「昨日、先輩にきいたんだけどさぁ、峠の外れに山小屋があるだろ。あれよりも2キロくらい山頂に向かって行くと、廃学校があるんだよ。あそこ、"出る"らしいよ。行ってみない?」
直樹は、興奮気味に正人を誘った。
「町からだと、自転車で30分くらいで着くよな。いいかも。行ってみよう!」
「だけど、二人っきりってのもなぁ…。あのさ、松田誘わない?」
「松田?まじで?面倒だなぁ…」
松田は、気が強く見栄っ張りで、クラスの中では少し浮いた存在だった。
「なんで、松田?」
「この間、怖い話ししてたら、話しに混じって来たし、『怖い話し大好きだから、また誘ってくれ』って言ってたじゃん」
「うん…。まぁ、いいけど。」
正人は気乗りしない様子だったが、二人きりじゃ心許ない…という直樹の不安を感じ取って、松田を誘うことに渋々賛成した。