浮気 34

2022-07-31 09:48:51 | 日記
LINEの既読が付かないまま、2週間が過ぎた。

さすがに続けていくには厳しい…と、笑子は思いはじめた。



「先輩、田辺くんと別れたんですか?」

「え?…どうして?」

勇一と出会うきっかけを作ってくれた後輩、れみが心配してくれていた。


「あの、実は、最近ある大規模な合コンに参加したんですけど、田辺くんがいたんです。たぶん、彼は、私に気づいていないと思いますけど…、田辺くんでした。」

「………そうなんだ。」

呆然とした。

忙しいという嘘までついて、2週間以上LINEを無視して、合コンとは…。







浮気 33

2022-07-29 11:55:54 | 日記
それからの莉沙は、ランチの時も笑子の側に来なくなった。

笑子にとっては、ちょうどいい。

そして、すっかり元通りになった笑子と勇一。

神田の告白には、複雑な心境だったが、無かったことにしよう。

しかし、再び、勇一の『放置』が始まった。

LINEの既読がなかなか付かない。

確かに、急ぐ内容ではないけれと、あまり無視かれるとつらい。

「元気?仕事忙しい?」

この文章を送って1週間になる。


ある日のランチタイム、後輩の浜田がやってきた。

「山下先輩…、ちょっと聞きたい事があるんですけど…」

「…どうしたの?」

「莉沙が神田先輩に告白したって、本当ですか?」

「え?誰から聞いたの?」

「莉沙、本人からです。」

…莉沙は、破滅的な性格なのかも知れない。

「私は知らないわ。本人がそう言うならそうなんじゃない?」

「…そうですか…。」

浜田は、ガックリと肩を落とした。

「だけど、それが本当なら、これから神田くんと一緒に会社をやっていくには、困る状態よね。」

「あ、いいえ、神田先輩のことは、信頼しているので、彼女の件がとうであろうと関係ないです。」

…良かった…。


浮気 32

2022-07-27 09:22:56 | 日記
「関心がある…

まるで告白だ。

笑子は、戸惑った。

「ごめん、変な事になっちゃったね。」

「いいえ。この展開だと、仕方ないです。」

「いや、最後の自分の気持ちは、本当だけど。」

「…でも、私には…」

「彼がいるんだよね。知ってる。だから、関心を持つ程度なら、邪魔にならないでしょ。」

「……。」

「それより、町田さんと気まずいかな?」

「大丈夫。もともと彼女とは、上手く関われる間柄じゃなかったから。神田さんに会わせて欲しいって、強引に頼まれて…」

「まぁ、お陰で、こうして気持ちを伝えられて良かった。」

「……」

「あ、自分勝手でごめん。」

思いがけず神田の気持ちを知ってしまった。

しかし、ここのところ、勇一との関係も悪くない。

神田の言葉は、聞き流そう。

浮気 31

2022-07-25 09:39:46 | 日記
「私は、浜田くんとは、付き合っていません。私が本当に好きなのは…」

という莉沙の言葉を遮って、神田は、浜田とはこれから仕事を一緒にする…と告げた。

莉沙は、さすがに口ごもった。

しかし、莉沙は負けていない。

せっかくのいいチャンスだと思ったのか、会話を続けた。

「私、実は、もともと神田さんに関心があったんです。」

「……」

「仕事も出来るし、素敵です。だから…」

「ボクも、実は、山下さんに関心があったんだ。」

神田は、笑子の方に向き直った。

…え?!

時間が止まった。

「どういうこと…?」

止まった時間を動かしたのは、莉沙だった。

「どういうことですか?神田さん」

「だから、関心がある…という意味だよ」

「私の関心という意味は、好意がある…という意味で言ったんです。」

「ボクもそうだ」

「だけど、先輩には、彼がいます」

「知ってる。ただ、関心を抱くだけならいいだろう?」

「……」

「解りました。今日は、帰ります」

莉沙は、少し早足で、出ていった。



浮気 30

2022-07-23 08:22:30 | 日記
「先輩、付き合ってください。神田さんに釈明したいんです」

…釈明?

何をどんな風に?

神田に近づきたいから浜田を利用した…とでも言うつもり?

結局、神田への釈明(?)に、莉沙に付き合わされた。

「神田さん、私が浜田くんと付き合っていると誤解されているようですが…」

…え?誤解?

「浜田くんとは、仲のいい男友達なんです。…私、実は、前々から神田さんが…」

「ちょっと待って!それじゃ、浜田が勝手に君と付き合っていると誤解してたってこと?」

「はい。少なくとも私は、彼に対しては、友人だと思ってました。私、昔から、仲良くなると、ついつい甘えたりするので、誤解受けやすいんですよね。」

「…そうなんだ…。」

つらつらと、立派な言い訳を並べ立てて、神田を説得したかのように見えた。

「私が、本当に好きなのは…」

「浜田とは、今後、自分の仕事を手伝ってもらう予定なんだ」

「…え?……そ、そうなんですか?」

その場しのぎの嘘をついても、通用しない状況に、莉沙は戸惑った。

「それより、今回も忙しい中、付き合ってくれてありがとう」

神田は、笑子に頭を下げた。