最近、小学校で働いていた2年間のことをときどき思い出します。
私は飼育動物の世話を任されていて、ウサギやカメ、文鳥、セキセイインコと金魚の世話をしていました。
よく思い出すのは、それまで世話をされずに泥だらけになっていたカメの浴槽を、デッキブラシでこすっていた自分の姿です。浴槽からカメをそっと出して散歩させている間、せっせと泥を掻き出してコケを洗い流していました。
カメは風に吹かれて気持ちよさそうにしていました。綺麗な水に放したときに、気持ちよさそうに泳いでいた姿も忘れられません。
それまでの私は、都心のオフィス街で、パソコンと向き合いながら、書類に埋もれる日々を過ごしていました。窓の外を見ても無機質なビルがあるだけでした。人が作ったものではなく、神様が作ったものを見たい…。そう思いながら毎日を生きていました。
そんな私が、汗を流してカメの浴槽を洗い、ウサギの柔らかさに触れ、小鳥の鼓動を手のひらに感じながら働いた。エネルギー溢れる子供たちと過ごす時間があった。
勤めていた当時は不満ばかりでしたが、今、振り返ってみると、自分に必要な時間だったことがよく分かります。私がこれから生きていく上でバランスを保つために、なくてはならない時間でした。
そして私が覚えているのは、デッキブラシで浴槽のコケを落としながら、額の汗を拭くために顔をあげると、校舎の屋上から、教頭先生が身を乗り出してこちらを見ていたことです。
額に汗して働く私の姿を、見ていてくれた人がいたのです。ここで私がカメをいじめていたりしたら別ですが、カメをそっと浴槽から取り出し、散歩させてあげている私を見て、悪く思う人はいないのではないでしょうか…
今から思えば、小学校での2年間は、とても豊かな時間でした。苦しいこと、辛いこともありましたが、時が経った今は、そう思えます。
今の私の暗中模索の日々も、将来、豊かな時間だったと振り返れるようになるといいな…