少し前に視聴していた中国ドラマ、「如懿伝」で、
皇帝が美女で名高い寒香見という西域のお姫様と
初めて相まみえる印象的なシーンがありました。
寒香見は異教徒の風習で、顔の下半分を面紗で隠しています。
皇帝や皇后、並み居る側室たちの前で舞を披露した後、
皇帝から「面紗をとれ」と命じられます。
寒香見は西域随一の美女との噂だし、確かに舞は上手だけど、
実際のところ、顔はどうなのよ?と、皆の視線が集中します。
面紗をとった寒香見は…
期待を裏切らない美女で、皇帝は以後、寒香見に首ったけになります。
私も先日、この「面紗をとれ」と命じられる場面に遭遇しました。
採用面接に呼ばれ、私はマスクをつけて会場に出向きました。
顔を晒さないで面接できるのは楽だな~と油断していたところ
「本人確認のため、マスクをとってください」と
面接官に言われました。
その瞬間、私の意識は時空を超えて
面接会場から清朝の紫禁城にタイムスリップし
広間で衆人環視の的になっている寒香見
(ただし顔に自信がない)の心情とシンクロしました。
私はしばし逡巡した後(油断して口紅をつけていなかった)、
マスクを外し、顔を晒しました。
寒香見のがっかりバージョンを図らずも再現してしまったと
私は誰にも理解されないであろう小さな孤独と落胆を抱えて
面接に臨むことになったのでした。