旅館38

2023-12-29 08:50:01 | 日記
「おじいちゃん…。ちょっと聞きたい事があるんだけど…」

夕方、新聞を見ている祖父に改めて話しかけた。

「どうした?」

「あの…『いさみや』の物置小屋にある箱の件だけど…」

祖父の表情が一瞬曇ったが見えた。

「おじいちゃんは、その箱の話しには、触れなくないかも知れないけど…。他に聞ける人がいなくて…。教えてほしいの。」

「どうした?」

いつになく神妙な顔つきの夕美に、覚悟を決めたかのように、祖父も座り直した。

そして、一連の出来事をすべて打ち明けた。

「…そうか…、そりゃいかんな…。たろう様の怒りだ」

「たろう様?」

「あの箱に入っているのは、たろう様だ。」


旅館37

2023-12-25 09:07:21 | 日記
徹弥がボソッとつぶやく。

「やっぱり、あの箱のせいだよな…」

皆、言葉に詰まってしまう。

「どうしたらいいんだろう…。」

「どうしたら…って?」

「箱…どうにかしないと」

「どうにか…って、どうにもならないよ。私たちまで呪われて病院送りにされちゃう…💦」

「だけど、このままではまずいよね…。何か手立てがあるなら、やらないと…。」

「オレ、衣栄ばあちゃんに、もう一度箱の事、聞いてみる。夕美の親父さんも、箱のこと知ってるんだろ?」

「うん。」

「何か知ってるかも知れないから、聞いてみてくれ」

「うん…。」


旅館36

2023-12-21 09:27:49 | 日記
ー翌日…。

「ね!大変!幹太、夕べ夜遅くに救急車で病院に運ばれたらしい!!」

梨花が仕事の準備をしている夕美と徹弥の元に慌てて駆け込んで来た。

「え?!」

「あの後、夜遅くに痙攣が起きたんだって。大変だったらしい…って、オーナーから聞いた!」

「マジか…。」

「仕事おわったら行ってみよう」

「それがさぁ…、面会謝絶だって…。オーナーが」

「え?そんなに大変なの?」

「詳しくはわからないけど、そういう風に言ってた」

「箱…」

徹弥がボソッとつぶやく。

「え?」

「やっぱり、あの箱のせいだよな…」

旅館35

2023-12-18 09:21:41 | 日記
「『箱の中の何か』が、急に"痛い…痛い…"って言うんだ。」

幹太が熱でうなされていた時に見た夢の話しをしていた。

「怖い…」

梨花が思わず声をあげた。

「それだけじゃないんだ。声を聞いた俺は、箱をくまなく見ると、門に10円玉くらいの穴を見つけるんだよ。」

「それで?」

「その穴から中が見えるかな…と、思って覗こうとすると、なんと…箱の中の"何か"と目が合うんだ」

「マジか…!!」

震える声をあげたのは、徹弥だった。

「あ、夢だよ!夢!」

「うん…わかってるけど、リアルだな…」

「で、あの日、幹太が物置小屋に入った時、一体幹太は何をしたの?」

「それが、やっぱり、思い出せないんだ。」

「たぶん箱を見に行ったんだから、箱を持ち上げたり揺すったりしたんじゃないか?」

「うん…そうかも知れない…。とうしよう。バチが当たもったかな?」

「熱も下がったし。もう、大丈夫だよ」

心配していたより軽い症状の幹太の姿を見て3人は安心して帰路についた。

旅館34

2023-12-15 09:08:24 | 日記
「実は高熱を出して唸って寝ている間、何度も何度もあの箱の夢を見るんだ」

「…どんな?」

「何度も開けようとして開かない夢なんだけど、熱が下がってから見た夢は、ちょっと違うんだ。」

「違うって…どんな風に?」

「夢の中の俺は、箱をガタガタと必死に揺すっているんだ…。すると、ガタガタ…ガタガタと言ってた『箱の中の何か』が、急に"痛い…痛い…"って言うんだ。」

「怖い…」

梨花が思わず声をあげた。