺師なの?こんなことってある?」
4人逃げる。母転ぶ。お腹に赤ちゃん。

**

警察の取り調べ。
女性刑事「類似事件も多いし、喧嘩つが違うので後回しにされてきました。被害者も諦める人がほとんどです」
ヨンソン「子供たちは。。家族がバラバラに??」
女性刑事「逮捕しましょう」

***

4人は逃げた。
父が発作。「あの女をぶっ殺してやるからなー」
弟「父さんがまた変になったー」
母「お願いだから落ち着いて」
姉「学校に行きたい、字を習いたい」
父「やってみたけどつまらなかった」
姉「やってみないとわからない」
父「ごめんなダメな父で。。」

***

警察署。
「詐欺などの容疑があります。何人から金を?住所と名前を書いて。字が書けないの?歳は?」
母「娘が同級生と比較されていじめられないように私が教えてきました。辛さを知ってるから」
母はいじめに遭っていた。

***

ヨンソンが取り調べを受けている家族を見る。
父の名前チャン・ギウ。
父「返すつもりだったんです。」
警察「住所不定で逃亡の可能性があるので拘束します。」
母「私たちも一緒に」
警察「ここは警察ですよ。ダメです」
離れ離れになる家族を見るヨンソン。
ヨンソン「あの、うちに来る?」

**

リサイクル店に泊まる。焼肉も食べる。
「私も食べるから遠慮しないで。赤ちゃんは?」
「中期です」

***

ヨンソンの夫「冗談じゃない!」
ヨンソン「自分で言って」

***

夫とヨンソン、家族3人が挨拶。他の従業員も。
ヨンソン「学校に行かせないと。字を習って友達も作るの」
ドリルを買う。弟におもちゃも。死んだ息子を思い出すように。
母は家具などを拭いてい店内の掃除。
ヨンソン、姉に字を教える。泣きながら姉の髪を結ぶ。

**

父は留置所でおかしくなっている。
「精神科に送るべきでは?」
泡吹いて倒れて、近づいた警官に噛みついて逃亡。

**

ヨンソン「診てもらわわないと私が心配なの。お金は私が払うから。」
妊娠の検査。エコー。
リサイクル店の従業員たちと家族の結びつきが強くなる。
「逆子です。早産の危険があります。赤ちゃんが小さく産まれる可能性が」
「どうやって暮らしてたの?」
「サービスエリアにはなんでもあるし、人もたくさんいるでしょ」
「大丈夫よ」
弟が家具の下敷きになり怪我。病院に運ばれる
ヨンソン「子供に怪我させたの?」
夫「俺は!」
ヨンソン「何よ!」

***

夫「もう限界だ。なぜあの子達を?すぐ追い出せ!本当に嫌だ!」
ヨンソン「あなたは変わっていない。少しでも面倒だと逃げるのね」
夫「自分の心の隙間を埋めるためだろ!間違っている!赤の他人だ!本当の気持ちを言ってみろ!素直になろう!」
ヨンソン「嫌なら出ていって」
ヨンソンを含んだ4人で寝る。
母「部屋で寝ると腰が楽です」
弟「父さんに会いたい」
掛け算や数字を覚える姉。

**

賠償金で2億ウォン支払われるというニュース。

**

父、ヨンソンから名刺をもらってたことを思い出す。
リサイクル店を訪れる。

**

体操してる母。ヨンソンが姉に字を教える。暖かい雰囲気。
弟「おじさん(ヨンソンの夫のこと)はいつ来る?」
ヨンソン「しばらく来ないと思う」

**

夫が喧嘩して捕まっている。

**

母、警察に。
女性刑事「ご主人は逃亡しました。指名手配して懸命に探します。必ずです」

**

父、姉を見つける。
姉「お父さん臭い!」
父「腹が減っているんだ!」

**

姉、家具店の食べ物で料理を作って父に食べさせる。
父「父さんが来たことは言うな・計画がある」
父、姉に手紙を託す。その手紙を母が読む。

***

深夜、父と母が会う。
母「ここで暮らす。そう決めた」
父「正気か?俺がおかしいと?」
椅子で母を殴ろうとする父。
母「暴力はやめて」
父「俺頑張るよ。幸せになれる。前みたいに楽しく暮らそう」
母「もう戻れない。ここで寝れば体も楽だし警察から逃げなくていい」
父「あの人たちが受け入れるはずない」
母「諦めて。お願いだから離れて。全て解決するの。私の名を呼ばないで。ギウさん、どうか許して。子供達をやっていく。」
それを聞いていた姉。

**

ヨンソン「力になりたい。みんなで暮らしたい」
夫「……」

**

姉「父さんはなんて」
母「100回寝たら来るわ」

***

ヨンソン「ウニ(姉)を学校に」
母「お金が」
ヨンソン「小学校は無料よ。給食費も授業料も。他にもかかるけど出産してここで働けば払える」

***

学校。
数えで9歳。来年から一年生として。
ヨンソン「来年から学校に通うの楽しみだね」

***

父、スーパーで手当たり次第食べまくる。追いかけられて川の中を逃げる。

**

夫「ジスクさん(母)、今までどうやって暮らしてきたの?」
母、語り出す。
もう一人の従業員はツェテン。チベットの人。
「ツェテンは永遠の意味」
母は施設育ち。食堂で働いている時に父と出会い、妊娠。父は保険会社で働いていたが投資で騙された。

***

父「俺の家族をかえしやがれ」
姉「お父さんも一緒に暮らせるようにしてよ」
ヨンソン「………………」
父が持っていた火が家具に燃え移る。懸命に消そうとする母のスカートに火が。
父が助けに入る。家具が倒れ燃え盛る。
ヨンソン「ジスク!死なないで!」
消防の消化活動。父が覆い被さっていた母は無事。

***

一年生として姉が学校に通う。
友達と楽しそう。
ホームレスの人が歩道橋にいる。
父の顔に見える。違う男。
小銭を置いて逃げる。
母は赤ちゃん出産。
姉「お父さんに会いたいよ。また手紙書くね」
幸せな風景。

**

再び火事のシーン。ヨンソンと姉と弟とヨンソンの夫が抱き合って泣いている。
終わり。
↑一個前の幸せな風景はイフか。切ない。。




【速報】『パリタクシー』めっちゃ良かった!セボンッ!

2023-04-22 | 映画感想
パリタクシー(2022年製作の映画) Une belle course/Driving Madeleine
上映日:2023年04月07日
製作国:フランス
上映時間:91分
監督 クリスチャン・カリオン
脚本 クリスチャン・カリオン
出演者 リーヌ・ルノー ダニー・ブーン






主役2人とオールディーズにねじ伏せられた感もあるけど、
素晴らしい演技(人間力)と音楽になら正しいねじ伏せられ方かと。

 2人の顔が素晴らしくて、顔だけで人生讃歌になっちゃう。

昨晩2時間くらいしか寝れなかったのもあって冒頭は眠気と戦いましたけど、、まさかの事件が勃発してからは目ランランだしまだまだ終わって欲しくなかった。
でも90分で終了!クール!カッコイイ!セボンッ!


ダニー・ブーン がとにかく渋かった。。。
『ミックマック』のイメージだったけど、こんな深みと慈愛に満ちた男を演じられるようになってたなんて。。
立ち耳の何が悪いんだと。


映画『空の大怪獣 ラドン』ネタバレあり ピアノ線が愛おしいメタボ体型

2023-04-20 | ネタバレあり
空の大怪獣 ラドン(1956年製作の映画) RODAN
監督 本多猪四郎
脚本 村田武雄 木村武
出演者 佐原健二 平田昭彦 田島義文 松尾文人




紐が愛おしいし、全然超高速で飛べそうにないメタボ体型のラドン。



しかも産まれたくて産まれたわけでもなく古代から急に孵化させられて、たぶんその日のうちに殲滅させられるという哀しきラドン。
しかも2匹いるからなんかこっちの愛情もブレるし。。



『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(2019)でかっこよかったラドンをついに観ました。

面白かったです。
『ゴジラ』(1954)のゴジラが原爆の象徴だったように
『空の大怪獣 ラドン』(1956)も核実験の影響で誕生した怪獣。
阿蘇山の地下で眠っていたプテラノドンの卵が核実験と温暖化の影響を受けて、孵化。

巣の近くに生息していた、トンボの幼虫の怪獣メガヌロンをパクパク食べて成長。
悪気はないんだけど、超音速で飛べちゃうことでソニックブームを巻き起こして街を破壊してしまう。



人間多っ!!

人間が多い!エキストラ多い!
のべ500人くらいいるんじゃないかってくらいにエキストラが多い。

ちょっと移動するのにも最低8人くらいはいる。
車に乗れるだけ乗って移動する。

たぶん、ハリボテ・ミニチュア怪獣映画に真実味を与えるための人海戦術でしょうね。
リアリティとサスペンス性を高めるためもの。
成功しているかと。
いい大人たちが本気で演技してくれているので映画がグレードアップしてますよ。


連続殺人事件からスタート

まず炭鉱での連続殺人事件からスタートします。

日本刀で切ったかのようにスパッと切られた死体が次々と発見され、「犯人はアイツなんじゃねえか」みたいな疑心暗鬼パートが続きます。

犯人は人間ではなく↓メガルロンというすごくいや〜な怪獣の仕業。


メガヌロン(トンボの幼虫ヤゴの怪獣)キモい

日本初のカラー怪獣映画

前半は炭鉱の中での暗い殺人事件(しかも怪獣もキモい…)をやってからの、
後半ついにラドンが登場して青空や緑の山、流れる溶岩、爆発などカラフルな色彩での怪獣アクションが楽しい。
といううまい作り。


哀しきラスト

めちゃくちゃミサイル撃ち込まれて、最後は溶岩の中に落ちて焼死してしまう。。
めちゃくちゃ悲しい。。

空の大怪獣 ラドン - Wikipediaja.wikipedia.org

本番中のラドンを吊っていたピアノ線が焼き切れてしまったため、操演不能になった[出典 16]。円谷は操演スタッフのアドリブだと思ったため、撮影の有川貞昌らに「まだ、まだ、まだ」と叫んで撮影を続けさせ[64]、終了後に操演スタッフから事情を聞いたが、撮り直さないことに決定した。円谷は、「ああいう絵は撮ろうとして撮れるものじゃない」と述べたという[66]。撮影現場を見学していた村田は、2匹が焼け落ちるシーンを見て感動したといい、脚本でラドンを2匹にして良かったと述べている[14]。

「ピアノ線が熱で切れて溶岩の中に落ちちゃった。当初はラドンが飛んでるシーンで終わる予定だったんだけど。」っていうのはどうやらほんとらしいですね。

偶発的なラストだった、と。
これが良かったと思います。

最初からラドン2匹殺して終わるというシナリオはそもそも書けないだろうし、もっとわざとらしいシーンになっちゃってた気もする。

このラストのおかげでこの映画は名作になったし、ラドンのことをみんな好きになった。



映画『プアン 友だちと呼ばせて』 は?キモ!キショ!だったなら 

2023-04-19 | 映画感想
プアン/友だちと呼ばせて(2021年製作の映画) One For The Road
上映日:2022年08月05日
製作国:タイ
上映時間:129分
監督 バズ・プーンピリヤ(ナタウット・プーンピリヤ)
脚本 バズ・プーンピリヤ(ナタウット・プーンピリヤ)
ノタポン・ブンプラコープ
ブァンソイ・アックソーンサワーン エグゼクティブプロデューサー ウォン・カーウァイ
出演者 タナポップ・リーラットタカチョーン(トー・タナポップ)
アイス・ナッタラット


悪いけど死期が近いからって元カノたちに会いにいくって、、なかなか暴力的ですよね。。
それぞれ今の生活があって今の感情があるのに。。
死期が近いって言われたら断りづらいし。。

1人は完全に会いたくなくて隠れてたのにその嘘を暴いてまで入り込んでいく。。

主人公の2人が好人物には思えなかったし、
ナルチシズムが強過ぎて愛せるクズ人間でもなかったし。。

ラストで
「は?キモ!キショ!あ、マジで気分悪くなってきた!ゲロ吐いていい?おろろろろ〜」ってやられたならまだ良かったけど。。
客観的な視点が足りな過ぎ。


映画『セイント・フランシス』傑作じゃん。名作じゃん。

2023-04-17 | 映画感想
セイント・フランシス(2019年製作の映画)
Saint Frances
上映日 2022年08月19日
製作国 アメリカ
監督 アレックス・トンプソン
脚本 ケリー・オサリヴァン
出演者 ケリー・オサリヴァン ラモナ・エディス・ウィリアムズ チャーリン・アルヴァレス




傑作じゃん。名作じゃん。

監督が男性でびっくりしたけど
主演のケリー・オサリヴァンが自らの体験をもとに脚本を書いて
パートナーであるアレックス・トンプソンに監督を頼んだ、と。

ケリーが再びアレックスと組む次の映画は、高校の女の子同士の友情についてのものとのこと。
期待大!

**

ギターの先生の賢者タイムが面白くて。。
あのスーンとした表情。。
あれは脚本にあったのかな。
監督のアイデアかな。

**

『レディバード』っぽいなと思ったらケリー・オサリヴァンはクレダ・ガーウィグの『レディバード』に触発されたとのこと。

とは言え突然このレベルの映画が生み出せるんだからとんだ才能と実行力。

**

生理や中絶、避妊、それらを一方的に女性が負わされる責任。
出産への期待と、出産した後の責任もまた女性に背負わされがち。

子育てするレブビアンカップルも盛り込んで混乱しそうな物量なのにタタタターと軽やかにギャグとシリアスでリズムよく描いていた。

賞レースの常連になっていくだろうけど
この『セイント・フランシス』のインディー感は維持してて欲しいな。

 ドキュメンタリー映画『チーム・ジンバブエのソムリエたち』 ネタバレあり 上から目線の白人たちに挑む! 

2023-04-15 | ネタバレあり
チーム・ジンバブエのソムリエたち(2021年製作の映画)
 Blind Ambition  
上映日:2022年12月16日
製作国:オーストラリア
上映時間:96分 
監督 ロバート・コーワーウィック・ロス


面白い。


「アフリカでワインはブルーオーシャンだから狙えるぞ」じゃなくて、
彼らがそれぞれワインに魅了されワイン沼にハマっちゃった人だからこその面白さ。

ほぼ白人男性のワイン業界に切り込んでいく姿が痛快。

**

「ジンバブエでは1ヶ月の稼ぎが1日のバス代より安かった。」

ジンバブエの社会不安(貧富の差。犯罪。)が彼らの口から説明されて、
全然知らなかった、なんとなくジンバブエって明るいイメージ??
ごめんなさい、死ぬほど浅はか。。

「ジンバブエでは1ヶ月の稼ぎが1日のバス代より安かった。」
くらいに経済はめちゃくちゃ。。

**

「ジンバブエでのことを思い出すとホラー映画のようだ
忘れようとしても事実は消えない」

難民だったジョセフ
国境では警察や兵士に撃たれる。
ジンバブエから貨物列車に乗り、窓のない蒸し焼きのような列車で、暑さ手前気絶する人もいた。
運良く南アフリカに亡命できた。


ジンバブエでは1ヶ月の稼ぎが1日のバス代より安かった。


イチゴやブルーベリーの味、香りといわれてもここはヨーロッパじゃない。
スーパーで買って勉強した。思い出の味じゃない。


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一見爽やかなドキュメンタリーになってるけど、これ違うよね。。


もっっとものすごく嫌味な感じで編集してたらむしろアメリカのアカデミー賞国際長編ドキュメンタリー映画賞の候補にはなってたと思いますよ。


ていうのも、
白人たちの「哀れな黒人たちに手を差し伸べてる自分に酔ってる姿」がめちゃくちゃ映ってる。。


ジンバブエチームを応援する(白人の)自分、
ジンバブエチームを成功に導く(白人の)自分を世間にアピールしたい感がだだ漏れ。


それで成功したのならまだしも1回目はそうでもないからね。
むしろ邪魔してた。。。


もうリューベン・オストルンド監督に映画化して欲しいですよ!


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ネタバレは以下に!








成績は24チーム中23位。
 しかし翌年、コーチなしで挑んだら14位! 

何だったの!?あのコーチ!!

映画『フリークスアウト』だっちゃ!強烈な反戦エンタメヒーローイタリア映画

2023-04-14 | 映画イラスト
フリークスアウト(2021年製作の映画)Freaks Out
上映日:2023年05月12日
製作国:イタリア ベルギー
上映時間:141分
監督 ガブリエーレ・マイネッティ
脚本 二コラ・グアッリャノーネ ガブリエーレ・マイネッティ
出演者 フランツ・ロゴフスキ エリック・ゴドン クラウディオ・サンタマリア アンナ・テンタ エミリオ・デ・マルキ







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■大人気イタリア映画『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』のガブリエーレ・マイネッティ監督の新作。


『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』は2015年ですから満を持してた新作。そして怪作。名作。


前作同様こちらもスーパーヒーローもの。
超人パワーを持った主人公たちの苦悩と戦いの物語。


主役はサーカスの団長のイスラエルと団員たち。
●光と電気を操る少女マティルデ
●アルビノの虫使いチェンチオ
●多毛症の怪力男フルヴィオ
●磁石人間の道化師マリオ


そして敵はナチス!
何してもいい相手。なんの擁護もできない悪。


で、さらにナチスに対抗するレジスタンスたちも加わって話はややこしいことに。


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■さらに複雑な敵の能力


あんまり書くとネタバレになっちゃんですけど、敵(フランツ)が「ジョジョの奇妙な冒険」っぽいと思いました。


危機的状況になるほどに、知られざる能力が開花してくるんですよ。


ジョジョのアイツなんですよ。スマホなんですよ。


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■強力な反戦映画


まっすぐな反戦映画であることが嬉しい頼もしい大好き。


「反戦」って言うと「自分勝手」「いい人だと思われたい」みたいに言われる世の中になってきて、本当になんて最悪なんだろうといつまで最悪を更新し続けるんだろうと思っているところに、このエンタメヒーロー映画での力強い反戦メッセージはありがたい。


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■エンドロールですよ


エンドロールがまた感動。
第二次大戦が終わった後の人間の歴史がイラストで紹介されていくんですが、あれも描いてくれてる、これも描いてくれてると感動してしまうのです。


あのヒーローも出てくるし。




四コマ映画『フリークスアウト』
https://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=2941




映画『EO イーオー』 第95回アカデミー賞国際長編映画賞候補作 ロバが主役

2023-04-14 | 映画イラスト

EO イーオー(2022年製作の映画)EO
上映日:2023年05月05日
製作国:ポーランド イタリア
上映時間:88分
監督 イエジー・スコリモフスキ
脚本 エヴァ・ピャスコフスカ イエジー・スコリモフスキ
出演者 サンドラ・ドルジマルスカ  イザベル・ユペール  ロレンツォ・ズルゾロ  マテウシュ・コシチュキェヴィチサヴェリオ・ファッブリ







第95回アカデミー賞国際長編映画賞候補作

『異端の鳥』っぽい作りだと思いました。
戦時下で少年が安住の地を求めて各地を転々としながら大人に保護されては逃げて保護されては逃げて、、という『異端の鳥』。


『EO イーオー』はロバのEOちゃん(オス?)が人間の都合でどっかへ連れて行かれたりEOちゃんの自由意志で逃げたりして各地を転々しながら、
天国のような地獄のような人間たちの様子を映し出していきます。
ロバ視点ではありますけど登場人物が割と多いし、
各地で行われるイベントがなかなかインパクトがあるのでグッと惹きつけられたまま最後まで観れます。


動物愛護だけではない

冒頭かサンドラとの蜜月を引き裂くのは動物愛護団体ですからね、動物愛護だけを言いたい映画ではないでしょう。
人間の性差別の描写も多いし、人間の残酷さや愚かさや冷酷さもあるし、逆に人間の温かさ優しさもある。
単に各地で嫌な目に遭うだけではないので、次の土地ではEOちゃんが何に遭遇するのかがホントにハラハラします。。


映像と劇伴が素晴らしい

主役はしゃべらないわけです、ロバだから。さすがに。
なので全体的にはセリフが少ない。
そうすると映像と音楽の責任が重くなるわけです。
てことで映像は素晴らしく刺激的。
劇伴は特に素晴らしいですね。EOちゃんの心情に寄り添っているような、突き放しているような、天空から客観視しているような、複雑で美しい音楽。
映画体験として素晴らしいものだと思います。

ユペール先生

イザベル・ユペール先生が突如どアップで登場します。
ちょうどコーラとか飲んでる時だったら吹き出すと思うので注意してくださいね。
顔力。存在感がすごいのよ。
EOちゃんに負けない存在感。命同士の対決(戦ってないけどね全然)でユペール先生の勝利なんですよ。
僕は自宅のPC画面で観ちゃったんですけど、これは映画館で大音量大スクリーンで観ることで価値が何倍にもなる映画だと思います。


 映画『ラストシフト』差別の引き継ぎしちゃうおじいちゃん 名作かと

2023-04-13 | 映画感想
ラスト・シフト(2020年製作の映画) The Last Shift 製作国:アメリカ
上映時間:90分
監督 アンドリュー・コーン
脚本 アンドリュー・コーン
出演者 リチャード・ジェンキンス  シェイン・ポール・マッギー



『扉を叩く人』『シェイプ・オブ・ウォーター』のリチャード・ジェンキンスだ。


どうりで素晴らしい演技なわけだ。

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この映画、なかなかの名作なのでは?


すごい良かったですけどね。

パッと見、コツコツ働いて清貧の暮らしを粛々と続けてきた白人おじいちゃんのスタンリーは主役として好感の持てる人物。

「愚直」と言えば褒め言葉だけど、単純に「愚かしい」と言えるエピソードも語られていく。
(中古自動車周辺や施設の母親を迎えにいくくだりなど)

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翻って黒人の若者ジェボンは、前半は反社予備軍みたいな存在だが次第にマジメさが強調され、
終盤では短絡的な行動に出るスタンリーと比較してまるでジェボンの方が老人メンターなようなオーラを出してくる。

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中間管理職の黒人女性チャズも重要な役。

職場の立場では前出の2人より上だけど 
社会差別構造の中では白人男性、黒人男性より立場の弱い黒人女性である。

ジェボンとチャズは生まれた時から人種差別、性差別に遭っているが
狭い世界で生きてきたスタンリーはそれを理解しない。
女性の社会進出、黒人の権利平等を白人のスタンリーは脅威に感じている。

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ラストシフトってのはつまりは〝引き継ぎ〟のこと。

新しいバイトに仕事を引き継がなきゃいけない。
老人スタンリーからすると10代のジェボンは2世代下の若者。
仕事は引き継がなきゃいけないけど、
〝差別〟は引き継いじゃいけないわけよね。

ここで断ち切っておくべきこと。
しかし愚かなスタンリーにはそれができない。

若者を導くのが老人の〝仕事〟だろうに。

しかも「ラスト」だったのに。

60年くらい生きてきた人間がする行動とは到底思えない。
ジェボンの人格や人生や未来を軽んじている。

スタンリーが主役だからなんとなく見れてしまうけど、これジェボンが主役だったらスタンリーは救いようのない愚かな悪役ですよ。

だけどパッと見、そうは見えない。

「ま、仕方ないよね」的な空気が出ている。

それがこの映画のミソ。

割と名作だと思います。
次作に期待大!!

大人向けの佳作 映画『フレンチ・イグジット さよならは言わずに』ミシェル・ファイファー主演

2023-04-09 | 映画感想
フレンチ・イグジット さよならは言わずに(2020年製作の映画) French Exit 
製作国:イギリスアメリカ
上映時間:110分
監督 アザゼル・ジェイコブス 
脚本 パトリック・デウィット 
原作 パトリック・デウィット 
出演者 ミシェル・ファイファ  ルーカス・ヘッジズ  トレイシー・レッツ  ヴァレリー・マハフェイ イモージェン・プーツ






『ラバーズ・アゲイン』のアザゼル・ジェイコブス監督作か。

こういうめっちゃ良いわけでもないけど良い小品って
翻ってめっちゃくちゃ良いよね!

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ミシェル・ファイファーは今作の演技で第78回ゴールデングローブ賞の主演女優賞 (ミュージカル・コメディ部門)にノミネートされた、と。

わかる。ミシェル・ファイファーがほんとに素敵。ずっとオシャレ。この人良いよね、ずっと。
ミシェル・ファイファーのアクトを堪能できる良い映画。

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助演のヴァレリー・マハフェイも素晴らしい。
彼女も今作で演技賞多数受賞。
テレビを中心に活躍されてきたらしいけど、本当個性的だし、映画をワンランクアップさせた。

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ベンチでお金あげるシーンも良かったですね。
自分の中の欺瞞を見せつけられたわけよね。
そしてそれを息子に見られた。
でもへこたれない。

「どう?私学んだわよ」って感じ。
「私まだ進化できるのよ」って感じ。

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「フレンチ エグジット」は、
警告やさよならを言わずに婚約や状況を離れることを表す俗語とのこと。

さよなら言わなかったね。

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映画自体は全体的にそんなに出来がいいとは言えないかな。。

突然の降霊術にはついていけない人多いだろうし、、
人数が増えていく分、終盤が鈍重。

僕にとっては
黒人の私立探偵も一緒になって2泊したのは面白いし
愛せる映画だと思いました。




映画『ギャンブラー』好き マンブルコアという映画ジャンル 

2023-04-06 | 映画感想
ギャンブラー(2017年製作の映画) Win It All  
製作国:アメリカ
上映時間:88分
監督 ジョー・スワンバーグ
脚本 ジェイク・ジョンソン ジョー・スワンバーグ 
出演者 ジェイク・ジョンソン  ローニ・シェモン アイスリン・デルベス



面白かったぁ。
悪口に聞こえるかもだけど、映画の種のような映画。


普段観ている(評価されている)映画だったら、
もっと展開があるだろうし、
サブキャラたちを深く描くだろうし、
さすがに1箇所くらいは金をかけたロケをしとこうと思うだろうし。


そういう、「一応やっとこう」みたいな、脂身みたいな(脂身も美味しいが)のがない映画。


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ものすごい低予算とのことだけどそうは感じさせない。

まずは主演のジェイク・ジョンソンがとても愛せるし、他のキャラクターも独立していて面白い。


(競馬のシーンは遠方からのゲリラ撮影ですね。他の客たちの表情が明らかに一般人。)

話としてはものすごく小さいんだけど、失いたくない今の幸せや
この先のさらなる幸せを思うと
だらしない主人公エディを応援する気持ちになってくる。

はっきり言って
ものすごい大仕掛けがあるわけでもなく
トリックも伏線もないんだけど、
それでもこんなに愛せてハラハラできるんだから、この映画はすごいはず。

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マンブルコアというジャンルのようですね。

超低予算で友人関係みたいなスタッフ・キャストで脚本もあまりないまま即興的に撮る感じ。
中産階級の白人の若者が主役の場合が多いとのこと。


以下はウィキより転載。


「マンブルコア(mumblecore)はアメリカのインディペンデント映画(自主製作映画)の一種で、多くは若い白人中産階級の日常生活や人間関係を主題とし、きわめて低予算で製作される点に特徴がある[1]。
あえてエピソードの羅列にとどめ明確な物語構造を持っていないことも多いが、2000年代のアメリカ社会の新しい現実を描いているとして注目されるようになった[2]。

「マンブル mumble」は「低く不明瞭に発音する・もぐもぐ言う」を意味する言葉で、
作品に登場する若者たちがしばしば不明瞭な発音で早口に英語の台詞を口にするためこの呼び名がある。
語頭が小文字で表記されるのも低予算であることを示すためとされる[3]。」


グレタ・ガーウィグがマンブルコアの中では大成功した1人で
今作の監督ジョー・スワンバーグも低迷していたけど今作は高評価を受けた、と。

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以下、ロッテントマトより転載。

「スワンバーグの映画は、綿密に計画された、緻密に筋書きされた事件ではありません。
彼は簡単なあらすじを書き、キャストと物事について話し、
その後、しばしば「多くのファースト テイクまたはセカンド テイク」を使用して、
彼らの即興テイクを撮影します。」


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即興演技が多かったのか。
あんまその感じはなかったな。

不安定さがなくてむしろ俳優たちの達者さの方をキャッチしてました。

即興であのレベルの演技をしてたってことは、相当な技能だし、おそらくチームワークも良かったのでしょう。

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「ラストでどんでん返しが!!」ってのは一切期待しないことをオススメします。

そういう映画じゃないみたい。


映画『ソウルフルワールド』 福田転球さん素晴らしい 

2023-04-05 | 映画感想
ソウルフル・ワールド(2020年製作の映画)Soul
監督 ピート・ドクター
脚本 ピート・ドクター
出演者 ジェイミー・フォックス ティナ・フェイ




ディズニープラスって再生すぐ止まるんだけど。。。
テレビで観てて、ネット環境らしいんだけど
ネット環境別にそんなに悪くないんだけどね。。
ストレス。。
っていうか退会したい。。

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この映画は良かったです。

ジャズの音がいいですね、最高。音響最高。
「生きる意味」もメッセージがちゃんと伝わったし
たまには「あ、そうだったな」と思い出して公園で深呼吸でもしたい。

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大人の映画だなと思いました。
テーマ的に。

名作『カーズ/クロスロード』に匹敵するような。
大人向けの質の高いアニメだなと。

ただ、説明台詞の多さが子供向けだった。。
すごいずっと喋ってるし
最終的なメッセージもわざわざ言うセリフだし。

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日本語吹き替え版で観ました。

アニメは特にずっと絵を観ていたので(字幕を見てる時間を減らしたい)。
声をやった方素晴らしかった。

主役のジョーがハマケン(浜野謙太)、
22番を川栄李奈、
船長であり看板持ちのムーンウィンドを福田転球。
とくに福田転球さんが声優こんなに素晴らしいとは。